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日本の名詩その10

2010年01月28日 | Weblog
昨日にまさる恋しさの

 昨日にまさる恋しさの
 湧きくる如く嵩(たか)まるを
 忍びこらへて何時までか
 悩みに生くるものならむ。
 もとより君はかぐはしく
 阿艶(あで)に匂へる花なれば
 わが世に一つ残されし
 生死の果の情熱の
 恋さへそれと知らざらむ。
 空しく君を望み見て
 百たび胸をこがすより
 死なば死ぬかし感情の
 かくも苦しき日の暮れを
 鉄路の道に迷ひ来て
 破れむまでに嘆くかな
 破れむまでに嘆くかな。
       -詩集『氷島』

 『この詩は、萩原朔太郎(1886-1942)の後期を代表する一篇で、すでに四十の半ばをすぎての作品であるが、少年のようなひたむきな情熱が感じられる詩である。

 「あなたを恋しく思う気持ちは、きのうよりきょうと、日ましにたかまってくるのに、それをいつまで忍んで、悩みながら生きていかなければならないのであろう。むろん、あなたは、“かぐわしく、阿艶に匂へる花”(美しく装って客席に侍る女性でもあろうか)であるから、わたしの生涯にたったひとつ残された、最後の情熱をかたむけたこの恋さえ、知ってはいないであろう。・・・・」というのである。

 萩原朔太郎は、明治19年群馬県前橋市に生まれた。24,5歳ころから詩作をはじめ、大正5年室生犀星らと雑誌「感情」を創刊。従来の古典主義的・形式主義的美学を否定する一方、自然主義的リアリズムの卑俗性をも否定し、詩における感情の優位性をかかげて、抒情詩の新しい展開をはかった。』-榊原正彦氏編「日本の名詩」-

 2004年テレビや映画も大ヒットし、セカチューブームを巻き起こした片山恭一(1959- )*8)の青春恋愛小説「世界の中心で愛をさけぶ」の主人公「松本朔太郎」(サク)は、この詩人萩原朔太郎由来とのこと。作家片山恭一氏の萩原朔太郎に寄せる想いは知らないけれど、萩原朔太郎の恋愛詩に懸けた情熱がその小説を通じて現代に蘇ったというのは云い過ぎであろうか。

 蛇足ながら付け加えさせていただければ、長沢まさみさん演じる廣瀬亜紀(アキ)がグランドを走っていた、サクとアキが通う木庭子高校の映画*9)のロケは、愛媛県伊予郡松前(まさき)町北黒田の県立伊予高校で行われたとのことだけれど、「松前町北黒田」は私の故郷だ。もっとも私が高校生の頃には伊予高校はまだなかったのだけれど。


*8)片山恭一(1959- )愛媛県宇和島市出身。小説家。宇和島東高等学校から九州大学農学部、同大学院博士課程中退。「世界の中心で愛をさけぶ」小学館2001年4月刊は故郷宇和島を舞台にしている。by Wikipedia
*9)2004年5月東宝系にて公開。by Wikipedia

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