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経済性入門第7回

2012年03月19日 | Weblog
埋没費用

 過去の投資額で、回収不能となった固定費用を「埋没費用」(sunk cost)という。固定費用が埋没化されない(サンクされない)産業は撤退時に固定費用が回収可能なため、参入・退出が容易となり競争が激しく成り易い。埋没コストは、採算性分析の方策の優劣に関係しない費用でもある。

 埋没コストが、採算性分析の方策の優劣に関係しないことを分かりやすく説明する事例として、レンタカーの料金が車種によって固定料金プラス走行距離による変動制であったとした場合の借り換えについての経済性比較を取り上げる。(この問題は現在のレンタカー料金制度を反映したものではありません)

 所用で100km程度の道のりに車が必要ということで、レンタル料金を調べてみると同じ車種で固定料金が1日3,000円に加えて走行距離1km当たり50円のA車と、固定料金が1日9,000円であるが、走行距離1km当たり20円のB車があったとする。走行距離100kmで計算すると、A車の場合8,000円、B車の場合は11,000万円掛かる。

 そこで、前日3,000円を払ってA車を借りた。ところが当日予定が変更になり、400km程度走行しなくてはならなくなった。B車に借り換えるためA車を返しても払い込んだ固定料金は返ってこない(回収不能)。そこでA車のままで済ますのか、それとも思い切ってB車に借り換えるのかという問題。

 優劣分岐点は走行距離数をMと置くと、A車のままの場合=3,000+50×M・・・①式、B車に借り換えると=3,000+9,000+20×M・・・②式で、①=②からMを求めると300kmと出る。すなわち1日の走行距離が300km以上ならB車への借り換え、以下ならA車のままが有利であると出た。事実1日400kmを走行した場合、A車のままでは固定費と合わせて23,000円掛かるのに対して、B車に借り換えた場合固定料金は回収不能の3,000円と合わせ12,000円となるが、走行距離による料金が8,000円しか掛からず合計20,000円と3,000円得となる。

 ここで、①式および②式に共通の数字である3,000を消去して計算しても同じM=300が得られることが分かる。すなわち過去の投資額であるA車の固定料金は、この場合方策の優劣に関係のない費用であり、すなわち「埋没費用(サンクコスト)」なのである。





本稿は、千住鎮雄他著「経済性分析」、(財)日本規格協会1979年初版1986年改訂版を参考に構成しています。

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