2009逆転の日本興国論②
慶応義塾大学の権丈善一教授は、「年金は破綻しない」と述べている。年金保険料の未納率が増加続けているため、将来年金は破綻する。だから、「基礎年金はすべて税金でまかなうべきだ」という租税方式が持ち出されるが、これには重大な難点があると教授は指摘する。まず、具体的な年金財政のシミュレーションによれば、未納者が出る第1号被保険者(自営業者、農業従事者など基礎年金部分のみの加入者)の納付率が上下しても給付率(正確には所得代替率)にほとんど変化はない。すなわち年金は破綻しない。また、消費税UPで賄う租税方式には大きな問題がある。過去の未納者に対する給付をどうするのか。未納者には給付しないのであれば、消費税という形の負担のみ課される。給付するということであれば、現在でも高額の所得がありながら国民年金を払っていない人(世帯所得1千万以上の11%)への給付に納得ができない。また消費税UPは、すでに年金を完納している世代も直撃するため、保険料の二重取りになる。現役のサラリーマン世代にも、保険料減額分の事業主負担が消費税で跳ね返ってくるため、結果負担増しとなる。また現在保険料免除を受けている低所得者層にも消費税負担は掛かってくる。などである。民主党などは、「税財源の方が国民に優しい制度」とアピールし続けてきたが、実際はまるで逆なのだ。そうだ。
本田宏医師の「給付金より2兆円で医療再建を」はいいとして、市場原理型の医療制度改革への批判は納得できない。増え続ける国民医療費を一体どうするのか。われわれ患者側も保険料は増額され、窓口負担は3割負担となった。応分の負担増は医療機関や医師側にもあってしかるべきだ。そもそも強力な医師会組織が時の政界と結んで、国民皆保険の護送船団方式ですべての病院、医院、クリニックも淘汰されることはなかった。現在の医療機関の苦境は、交付金や補助金で脆弱な体質となった地方公共団体と同様ではないのか。確かに増額された保険料を払えないために医者に掛かれない人が出ているとすれば問題である。国と医師会によって実態を把握して、全体の保険料の問題とは分けて救済策を考えるべきだ。また、過酷な勤務医の実態も深刻だと思われる。医師数はOECD加盟国の人口当たりの平均値に照らせば、10万人以上不足しているという。
しかし、医療現場の問題は、政治の問題と医療機関の運営方法、すなわち企業でいう経営の問題の部分を分けて考える必要があるように思う。病院の理事長は原則医師でなければならない。大相撲の理事長は元力士であり、病院の理事長が医師で悪いわけがない。実は病院の運営すなわち経営は事務長(医師である必要はない)が行うのが普通であるが、事務長に権限がない場合や、単に理事長の身内だったりで、手腕に問題がある場合に経営がダメになる。一般に大病院であれば建物は立派だ。高額の医療器械を備えている。それらの資産がうまく働くような経営ができればいいが、必ずしもそうでもないのではないか。特に「全国に約1千ある自治体病院のうち、約7割の病院が経営赤字で、閉鎖の危機にある」と本田医師は述べているが、その病院に国の援助を求めることは、患者を人質にした恫喝にさえ聞こえてしまう。効率化した病院経営によって自立化を促すとともに、組織・人事制度の見直しによる勤務医の処遇改善を、まず内から行うことこそ必要ではないのか。
慶応義塾大学の権丈善一教授は、「年金は破綻しない」と述べている。年金保険料の未納率が増加続けているため、将来年金は破綻する。だから、「基礎年金はすべて税金でまかなうべきだ」という租税方式が持ち出されるが、これには重大な難点があると教授は指摘する。まず、具体的な年金財政のシミュレーションによれば、未納者が出る第1号被保険者(自営業者、農業従事者など基礎年金部分のみの加入者)の納付率が上下しても給付率(正確には所得代替率)にほとんど変化はない。すなわち年金は破綻しない。また、消費税UPで賄う租税方式には大きな問題がある。過去の未納者に対する給付をどうするのか。未納者には給付しないのであれば、消費税という形の負担のみ課される。給付するということであれば、現在でも高額の所得がありながら国民年金を払っていない人(世帯所得1千万以上の11%)への給付に納得ができない。また消費税UPは、すでに年金を完納している世代も直撃するため、保険料の二重取りになる。現役のサラリーマン世代にも、保険料減額分の事業主負担が消費税で跳ね返ってくるため、結果負担増しとなる。また現在保険料免除を受けている低所得者層にも消費税負担は掛かってくる。などである。民主党などは、「税財源の方が国民に優しい制度」とアピールし続けてきたが、実際はまるで逆なのだ。そうだ。
本田宏医師の「給付金より2兆円で医療再建を」はいいとして、市場原理型の医療制度改革への批判は納得できない。増え続ける国民医療費を一体どうするのか。われわれ患者側も保険料は増額され、窓口負担は3割負担となった。応分の負担増は医療機関や医師側にもあってしかるべきだ。そもそも強力な医師会組織が時の政界と結んで、国民皆保険の護送船団方式ですべての病院、医院、クリニックも淘汰されることはなかった。現在の医療機関の苦境は、交付金や補助金で脆弱な体質となった地方公共団体と同様ではないのか。確かに増額された保険料を払えないために医者に掛かれない人が出ているとすれば問題である。国と医師会によって実態を把握して、全体の保険料の問題とは分けて救済策を考えるべきだ。また、過酷な勤務医の実態も深刻だと思われる。医師数はOECD加盟国の人口当たりの平均値に照らせば、10万人以上不足しているという。
しかし、医療現場の問題は、政治の問題と医療機関の運営方法、すなわち企業でいう経営の問題の部分を分けて考える必要があるように思う。病院の理事長は原則医師でなければならない。大相撲の理事長は元力士であり、病院の理事長が医師で悪いわけがない。実は病院の運営すなわち経営は事務長(医師である必要はない)が行うのが普通であるが、事務長に権限がない場合や、単に理事長の身内だったりで、手腕に問題がある場合に経営がダメになる。一般に大病院であれば建物は立派だ。高額の医療器械を備えている。それらの資産がうまく働くような経営ができればいいが、必ずしもそうでもないのではないか。特に「全国に約1千ある自治体病院のうち、約7割の病院が経営赤字で、閉鎖の危機にある」と本田医師は述べているが、その病院に国の援助を求めることは、患者を人質にした恫喝にさえ聞こえてしまう。効率化した病院経営によって自立化を促すとともに、組織・人事制度の見直しによる勤務医の処遇改善を、まず内から行うことこそ必要ではないのか。