『カメのきた道』

2010-08-13 10:05:20 | 本の話
NHKブックス平山廉著『カメのきた道』
この類の本としては出色の一冊です。
未読の方、是非お読みください!
面白いこと、請けあいです。

副題に(甲羅に秘められた2億年の生命進化)とある
ようにカメの先祖の化石を調べ、現代までの進化を
研究する学問だそうです。

実は、カメって面白そうでないし、その化石でしょ、
長いカタカナがついた馴染がない古生物は??

そこで初めの20頁程はノラなかったのですが、
すぐに面白くなり一気に読み終えてしまいました。

ベストセラーになったのかなあ、快著、名著です。

なるべく読みやすくと書かれており、なおかつ本の
流れがよくできていますから筆者の思いが伝わります。

学者としてこう考え、研究を進め、生きてきた、
それが明晰に著されているのです。
定説になっていない研究部分などでも、ご自分はこう
考えるとされている処が分かりやすい(そうかもね、
と思える)所以でしょう。

読む側からしてみれば、なぜ学問をしているのか
学者とはどんなイキモノなのか、何を面白いと思い
どういう風に研究を進めているのか
こういうことがありありと伝わるのです。
そういう人生もアリだなー。


古代に滅んだカメを研究して面白いの?
何か役に立つの?

「カメのきた道」をたどりながら、それらの答えが
明らかにされてゆくところがこの本の醍醐味です。

カメの事などちっとも知らなかったので、新しい知識、
興味をおこさせる話にひかれるうちに、学問とは、と
いうことを教えて頂けるのですね。

興味を持つ子なら中学生でも高校生でも読んでみると
将来、学者への道を導いてくれるかもしれません。


学問とは何か役に立つことをすること、と限ると
人間の進歩が止まってしまいそうです。

したがって功利的なことを表面に出して、この学問は
よいとか、よくないとか言うべきではないのでしょう。

でも、こういう役に立っています、というのが
はっきりしていて悪いことはありません。

他の学問とのかかわりについての目配りも行き届き
「なるほどこうして学問の正しさが保証されるのか」

さらには現代社会の諸問題への考察を導きます。
カメのきた道から、ヒト・地球の道を考えましょう。