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疑わしきは滅すべし?

2014-02-16 18:41:12 | 健康・病気

巷ではインフルエンザウイルスやノロウイルスなど
ウイルスによる叛乱?が見られている。
しかし感染症を引き起こすのはウイルスや細菌だけではない。
体内の正常なたんぱくが異常なたんぱくに変化し、
それが感染することで中枢神経系に蓄積し
神経機能を障害・破壊する致死的疾患がある。
この異常たんぱく(異常プリオンたんぱく)が
通常の消毒・滅菌法では感染性を完全には防げないという
大きな問題がある。

2月11日付 CNN.com

18 may have been exposed to incurable disease
18人が治療不可能な疾患に曝露

Creutzfeldtjacobdisease

By Val Willingham, CNN
 ノースカロライナ州 Winston-Salem にある Novant Health Forsyth Medical Center(ノバント・ヘルス・フォーサイス医療センター)の医師および病院関係者らは、18人の脳神経外科患者に対して、彼らが重篤で治療法のない神経疾患 Creutzfeldt-Jakob disease(CJD:クロイツフェルト・ヤコブ病)に曝露された可能性があると通告している。
 「今日、私たちは Forsyth Medical Center で過去3週間にクロイツフェルト・ヤコブ病に曝露された18人の脳神経外科患者に連絡をとっています」CNN 系列の WGHP によると、同センター長の Jeff Lindsay(ジェフ・リンジー)氏はそう述べた。
 同病院はその18人と連絡をとっている段階であると女性広報担当の Jeanne Mayer(ジェーン・メイヤー)氏は2月11日に語った。何人と連絡がとれているかは明らかにはしていない。
 National Institute of Neurological Disorders and Stroke(国立神経疾患・脳卒中研究所)によると CJD は世界中で年間100万人に一人の割合で発生するという。
 「CJD には多くのバリエーションがあることを知っておくのは重要であり、今回のケースは狂牛病とは関係ありません」と Novant Health は声明で述べている。
 1月18日、CJD の症状のある患者に手術が行われたが、後にこの患者に同疾患の陽性反応が出たことを同病院が認めた。
 手術器具を標準的な病院のやり方で消毒していたのなら、もし CJD の確診例あるいは疑診例が存在した場合に用いられる強化した消毒法を行っておくべきだった。
 その患者は「CJD もしくはもう一つ別の脳疾患に起因していた可能性がある神経症状を示していました」と Novant Health は述べている。「この患者が CJD だった可能性を疑う理由がありました。その可能性があるとして、追加の予防策が行われるべきでしたが、実際には行われませんでした」
 世界保健機構(WHO)だけでなく米国疾病対策予防センター(CDC)も、CJD 患者に使用された手術器具は廃棄されるか強力な消毒処置を行って汚染除去が行われることを推奨している。CJD は手術器具を介して感染する可能性があるが、今回の患者が本疾患に罹患する可能性はきわめて低いと病院関係者は述べている。
 CDCの見解もこの判断を裏付けている。
 1976年以降、本疾患の患者で汚染された医療器具の使用に関連している例はいないと CDC は述べている。しかし、Lindsay 氏は言い訳を行っていない。
 「Novant Health の全チームを代表してこのたびの患者様ならびにそのご家族に対してこのような不安を招いたことについて謝罪します」
 National Institutes of Health(NIH)によるとCJD はまれな致死的な変性性脳疾患であるという。急速に進行する認知症が特徴である。最初の症状として、筋の協調運動障害や記憶・思考の障害を伴って起こる人格変化、あるいは視覚障害などがある。
 CJD はプリオン(prion)と呼ばれる特殊なたんぱくによって引き起こされると考えられている。本疾患には孤発性、遺伝性、あるいは後天性の場合がある。NIH によると後天性のタイプは最もまれな型で、全症例の1%未満であるという。日常的な接触では感染することはない。
 今回の18例に対して検査が行われるかどうかを問われて CJD については迅速な検査法は存在しないと Mayer 氏は述べている。元の患者は脳手術を受け、その後のいくつかの検査で本疾患であることが判明したと彼女は語った。Mayer 氏によると、ケースによっては CJD が発症するまで数年かかることがあるという。
 同病院は脳手術で用いられるすべての手術器具に対して強化した消毒法を開始していると Novant Health は述べている。
 9月、ニューハンプシャー州とマサチューセッツ州の2つの病院から13人の患者が同様の通告を受けているが、脳神経手術を受けていた元の一人の患者が後になって CJD であることが疑われたケースである。

 この2病院は、その患者の手術に用いられた特殊な手術器具を共用していたが、本疾患に曝露した疑いが表面化するまでそれを使用し続けていたのである。

一時狂牛病で話題に上った
クロイツフェルド・ヤコブ病(CJD)は
プリオン病といわれる特異な疾病の代表である。
プリオン病については
『プリオン病および遅発性ウイルス感染症に関する
調査研究班』の HP
を参照されたい。
プリオン病は、
脳内に存在する正常型プリオンたんぱくが
分解できない異常型プリオンたんぱくに変化することで蓄積し、
それが神経細胞を破壊することによって発病する一群の
進行性・致死性脳症のことをいう。
これには原因不明の孤発性 CJD、
プリオンたんぱく遺伝子変異により発病する
遺伝性プリオン病、
そして感染原因の明確な感染性 CJD などがある。
感染性 CJD は、
牛海綿状脳症(狂牛病)と関連する変異型 CJD、
硬膜移植手術後に発症する CJD、
パプアニューギニアで発生する Kuru 病からなる。
本邦ではプリオン病の約80%は孤発性 DJD、
10%が遺伝性プリオン病、
残りが感染性 CJD(変異型 CJD が1例、残りが
硬膜移植後 CJD)となっている。
孤発性 CJD は
認知障害、視覚障害、小脳失調で発症することが多く、
そのほか、高次脳機能障害、錘体路・錐体外路症状、
ミオクローヌス(急激な筋肉の痙攣が起こる不随意運動)
などを併発し病状が急速に進行。
平均3.5ヶ月ときわめて短期間に無言無動状態となる。
脳波上周期性同期性放電が特徴的に見られるが、
神経細胞の破壊に伴って
髄液中に神経細胞特異たんぱく(neuron specific enolase〔NSE〕、
14-3-3蛋白、tau蛋白など)が検出され診断に役立つことがある。
しかし生前の確定診断は困難である。
現在様々な治療が試みられているが、
いまだ根本的治療法は確立されていない。
上記のように
プリオン病は異常型プリオンたんぱくの感染で発症するが
基本的には空気感染・飛沫感染・接触感染はしないとされている。
このため通常の社会生活において
感染が起こる可能性はまず考えられない。
問題は中枢神経系の組織や臓器を直接扱う脳神経外科手術である。
異常型プリオンに対しては、
通常の消毒・滅菌法ではその感染力を低下させることはできない。
完全な感染性の消失は焼却のみであるが、
プリオン病感染予防ガイドラインによると
60~80%の蟻酸で2時間、
100℃の3%SDS(sodium dodecyl sulfate)で3~5分、
7M の塩酸グアニジン・チオシアネートで2時間、
50%のフェノールで2時間、
などの方法が感染力を有効に低下させると言われている。
CJD であることがわかっている患者に手術を行った場合、
これらの滅菌法を行うことは絶対的に必要となるが、
CJD の患者数自体が少なく、またその患者が
脳手術を受ける可能性はきわめて低いと考えられるため、
通常の手術器具の滅菌に毎回これらの方法を行うことは
現実的ではない。
しかし、
脳神経外科手術を行う患者が CJD である可能性は
必ずしもゼロではないことから、
今後日本でも今回の米国のケースのようなことが
起こる可能性があることを忘れてはならない。

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