"All this we can do. All this we will do."
「これらすべてを私たちにはできます、すべてをやりましょう」
日本語に訳すといま一つになるが、オバマ氏の就任演説。
ずいぶん気合いが入っていますね。
ところで、前エントリーでは、カテーテルを用いて冠動脈を拡張させる
"interventional cardiology" が心筋梗塞や冠動脈死を予防する
万能の治療とはなり得ないという話題を挙げた。
やはり日常の健康管理が最も重要ということなのだろう。
従来から言われている危険因子に加え、炎症、脂質代謝、
ストレス、効率のよい運動などが新しいキーワードとして
取り上げられている。
もちろんこれらは脳卒中予防にも有効と考えられるのだが、
その新しい概念についての記事。
前エントリー引用記事の続編である。
1月12日付 New York Times 電子版
New Thinking on How to Protect the Heart 心臓をどのように守るかについての新しい概念
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侵襲的治療(手術、カテーテル治療)が心筋梗塞あるいは突然の心臓死を避けるための最善の方法ではないかもしれないという先週のコラムを信じた人は、次に心臓にそれと同等かあるいはより有効な手段を手に入れなければならない。
これまでよく耳にしてきたものに多くの手立てがある:禁煙、コレステロールや血圧の管理、日ごろの運動、健康的な体重の維持…。しかし、最近のいくつかの新たな提言には驚かされるかもしれない。
低脂肪の食物を摂取することや積極的に運動することが悪いというわけではない。それらは当時の最善の有効な証拠に基づいていたわけだが、今でも大変有用である。
しかし、ほとんどの心臓発作の生物化学的原因が研究者たちによって解明されつつある現在、それらの予防についての忠告も変わりつつある。
食事と運動についての新たな提言では、むしろ厳しさが緩められる傾向にあることは、皆さんにはうれしいことかもしれない。
勧められる食事はおいしく、用意しやすく、比較的廉価なものであり、運動の恩恵を受けるために毎日一時間も汗をかく必要もないのだ。
これまで確立されている心臓病の危険因子は変わるところはない。
高コレステロール、高血圧、喫煙、糖尿病、内臓脂肪型肥満、そして運動不足。
しかし、それらに続いて新たな因子が現れてきた。
それは、心臓発作の原因として、動脈に損傷を及ぼす血中コレステロールの高値などよりさらに重要である可能性がある。
その因子は炎症の血中マーカーの C-reactive protein (CRP) である。
これは血液凝固因子とともに、心臓への血流を阻害することになる血栓の隠された促進要因として急速に注目されるようになった。
しかし、たとえすでに心臓に問題を生じた患者であっても、実際に CRP が検査される例はまれである。
正常コレステロール値の人であっても、もし CRP が上昇していたら心筋梗塞のリスクは同様である、と、Cardiovascular Prevention Institute of South Florida の医長である Michael Ozner 氏は言う。
コレステロール測定と同時に高感度 CRP も測定すべきであると、彼は考えている。
Diet Revisited 再考される食事
食事についての新たな考えは、低脂肪食を摂るというもの以前の、むしろ古い考え方に基づいている。
1958 年に始まり、1970 年に最初に発表された Seven countries Study において、ミネソタ大学の Ancel Keys 医師らは、野菜、穀物、果物、豆、魚などが食事の中心となっている地中海やアジアでは心臓病が少ないことを指摘した。
しかし、フィンランドや米国など、食卓が赤身の肉、チーズ、その他、飽和脂肪酸の多い食事で占められることの多い国々では、心臓病や心臓死が多かった。
この知見は食餌中の脂肪、特に飽和脂肪酸(室温で硬くなる)を減らし、これらの有害な脂肪酸を植物油のような不飽和脂肪酸に置き換えるべしというよく知られている指導につながった。
当時は見過ごされていたが、今少しずつ明らかとされているのは、心臓に良い地中海の食事は実際には脂肪分が低いわけではなく、主たる脂肪源―ナッツ、種、あるいはある種の野菜に加え、オリーブ・オイル、脂の多い魚―がコレステロールの組成を改善し、炎症を緩和させることが心臓病の予防に役立っているということである。
Virtues Confirmed 確かめられた効力
伝統的な地中海料理の有効性が確認されたのは 1999 年になってからだった。
Lyon Diet Heart Study は、地中海スタイルの食事と、アメリカ心臓病協会が初回の心臓病から回復した患者向けに推奨した食事とで、その影響について比較した。
この研究では、地中海料理が、心臓協会の食事に比較して、心臓病の再発や心臓死の頻度の減少が 50 - 70 %上回っていたことがわかった。
その後のいくつかの研究でも地中海料理の有効性が確認されている。
たとえば、ギリシャにおける男女 3,000 人以上を対象とした、アテネ大学 Christina Chrysohoou 医師による 2004 年の報告では、地中海スタイルの食事を守った場合、CRP、白血球数、フィブリノーゲンを含む、炎症や凝固についての6つのマーカーを改善させたという。
同年、オランダの Wageningen University の栄養学者 Kim T B Knoops 氏らは、 70 才 から 90 才の男女のうち地中海料理と禁煙などの他の健康的習慣の両者に従った人では、心臓病や他の原因での死亡率が 50 %低かったという研究結果を報告した。
「地中海ダイエットは続けることは可能なものです。この料理はおいしく、食材はどの食料品店でも見つかるものですから」」と、『The Miami Mediterranean Diet』と『The Great American Heart Hoax』(BenBella、2008 年)の著者、Ozner 医師は言う。
「食事のほとんどはみなさん自分自身で作らなければなりません。食事から多くの加工食品を除くことができれば、炎症が徐々におさまってきます。私の患者では、順守率―この食事を採り入れ継続する人の割合―は 90 %以上です」と Ozner 医師は付け加えた。
炎症のマーカーである CRP を低下させる食物には、サケ、マグロ、サバなどの冷水魚、亜麻の種、クルミ、菜種油やそれを素に作られたマーガリンなどがある。
魚油カプセルも有効である。
Ozner 医師は菜種油での調理や、より高価で香りのよいオリーブ油をサラダに使うことを勧めている。
地中海料理の別の側面として、野菜、果実、赤ワイン(あるいはパープル・グレープフルーツジュース)も同じように有用である。
それらが持つ抗酸化作用は動脈の損傷を促進する LDL コレステロールの生成を阻止する役割がある。
Other Steps その他の方法
歯周病と心臓病のリスクを関連づける研究が最近みられるが、おそらくそれは、歯ぐきの疾患が軽度の慢性炎症を惹起するためと考えられる。
そのため、規則正しい定期的な清浄などの良好な歯科衛生は、歯だけでなく心臓の保護にも役立つ。
慢性のストレスを減じることも重要な要因である。
27,000 人以上を対象にストレスの影響を調査した Interheart study では、ストレスが心臓発作のリスクを倍以上に高めたことがわかった。
"The No Bull Book on Heart Disease"(Sterling, 2009)の著者で、シカゴの心臓内科医 Joel Okner 氏と心臓心理学者の Jeremy Clorfene 氏は、十分な睡眠をとることがストレスに対処する能力の改善につながると指摘している。
静かな場所で、目を閉じ、筋肉をゆるめ、リズミカルな深呼吸をするという筋弛緩反応を毎日、1、2回実践することは温度の高まった血液を冷やすのに役立つ。
Ozner 医師が推奨する他の方法には、瞑想、祈祷、ヨガ、自己催眠、笑い、昼寝、犬猫を飼うこと、趣味を持つこと、習慣的に運動することなどが含まれる。
同氏は、1日 15 分間の運動を週5日行うと心臓死のリスクが 46 %減少したと 1996 年の研究で報告した。
きわめて短い時間の運動でも有用である可能性がある。
最新の American Journal of Clinical Nutrition に発表されたイギリスの研究で、短時間の―それがわずか3分間でも―きびきびとしたウォーキングが積み重なって一日 30 分となれば、連続した 30 分間の運動と同程度有効に心臓のリスクのいくつかの指標を改善したことがわかった。
それはそうだけど…(山田太一風)
毎日地中海料理というのはどうも…
別に地中海料理ではなくても、和食で十分ではないかと思うのだが、
和食の難点は塩分摂取量が高くなることだろう。
塩分を半減した和食では魅力も半減?
ならば、ワイン片手に青魚の刺身、クルミを混ぜた胡麻だれで
しゃぶしゃぶ…(思わず涎)
なにはともあれ、
十分な睡眠、リラクセイション、効率の良い運動!
“これならすべて私たちはできる、私たちは実行しよう!”
(って、仕事はどうすんの?)