MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

面子の国

2008-04-28 20:15:13 | 国際・政治

あれほど日本国中を騒がせた農薬入りギョーザ、

あの事件は一体どうなったのだろう?

日本政府は原因究明の努力を続けているのだろうか?

さて…

日本でも一時問題となったのでご承知の方も多いだろうが、

米国では昨年11月から今年の2月にかけて

中国からの原材料をもとに製造された

ヘパリンが原因と見られるアレルギー反応で数十人の死者が

出るという問題が発生した。

その原因として、中国からの原材料に混入していた不純物が

疑わしいとされてきた。

この件をめぐって、米国、中国間で議論のせめぎ合いが

続いている。

ヘパリンは、血液の凝固を防ぐ目的で用いられ、

血液透析や血栓症治療には欠かせない薬剤である。

この不純物混入ヘパリンについては、本年3月に問題となった。

常州SPLという中国にある工場から原材料を輸入し、

米国の Baxter International 社によって製品化された製剤が

リコールの対象とされた。

同じ原材料を使った製剤は日本にも出回っており、回収が行われた。

幸い日本では、これに関連する死亡例は報告されておらず、

目下のところ対岸の火災視的立場をとっている。

しかし、ヘパリンは医療に必須の薬剤であることから、

事は重大であり、米国と協調して日本からも積極的に

中国に働きかけるべき、と思うのだが…

4月22日付 New York Times 紙に、この件に関する

米国と中国の姿勢が載っていたので紹介する。

http://s03.megalodon.jp/2008-0427-2154-32/www.nytimes.com/2008/04/22/health/policy/22fda.html?pagewanted=1&sq=heparin&st=nyt&scp=2

(4月22日付 New York Times 紙、ウェブ魚拓)

『ヘパリンに混入した不純物と、

81例を死亡に至らしめた重篤な反応との間に

明確な関連を見い出したと、連邦当局は月曜日に発表した。

この不純物が死亡に関連しているとの主張に

中国政府は反論、

問題のヘパリン・バイアルを製造していた米国の工場に対して

中国の査察官による査察を許可するよう要求した。

また、今後、米国により中国企業の査察を行おうとするなら

その合意は相互的であるべきだと述べた。』

つまり、不純物の混入は中国で起こったという確証はない、

むしろ米国内で混入した可能性が高いのだから

こちらから米国の工場を査察させろ、との主張である。

『中国産』農薬入りギョーザの時と全く同じ言い分だ。

中国の開き直り、恐るべし…

『米国の食品医薬品局(FDA)は、不純物混入ヘパリンが

12の中国企業により、11ヶ国に供給されていたことを

明らかにした。

その11ヶ国は、オーストラリア、カナダ、中国、デンマーク、

フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ニュージーランド、

米国、そして日本である。』

確かに、これら11ヶ国の中で死亡例が報告されたのは

米国だけだった。

中国側の先の主張の根拠はそこにある。

ただし、ドイツでも、このヘパリンを使用した透析患者に

異常反応が見られたと報告されているらしい。

『一方、FDAの言い分では、症例が米国に集中した理由として

海外の同様の機関に比べ副作用をより厳密にモニターしている点や

米国内ではヘパリンを大量に急速静注するケースが

多い点を挙げている。

中国側はさらに、自国で製造されたヘパリンに

不純物の混入があったことは認めるが、

死亡等重大な有害事象を生じた原因がヘパリンあるいは

その混入物質であることを示す確固たる証拠はない、

と主張している。

この論争は中国製品の安全性について、両国間で

高まりつつある緊張の表れである。

中国はこれまで、毒入りハミガキ、鉛塗料の玩具、

毒入りペットフード、汚染された魚、そして今回の

不純物混入薬剤と、

続けざまに問題となる製品を輸出してきている。

そのような経過から、FDAは中国国内の工場に対する査察を

行ってゆきたい意向だ。

これに対して、今のところ中国政府は査察を許可する

姿勢は示していない。』

中国ではオリンピック開催を間近に控え、

(開催を妬む?)(日本を含め?)欧米諸国から

チベットをはじめとする様々な問題でいちゃもんをつけられ、

種々の『いじめ』を受けているとの被害者意識が

強まっているという。(中国政府の誘導によるのだろうが)

農薬入りギョーザでは幸い死者は出なかった。

一方、この不純物入りヘパリンでは、FDAによると、

81人もの犠牲者が出たという。

(Baxter International 社の主張では、ヘパリンに関連した

可能性があるのはわずかに5例だけだということだが)

いずれにしろ、これだけの数の死亡に関わっている可能性が

あるならば、ここはもはや面子にこだわっている場合ではないだろう。

原因の解明に早急に全力で取り組んでもらいたいと思う。

そうは言うものの、中国は “面子の国” といわれるくらい、

中国人にとって、“面子” は命の次に大切とされるもの、

他人の言いなりになることだけは

絶対に避けたいところだろう(ならば自発的にやれよっ!)。

面の皮の厚さで “面子” を最優先しようとする神経は

私たち日本人には、理解の遠く及ばないところかもしれない。

(おみそれしましたっ!)

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それを言っちゃあ…

2008-04-20 22:08:33 | 国際・政治

4月9日、アメリカCNNテレビで放送された

"The Situation Room" で、キャスターの

Jack Cafferty 氏は次のように述べた。

「我々は鉛入りの塗料を使った "junk" (がらくた)や

毒入りペットフードを輸入し、

労働者に月1ドル払えばいい場所(中国)へ仕事を持ち出して、

ウォルマートで買う製品を作らせている。

我々の中国との関係は確かに変化してきているが、

この50年来、彼らはずっと

"goons and thugs" (ならずもので悪党)なのだと思う。」

MrK としては、ちょっとすっき…あ、いえ、違います。

このコメントに対して、中国系米国人を中心に米国内で

CNNの謝罪と Cafferty 氏の解雇を求める抗議が

わき起こっている。

http://s03.megalodon.jp/2008-0420-2128-15/www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/2008/04/19/AR2008041901508.html

(4月20日付 Washington Post 紙、ウェブ魚拓)

抗議のプラカードには "CNN: Chinese Negative News" とか。

(ちょっとうける…〔柳原可奈子風←古いよっ〕)

同氏とCNNは、この発言は中国政府に対するもので、

中国人民に対するものではないことを強調、

誤解を与えた人々に対して謝罪した。

これに対して、中国外務省の

あの恐そうなおばさん(失礼)、姜瑜(Jiang Yu)報道官は

「CNNの声明は誠意に欠けており、

中国政府への攻撃を、

政府と人民との間を分断する方向へと

すりかえようとするものだ。」と述べた。

チベットの人権問題や騒乱で、

中国への批判が世界的に報道されているが、

オリンピックを間近に控え中国指導者達は

国家を誹謗したとして西側メディアを糾弾してゆく構えだ。

オリンピックでメディア規制が行われるのではないかとの

懸念が生じつつある。

(以上が記事要約)

チベット問題については、中国政府の報道規制もあって

依然、真相は藪の中だ。

しかし、これまで中国政府が、『漢民族移住奨励策』や

『文化抑圧策(文化的虐殺)』により、

チベット人の心を踏みにじり、

核実験やウランを始めとする地下資源の乱掘などで

チベットの地に環境汚染を広げてきたことは

確かである。

チベット人は、

その顔立ちが漢民族や朝鮮民族より日本人に似ていると

言われる(偉大なるダライ・ラマ14世は

うちの近所のおっちゃんに似ている…)。

チベットの人々の人権や文化を守るため、

日本人として何かをしなければと思うのである。

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弁当を温めないで

2008-04-18 22:30:59 | 食・レシピ

日頃から、健康に十分留意しているとはいえない MrK だが、

一つだけこだわり続けていることがある。

コンビニのレジで『お弁当、温めますか~?』と聞かれれば、

迷わず、『結構です』と答えること。

冷たいままで食べるか、

自宅であれば、別の容器に移してチンする。

弁当容器ごと電子レンジにかけて果たして大丈夫なのか、

という不安があるからだ。

しかし、幸い、コンビニ弁当やカップ麺の容器の

材料はポリスチレンが中心で安全ということになっている。

一方、計量カップ、哺乳瓶、缶製品の内張り、

給食用容器などに用いられているプラスチック材に使われる

エポキシ樹脂やポリカーボネイトには

化学物質のビスフェノールA(bisphenol A、BPA)

が含まれている。

これは熱や洗剤により溶出し体内に入る可能性があるという。

BPAは女性ホルモン(エストロゲン)類似物質として作用し、

生殖機能障害やがんを引き起こすと考えられている。

しかし、これまでの調査では、通常の食事で体内に入る

BPAはごく微量であり健康上の問題はないとする報告が

ほとんどであった。

ところが、今回の Washington Post 紙の記事である。

U.S. Cites Fear on Chemical In Plastics

(2008年4月16日)

連邦健康機関は昨日初めて哺乳瓶やCDなど

数多くの日常品に認められる化学物質が

がんやその他の深刻な異常を来たすかもしれないという

懸念を表明した。

国家毒性プログラム(National Toxicology Program)

によるこのレポートは、

6歳以上の93%の人で

尿に検出されるという化学物質、BPAに対する

これまでの政府の立場の転換を示すものだ。

昨年、外部の科学者を採用した別の専門委員会は

BPAの健康上のリスクを最小評価したが、

議会の調査によって、

この解析のために採用された会社もまた

化学工業界に関わっていたことが発覚。

これにより、その見解は厳しい批判を受けることとなった。

1950年代以来、BPAはプラスチック合成に用いられたが、

実験動物において、乳がん、前立腺がん、

女児における思春期早発、および行動異常との関連が

示唆されている。

レポートでは、BPAの健康に及ぼす影響についてさらなる

調査研究を求めている。

粉ミルクを飲む乳児は最もこの化学物質の被害を

こうむりやすいという。なぜなら、哺乳瓶だけでなく、

粉ミルクの缶の内張りに用いられる樹脂にも

BPAが含まれるからである。

非営利の Environmental Working Group の

上級科学者である Anila Jacob 氏は

「乳児達は二重に曝露されている」という。

カリフォルニア州やニュージャージー州などの

いくつかの州ではBPAの禁止を検討中とのことだ。

(記事要約終わり)

こうして見ると、日本の少子化の進行と

プラスチック製品の普及には関連があるのかも知れない。

日本人男性の精子数がこの20年間で激減して

いるのは明らかにおかしい。

それから、関係ないけど、

一食分でも、コンビニで済ませ、

食べ終わって片付ける時に気づく

残された膨大なプラスチック類のゴミの量には

あらためて驚かされる。

これまでの安全神話が、

化学工業界の自己調査によって誘導されていた可能性が

高かった、やっぱり安全じゃないかもしれない、という今回の顛末。

こりゃ、やっぱり、コンビニ弁当の加熱拒否はこれからも

続けた方がよさそうだ(それよりちゃんと作ってもらえよっ)。

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二人の薩摩おごじょ

2008-04-14 23:51:57 | 芸能ネタ

NHK大河ドラマ『篤姫』、なかなか面白い。

これまでにも幕末、明治維新が舞台となった

大河ドラマ数多くあれど、最後まで見続けたものは

なかった。『篤姫』は最後まで見られるかも…

篤姫は幕末の動乱期に島津分家から本家の養女となり

徳川13代将軍家定に嫁ぐ。

わずか1年9ヶ月の結婚生活で家定は急死。

夫の死後、落飾。『天璋院』と号し、

14代将軍家茂の養母として大奥に残り

江戸城の無血開城と徳川家の救済に尽力した。

ドラマ全体にただよう明るい雰囲気は気になるところだが、

故郷から遠く離れた江戸に一人赴き、

出自の低さをもろともせず、

強い精神力で、幕末、維新を生き抜いた姿には感動がある。

薩摩のシーンで何度も画面に登場する桜島には、

やや不自然な感が否めないが、

桜島が薩摩人の心の拠り所、原動力であることは

確かだろう。

桜島遠泳をとりあげた映画『チェスト!』も

いよいよ4月19日封切とか。

今ちょっとした鹿児島ブーム??

Photo

ところで鹿児島出身の芸能人といえば、

稲森いずみや小西真奈美など、

現在活躍中の女優もいるのだが、

『篤姫』を見るたびに、なぜだかいにしえの

二人の女性が心に浮かんでくるのだ。

一人目は、ご存知?『早乙女愛』である。

映画『愛と誠』(1974年)で、西城秀樹の相手役として

4万人の応募者の中から選ばれ、

役名と同じ『早乙女愛』の芸名でデビュー。

当時、『篤姫』にも出てくる肝付尚五郎(後の小松帯刀)の

肝付家のかつての所領であった肝属(きもつき)郡にある

高山(こうざん)高校の一年生だった。

愛らしい顔と抜群のプロポーションの美少女であったが、

鹿児島弁のイントネーションが出て、撮影に苦労したという

エピソードを語っていた。

その後、何本かの映画やドラマに出演したが、

芸名が災いしたか、そのイメージからの脱皮に苦しみ

女優としてはパッとしなかった。

1983年には日活ロマンポルノ『女猫』に出演。

ここ数年はテレビ、映画でその姿を見ることはない。

二人目は『桜たまこ』だ。

1976年デビューの歌手。

たしか、2、3曲はリリースしたはずである。

しかし、桜たまこといえば、何といっても

1977年の『東京娘』だろう。

02

ドドンパ・リズムで、いきなり、

『お・じ・さんっ♪ どこまでも連れてぇって~今~♪』

などと、意味深な歌詞をミョーに明るく歌っていた。

『援交』という言葉など存在しない時代であり、

素直な気持ちで聞いていたなあ…(幼いな)

抜群の歌唱力、垢抜けしないルックス、明るい笑顔、

これらがなんともミスマッチで、好感が持てた(謎)。

ちょっと笑ってしまうこの芸名については、自身が

「桜島出身の桜たまこですっ!桜は桜島から

いただきました。」とか言っていたように思う。

結局、その後、ヒット曲には恵まれず、いつしか

芸能界から消えた。

主婦として子育てに専念との情報も。

『東京娘』の原曲は探し出せなかったが、

takimari さんが再現しておられるのでお聴きください。

http://players.music-eclub.com/?action=user_song_detail&song_id=87351

人気の点でずいぶん違いはあったが、両人とも

鹿児島の片田舎(失礼っ)から出てきて、

一躍スターダムにのし上がり、

静かに表舞台から去っていった。

しかしながら、根底には

夢を追い続ける気持ちの強さがあるように、

当時は感じられたものだった(桜島パワー?)。

そこが『篤姫』と重なり、

今、唐突にこの二人が MrK の心に浮かんでくる理由は

そこらあたりにあるのかも知れない(違うだろっ!)。

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脳内バランス

2008-04-12 12:58:37 | 健康・病気

前頭側頭型認知症(Frontotemporal dementia, FTD)は

前頭葉、または側頭葉に顕著な萎縮を見る認知症で

アルツハイマー型認知症(AD)が主として海馬を中心とした

脳後半部の萎縮が特徴的であるのと対照的である。

臨床症状も ADでは早期から記憶障害が目立つのに対し、

FTDでは人格変化、行動異常、判断・計画障害などが

主症状となる点が異なっている。

そんな脳の病気で、特異な才能の傑出が見られるらしい。

4月8日付ニューヨークタイムズ紙の記事である。

若干長くなるが興味深い内容なのでほぼ全文紹介する。

『創造力を奔出させた病気』

"A Disease That Allowed Torrents of Creativity"

http://s03.megalodon.jp/2008-0411-2347-16/www.nytimes.com/2008/04/08/health/08brai.html?_r=1&st=cse&sq=Anne+Adams&scp=1&oref=slogin
(ウェブ魚拓、New York Times 4/8より)

科学者から芸術家に転向したカナダ人の Anne Adams 博士は

昨年まれな脳疾患で死去したが、彼女の生涯は

実に興味深い。

Anne_adams

長年、数学、化学、生物学を研鑽してきたAnne 博士は、

自動車事故で重傷を負った息子の世話をするために、

1986年、教員と研究員の職を辞した。

その後、息子は奇跡的に回復したが、これを機に

Adams 博士は芸術の道に進むことを決断したという。

1994年、Adams 博士は作曲家 Maurice Ravel の

音楽に陶酔するようになったという。

53歳の時、彼女は "Unraveling Bolero" なる作品を

描いたが、これは有名な Ravel の楽曲を

視覚形態に転換したものである。

彼女は知らなかったらしいが、Ravel もまた

Adams 博士と同じ症状の脳疾患を患っていたと、

カリフォルニア大学、Memory and Aging Center 所長で

神経学者の Bruce Miller 博士は言う。

Ravel は "Bolero" を1928年、53歳の時に作曲したが、

その時、すでに楽譜や手紙にスペルミスをするなど

疾患の症候が現れ始めていた。

"Bolero" は二つの主旋律を交互に8回、340小節に渡って

繰り返し、その間に音量や楽器の重なりを徐々に増してゆく。

と同時に、楽譜は交互に表われるスタッカート奏法の

ベースラインを整然と続ける。

この作品は326小節目まで変調なく続き、そこから一気に

加速して、崩れ落ちるようなフィナーレに至るのである。

Adams 博士はこの繰り返しのテーマにも興味を持ち、

"Bolero" のそれぞれの小節を長方形で表す図を

描いた。

"Unraveling Bolero" ↓

Bolero

それぞれは整然と並べられ、ジグザグに

波打った図式が挿入されている。

図の高さは音量を、形状は音質を、また色調は音の高さを

表している。

色調は326小節目の突然の変調まではまちまちだが、

変調部分では終局を予告するオレンジとピンクの図形が

際立つように描かれている。

"Bolero" にとりかかっていた Ravel と

"Unrabeling Bolero" 作成時の Adams 博士は、

ともにFTDというまれな疾患の

初期段階にあったと Miller 博士は言う。

この疾患が前頭葉と脳の後方部分との連結を変化させ、

結果的に創造性の奔出を生じていたと考えられる。

Miller 博士は言う。

「我々はこれまで認知症が脳を全体的に障害すると考えてきた。

しかしそれは誤りである。特異的に主要な回路が障害されると

それにより、他の領域への抑制が解除される可能性があることが

わかってきた。言い換えると、もし脳のある部位が障害されると、

別の部分がより増強され得るということである。」

このようにFTD患者の一部では、前頭葉の機能が低下し、

後方の領域が優位になることで芸術的能力が高まるのだ。

FTDはアルツハイマー型痴呆としばしば誤診される

疾患群の一つに挙げられる。

しかし、FTDの経過と症状はアルツハイマー型痴呆と異なっている。

最もよく見られる型では、患者は徐々に人格変化をきたす。

無感情で、だらしなくなり、20ポンド(約9kg)も体重が

増加する。

公前で3歳児のようなふるまいをし、大声で恥ずかしい

質問をする。常に、どこも悪くないと主張する。

FTDの他の2型は言語能の障害を示す。

その一つでは、患者は

言葉を探すのが困難となる(語彙力の低下)。

誰かが患者に「ブロッコリーを回して」と言うと、

彼らは「ブロッコリーって何?」と答える。

もう一つはPPA型、すなわち

primary progressive aphasia (原発性進行性失語症)

であり、話し言葉のネットワークの障害である。

患者は会話能力を喪失する。

以上3つの型は同一の病理学的変化を示す。

いずれも治療法はなく、急速に進行する可能性があるが

緩徐な経過をたどる場合もある。

Adams 博士と Ravel はともにPPA型であった、

と Miller 博士は言う。

1997年から、10年後の彼女の死まで、

定期的に脳検査を受けたが、これにより

医師たちは脳変化について多くの見識を得ることとなった。

夫によれば、

「2000年に、彼女は突然、言葉を発するのが困難と

なり始めた。彼女には数学の能力があったが、

もはや一桁の足し算もできなくなっていた。

彼女は自分に何が起こっていたか気づいていた。

失意のあまり地団駄を踏んだものだった。」

しかしその時すでに Adams 博士の脳回路は

再構成されていた。

彼女の左前頭葉の言語領は萎縮していたが、

右脳の後方の領域、すなわち、視覚や空間認知に

関係する箇所はむしろ厚くなっていたように

見えたのである。

芸術家が右脳の後方にダメージを受けると創造性を失うが、

Adams 博士の場合は、その逆を示している。

これらのデータから、芸術家においては右脳の後方の

優位性が示唆される。

健康な脳では、これらの領域は色覚、音覚、触覚、

空間認知など種々の知覚の統合をつかさどっている。

しかし、これらの領域は優位にある前頭葉皮質によって

抑制されているという。

この抑制が解除される時、創造力が奔出する。

Miller 博士は、これまで、FTD患者が、病状の進行につれ

配景、描画、ピアノ演奏やその他の創造的な芸術の

能力が上がることを見てきたという。

Adams 博士は、もはや筆を持つことが

できなくなった2004年まで絵を描き続けた。

彼女の作品は以下の Web サイトでご覧いただける。

http://72.9.98.98/Art/Patient%20Art/pat_art_adamsa.html

以上が記事の内容だ。

音楽家などの芸術家が、創作に行き詰まった時、

ドラッグに依存する理由がわかる気がする。

また、健常人においては、

脳の各部位のバランスを保つことで

人間を凡人たらしめているのかも?

これは社会の維持には必要なメカニズムかもしれない。

しかし、こうして見ると、FTDに限らず、

脳挫傷、脳卒中や脳腫瘍で前頭葉が障害され、

その後遺症で落ち込んでいる人たちに、

非凡な才能が潜在している可能性がある。

それを見い出してあげることも

リハビリテーションの重要な役目と言えるかもしれない。

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