MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

日本は格好のターゲット

2010-09-26 22:53:23 | 国際・政治

今回、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で
拘束した船長釈放の(恐らく政治的な)決断には
与野党から批判の声が上がっている。
確かに今後の同海域の領有権問題や
中国との外交に大きな影響を及ぼしかねない。
また識者の間では、他国からの世間体を
気にしている向きもある。
しかしながら、今の中国の反応は
相当異常であるというのが米国の見方のようなのだ。

9月25日付 newsweek.com より

China Butts Heads With Japan 中国、日本にいちゃもん

Senkakuislands

by Andrew Bast & Melinda Liu
 東アジアはかつてない経済成長に沸き返っているのかもしれないが、古くからの領土問題は悪化しつづけている。それを印象付ける最近のできごとが先週国連で見られた。中国の温家宝首相は、もし日本が中国漁船の船長を“迅速かつ無条件に”釈放しなければ日本は不測の“事態”を招くことになると暗に警告した。この船長と乗組員たちは、争点となっている無人の列島の沖合で日本の巡視艇に船を衝突させたとのことで9月7日に拘束されているのだ。
 周囲を大いに安堵させたことに、金曜日、日本はこの中国人船長を釈放すると発表した。しかし、東シナ海のこのトラブルは、中国で後継が確実視されている習近平氏を頭とする新しい世代の最高指導者らが2012年に権力を握るようになれば目にすることになるであろう事態の一端に過ぎない。最近の決着は従来のパターンに従っているが、これは次期グループが自身の権威を主張する中、現政権が旧来からの伝統を固めようとしているのである。両グループとも中国国民の国家主義的声に応えなければならないのだ。日本は本土にまつわる辛辣な歴史ゆえに最も軟弱な(そして安全な)ターゲットとなりがちだ。しかし、こうした移行が進めば、中国政府は通貨の切り上げや領土問題など、様々な問題で国際的な圧力にたじろぐことになると予測される。問題は中国政府がどこまで強気な態度をとるかということになる。

タイトルを『いちゃもんをつける』なんて
訳しちゃいけないのかもしれないが…
つまりは中国の政権内で強硬路線をとる
次期世代の最高指導者たちの
横暴が始まりつつあるという見方である。
というわけで、今回の問題を粛々と?引っ張っていても
そういう輩を相手にしていたのでは解決の余地は
いつまでも見出し得なかっただろう。
第3国的には中国の対応を異常と見ているのである。
船長釈放の判断は間違っていなかったにしても、
今回の決定が政治的判断であることを明確にし、
その上で尖閣諸島の領有権を厳格に
主張すべきだったのではないだろうか?

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『揺さぶられ』の証拠

2010-09-25 16:28:03 | 科学

猛暑から一転して涼しい秋に突入の
今日この頃だが、
皆様には風邪などお召しにならぬよう。

さて、本年5月9日付の当ブログのエントリー
景気低迷で児童虐待『揺さぶられっ子症候群』が増加、
という話題を取り上げた。
子供に対して激しく身体を揺さぶるという暴力によって
まだ十分に首の据わっていない乳児では
脳や神経に高度の損傷を来たし得る。
子供に対して殴る・叩くなど直接的暴力を忌避する
カトリック圏では揺さぶりによる死亡例が驚くほど多い。
虐待が表面化していないケースも多く、
死亡児の解剖所見が加害事実の確定的証拠となり、
それにより加害者が逮捕されてきたという経緯がある。
しかし、その医学的根拠が揺らいでいるというお話。
New York Times の Op-Ed(コラム)から紹介する。

9月20日付 New York Times 電子版

Anatomyof a Misdiagnosis 誤診の分析
By DEBORAH TUERKHEIMER

Shakenbabytriad

 養育中の赤ちゃんがぐったりしたと訴えてある女性が911通報する。救急隊員は迅速に対応するが、その赤ちゃんはその夜死亡する。外表上の損傷はなく、虐待の証拠もなかったが、陪審はその女性が赤ちゃんを揺さぶって死に至らしめたとして有罪を宣告する…。
 米国では年間1,000人以上の赤ちゃんが揺さぶられっ子症候群の診断を受けている。さらに、1990年代前半以降、母親、父親、ベビーシッターなど何百人もの人間が揺さぶりによる殺人の嫌疑で収監されてきた。この診断名はきわめて国民の意識に根付いているので、今年、上院は4月の第3週を“National Shaken Baby Syndrome Awareness Week(米国揺さぶられっ子症候群啓蒙週間)”とすることを満場一致で宣言した。
 しかし、専門家たちは揺さぶられっ子症候群の科学的根拠に疑問を呈している。告発され殺人で有罪となった者のかなり多くの人たちに無実の可能性があると見られる。
 過去30年間、医師たちは、網膜出血、脳周囲の出血、脳腫脹のいわゆる “3徴候” として知られる3つの主要な徴候を根拠としてこの症候群を診断してきた。これら3つの徴候(時にそのうちの一つまたは二つ)が存在すれば、合理的な疑いがあったとしても直前に赤ちゃんの世話をしていた人物が、赤ちゃんの脳を致死的に損傷するほど激しく揺さぶったことが立証されると長く考えられてきた。
 しかし、揺さぶられっ子症候群の診断を裏付けると言われている遺体の厳密な検査に方法論的な欠点があることを露呈した。これまで揺さぶりによると考えられていた徴候が他の手段によっても生ずる可能性があることが現在、科学者たちに受け入れられるようになっている。実際、MRIを用いた小児の脳の研究によって、この3徴候が虐待による受傷以外の小児にも時に認められることが明らかになっている。脳の出血には、転落、感染、鎌状赤血球貧血などの疾患、あるいは出産時外傷など多くの原因が考えられている。
 さらに重要なことに、3徴候のある小児例の多くで、受傷時刻と患児が意識障害を起こした時刻との間に数時間から数日に及ぶまでのズレが存在し得ることが医師たちによって確認されている。このことは、赤ちゃんの直近の養育者に目を向ければ責任者を特定することが可能であるという考え方に矛盾するものである。
 昨年、米国小児学会は、揺さぶられっ子症候群の診断名を用いることをやめ、代わりに “abusive head trauma(虐待性頭部外傷)” を用いることを推奨した。この用語は揺さぶりだけが損傷を生じ得るのではないことを示唆するものだ。
 この診断に対する新しい理解はようやく法曹界にも浸透し始めたところだ。2008年、ウィスコンシンの上訴裁判所は“主流となる医学的見解”によって揺さぶられっ子症候群の医学的根拠が崩されたことを認めた。同法廷は Audrey Edmunds に対する新たな裁判を容認した。彼女は3人の子の母親であり、世話をしていた子供を殺害したとして刑務所で10年を過ごしていた。検察は後にすべての容疑を免訴した。
 しかしながら、困ったことに Edmund さんのケースはまれな例外といえる。ほとんどの揺さぶられっ子の有罪判決はいまだ再審査されていない。また新しい事例についてもいまだ時代遅れの科学を基に訴追されているのである。
 科学的な合意事項が変化しているにもかかわらず、揺さぶられっ子症候群の診断の正当性についての議論はいまだ続いている。揺さぶりが3徴候を生ずるに十分なエネルギーを発生し得ないことの証拠、あるいは揺さぶりがあったとしても子供の頸部や脊髄への損傷を来たすことなく3徴候を生じ得ないことの証拠として、子供の解剖をモデルにしたダミーを用いた研究を示す科学者がいる。しかし一方でこれらの研究の有効性を疑い、(必ずしも3徴候を必要とはしないが)揺さぶりだけでも3徴候を起こし得るという考えを支持する者もいる。
 求められるのは意見の異なる未解決の領域を解明するための揺さぶられっ子症候群の包括的な研究である。法医学の科学的根拠に関する包括的報告書を昨年発表した National Academy of Sciences(全米科学アカデミー)こそこのような研究に手をつける理想的な機関であろう。
 しかしながら、当面司法の問題は残されたままである。カナダ・オンタリオ州では3徴候の根底にある科学について深い懸念があると捜査当局が結論づけており、今同州では揺さぶられっ子症候群に基づくすべての有罪判決を見直している。同様の審理が米国全体のレベルで行われるべきである。
 数十年間、揺さぶられっ子症候群は実質上、殺人の医学的診断名となってきた。しかしゆくゆくは、検察、判事、および陪審はより懐疑的な態度で臨むべきである。3徴候の存在だけでは子供が致死的に揺さぶられたということを合理的疑いを越えて証明できないからである。
Deborah Tuerkneimer 氏は現在 DePau University の教授。元マンハッタン地方検事補である。

揺さぶられっ子症候群による死亡例は
日本ではきわめて報告が少ない。
本邦では直接的な暴力による損傷の方が
多いのかもしれないが、
顕在化していない例が多く存在している
可能性がある。
子供への虐待は巧妙に隠蔽されているため
見逃されてしまうことも懸念される。
一方で、誤った医学的根拠が重視され過ぎる結果、
冤罪を招くことがあるとすれば、
それはそれでまた憂慮されるべき問題なのである。
(よもや解剖所見を改ざんする検事はいないだろうが…)

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“老いる”を知る

2010-09-17 00:03:00 | 科学

9月20日は敬老の日、
日頃から高齢者への親切を心がけているMrKには
この日に限って何か特別なことをする必要性は
感じられないのだが…(こらこらっ!)。
人は誰でも歳をとり、老いてゆく。
老いることは人間の宿命であり、
それは単に細胞が老朽化するから
仕方のないことと思ってきた。
今年、100歳以上で元気なはずが
実はとっくの昔に亡くなっていたという事例が次々に発覚し、
やはり人間の寿命は100歳が一応の限度なのかと
再認識させられた。
一方、原因不明の難病とされてきた
早老症に対する研究がここ数年で急速に進み、
徐々に正常老化のメカニズムも解明されつつあるという。

9月10日付 CNN.com より

Clues found in mysterious childhood aging disease 謎めいた小児早老症から見つかったヒント
By Madison Park, CNN

Progeria

Megan Nighbor ちゃん(10才)は、抗がん薬がこの急速に進行する早老性疾患の治療薬となり得るかどうかを調べるための臨床試験に参加している。

 発見の最初の手がかりは Megan ちゃんの髪の毛だった。
 Megan Nighbor ちゃんは濃い暗褐色の頭髪に覆われた状態で生まれた。生まれた時ほとんど髪の毛のなかった他の子供たちに比べてこの一番下の子では髪の毛がなぜきれいに生え揃ってるのか母親の Sandy Nighbor さんは不思議に思ったのだ。
 生後18ヶ月にはそれらの褐色の髪の毛は薄くなり始めていた。Nighbor さんがポニーテイルにくくろうとした時、束ねる髪の毛が少ないことに気づいた。
 なぜ Megan は毛が薄くなり始めているのだろう?なぜ Megan はこんなに痩ていて、他の子供たちと違って見えるのだろうか?
 Megan ちゃんの老化は速度を増していった。
 娘がプロジェリア(progeria:早老症)として知られる稀な遺伝子疾患であることを Nighbor は知ることになる。この病気によって、子供は皺だらけになり、静脈が浮き出し、生後一年以内に髪の毛が失われるのである。
 年老いた幼児の姿は人を驚かせ好奇心をくすぐってきた。F. Scott Fitzgerald の短編小説 “The Curious Case of Benjamin Button” のヒントにもなっていた可能性がある。
 世界中でもプロジェリアは稀である(約65例)が、この疾患は全米国民の死因の3分の1以上を占める心筋梗塞や脳卒中など一般的な老化のリスクについての手がかりを与えてくれるかもしれない。
 「地球上で最も稀な疾患の一つを研究することで、まさに今、我々自身についてもっと多くのことを発見しようとしているのです」と、The Progeria Research Foundation(早老症研究財団)の医療部長 Leslie Gordon 医師は言う。「実に衝撃的なことであると考えています」
 「老化も心疾患も様々な要因によるものであるため、それぞれの要因を理解するためには一つ一つを分離して考える必要があります」と、心疾患や老化と関係している食事や運動、その他諸々の要因について彼女は語る。「この疾患の子供たちはそれを解く鍵なのです」
 プロジェリアの子供たちは多くの成人同様、心疾患や脳卒中や心筋梗塞で死亡する。彼らの平均寿命は13年である。
 今週、journal of Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology  に掲載された研究によると、我々が歳をとるにつれ全身に増加してゆく progerin(プロジェリン)と呼ばれるたんぱくが発見されたという。
 科学者たちは、プロジェリアで死亡した2人の子供と、この疾患でない生後 1ヶ月から97才までの29例の遺体で progerin の量を比較した。
 その結果 Progerin はプロジェリアの子供の動脈内ではるかに多い量が検出された。
 プロジェリアでない検体においては、1才歳をとる毎に体内でのprogerin 量が3.3%増加すると考えられた。
 「この分子が存在すること、またこの分子が加齢とともに増加することを我々は確実に掴んでいます」と、この研究の筆頭研究者である Gordon 氏は言う。「このたんぱくを調べ、これが心疾患とどのように関係しているかを探る必要があります」
  Buck Institute for Age Research(Buck 加齢研究所)の所長で最高責任者である Brian Kennedy 氏は、プロジェリアや Werner syndrome(ウェルナー症候群:10代~成人初期に発症する早期老化性疾患)などの疾患を探究することで正常老化のメカニズムを知る貴重な機会が得られると言う。
 「この種の研究に対する動機付けはこれらプロジェリアの子供たちによってもたらされています。というのも、彼らの多くは、早まる老化のすべての表現型を持っているわけではないからです。彼らは外見上全く老人に見えなくても、実に早いスピードで心血管疾患が進んでいるのです」と彼らは言う。「これらの子供たちは、他の誰にでも起こっていることの進行速度の大きな異形とでも言えるような何かを持っているかどうかということが興味深い問題となっています」
 プロジェリア研究はこの十年間で急速に進歩しているが、これは難病ではめずらしいことである。
 1998年、ある医師夫婦が自分たちの息子 Sam がこの病気であることを知り、Progeria Research Foundation が創設された。Leslie Gordon 医師こそ、この Sam の母親である。
 「実際、世の中に何もないことを知りました」と、彼女は思い起こす。「これは極めて稀な疾患として特別に起こることであるとされており、この疾患に対する National Institutes of Health(NIH:国立衛生研究所)からの金銭的援助はありません。プロジェリアの子供に対する治療法は医師たちにはわかっていませんでした。我々はプロジェリアの原因と治療法を見つけるために基金を設立したのです」
 現在 NIH の部長である Francis Collins 医師が主導した National Human Genome Research Institute(国立ヒトゲノム研究所)の研究チームは2003年にプロジェリアに関与する遺伝子変異を発見した。
 この遺伝子 LMNA は Lamin A と呼ばれるたんぱくの欠損型を産生するが、このたんぱくは細胞の核の構造保持に関与していると考えられている。Nature 誌に発表された彼らの発見によって、このたんぱくの欠損型によって核の構造が不安定となり早期の老化が招来されることが示唆された。
 その後まもなく、プロジェリアの診断学的検査法が開発された。
 ウィスコンシン州 Dalton のNighbor さんは2003年にこのプロジェリアの検査で娘の確定診断を得た。
 それから7年たった現在、Megan ちゃんは同級生よりもかなり痩せており、体重は31ポンド(約14kg)しかない。この疾患は学習能力や精神機能に影響を及ぼさない。プロジェリアの子供はアルツハイマー病や認知症になることはないのである。
 プロジェリアの子供が歳をとるにつれ、関節のこわばり、股関節脱臼、動脈硬化などが起こる。幸いMeagan ちゃんにはそのような症状は見られていない。
 「彼女にできないことはありません」と、Nighbor さんは言う。「彼女がじっとしていることはありません。いつも走り回っているし、自転車を乗り回しています。彼女は病気ではありません。はたからこの早老疾患であるということを見分けることはむずかしいのです。病気であれば咳をすると考えるでしょう、そういうものとは違うのです」
 身長が4フィート(約122cm)に満たないので、学校では彼女が物を取ろうとしたり机を調節したりするのを助けてくれる生徒がいる。
 多くの小さな子供たちと同じように、Megan ちゃんは食べ物の好き嫌いが激しいが、ピザやスパゲティやりんごが大好きだ。しかし、10才のMegan ちゃんが違っているのは、心疾患を予防するためにスタチンとアスピリンを内服していることだ。
 「彼女にとってのプロジェリアは『髪の毛がないこと、痩せていること、ちょっと背が低いこと』を意味するにすぎないのです」と、Nighbor さんは言う。「言ってみれば彼女にわかっていることのすべてです」
 治療法がほどなく開発され、Meagan ちゃんがプロジェリアの子供たちの運命を知らされる必要がなくなることを Nighbor さんは望んでいる。彼女の願いはマサチューセッツ州の Boston Children’s Hospital で進められている臨床試験にかかっている。
 Megan の他27人の子供たちは、famesyltransferase inhibitors(FTIs:ファメシルトランスフェラーゼ阻害薬)と呼ばれる抗がん薬がプロジェリアの治療に有効かどうかを明らかにするため、その薬を毎日投与されている。データはまだ科学者によって解析中であり、その結果はまだ発表されていない。

プロジェリアは
ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群
とも呼ばれるきわめてまれな疾患で、
400万人に一人の確率で発症すると言われる。
一方、早老症の一つ、ウェルナー症候群は
成人型プロジェリアとも称され、
プロジェリアより発症は遅く、
平均寿命は40~50才である。
これもまた稀な疾患で、
世界で約1,200例が報告されているが
その約8割が日本人であると言われ
日本人に多いのが特徴である。
患者や家族にとって残酷なこれらの疾病の治療法が
一刻も早く確立されることが望まれる。
またこれら異常老化性疾患の治療法の発見が
将来、老化の特効薬につながる可能性がある
(本当の不老長寿の薬)。
古来から追い求められてきた万人の願い、不老不死が、
まんざら永遠の見果てぬ夢とは言えなくなるのかもしれない。

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2010年10月新ドラマ

2010-09-11 16:35:55 | テレビ番組

記録的な猛暑だった今年の夏もようやく終わり、
いよいよ2010年も最終クールに突入となる。

まずは7-9月クールを振り返ってみよう。
例年のこのクールの作品に比較すると
今回はなかなか良いドラマが多かった。

とはいえ、
『夏の恋は虹色に輝く』『新・警視庁捜査一課9係(5)』
『ホタルノヒカリ2』『警視庁継続捜査班』
『崖っぷちのエリー~この世でいちばん大事な「カネ」の話』
の5作品はあえなく轟沈。
『ジョーカー~許されざる捜査官』『逃亡弁護士~成田誠』『GOLD』
『ハンマーセッション!』『美丘(みおか)』『GM~踊れドクター』
の6作品はかなり楽しめた。

003

中でも『美丘』では吉高の好演が光っており
締まったドラマとなっていたように思うのだが
残念ながら展開があまりにも暗すぎたせいか視聴率が低かった。
作品そのものの出来の良し悪しもたしかに重要だが、
視聴者の心境や、社会・景気の動向も
視聴率に大きく関わってくるようである。

それではさっそく10月からの新ドラマ(ゴールデン帯に限る)、
例によってひと通りチェックしてみることにしよう。

フジ月9 10/?~ 『流れ星』 竹野内豊、上戸彩、松田翔太、北乃きい、金子ノブアキ、山崎樹範、北川弘美、小市慢太郎、田中美佐子
本格的なラブストーリーらしい。竹野内は2001年7月クールの『できちゃった結婚』(共演は広末涼子)以来9年ぶりの月9主演。竹野内演ずる主人公岡田健吾は一見平凡な水族館の飼育員。しかし人知れぬ秘密を抱えている。一方、上戸演ずる槇原梨沙は兄が作った借金を返済するため風俗で働いている(えっ?)。梨沙が自殺を図ろうとするところを健吾に助けられる(いかにもありきたり)。お互いに愛が芽生えぬまま、ある理由から二人は『契約結婚』を目論む。こうして偽りの愛から始まった二人の関係だが、次第に真実の愛へと変わってゆくことに健吾は苦悩する。健吾と梨沙の偽装結婚の真相に翻弄されてゆく若き医師役に松田翔太、健吾の最愛の妹で重大な病を抱えるマリア役に北乃きい。ちょっと歳くいすぎている(39才)感のある竹野内が今さらラブストーリーとは無理があるようにも思うのだが、どこまでセンチメンタルにさせてくれるだろうか。目下意味不明のドラマの展開だが、そのあたり期待してみたい。

テレ東月10 10/18~ 『モリのアサガオ』 伊藤淳史、香椎由宇、ARATA、柄本明、温水洋一、大杉漣
テレビ東京のドラマ新設枠。原作コミックは漫画アクション連載の郷田マモラ作『モリのアサガオ』。拘置所の死刑囚舎房に配属された新人刑務官・及川直樹(伊藤淳史)が、とまどい悩みながら死刑囚たちと接してゆく。死刑囚の一人、渡瀬満(ARATA)には直樹と同年代ということもあって特別な想いを抱き彼の心の底を知りたいと思い始める。死刑制度存廃問題をめぐって議論が高まる中、死刑の意味、罪を償うこと、人が人を許すことなどを、あらためて見つめさせてくれるタイムリーなドラマ。

フジ火9 10/?~ 『フリーター、家を買う』 二宮和也(嵐)、香里奈、竹中直人、浅野温子
現代社会の抱える問題に鋭く切り込む社会派ホームドラマ。原作は有川浩(ありかわひろ、ちなみに女性)の小説「フリーター、家を買う」(2009年)。二宮が演ずるのは、バラバラになった家族を抱えながら就職先を3ヶ月で辞め土木現場で働くフリーター武誠治。香里奈演ずる土木作業員の先輩との出会いをきっかけに前向きに生きてゆくことを決意するというストーリー。「働いて家族のために家を買う」という究極の目標に向かって邁進する。アンバランス感否めない二宮と香里奈のコンビでうまく成り立つかが鬼門。
 
フジ火10 10/12~ 『ギルティ 悪魔と契約した女』 菅野美穂、玉木宏、吉瀬美智子、水上剣星、吉田鋼太郎、唐沢寿明
出所後ペットショップのトリマーとして働く33才の主人公野上芽衣子(菅野美穂)は19才の時に殺人事件を起こし13年間服役。しかしそれは冤罪だった?彼女の周りで男性が次々に破滅の道へと進んでゆく。彼女の復讐なのか?事件の関連を追う玉木演ずる刑事真島拓朗が彼女に接近。次第に心が惹かれてゆく彼だが…真島の元彼に吉瀬美智子、事件を追いかけるブラックジャーナリストに唐沢寿明。サスペンス&ミステリー・ドラマでキャストからも気合の感じられるドラマ。

テレ朝水9 10/?~  『相棒(9)』 水谷豊、及川光博 他
第9シーズンとなればもう何も言うことはありません。

日テレ水10 10/?~ 『黄金の豚~会計検査庁 特別調査課~』 篠原涼子、岡田将生、大泉洋、桐谷健太、山口紗弥加、もたいまさこ、生瀬勝久、宇津井健
『働きマン』『キイナ~不可能犯罪捜査官~』を手がけた吉田智子による脚本。税金を不正に着服する現代の悪代官たちに立ち向かう会計検査庁特別調査課。篠原涼子演ずる女性調査員が税金を不正使用する悪人を懲らしめる痛快勧善懲悪ドラマ。日テレによれば、『現代版・水戸黄門的作品』。篠原の連ドラ主演は2007年の『ハケンの品格』以来3年半ぶり。

TBS木9 10/14~ 『渡る世間は鬼ばかり(10)』 泉ピン子、宇津井健 他
20周年第10シリーズにしてついに終了とか。さすがにスタート時の看板だった藤岡、山岡が死去、赤木のドロップアウトでは続行も困難か?とはいえ、今シリーズも一応一年間の長丁場の予定。前シリーズ終盤では唐突に眞が恋人・貴子にフラれるなど不自然感(元々眞に恋人ができるということからして超不自然)は否めなかったのだが、そのあたりなんでもありで、今シリーズでは早速二人が不自然によりを戻す可能性あり(貴子役清水由紀は橋田センセに気に入られている?)。むしろ、キモ過ぎかもしれないが、最終回では東大生同士の眞と加津のゴールインでしめくくって、万事めでたし、めでたし(寒っ!)。もはや橋田センセの逆鱗に触れて抹殺されたキャストも数知れず…。今回が最終シリーズと聞いて安堵される方々も多いのではないだろうか?

テレ朝木9 10/?~ 『ナサケの女~国税局査察官~』 米倉涼子
『黒革の手帳』『けものみち』『交渉人~THE NEGOTIATOR~』など、このドラマ枠のレギュラーメンバーともいえる米倉が演ずるのは早い話、マルサの女、すなわち東京国税局査察部に属する国税査察官。脱税の実態を解明し脱税者たちを追い詰める。前出・日テレの『黄金の豚』とカブってない?どう違うの?米倉のコスプレが一つの見どころらしいのだが…

フジ木10 10/?~ 『医龍 Team Medical Dragon 3 』 坂口憲二、稲森いずみ、小池撤平、阿部サダヲ、北村一輝、遠藤憲一、谷村美月、池田鉄洋、佐々木蔵之介、夏木マリ、岸部一徳
シリーズ3作目となる今回のテーマは『医療の国際化と外科医の存在意義』。菅総理の政治主導(?)で日本政府は医療を成長産業と位置付け、医療における国際競争力を強化する方針を打ち出している。医薬品・医療器具の海外進出を図る一方、海外からの富裕層患者を日本で治療し、外貨を獲得しようとするメディカル・ツーリズムを推進する。しかしそこで必要なはずの外科医不足が深刻。カテーテル治療やロボット手術などの低侵襲手術やiPS細胞を用いた再生医療が進歩するとともに外科医の存在意義が見直されつつある。このような医療変革の時、主人公朝田龍太郎と『チーム・ドラゴン』が医療の現場でどう立ち向かってゆくのか?今回も恐らく、佐々木蔵之介演ずる藤吉圭介がスピーディーに展開される手術シーンをつぶさに解説か?今シリーズから、朝田に激しく対立する内科医役として遠藤憲一が、また研修医役として谷村美月が新たに登場する。今シリーズでも「ここが変だよ・医龍」が随所に見られることを期待する。

テレ朝(朝日放送)金9 10/? ~『東京地検特捜部長 鬼島平八郎』 浜田雅功(ダウンタウン)、仲村トオル、蛍原徹(雨上がり決死隊)、倉科カナ、浅田美代子、中尾彬
原作コミックは鍋島雅治原作・池辺かつみ画の 「東京地検特捜部長 鬼島平八郎」。主人公の鬼島平八郎は様々な職を経た後司法試験に合格し検事となる。巨悪に憶することなく立ち向かう『眠らぬ鬼』の異名をとる辣腕特捜部部長とか。これを浜田が演じるらしいが、原作を読んでないので、果たしてしっくりくるのかどうかは不明。ただコミックのイメージからは似ても似つかぬ者同士である。

TBS金10 10/8~ 『ケイゾク2:SPECK~警視庁公安部公安第5課未詳事件特別対策係事件簿』 戸田恵梨香、加瀬亮、福田沙紀、城田優、神木隆之介、椎名桔平、竜雷太
1999年1-3月期の同じ金曜ドラマ枠で放映された『ケイゾク』の続編。『ケイゾク』は捜査一課弐係のことで、『現在も鋭意“継続”捜査中である』の意味。第1シリーズでは中谷美紀、渡部篤郎、竜雷太、徳井優、長江英和らが出演。今回、中谷、渡部の代りに戸田、加瀬が主演。今回は弐係ではなく、新たに設立された公安部公安5課未詳事件特別対策係、通称『ミショウ』。捜査一課では手に余る証拠も証人もいないプロの犯行と思われる事件や、国・宗教がらみの難事件を追う。竜雷太演じた『ケイゾク』の係長、野々村光太郎が『ミショウ』の係長に。野々村の部下で天才的な頭脳を持つ当麻紗綾に戸田恵梨香、エリート集団警視庁特殊部隊から飛ばされた瀬文焚流に加瀬亮。彼らが、特殊能力(SPEC)を悪用し世にはびこる犯罪者に立ち向かう。

日テレ土9 10/?~  『Q10(キュート)』 佐藤健、前田敦子(AKB48)、蓮佛美沙子、賀来賢人、池松壮亮、柄本時生、高畑充希、細田よしひこ、田中裕二(爆笑問題)、松岡璃奈子、光石研、白石加代子、小野武彦、薬師丸ひろ子 
ロッテ『Fit's』のCMと『龍馬伝』での岡田以蔵役で活躍を見せる佐藤健が成人向け連続ドラマ初主演(2007年の『仮面ライダー電王』で主役を演じている)。佐藤は現在21才だが、本ドラマでは人生を諦めかけていた高校生深井平太を演ずる。ある日平太のクラスにQ10と呼ばれる美少女が転校してくる。平太はそんな彼女に一目ぼれしてしまうが、実は彼女は女子高生型ロボットだった。個性豊かなクラスメートたちと織りなす愛と友情の物語が展開する。Q10役はAKB48の前田敦子。

TBS日9 10/?~  『獣医ドリトル.』 小栗旬、井上真央、成宮寛貴、石坂浩二、國村準
原作はビッグコミックの人気シリーズ 「獣医ドリトル」夏緑(作)・ちくやまきよし(画)。悪徳敏腕獣医と評判のドリトルと呼ばれる鳥取健一(小栗旬)が、悪い飼い主のせいで病気やケガに苦しむ動物を救うだけでなく、問題を抱えた飼い主たち人間の心までを治療するという感動のドラマ。愛馬の治療に訪れ、ドリトルに惹かれることになる多島あすか役に井上真央。ドリトルのライバル獣医・花菱優役に成宮寛貴。動物を通じて命の大切さに向き合うだけでなく、人間としての在るべき姿勢をあらためて考えさせられる感動ドラマとか。ドリトルが動物と果たして会話できるのかどうかは、公式HPからは読み取れない。スタートを楽しみに待ちたい。

フジ日9 10/?~ 『パーフェクト・リポート』 松雪泰子、小出恵介、相武紗季、遠藤雄弥、小柳友、要潤、小日向文世
フジのこの枠はこれまで情報・バラエティー専用で、2年間続いた 『エチカの鏡~ココロにキクTV』 に代わって今回ドラマ枠が新設された。この枠、題して『ドラマチック・サンデー』。TBS『日曜劇場』に真っ向勝負。威勢はいいが、果たして日曜夜のこの時間帯にどれほどの人たちが毎週ドラマを楽しみにするかどうかは疑問。とりあえず第一弾は安易な放送業界ドラマ。落ちこぼれのテレビ局の報道記者たちが報道の裏に隠された真実を追い求め取材に奮闘しながら再起を図るというストーリー。落ちこぼれたちが集められたのは『遊軍取材班』というお荷物部署。そこのキャップに命じられたのが松雪泰子演ずる独身女・蒼山叶。彼女の部下たちを小出恵介、相武紗季、要潤、小日向文世らが演ずる。テレビ局が報道ドラマを作っても実態追求の甘さからか今一つ面白みに欠け、実際これまでも当たったためしがない。松雪泰子の奮闘に期待したい。

TBS水9の『アイリス』は大惨敗(最終平均視聴率7.14%)。
ゴールデンにおける韓流のこの数字から、
韓流ブームも終焉を迎えたことが明らかとなった。
やはり日本人は日本人の感性によるきめ細かいドラマ作りを
期待しているのだろう。
そんな中、テレ東月10、フジ日9と二つのドラマ枠新設は、
ドラマファンとしてはうれしいニュースである。
秋から冬にかけてのこのクール、とにかく心温まるドラマを
大いに期待するところである。

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モーツアルトの死因

2010-09-06 21:35:46 | 音楽

天才音楽家モーツアルトが死んだのは
1791年…
日本では江戸時代、徳川11代将軍家斉の治世。
寛政の改革が1787年~1793年だから
ちょうどそのころ。
そんな時代に誰が何で死んだかなど、
日本ではまず解明不能だろう。
モーツアルトの死因については
以前から色々と取りざたされてきたようだが、
このたびある学者が明解に諸説を整理したそうである。

8月24日付 New York Times 電子版

After Mozart’s Death, an Endless Coda モーツアルトの死後、終わりのない楽曲
By DANIEL J. WAKIN

直接的な医学的証拠は?…ない。剖検は?…行われていない。カルテは?…どこにも見つかっていない。遺体は?…消滅した。

Mozart

Tomas W Shields による1882年の作品「モーツアルト (1756-91) レクイエムを歌う」では作品の演奏に参加するこの作曲家が描かれている

 しかし、学術誌の最近の論文によると Wolfgang Amadeus Mozart (モーツアルト)については少なくとも 118の死因が研究者たちによって推定されている。
 この話題をめぐって、医学的考察の穏やかな情熱が高まっており、このことは歴史上の偉大な創造的芸術家たちを死に至らしめたものへの私たちの強い興味を表している。モーツアルトの場合、公表された推測は、1791年の彼の死から1ヶ月以内に始まっており、それ以後ずっと、音楽学者、医師、そして医学研究者たちがこの論争に断続的に加わってきた。
 引退した整形外科医で Performing Arts Medical Association の書誌学者を務める William J Dawson 氏はこれまでの説を整理することにした。彼はモーツアルトの死について寄せられた同協会のデーターベースにある136の登録分のほとんどを調べたがその一覧は決して包括的なものではなかった。
 「この問題についての刊行物を調べるとそれらの多くは、複雑でわかりにくく、あくまで憶測上のものであったり問題の多いものであったりすることがわかります」と、Northwestern University’s medical school の Dawson 名誉教授は同協会の学術誌 Medical Problems of Performing Artists の最新号に書いている。彼の結論は予想できるものだった:すなわち、論争は勢いを増し衰えることはないと予測される、と。
 直接的な証拠を欠いているため、研究者たちは主にモーツアルトの未亡人 Constanze Mozart と彼女の妹 Sophie Haibel により数十年後に行われた説明に頼らざるを得ない。証拠はまた、モーツアルトの息子 Karl Thomas の日付不明の文書や、モーツアルトの最後の日々に治療を行った医師と話をした ウィーンの医師による(これまた死後数十年経っていたのだが)記述に基づいている。
 学者たちはまた、モーツアルトの最後の病気に関する手がかりを明らかにする目的で、家族、特に彼の父 Leopold によって書かれた手紙の中のモーツアルトの病気についての記述を調べた。彼の耳の形に異常があったことについての推察は腎不全の可能性があることを示唆している、というのも、尿路系の奇形は時々耳の異常に関係しているからである。
 間接的な証拠はそれ自体、元々の証言の内容から、医学的定義や、時には誤訳された語句が変更されるという流動的な状況に基づいており、疾患の理解が進み身体がどのように機能するかが理解されるにつれ飛躍してしまっている。
 「病気の症状やパターンを同時代の著者によって書かれたものとして人が読む時、医師たちは彼ら自身の心の中で『これが何を意味するのか?』という風に考えをまとめようとするのです」と、Dawson 医師は最近のインタビューで述べた。
 モーツアルトの最後の病気の概略は明らかである。彼は、“The Magic Flute(魔笛)”“La Clemenza di Tigo(皇帝ティートの慈悲)”、クラリネット協奏曲、フリーメイソンのためのカンタータ、さらにはレクイエムの一部を次々に作曲するという多忙な時期を過ごした後、1791年11月20日、ついに病床についた。彼の手足は腫れ、無気力となり、激しい嘔吐に見舞われ、発熱した。
 12月4日、数人の友人がどうやらレクイエムの一部を歌うために彼のベッドサイドに行ったらしい。夜になってモーツアルトの病状が悪化、主治医の Thomas Closset は劇場から呼び出されたが、上演が終わり次第駆けつけると伝えた。彼が到着すると、モーツアルトの頭に冷湿布を置くよう命じたが、目撃者によればそのことによって患者は激しく震え出したという。12月5日の深夜1時過ぎ、モーツアルトは35才で死亡した。
 Closset はモーツアルトの病気を急性粟粒疹熱と診断した。この病名は疾患というより病状に近く、粟粒疹とは粟粒の大きさの小膿疱を表すのに使われる言葉で、簡単に言えば発疹である。ウィーンにある St. Stephen’s Cathedral の記録には正式な死因としてこの病名が記載された。モーツアルトの遺体は何の標識もなく共同墓地に埋葬されたが、これは当時ウィーンの中産階級にとっては通常のしきたりに従ったもので、検査の対象となるような間違いなく彼のものであるという遺体がないことは確かである。
 モーツアルトの死についての説を調査したのは Dawson 医師が最初というわけではない。この分野の一流の学者の一人に L.R.Karhausen がいる。彼はDawson 医師が論文で述べている118の死因を1998年に考え出したフランスの医師である。
 Dawson 医師は独自に順位をつけることはしていない。しかし、彼はこれら死因を5つのグループに分けている:中毒(服毒)、感染、心血管疾患、腎臓病、およびその他である。治療として行われた瀉血もモーツアルトの死を早めた可能性がある。
 服毒説―それがモーツアルトの同僚 Antonio Salieri によるものであれ、梅毒を治療していたモーツアルト自身によってであれ―は一連の19世紀初頭の噂話のあとほとんど即座に否定された。モーツアルト自身は毒を盛られていることを疑っていたという話だが、その後最後の数ヶ月の間に考えが変わっている。
 感染のグループでは、細菌性心内膜炎、連鎖球菌性敗血症、結核、寄生虫感染症などが考えられてきた。リウマチ熱は、スイスの医師 Carl Bär による1966年の画期的な研究以来、有力候補となってきた。心血管疾患のグループでは、死因として脳卒中やうっ血性心不全が含まれている。Dawson 医師によって発見された記述の大部分は腎臓病によってひき起こされた血液中の毒素の増加である尿毒症の範疇に入るものである。
 「もし何かに2セントを賭けなければならないとしたら、それは恐らく腎不全でしょう」と、Dawson 医師は言う。「それは多分最もありふれた診断だったでしょう。私よりこれらのことに精通している人は、それを可能性の高い主原因であると考えています」モーツアルトの腎疾患の原因もまた論争中のままである。
 1980年代に研究者 Peter J Davies によって詳細に発表された別の主要な説は Schönlein-Henoch 症候群によるとしている。これは潜在的な原因となる血管の稀な疾患である。この症候群が腎不全を生じ、脳出血や肺炎がとどめの一撃となった、と Davies 氏は考えている。
 こういったことすべてから疑問が生まれてくる:なぜこの話題はそのような熱烈な関心を呼び起こすのか?例えば、今年初め Mount Sinai School of Medicine の研究者はベートーベンの頭蓋骨の一部と信じられているものを検査し、彼が鉛中毒で死んだという説に疑問を投げかけた。
 理由の一部は、音楽と医学の間の密接な重なりにあるのかもしれない。医師たちの中では高い割合で楽器を演奏する者がいるようである。事実、Dawson 医師は活動的で熟練したバス-ン奏者である。
 人生に多くの美を届けてきた非凡な人々も普通の身体的病気、特に今なら容易に治療できる疾患に倒れたであろうという考えは本能的に興味をそそられる。そういった感覚が天才と言われる人々であっても我々に親近感を与えるのである。
 「彼らは不死身であると同時に死すべき運命にあるのです」と、University of Utah Medical Center の熱傷ユニットの部長で一般外科医の Jeffrey R Saffle 医師は言う。「彼らは創造したものから見れば並外れた人物となっていますが、彼らの生活、生、あるいは死に関しては実に月並みな存在なのです」Saffle 医師と彼の兄弟である Virginia Tech の音楽歴史家の Michael Saffle には著名な作曲家の病歴に関する文献を調査した著作がある。
 「医学関係の人間は自分たちの専門的知識をこの種の調査研究にまで広げたいと思っているのです」と、彼は付け加えた。
 Dawson 医師から見ると、作曲家の死を調べることは彼らに近づきたいという私たちの願望にかなっているという。「これは彼らの人生がどんなであったかの別の一面を知ることになるのです」と、彼は言う。

偉大な人物が何の疾患で死んでいようと
MrK にはあまり関心は持てないのだが、
欧米人には多分に興味津々なことらしい。
当時のウイーンの医学は世界でも最先端であり、
日本とは比べものにならないほど
進歩していたようであるが、
梅毒に水銀を飲ませたり、
心不全に対して瀉血を施したりと
過激な治療も行われていたようだ。
モーツアルトの死因としては
毒殺説が有力とも言われてきたようだが、
果てしなく真相は藪の中、のようである。

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