記録的な猛暑だった今年の夏もようやく終わり、
いよいよ2010年も最終クールに突入となる。
まずは7-9月クールを振り返ってみよう。
例年のこのクールの作品に比較すると
今回はなかなか良いドラマが多かった。
とはいえ、
『夏の恋は虹色に輝く』『新・警視庁捜査一課9係(5)』
『ホタルノヒカリ2』『警視庁継続捜査班』
『崖っぷちのエリー~この世でいちばん大事な「カネ」の話』
の5作品はあえなく轟沈。
『ジョーカー~許されざる捜査官』『逃亡弁護士~成田誠』『GOLD』
『ハンマーセッション!』『美丘(みおか)』『GM~踊れドクター』
の6作品はかなり楽しめた。
中でも『美丘』では吉高の好演が光っており
締まったドラマとなっていたように思うのだが
残念ながら展開があまりにも暗すぎたせいか視聴率が低かった。
作品そのものの出来の良し悪しもたしかに重要だが、
視聴者の心境や、社会・景気の動向も
視聴率に大きく関わってくるようである。
それではさっそく10月からの新ドラマ(ゴールデン帯に限る)、
例によってひと通りチェックしてみることにしよう。
フジ月9 10/?~ 『流れ星』 竹野内豊、上戸彩、松田翔太、北乃きい、金子ノブアキ、山崎樹範、北川弘美、小市慢太郎、田中美佐子
本格的なラブストーリーらしい。竹野内は2001年7月クールの『できちゃった結婚』(共演は広末涼子)以来9年ぶりの月9主演。竹野内演ずる主人公岡田健吾は一見平凡な水族館の飼育員。しかし人知れぬ秘密を抱えている。一方、上戸演ずる槇原梨沙は兄が作った借金を返済するため風俗で働いている(えっ?)。梨沙が自殺を図ろうとするところを健吾に助けられる(いかにもありきたり)。お互いに愛が芽生えぬまま、ある理由から二人は『契約結婚』を目論む。こうして偽りの愛から始まった二人の関係だが、次第に真実の愛へと変わってゆくことに健吾は苦悩する。健吾と梨沙の偽装結婚の真相に翻弄されてゆく若き医師役に松田翔太、健吾の最愛の妹で重大な病を抱えるマリア役に北乃きい。ちょっと歳くいすぎている(39才)感のある竹野内が今さらラブストーリーとは無理があるようにも思うのだが、どこまでセンチメンタルにさせてくれるだろうか。目下意味不明のドラマの展開だが、そのあたり期待してみたい。
テレ東月10 10/18~ 『モリのアサガオ』 伊藤淳史、香椎由宇、ARATA、柄本明、温水洋一、大杉漣
テレビ東京のドラマ新設枠。原作コミックは漫画アクション連載の郷田マモラ作『モリのアサガオ』。拘置所の死刑囚舎房に配属された新人刑務官・及川直樹(伊藤淳史)が、とまどい悩みながら死刑囚たちと接してゆく。死刑囚の一人、渡瀬満(ARATA)には直樹と同年代ということもあって特別な想いを抱き彼の心の底を知りたいと思い始める。死刑制度存廃問題をめぐって議論が高まる中、死刑の意味、罪を償うこと、人が人を許すことなどを、あらためて見つめさせてくれるタイムリーなドラマ。
フジ火9 10/?~ 『フリーター、家を買う』 二宮和也(嵐)、香里奈、竹中直人、浅野温子
現代社会の抱える問題に鋭く切り込む社会派ホームドラマ。原作は有川浩(ありかわひろ、ちなみに女性)の小説「フリーター、家を買う」(2009年)。二宮が演ずるのは、バラバラになった家族を抱えながら就職先を3ヶ月で辞め土木現場で働くフリーター武誠治。香里奈演ずる土木作業員の先輩との出会いをきっかけに前向きに生きてゆくことを決意するというストーリー。「働いて家族のために家を買う」という究極の目標に向かって邁進する。アンバランス感否めない二宮と香里奈のコンビでうまく成り立つかが鬼門。
フジ火10 10/12~ 『ギルティ 悪魔と契約した女』 菅野美穂、玉木宏、吉瀬美智子、水上剣星、吉田鋼太郎、唐沢寿明
出所後ペットショップのトリマーとして働く33才の主人公野上芽衣子(菅野美穂)は19才の時に殺人事件を起こし13年間服役。しかしそれは冤罪だった?彼女の周りで男性が次々に破滅の道へと進んでゆく。彼女の復讐なのか?事件の関連を追う玉木演ずる刑事真島拓朗が彼女に接近。次第に心が惹かれてゆく彼だが…真島の元彼に吉瀬美智子、事件を追いかけるブラックジャーナリストに唐沢寿明。サスペンス&ミステリー・ドラマでキャストからも気合の感じられるドラマ。
テレ朝水9 10/?~ 『相棒(9)』 水谷豊、及川光博 他
第9シーズンとなればもう何も言うことはありません。
日テレ水10 10/?~ 『黄金の豚~会計検査庁 特別調査課~』 篠原涼子、岡田将生、大泉洋、桐谷健太、山口紗弥加、もたいまさこ、生瀬勝久、宇津井健
『働きマン』『キイナ~不可能犯罪捜査官~』を手がけた吉田智子による脚本。税金を不正に着服する現代の悪代官たちに立ち向かう会計検査庁特別調査課。篠原涼子演ずる女性調査員が税金を不正使用する悪人を懲らしめる痛快勧善懲悪ドラマ。日テレによれば、『現代版・水戸黄門的作品』。篠原の連ドラ主演は2007年の『ハケンの品格』以来3年半ぶり。
TBS木9 10/14~ 『渡る世間は鬼ばかり(10)』 泉ピン子、宇津井健 他
20周年第10シリーズにしてついに終了とか。さすがにスタート時の看板だった藤岡、山岡が死去、赤木のドロップアウトでは続行も困難か?とはいえ、今シリーズも一応一年間の長丁場の予定。前シリーズ終盤では唐突に眞が恋人・貴子にフラれるなど不自然感(元々眞に恋人ができるということからして超不自然)は否めなかったのだが、そのあたりなんでもありで、今シリーズでは早速二人が不自然によりを戻す可能性あり(貴子役清水由紀は橋田センセに気に入られている?)。むしろ、キモ過ぎかもしれないが、最終回では東大生同士の眞と加津のゴールインでしめくくって、万事めでたし、めでたし(寒っ!)。もはや橋田センセの逆鱗に触れて抹殺されたキャストも数知れず…。今回が最終シリーズと聞いて安堵される方々も多いのではないだろうか?
テレ朝木9 10/?~ 『ナサケの女~国税局査察官~』 米倉涼子
『黒革の手帳』『けものみち』『交渉人~THE NEGOTIATOR~』など、このドラマ枠のレギュラーメンバーともいえる米倉が演ずるのは早い話、マルサの女、すなわち東京国税局査察部に属する国税査察官。脱税の実態を解明し脱税者たちを追い詰める。前出・日テレの『黄金の豚』とカブってない?どう違うの?米倉のコスプレが一つの見どころらしいのだが…
フジ木10 10/?~ 『医龍 Team Medical Dragon 3 』 坂口憲二、稲森いずみ、小池撤平、阿部サダヲ、北村一輝、遠藤憲一、谷村美月、池田鉄洋、佐々木蔵之介、夏木マリ、岸部一徳
シリーズ3作目となる今回のテーマは『医療の国際化と外科医の存在意義』。菅総理の政治主導(?)で日本政府は医療を成長産業と位置付け、医療における国際競争力を強化する方針を打ち出している。医薬品・医療器具の海外進出を図る一方、海外からの富裕層患者を日本で治療し、外貨を獲得しようとするメディカル・ツーリズムを推進する。しかしそこで必要なはずの外科医不足が深刻。カテーテル治療やロボット手術などの低侵襲手術やiPS細胞を用いた再生医療が進歩するとともに外科医の存在意義が見直されつつある。このような医療変革の時、主人公朝田龍太郎と『チーム・ドラゴン』が医療の現場でどう立ち向かってゆくのか?今回も恐らく、佐々木蔵之介演ずる藤吉圭介がスピーディーに展開される手術シーンをつぶさに解説か?今シリーズから、朝田に激しく対立する内科医役として遠藤憲一が、また研修医役として谷村美月が新たに登場する。今シリーズでも「ここが変だよ・医龍」が随所に見られることを期待する。
テレ朝(朝日放送)金9 10/? ~『東京地検特捜部長 鬼島平八郎』 浜田雅功(ダウンタウン)、仲村トオル、蛍原徹(雨上がり決死隊)、倉科カナ、浅田美代子、中尾彬
原作コミックは鍋島雅治原作・池辺かつみ画の 「東京地検特捜部長 鬼島平八郎」。主人公の鬼島平八郎は様々な職を経た後司法試験に合格し検事となる。巨悪に憶することなく立ち向かう『眠らぬ鬼』の異名をとる辣腕特捜部部長とか。これを浜田が演じるらしいが、原作を読んでないので、果たしてしっくりくるのかどうかは不明。ただコミックのイメージからは似ても似つかぬ者同士である。
TBS金10 10/8~ 『ケイゾク2:SPECK~警視庁公安部公安第5課未詳事件特別対策係事件簿』 戸田恵梨香、加瀬亮、福田沙紀、城田優、神木隆之介、椎名桔平、竜雷太
1999年1-3月期の同じ金曜ドラマ枠で放映された『ケイゾク』の続編。『ケイゾク』は捜査一課弐係のことで、『現在も鋭意“継続”捜査中である』の意味。第1シリーズでは中谷美紀、渡部篤郎、竜雷太、徳井優、長江英和らが出演。今回、中谷、渡部の代りに戸田、加瀬が主演。今回は弐係ではなく、新たに設立された公安部公安5課未詳事件特別対策係、通称『ミショウ』。捜査一課では手に余る証拠も証人もいないプロの犯行と思われる事件や、国・宗教がらみの難事件を追う。竜雷太演じた『ケイゾク』の係長、野々村光太郎が『ミショウ』の係長に。野々村の部下で天才的な頭脳を持つ当麻紗綾に戸田恵梨香、エリート集団警視庁特殊部隊から飛ばされた瀬文焚流に加瀬亮。彼らが、特殊能力(SPEC)を悪用し世にはびこる犯罪者に立ち向かう。
日テレ土9 10/?~ 『Q10(キュート)』 佐藤健、前田敦子(AKB48)、蓮佛美沙子、賀来賢人、池松壮亮、柄本時生、高畑充希、細田よしひこ、田中裕二(爆笑問題)、松岡璃奈子、光石研、白石加代子、小野武彦、薬師丸ひろ子
ロッテ『Fit's』のCMと『龍馬伝』での岡田以蔵役で活躍を見せる佐藤健が成人向け連続ドラマ初主演(2007年の『仮面ライダー電王』で主役を演じている)。佐藤は現在21才だが、本ドラマでは人生を諦めかけていた高校生深井平太を演ずる。ある日平太のクラスにQ10と呼ばれる美少女が転校してくる。平太はそんな彼女に一目ぼれしてしまうが、実は彼女は女子高生型ロボットだった。個性豊かなクラスメートたちと織りなす愛と友情の物語が展開する。Q10役はAKB48の前田敦子。
TBS日9 10/?~ 『獣医ドリトル.』 小栗旬、井上真央、成宮寛貴、石坂浩二、國村準
原作はビッグコミックの人気シリーズ 「獣医ドリトル」夏緑(作)・ちくやまきよし(画)。悪徳敏腕獣医と評判のドリトルと呼ばれる鳥取健一(小栗旬)が、悪い飼い主のせいで病気やケガに苦しむ動物を救うだけでなく、問題を抱えた飼い主たち人間の心までを治療するという感動のドラマ。愛馬の治療に訪れ、ドリトルに惹かれることになる多島あすか役に井上真央。ドリトルのライバル獣医・花菱優役に成宮寛貴。動物を通じて命の大切さに向き合うだけでなく、人間としての在るべき姿勢をあらためて考えさせられる感動ドラマとか。ドリトルが動物と果たして会話できるのかどうかは、公式HPからは読み取れない。スタートを楽しみに待ちたい。
フジ日9 10/?~ 『パーフェクト・リポート』 松雪泰子、小出恵介、相武紗季、遠藤雄弥、小柳友、要潤、小日向文世
フジのこの枠はこれまで情報・バラエティー専用で、2年間続いた 『エチカの鏡~ココロにキクTV』 に代わって今回ドラマ枠が新設された。この枠、題して『ドラマチック・サンデー』。TBS『日曜劇場』に真っ向勝負。威勢はいいが、果たして日曜夜のこの時間帯にどれほどの人たちが毎週ドラマを楽しみにするかどうかは疑問。とりあえず第一弾は安易な放送業界ドラマ。落ちこぼれのテレビ局の報道記者たちが報道の裏に隠された真実を追い求め取材に奮闘しながら再起を図るというストーリー。落ちこぼれたちが集められたのは『遊軍取材班』というお荷物部署。そこのキャップに命じられたのが松雪泰子演ずる独身女・蒼山叶。彼女の部下たちを小出恵介、相武紗季、要潤、小日向文世らが演ずる。テレビ局が報道ドラマを作っても実態追求の甘さからか今一つ面白みに欠け、実際これまでも当たったためしがない。松雪泰子の奮闘に期待したい。
TBS水9の『アイリス』は大惨敗(最終平均視聴率7.14%)。
ゴールデンにおける韓流のこの数字から、
韓流ブームも終焉を迎えたことが明らかとなった。
やはり日本人は日本人の感性によるきめ細かいドラマ作りを
期待しているのだろう。
そんな中、テレ東月10、フジ日9と二つのドラマ枠新設は、
ドラマファンとしてはうれしいニュースである。
秋から冬にかけてのこのクール、とにかく心温まるドラマを
大いに期待するところである。