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煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

結婚はストレス?それとも心の支え?

2023-10-11 22:42:03 | 健康・病気

2023年10月のメディカル・ミステリーです。

 

10月7日付 Washington Post 電子版

 

 

Medical Mysteries: Were wedding jitters making her sick?

メディカル・ミステリー:結婚前の不安な気持ちが彼女に不調をもたらしたのか?

Doctors blamed her marriage for her sudden severe anxiety and weight gain. Testing revealed the real cause.

医師らは彼女の重度の不安と体重増加の原因は彼女の結婚だと考えた。しかし検査によって本当の原因が明らかとなった。

 

By Sandra G. Boodman,

 

(Bianca Bagnarelli for The Washington Post)

 

 Bridget Houser(ブリジット・ハウザー)さんは失望を感じていた。それまで自身の体重に悩んだことは一度もなかった Houser さんだったが、2018年に彼女が結婚する前の数ヶ月のうちにどういうわけか徐々に体重が増加し始めたことに気づいた。それに対して彼女はランニングの距離を8マイルへと倍増し、続けざまにかなり激しいトレーニングのクラスに参加、さらには、時にほとんどが野菜の質素な食事の前日に水、コーヒー、および果物だけを摂取することもあった。

 しかし Houser さんが何を行っても、彼女の体重は増加する一方であり、彼女の瓜実顔はさらに丸くなり、その変容は彼女の一卵性双生児の姉妹と比べると一目瞭然だった。

Bridget Houser. (Bridget Houser)

 

 Houser さんは自身の超人的な努力にもかかわらず体重が5ポンド(約 2.3kg)増えたのはなにか別の問題が原因ではないかと考えた。それまでの2年間、彼女は相次ぐ病気と闘っていた:最初は毎日の頭痛、それからひどい不安症、そしてその後に不眠、脱毛、にきびがみられたが、にきびは10代の頃には決して見られなかったものである。

 「ストレスというのがあらゆる所で聞かされた原因でした」と Houser さんは思い起こす。彼女は Chicago(シカゴ)で小さな企業の業務管理者をしている。近づいていた結婚が彼女の不調の原因かもしれないと医師から告げられた時、Houser さんは考え込んだがその説を否定した。それは自身の気持ちと全く合致していなかったからである。

 結婚式から約6ヶ月後の2019年の初め、Houser さんは医師たちにいくつかの検査をするよう求めた。それにより最終的に、彼女の症状がストレス、あるいは結婚に対する不安の結果ではなく、何年間もくすぶっていた重大な疾患によるものだったことが明らかとなった。

 治療が成功し長期の回復が得られた Houser さん(現在34歳)は、20代後半の悲惨な数年間に比べ、はるかに具合は良くなっている。

 「起こっていたことで自分を責めることなく自身にもっと優しくしていればよかったと思っています」と彼女は言う。

 

Getting through the wedding 結婚式を乗り切る

 

 2016年、Houser さんは緊張型頭痛でよくみられる箇所である後頭部の痛みを毎日感じ始めていた。食べ物の変更や市販の鎮痛薬で頭痛が改善しなかったため、彼女はプライマリーケア医に相談、その後神経内科医を受診し片頭痛であると言われた。

 当時27歳だった Houser さんは、コンタクトレンズを装着しているときに頭痛が増悪することに気づいた。「それは私の毎日の生活に影響を及ぼしていましたが、問題はコンタクトなのだと考えるよう自分に言い聞かせていました」と彼女は言う。彼女は Lasik surgery(レーシック手術)が有効かも知れないと考え、2017年10月にその治療を受けた。この治療はレーザーを用いて角膜を形成するもので、それによってコンタクトレンズやメガネへの依存を減らし、あるいは排除することができる。

 彼女の視力は改善し痛みも消失した、がそれも一時的だった。眼の手術から一週間後、頭痛が再発した。「私は過度に心配しませんでした」と Houser さんは言う。「多くの人たちが頭痛持ちであることを知っていましたから」

 しかし、数ヶ月後、明確な理由がないまま Houser さんは「実にひどい不安症に襲われました。それは単に私が不安に感じているといったレベルではなかったのです」そう彼女は思い起こす。「私は正常に機能することができませんでした。私はA型人間ですので、不安症がどんなものか知っていました。でもここまでとは思いませんでした」

 2018年初めのある平日の朝、彼女は打ちのめされる感じがしたため欠勤し、双子の Molly(モリー)と母親に電話をかけ、すぐに助けが必要であると話した。

 彼女らは、Houser さんが定期的に受診を始めていた精神科医とセラピストの同日中の診察予約を何とか手配した。その精神科医は近づいていた結婚式に注目し、そのイベントが“非常に大きな不安”をもたらしている可能性があると House さんに説明した。彼女は抗うつ薬の内服を開始するとともに、状態が本当に悪いときには抗不安薬の Ativan(ロラゼパム)を用いた。また精神が静まる効果を期待してヨガを行うよう手筈を整えた。

 Houser さんは、ある朝オフィスへのエスカレーターに乗っていたときのことをありありと覚えていて、そのときには何が原因かわからないまま、「頭の中で『まずいことになった、まずいことになった』と言い続けていました」という。

 彼女の変わっていく容姿もひどい憂鬱の原因となっていた。Houser さんの体重は正常範囲にとどまっていたが、徹底的な食事量制限と著しい運動の強化にもかかわらずなぜ彼女の体重が増えるのか理解できなかった。彼女の元々濃かった髪の毛が著しく細くなっていたため、担当美容師は医師に相談してみるようそっと彼女に助言した。

 Houser さんの精神科医は彼女の脱毛は内服している抗うつ薬が原因ではないかと考え薬を変更した。しかし効果はないようだった。

 Houser さんは最近になって丸くなった顔を特に気にしていた。「家族の中ではジョークのようになっていました」と、彼女が過度に神経質になっていると指摘されからかわれていたという。

 彼女の結婚式の日でさえ、自身の容姿に対する憂鬱と、至るところに存在した形のない強い不安とに襲われていた。

 「考えたのは、どれほど私の胸が高鳴るかではなく、『どうやってこの日を乗り切ることができるか』でした」

 

Normal thyroid 甲状腺機能は正常

 

 結婚してから Houser さんの具合はさらに悪くなった。ひどい不眠、寝汗、そしてにきびが出現した。2019年2月、彼女のプライマリーケア診療所のナース・プラクティショナーが甲状腺の検査を依頼したが正常だった。Houser さんがさらなる検査を強く求めたので彼女は内分泌専門医に紹介された。ストレスを感じているためだとその医師は彼女に説明した。

 満足できなかった彼女は2人目の内分泌専門医を受診したが1人目と同意見だった。「彼女はこう言いました。『あなたには代謝的にはどこも悪いところはないと思います』」そう Houser さんは思い起こす。2人目の内分泌専門医の看護師は診察に一緒に来ていた Houser さんの夫 Doug(ダグ)のいるところで結婚に関する質問を再び持ち出した。「彼女はこう言ったのです。『私は結婚すべきではなかったということがハネムーンの時にわかったのよ』と」彼女がそう話したことを Houser さんは覚えている。「そして『あなたは幸せな結婚生活を送ってる?』と。私は信じられませんでした」

 数ヶ月前、甲状腺の検査を行ったあのナース・プラクティショナーが cortisol(コルチゾール)の数値を測定することに軽く言及していた。このホルモンはストレスに対する身体の反応や他の機能に関与している。Cortisolの上昇は、身体が長期間に渡ってこのホルモンを過剰に産生するときに起こるまれなホルモン異常である Cushing’s syndrome(クッシング症候群、以下 Cushing’s )の可能性を示唆する。

 「彼女は cortisol の検査を無視していましたが、私の心の奥にはずっと残っていました」と Houser さんは言う。

 彼女は2人目の内分泌専門医に cortisol の検査をするよう頼んだ。その医師は同意したが、Houser さんには古典的徴候:すなわち顕著な体重増加、紫色の皮膚線条、および両肩の間の fatty hump(脂肪性のこぶ)、が見られなかったので彼女は Cushing’s ではないと考えていたことをそれまでに彼女に話していなかった。しかし Houser さんには、様々な疾患の治療で長期間高用量のステロイドを内服する人でもみられる Cushing’s に特徴的な “moon face(満月様顔貌)” があった。しかし Houser さんはステロイドを内服していなかった。ただ、不眠、頭痛、にきび、そして不安症は Cushing’s の症候である可能性がある。

 Cushing 症候群にはいくつかのタイプがある。典型的には過剰な cortisol を産生する脳の下垂体あるいは副腎の腫瘍に起因するもので、通常は良性だが時に癌性のことがある。時に、腫瘍は肺や膵臓など体内の別の場所にできることがある。Cushing’s は男性より女がおおよそ5倍多く罹患し、一般的に30歳から50歳の間にみられる。未治療で放置されると致死的となることがある。

 Houser さんの血液、尿、および唾液中の cortisol の濃度を測定した3つの検査では有意に上昇していた;彼女の尿中の濃度は正常に比べ8倍高かった。それまで懐疑的だった Chicago の内分泌専門医は Houser さんに、彼女が Cushing’s であることを告知し、Milwaukee(ミルウォーキー)の内分泌専門医である James Findling(ジェームス・フィンドリング)氏に彼女を紹介した。本疾患に対する彼の治療は国際的に認められている。

 「診断がついて本当に幸せでした」と Houser さんは思い起こす。

 

Revealing photos 写真を見せる

 

 Findling 氏は Houser さんに、2018年10月の診察の際に、数年前に撮られた写真を持ってくるように頼んだ。証拠となる身体的な特徴を見分ける方法として彼が患者に行っている依頼である。Houser さんのケースでは、顔貌の変化が特に目立ったが、それは彼女が一卵性双生児の片方だったからなおさらだった。

 Findling 氏は診断の遅れはよくあることだと指摘するが、それは身体的な変化や他の症状は徐々に知らぬ間に起こる傾向にあるからである。「Houser さんは典型的な Cushing’s の患者には見えなかったのです。彼女には肥満はなく糖尿病や高血圧もありませんでした。多くの症例に比べて捉えにくかったのです」と彼は付け加えて言う。

 次のステップは小さな腫瘍の存在部位を決定することだった。検査では Houser さんの下垂体や副腎には何も認められず、骨盤、胸腹部の CT 検査でも異常は見られなかった。Findling 氏は、高い感度を持つ 検査で、通常の画像検査では捉えられない腫瘍を発見することができる dotate PET スキャン(ソマトスタチン受容体イメージング)を依頼した。この検査で Houser さんの左肺に結節病変が発見された。

 Houser さんは Chicago の胸部外科医にセカンド・オピニオンを求めた。Findling 氏と Milwaukee のFroedtert Hospital(フロエッドタート病院)の胸部外科医は腫瘍を切除する手術を受けるよう強く勧めたが、Chicago の医師は意見を異にした。彼は、肺の結節病変が Cushing’s を起こしているとは考えられないと言い、Houser さんには心理療法と抗不安薬治療を継続することを勧めた。

 「手術後に目が覚めて良くなっていないことがどんな感じかわかりますか?」彼がそう尋ねたことを彼女は覚えている。

 夫とともに熟考し Milwaukee の医師たちと協議したあと、Houser さんは手術を選択、手術は 10月30日に施行され左肺の一部が切除された。病理医は、その結節がbronchial carcinoid(気管支カルチノイド)と呼ばれる緩徐に増大する稀な神経内分泌性肺癌であり Cushing’s を引き起こしうる腫瘍であると診断した。ステージ2のその癌は近傍のリンパ節まで広がっていた。

 「幸運にも早期に切除できたと思います」と Findling 氏は言う。「彼女には持続的寛解と Cushing’s の治癒が得られています」

 「その癌は私を震撼させるものではありませんでした」と Houser さんは言う。彼女は過去に皮膚の悪性黒色腫の切除を受けていたのである。(医師らはそれらの癌には関連はないと考えていると彼女に説明している。)「より重要なことはもはや Cusghing’s がみられないということでした」

 それでは Houser さんを診てきた医師ら(それらの中には内分泌専門医もいた)はなぜ Cushing’s を疑わなかったのだろうか?

 40年のキャリアで本疾患の患者をおよそ2,000人治療してきた Findling 氏によると、医師は Cushing’s が稀であると教えられているが、実際はそうではないという。彼は 2016 年の研究を引用するが、それによると353人の内分泌疾患の患者のうち26人が本疾患であったことがわかっている。

 紫色の皮膚線条とこぶの存在を含めた教科書の記述は、“ほとんど caricature(パロディ)”だと Findling 氏は言う。「Cushing’s は実際には教科書に比べ捉えがたいことがかなり認識されていますし、一方で本疾患は神経精神医学的および神経認知機能的な症状を引き起こし得るのです」

 Houser さんの体重が正常であり高血圧や糖尿病がみられなかった事実が医師らをミスリードした可能性がある。

 「私たちは、特に内分泌専門医の間に少し変化を起こしたように思います」と彼は言い、続けて「スクリーニングの閾値を変える必要がありました。プライマリーケア医に、それは稀な疾患であると説明した時点で、以後顧みられることはなくなってしまうのです。彼らはそれを二度と見ることはないだろうと思ってしまうのです」と話す。

 「この診断が成されれば素晴らしい結果がもたらされるのです」Houser さんのケースを引用し彼はそう付け加える。「それが、私がこの歳までこの診療を続けている理由です」

 Houser さんは Findling 氏を自身の“文字通りの命の恩人”であると考えている。彼女はその翌年の一年をかけて彼の元を受診し、彼女のホルモン値を正常化し体力を回復する薬をゆっくりと中止した。

 彼女は毎年 Cushing’s について観察を続けてもらっているが癌の再発がない状態を維持しており、倦怠感が残っている以外、体調は良い。2021年10月、彼女は女児を出産した。そして8週間前には男児が生まれている。

 Houser さんは家族からの支援が不可欠だったと考えている。特に夫については“私の最大の支援者”と呼んでいた。それはことさら皮肉に思われる。なぜなら彼らの結婚に対するストレスが、実際には癌によってもたらされていた症状の原因とされていたからである。

 「私にもはや戦うエネルギーが残っていなかった時に、医師に電話をかけたり、必要な予約を取ってくれるなど彼は非常に大きな助けとなってくれました」彼の揺るぎない愛こそが「私たちの強い結婚の証だったのです」と彼女は言う。

 

 

 

クッシング症候群(Cushing’s)の詳細については以下のサイトを

ご参照いただきたい。

 

Doctors File

日本内分泌学会

兵庫医科大学

 

Cushing’s は、

腎臓のすぐ上にある副腎から分泌される cortisol(コルチゾール)という

ホルモンが様々な原因で過剰分泌されることで発症する症候群である。

本症候群では、肥満、筋肉の衰え、皮膚の菲薄化などの症状が特徴として現れる。

Cortisol は生体機能をサポートする働きを持つ生命維持に不可欠なホルモンで、

通常は起きている間に多く分泌され、寝ている時には分泌量が減るが、

Cushing’s では常時大量の cortisol が分泌され、糖尿病、高血圧、うつ病など

様々な病気が誘発される。

 

Cushing’s の原因として以下の病態が挙げられる。

① 副腎に発生した腺腫、癌、あるいは結節性過形成から cortisol が

過剰に産生される。

② 脳の下垂体にできた腺腫から、副腎からの cortisol 分泌を促進する

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が過剰産生され cortisol が高値となる。

このケースは特に『クッシング病』と呼ばれる。

③ 下垂体以外の部位に発生した腫瘍が ACTHを過剰に産生する。

④ Cortisol と同様の作用を持つ薬剤の投与による副作用。

 

1998の本邦における調査によると、上記の原因別では、

副腎腺腫が 47.1%,下垂体性が 35.8% とこれら二者で大半を占め、

異所性 ACTH産生腫瘍は 3.6% となっている。

 

①の場合、cortisol の過剰により下垂体に抑制がかかり

ACTHが低値となる。ACTHが低値にもかかわらず cortisol が

正常~高値を呈する場合には副腎の異常を疑う。

Cortisol 値が正常の場合でも、深夜の cortisol が高かったり、

cortisol の作用をもった薬であるデキサメタゾンを負荷しても

cortisol 分泌が抑制されない場合には、本症候群の可能性を疑う。

なお、副腎腫瘍や結節性過形成のケースでは一部に遺伝子異常の関与が

示唆されている。

②の下垂体に異常がある場合、微小腺腫のことが多く、

腫瘍が同定できないことがある。

そういったケースでは下垂体近傍の静脈にカテーテルを挿入し血液を採取、

同時に採血した末梢静脈血のACTH値と比較して診断される。

③の病変には、小細胞肺がん、あるいは、肺またはその他の部位の

カルチノイド腫瘍などが挙げられる(異所性 ACTH 産生腫瘍)。

異所性ACTH産生腫瘍は、小細胞肺癌が最も多く全体の約50%を占め、

次いで胸腺もしくは気管支カルチノイドが約25%、膵島細胞腫が約10%、

その他のカルチノイドが5% となっている。

異所性ACTH産生腫瘍はやや男性に多く、40歳から60歳に多い。

 

ところで、cortisol 値の異常があっても、後述の特徴的な身体徴候を

欠く場合がある(サブクリニカルクッシング症候群)。

Cushing’s はかなりまれな疾患であるが、近年では人間ドックなどでの

画像検査を契機に副腎腫瘍が発見される機会が増えており、

この病気(特にサブクリニカルクッシング症候群)が診断される頻度は

増加傾向にある。

 

 

症状

Cortisol の影響により体幹に過剰な脂肪がつくため、肥満傾向が見られる。

丸く大きな顔貌(ムーンフェイス・満月様顔貌)は特徴的な徴候の一つ。

肥満については、手足の筋肉が萎縮し体幹に比べ細くなることから

“中心性肥満”と呼ばれる様相を呈する。

また肩の後ろに脂肪がつくため、水牛のような盛り上がった肩となるが、

これは水牛様肩、野牛肩、あるいはバッファローハンプと呼ばれている。

一方、皮膚は薄くなり毛細血管が拡張するためピンク味を帯びたまだら模様になる。

少しの打撲でも内出血を起こしやすくなり、傷を生ずると治りにくくなる。

腹部やでん部に赤いスジ(赤色皮膚線条)もみられる。

ただしこれら特徴的な身体所見が顕著に認められないケースも多いため

注意を要する。

病気が進むと感染症にかかりやすくなり敗血症が原因で死亡に至る場合もある。

また精神的症候としてうつ傾向が見られる。

その他、合併症として糖尿病、脂質異常症、高血圧、骨粗鬆症などがみられる。

 

 

検査・診断

中心性肥満、ムーンフェイス、皮膚萎縮、皮下出血などの特徴的臨床徴候から

本症候群を疑う。

診断を確定するには、血液検査で血中の cortisol 値の日内推移、

他の副腎ホルモンの数値、ACTH の値などを測定する。

また尿中の cortisol やその代謝産物を測定する。

ホルモン過剰分泌の原因病変を特定するためCTやMRIなどの画像検査を行う。

Cortisol を産生する副腎腺腫の確認には 131I-アドステロールシンチグラフィーが

行われる。

異所性ACTH 産生腫瘍の局在診断にはソマトスタチンアナログを用いた

111N-オクテレオチドシンチグラフィー(ソマトスタチン受容体シンチグラフィー)や

FDG-PETが用いられる。

 

 

治療

基本的には、外科的治療が選択される。

下垂体腺腫が原因の場合は、経鼻内視鏡手術によって腫瘍を摘出する。

下垂体腺腫が小さくて同定し難い場合には、再発することもあり、

その際は再手術が必要となる。

手術での改善が見込めない場合には、コルチゾールの合成を阻害する内服薬や

注射薬の使用も検討される。

副腎の腫瘍が原因の場合は副腎の腫瘍のみを取り出すか副腎そのものを摘出する。

一側の副腎を摘出した場合、残存副腎の機能が十分となるまでに

術後6ヶ月から1年以上を要するため、その間は内服でホルモンを補充する。

治療が成功した場合、満月様顔貌や中心性肥満などの症状は徐々に改善するが

骨粗鬆症は完全には回復しないこともある。

現在 Cushing’s は、早期に発見しきちんと治療をすれば2~3ヵ月で改善に向かう

完治の可能性の高い疾患とされている。

なお特徴的な徴候がみられない“サブクリニカルクッシング症候群”においては、

手術の適応は腫瘍の大きさや合併症の程度に応じて判断される

ただし放置され病状が進行すると、様々な合併症(高血圧、糖尿病、脂質異常症、

骨粗鬆症など)が引き起こされ生命に関わることがあるため注意が必要となる。

 

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