MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

犬に咬まれるということ

2017-06-21 16:15:37 | 健康・病気

6月のメディカルミステリーです。

 

6月16日付 Washington Post 電子版

 

A dog bite sent him to the ER. A cascade of missteps nearly killed him.

犬に咬まれたことで彼は ER に送られた。間違いの連鎖で彼はほとんど命を落とすところだった。

 

夫人の Becky さんと写真に納まっている David Krall さんは、患者の多くが死亡する病気のため病院で51日間を過ごした。

 

By Sandra G. Boodman,

 2015年9月25日の午前8時ころ、Becky Krall さんが病院の緊急室のガラス戸を急いで通り抜けたとき、医師の診察を待って座っている患者の中に、発熱している夫の David さんがいるものと思っていた。しかし、自家用車を駐車しようとしていた約15分の間、彼を病院に残してきた Krall さんを待っていたのは緊急のメッセージを持った看護師だった:50才になる夫の反応が突然なくなったというのである。

 Krall さんは救命救急医の言葉を恐ろしいほど鮮明に覚えている。「彼女は私の膝の上に手を置いてこう言いました。『ご主人はきわめて重症です。彼が今日一日を乗り越えられないことも覚悟しておいてください』」

 この10年、丈夫で健康だった夫がどうしてそれほど急速に悪化したのか?そう不思議に思ったと Krall さんは思い出す。その前夜、Krall さんは彼を同じ ER に車で連れて行っていた。彼の発熱と倦怠感を精査するために緊急治療センターから送られたのである。その夫婦はそこで5時間ほど待ったが、ER が非常に混雑しており、David さんの状態に変化がないようにみえたため医師の診察を受ける前に引き上げていた。朝の方がチャンスがあるかもしれないと彼らは考えたのである。

 その決断が、生産技術者をしている David さんを患者の60%から80%を死に至らしめる劇症の疾患と戦わせることになってしまった一連の重大な間違いの一つだったとBecky Krall さんはいう。Lexington にある University of Kentucky Albert B. Chandler Hospital の医師らはなんとか David さんの命を救ったが、彼には永続的な高度の聴力障害が残った。また彼の足の指の数本は部分的な切断を余儀なくされた。

 大学で STEM 教育(科学・技術・工学・数学に重点を置く教育)の準教授をしている Becky さんは「長い間、重い罪の意識を感じてきました」と言い、今回の厳しい試練の精神的後遺症と闘い続けている。「今は多くの情報があります。しかし、その時はそれについて何も知りませんでした」彼女は、救急診療部門の変革を促す一助となった夫のケースが訓話として生かされることを望んでいる。

 「両方の立場に教育的な欠如があったと思います」David さんの病気の根本的原因を最終的に明らかにした感染症専門医の Derek Forster 氏は言う。「彼にはすべての古典的徴候と、さらに別個の疾病経過の症状がありました」David Krall さんはインタビューを拒否したが、彼のケースを医師たちが説明することについては承諾した。

 

A failure to communicate 意思疎通の失敗

 

 マラソンをしている David さんが入院する3日前、仕事を終えた彼は夫婦で飼っている犬を連れてランニングに出かけた。郊外の自宅に戻ったとき、首輪が外れた隣の犬が Krall さんの犬の方にまっしぐらに向かってきた。犬たちを引き離そうとしたとき、隣のシュナウザーが Krall さんの大腿部に深々と咬みつき、出血を伴う深い傷を負った。

 David さんは石鹸と水で傷を洗い、抗菌クリームを塗った。その翌日、彼はその後の治療のため緊急治療センターを受診した。彼には、決まったかかりつけ医はなく、35年前に交通事故で脾臓摘出術を受けた以外は健康だった。

 クリニックの医師は破傷風の注射を行った;その犬は狂犬病のワクチンを受けていた。その医師は予防として抗生物質の処方を打診したが、咬傷の5%しか感染を起こさないと誤って伝えた。(実際には犬咬傷の統計では20%前後となっており、咬傷が皮膚を損傷している場合には多くの医師は通常抗生物質を処方する)。抗生物質の使い過ぎを心配した David さんはそれなしで済ませることにした。

 翌日午後5時ころ、彼は Becky さんに電話をかけ、調子が悪く家まで車で帰られないと彼女に告げた。

 「David には病気はありませんでした」と Becky さんは言う。「彼の咬傷が感染したか、あるいは破傷風の注射に対する反応だと思いました」彼女は彼を迎えに行き、クリニックに再び連れて行った。

 ナース・プラクティショナーが彼の体温を計ると 華氏102.9度(39.4℃)で、咬傷周囲が熱く、若干腫れていることに気付いた。彼女は Krall 夫妻に、大学病院の ER に行くように言い、前もって電話をしておくと伝えた。

 しかし、この夫婦が午後7時30分ころ到着したとき電話された痕跡はなかった。(UK Health Care の救急業務の部長である Patti Howard 氏は、1マイル離れて2ヶ所の UK hospital があると述べている。彼女によれば、その電話は UK Good Samaritan Hospital の方にかけられた可能性があるという。そういった間違いはよくあるのだそうである)

 30分ほど医師の診察を待ったあと、Becky さんは13時間以上も閉じ込めている飼い犬のことが心配になった。彼女は家に戻り散歩をさせ午後9時15分ころ病院に戻った。

 彼女がいない間、トリアージ・ナースが David さんを診察した。彼は、高熱の治療を求めていて、2日前に(破傷風ではなく)インフルエンザの注射を受けたと彼女に告げた。彼は犬咬傷について、さらに他の重要な詳細には触れなかった。

 カルテには、彼の血圧が低く、時に 78/60 まで下がっているとあった;低血圧は 90/60 を切る場合と考えられている。David さんの体温は華氏101度(38.3℃)前後で推移していた。質問に対する彼の反応はゆっくりで、ふらつきを訴えた。しかし彼の最初の血液検査はほぼ正常のようであったと感染症の専門医である Forster 氏は言う。Howard 氏によると、ER のスタッフはDavid さんから彼がランナーであると告げられていたのでそのことが彼の低血圧に関連しているのではないかと考えたと Howard 氏は言う。

 その後 3時間、この夫婦は医師の診察を待った。ER は混雑しており、受付に行くことも質問をすることもしなかったと Becky さんは言う。一方、David さんのバイタルサインは一定の間隔で調べられた。「彼らはやっていることをちゃんと理解しているのだから自分たちの順番をひたすら待たなければならないのだと考えました」と彼女は言う。

 深夜をちょっと過ぎたころ、Becky さんは、David さんを観察していたパラメディックに、一旦自宅に戻り朝に再び受診するつもりであると告げた。

 「あの時点では、医師の診察を受けるのにさらに4時間はかかるだろうと考えました」と彼女は言う。別の ER に電話をかけていたが、そこでも待ち時間はおよそ4時間であると告げられていた。

 「もし自分のガールフレンドがこんな血圧だったら帰ろうとはしないでしょう」そのパラメディックがそう話したと彼女は言う。David さんの正常血圧がどれほどかも知らなかったし、あるいはそのスタッフが言いたいこともわからないまま、尋ねることもしなかったと Becky さんは言う。

 「だけどあなたたちは何もしていません」そう彼に言ったことを彼女は覚えている。夫婦は疲れ切ってそこを去った。記録によると、彼らが去って間もなく David さんは医師の診察に呼ばれていたという。

 

Frantic efforts 懸命の努力

 

 午前4時、断続的に眠ったあと、Becky さんは目を覚まし David さんの体温を測った。華氏 102.9度(39.4℃)を示していた。2、3 時間後、夫婦は車で病院に戻った。

 David さんの病状は悪化していたが、苦労しながら車に乗り込むことはできた。病院で Becky さんと ER の助手が彼を車椅子に乗せた。

 (駐車場に車を置いてきた)Becky さんが、彼女を見つけるように言われていた看護師とともに駆けつけると David さんはストレッチャーの上に目を閉じて横になっており、“明らかにボーッとしていた”。彼の指の爪は青く、ショックの徴候を示していた。

 「きっと犬の咬傷か破傷風の注射が原因です、と言ったことを覚えています」と Becky さんは思い起こす。彼女はさらに、前夜スタッフに伝えられていなかったことを話した:すなわち David さんに脾臓がないということである。免疫系に重要な役割を持つこの腹部臓器を欠いていることで彼は感染に著しく脆弱になっていた。脾臓のない人は一般的に、特別な予防策を講じ、予防接種を遅れないように行い、脾臓がないことを医療関係者には必ず告げて、さらに感染が疑われる最初の徴候があれば抗生物質を内服するように言われる。

 Becky さんも David さんも特別な予防策については何も知らなかったと彼女は言う。David さにはかかりつけ医はおらず、髄膜炎に対するものを含め予防接種を受ける機会もなかったのである。

 医師らは彼の命を奪おうとするものが何かを解明し彼を救命するための懸命の努力を開始した。彼の腎機能は低下し、呼吸困難となっており、播種性血管内凝固を起こしていたため自然に出血を起こす可能性があった。彼の頭部のCTでは髄膜炎を起こしている可能性が示された;菌は血液にも侵入し敗血症性ショックを起こしていると医師らは考えた。

 Becky さんによると、David さんが集中治療室に移されたあとも、彼女は考えられる彼の感染の原因が犬咬傷ではないかと繰り返し話した。しかし、医師らは、咬傷は関係ないと考えていると彼女に告げたという。David さんの髄膜炎は Neisseria meningitidis(髄膜炎菌)という細菌によって引き起こされたものとの確信を彼らは深めていた。しかしどのようにして彼にその菌が入ったのかは謎だった。

 Becky さんは、生理学者の友人が、犬の唾液に感染している Capnocytophaga canimorsus という稀な細菌についての論文を医学誌で見つけたことから、このことを強く主張し始めた。この菌は特に脾臓のない人において致死的となりうる感染症を引き起こすからである。

 David さんの51日の入院期間の6日目に呼ばれた Forster 氏は、ICU のチームが「犬咬傷のことを余談として話していた」ことを思い出す。「その傷が悪いようには見えなかったと彼らは言い、それに注目していませんでした」

 しかし Forster 氏は注目した。たとえ細菌が感染した犬の唾液が身体の内部で問題を起こしていたとしても、傷に発赤や膿などの感染徴候が認められないことがある。「私は過去のケースを6年前にフェローとして見ています」と Forster 氏は思い出す。Capnocytophaga こそ「私が思いついた一番目のものでした」

 彼は微生物検査室に電話をかけ、David さんの血液の菌について何か異常に気付かなかったどうか検査技師に尋ねた。「彼女は、それらが実に小さく見え、ナイセリアの菌体のように丸くなく、棒状であったと言いました」。

 Forster 氏によると、菌体はゆっくりと成長したが、それはまさに capnocytophaga の特徴だった。培養で2、3日後に成長すると、検査室は彼の疑いを確定した。

 

A standout case 際立った症例

 

 「私には過去のケースを見ていたという強みがありました」と Forster 氏は言い、capnocytophaga は「かなり稀です」と付け加えた。「100のうち99は neisseriaです」

 しかし、「犬咬傷との時間的関連は無視するには近過ぎました」と彼は付け加える。

 Forster 氏によると、幸いにも両感染症の治療法は類似しているというが、David さんの治療計画は capnocytophaga に特異的に照準を合わせて調整された。

 11日間、昏睡状態に医学的に誘導された David さんは、いくつかの妨げによって中断がありながらも回復に至るまでの困難な数ヶ月間を経験した。難治性の感染のために3本の足指の一部を切断しなくてはならなかった。病気によって引き起こされた聴力喪失は人工内耳によって軽減された。

 咬傷後に David が拒否した抗生物質が敗血症を予防できた“十分な可能性”はあると考えていると Forster 氏は言う。「医療の提供者が…抗生物質を内服しないことの危険性を彼に知らせていなかったと思います」と Forster 氏は言う。

 培養が進めば彼の関与がなくても検査室がこの稀な感染症を特定できただろうと彼は考えている。しかし David のケースは「第一線の医療提供者にこれらの稀な感染症について知っておいてもらう必要があることを強調するものです」と言う。

 医師たちが David さんの命を救ってくれたことに、Becky Krall さんは夫とともに深く感謝していると彼女はいう。彼らの経験によって、救急診療部門における意思疎通を向上させる重要性と、脾臓のない人が直面する潜在的な危険性が強調されることを望んでいる。

 David さんの病気の重症性に対して最初の ER 受診時に迅速な対応がなされなかったこと、夫の状態がどれほど悪かったかを彼女が気付けなかったことには今でも彼女は平静さを保てないでいる。敗血症で苦しんでいる最中には、しばしば患者が混乱したり意識が混濁していることから、David さんがトリアージ・ナースに誤った情報を与えてしまっていたことをずいぶん後になって彼女は知った。病院当局によると、David さんに脾臓がないこと、犬に咬まれたことがわかっていれば、彼のケースには敗血症に対する警戒が喚起され、治療が最優先されていただろうという。

 「もしもう一度繰り返すことがあれば、犬に餌をやるために病院を後にすることはないでしょう」と Becky さんは言う。「あの時、自分こそがすべての経過を知っている唯一の人間だったと思ったときの私自身に対する嫌悪感を想像してみてください」

 昨年、Krall 夫妻の求めにより、彼らは病院関係者と面談し意思疎通の改善法を討議した。

 「私たちは今回のケースを詳細に調べました」と UK HealthCare の救急医療部門の部長である Roger Humphries 氏は言う。今回のケースだけでなく他のケースも受けて、現在、忙しい午後や夜の勤務時間帯に一人の医師がトリアージチームに加わることになっている。さらにスタッフの目に容易にとまる追跡ボードに患者のバイタルサインを表示するようになっている。「2015年の秋に比べるとはるかに良い状況にあると思います。スイスチーズの多くの穴を塞げたと考えています」

 

 

一般に敗血症から細菌性髄膜炎を起こす病原微生物としては

記事中にも出てきた髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)が有名である。

一方、本ケースで髄膜炎を引き起こしていたのは

Capnocytophaga canimorsus

(カプノサイトファーガ・カニモルサス)である。

カプノサイトファーガ感染症についての詳細は

厚生労働省の HPZoonosis 協会のページ

ご参照いただきたい。

これは犬や猫の口腔内に常在している細菌である

(2006年の国立感染症研究所年報によると犬の保有率は96%)。

犬や猫に咬まれたり、引っ搔かれたりすることで

ヒトで感染・発症する恐れがある。

犬や猫から咬傷からヒトに感染する菌には

皮膚に常在するブドウ球菌や連鎖球菌などのほか、

犬、ネコに常在する特異な病原微生物として

パスツレラ菌やバルトネラ菌(猫ひっかき病)による

感染症の頻度が高い。

一方、カプノサイトファーガ菌については

本邦では重症化した症例は十数例の報告を見るのみであり、

その頻度は低いとみられている。

症状としては、咬傷部の局所症状に乏しい傾向が見られる一方、

発熱、倦怠感、腹痛、嘔気、頭痛などの

全身症状が主体となることが多い。

潜伏期は2~14日のため、傷口が既に治癒していることがあり

診断がむずかしい場合がある。

重症例では敗血症、心内膜炎、髄膜炎を起こし

播種性血管内凝固症候群(DIC)や敗血症性ショック、

多臓器不全に進行し死に至ることがある。

敗血症発症例の約30%、髄膜炎発症例の約5%が死亡する。

脾臓摘出者、アルコール中毒、糖尿病などの慢性疾患、

ステロイドや免疫抑制薬の服用例、免疫不全疾患、担癌患者、

高齢者など、免疫機能が低下している人では

感染後重症化するリスクが高いため注意が必要である。

こういった例では、咬傷時に予防的に抗菌薬投与を

行っておくことが重要である。

なお免疫機能が低下していない人でも、

感染・発症する事例があるため、

動物と触れ合った後は手洗いなどを確実に行うことが重要である。

診断は、血液や脳脊髄液を培養して菌を分離・同定する。

生育が遅い菌のため、本感染症が疑われる場合には、

確定診断が出るまでに早期の治療を開始する必要がある。

治療はペニシリン系、テトラサイクリン系の抗菌薬が

推奨されている。βラクタマーゼを産生する場合もあり、

ペニシリン系抗菌薬を用いる場合には考慮する必要がある。

昨今のペットブームで犬・猫による咬傷・搔傷の機会は

増しているとみられるが軽く見るのは禁物だ。

それにしても、米国では、夜間 ER で診てもらうのが

あれほど大変なことだとは…トホホである。

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2017年7月新ドラマ

2017-06-07 20:43:43 | テレビ番組

 

まずは 2017年4月クールのドラマを総括する。

 

このクールも悲しいほどの低レベルだった。

そんな中でも、テレ朝の刑事ドラマは堅調。

他局においても警察ドラマはそこそこ数字を獲れていた。

やはり視聴率を確保するには

中高年層をターゲットにしなければダメなのかもしれない。

 

それでは6月4日放送分までの

平均視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]上位から順に

コメントする。( )内数字は平均視聴率


 

『緊急取調室2』(14.08%)木曜21時 テレビ朝日系

2014年1月クールで放映されたテイストとはずいぶん変化した。『緊急事案対応取調班(通称・キントリ)』の口の悪いオッサンたちが、今回はミョーに主人公・真壁有希子(天海祐希)に協力的。また前シーズンではかなりの時間を割いていた有希子の自宅での2人の子供たちとのやり取りが一切描かれない(オッサンたちは招集できたが、杉咲花を押さえることができなかった?)。結果的に今クールでは有希子のプライベートは封印、ということか?第1シーズンを視てきたものとしてはかなり違和感を持つ。それでも容疑者たちとの特別取調室の中での心理戦が楽しめたためか前シーズンを上回る視聴率をゲットした。

 

『小さな巨人』(13.15%)日曜21時 TBS系

捜査一課から所轄に左遷されたノンキャリ刑事が捜査一課長をはじめとする警視庁の面々と対峙する姿が描かれる警察ドラマ。警察が舞台となっているが、ドラマの雰囲気は『半沢直樹』『下町ロケット』そっくり。部下たちの協力を得て上司の不正を暴くところはまさに『半沢直樹』、懸命の捜査が実を結び星を挙げることができたときに所轄署員らが一同に雄たけびを上げてガッツポーズをするシーンはまさに、『下町ロケット』で精巧な部品が完成したときの“佃製作所”で見たまんま(安田顕の立ち位置・表情は全く同じ)。わざわざタイムリミットを仕掛けて、期限ギリギリ目的達成!てなシーン、もう見飽きた。香川照之の大げさな演技といい、感動の押し売りにはうんざり。

 

『警視庁捜査一課9係(12)』(11.65%)水曜21時 テレビ朝日系

主役の渡瀬恒彦の撮影直前の急死で、おさえた出演者らを今さらキャンセルできなかったのか、主役不在のままドラマを敢行。やはり扇のかなめを失った影響は大きく大役をイノッチに負わせるには荷が重すぎてドラマはバラバラ。それでもそこそこの視聴率は確保できたのは脚本の力?

 

『CRISIS~公安機動捜査隊特捜班』(10.76%)火曜21時 フジテレビ系(関西放送)

テロリスト、政治家、新興宗教、軍事スパイなど深刻な脅威と対峙する公安機動捜査隊特捜班の活躍が描かれた作品。1話完結型のストーリー展開ながら、毎回すっきりした解決が得られず視聴者の欲求不満は高まるばかり。“本当の正義とは何か”と能書きを垂れながら平然と悪をのさばらせてしまう始末。折角犯人のアジトをあばきながら、特捜班わずか5人の少人数で突入し一応激しいアクションをやって見せるものの、結局犯人を取り逃がすという失態の繰り返し。これではさすがに視聴率も低迷する。いい雰囲気でスタートしたが5分でメッキが剥がれてしまい貧相なスケールであることが露呈。予想通り、所詮関テレ制作ドラマだった…。

 

『あなたのことはそれほど』(10.48%)火曜22時 TBS系

現実的判断で2番目に好きな男性と結婚してしまった主人公(波瑠)が、1番好きだった男性と再会。相手が妻帯者と分かりながらもドロ沼に溺れていく不倫ラブコメ。背徳行為にはまっていく女と男に何ら共感も感情移入もできず、“冬彦さん”張りの狂気に満ちた裏切られる夫(東出昌大)が話題とのことだが、その稚拙な演技力では、佐野史郎に失礼だろう。不倫相手の重要な役どころも、“ルーズベルトゲーム”で意地の悪そうなピッチャーだった、程度の記憶しかない劇団EXILE では、どうしてこんなヤツに、という疑問しか残らない。そもそも、色気には無縁の波瑠を主人公に選んだことが最大のミスキャスト。それでも視聴率がV字回復とは、やはり日本という国では“不倫は文化”なのかも?

 

『ボク、運命の人です。』(9.58%)土曜22時 日本テレビ系

30年近くも幾度となくすれ違いをしてきた男女の“運命の恋”を描くラブコメディ。恋愛が苦手な主人公・正木誠(亀梨和也)を、自称“神”と名乗る謎の男(山下智久)がアドバイスし状況を“操作”する。山Pの棒演技はともかく、亀ちゃんの健闘ぶりはなかなかで、阿部サダヲを彷彿とさせる演技だった。この二人どこか似てる?惜しむらくは、ヒロイン役の木村文乃。ただでさえ華に欠けるのに、友人役に菜々緒を持ってくるとは…。キャスティングにもう少し配慮を望む。

 

『母になる』(9.20%)水曜22時 日本テレビ系

3歳のとき誘拐され行方不明となっていた息子と9年後に再会、元の親子関係を取り戻そうと懸命に努力する母親、一方、生みの母親の記憶はなく、育ててくれた女性だけを親と認められない子供。それぞれの切実な心の葛藤が感動的に描かれるのかと思いきや、ミョーに間の抜けたコメディシーンが頻繁に登場。視聴者はどう受け止めていいのか混乱してしまう。さらに母性が全く感じられない沢尻エリカの心の内が全く伝わってこない。夫婦を演じる沢尻と藤木直人を見ても、“1リットルの涙”の患者と主治医だったな、という思いだけが心に浮かびドラマに入り込めない。子役のジャニーズ含めて、俳優陣の演技力不足がはなはだ残念だった作品。

 

『貴族探偵』(8.97%)月曜21時 フジテレビ系

ファンの方には申し訳ないが、相葉雅紀は殿様キングスの宮地オサムに似ていると常々思っていた。庶民的で人懐っこい笑顔がウリなそんな彼を“貴族”にしたてたことがそもそもの間違い。しかも登場シーンはヒロイン役の武井咲の半分ほどしかなく、「推理などという雑事は使用人に任せておけばいいんですよ」の決めゼリフすら滑舌がおぼつかない。しかし、このドラマの失敗の原因は相葉くんにあるのではなく、彼を選んだフジテレビの責任ではなかろうか。

 

『リバース』(8.55%)金曜22時 TBS系

湊かなえの同名小説が原作。10年前の男子大学生の死をめぐり、深瀬和久(藤原竜也)らゼミ仲間たちの疑惑、贖罪、友情、葛藤に向き合う姿が描かれた。メンバーそれぞれが抱える複雑な悩みや問題を細かく描くのに時間を割いたためドラマの展開が遅く、視聴者をくぎ付けにすることができなかったものとみられる。

 

『フランケンシュタインの恋』(8.01%)日曜22時30分 日本テレビ系

100年前、ある事件をきっかけに生み出された怪物(綾野剛)と病気を抱えるリケジョ・津軽継実(二階堂ふみ)の恋物語。キノコが怪物の頸から生えたり、布団にキノコが密生する様はゾッとしてしまうのだが、心温まるシーンも多く、個人的には今クール、一押しドラマ。脇を固める柳楽優弥や新井浩文らが好感度大、とりわけ “口は悪いが根はいい元ヤン”・室園美琴役の川栄李奈の好演が光る。

 

『人は見た目が100パーセント』(6.56%)木曜22時 フジテレビ系

桐谷美玲演じる『女子力ゼロの理系女子(リケジョ)』が同僚女子2人と一緒に、一念発起して女子力アップに邁進し輝く女をめざして奮闘するラブコメディ。地味で冴えないブスというからには、てっきり桐谷が特殊メイクでもして登場するのかと思いきや、ただメガネをかけて地味風にしてるだけ。これがブスなら、本当のブスはどうなる?今が旬だったはずのブルゾンちえみの使い方にもひねりなし。研究と称してメイクやアイテムを安直に取りそろえるのだが、その量も半端ない。リアリティ、ゼロ。ドラマとして面白さを全く感じられず早々にリタイア、で予想通りの低視聴率。

 

『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』(5.54%)日曜21時 フジテレビ系

骨好き変人お嬢様・九条櫻子(観月ありさ)がたぐい稀なる骨知識を用いて難事件を解決する。原作のキャラに忠実に沿ったのかもしれないが主人公の上から目線のぶっきらぼうな口調は、観月ありさだと余計に腹立たしくイライラした。『何事にも必ず“骨”がある。それが通れば、真相はおのずと見えてくる』という理論で事件を解決に導いていき、最後の決めゼリフは『骨がすべて繋がった』。原作もあり企画も悪くないと思うのだが、これを日曜劇場の裏に持ってくるのは自殺行為としか思えない。

 

『女囚セブン』(5.52%)金曜23時15分 テレビ朝日系

殺人の冤罪で女子刑務所に放り込まれた京都の芸妓・神渡琴音(剛力彩芽)が持ち前の優れた能力で他の女囚たちからのいじめを逆手にとってのし上がり、自身の事件の真相をも明らかにしていく。アホらしいドラマではあったが、剛力の流暢な?京都弁とキツネのお面のような異様な風貌がかなりマッチしていてそこそこ楽しめた。

 

 

それでは、ここから

7月からの新ドラマをチェックする。

 

 

フジ月9 7/17~ コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命科~シーズン3 山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、浅利陽介、比嘉愛未、有岡大貴(Hey!Say!JUMP)、成田凌、新木優子、馬場ふみか、安藤政信、椎名桔平、他

 2008年7月のシーズン1、2010年1月のシーズン2 から、なんと7年ぶりの復活。当時、新垣、戸田らが若過ぎて違和感がハンパなかったが、すっかりオバ…、失礼、大人の女性に成長し立派なドクターになったことだろう。一方、医療の現場では、当時最先端だったドクターヘリも今やすっかり救急医療の一翼として定着した。今シーズンでは10年以上のキャリアを超え30代になったメンバーたちのエピソードが描かれる。主人公・藍沢耕作(山下智久)は翔陽大学付属北部病院(翔北病院)の救命センターを離れ脳外科医として研鑽を積み、さらなる高みを目指して日々手術を行っていた。白石恵(新垣結衣)は人手不足の翔北救命センターでフライトドクターのスタッフリーダーとして奮闘。戸田恵梨香演じる緋山美帆子は翔北病院を離れ周産期医療センターで産婦人科医としての道を歩んでいた。藤川一男(浅利陽介)は白石とともに翔北救命を支える整形外科専門の救命医、看護師・冴島はるか(比嘉愛未)は今もフライトナースとしての道を極め続けエースとして活躍中。それぞれが真剣に命に向き合いながら、あるものは家族を失い、あるものは恋人と出会い、あるものはライバルと熾烈な戦いを繰り広げるなど、かつてのメンバーたちを中心に、新たな局面を迎えた彼らの悩みや葛藤が描かれる。今回からの新たなキャストとして、フライドドクターのフェロー・名取颯馬役の有岡大貴、同じく灰谷俊平役の成田凌、同じく横峯あかり役の新木優子、プライドの高いナース・雪村双葉役の馬場ふみらが加わる。また、藍沢のライバルとなる脳外科医・新海広紀役に安藤政信、さらにシーズン2から続いて救命医として活躍する橘啓輔役に椎名桔平がキャスティングされている。構図としては成長した中堅医師らと新人医師らとが救急医療の現場でぶつかり合いながらも救命に奮闘するといった感じか?なんだかまとまりがつかないドラマになりそうな予感もする。

 

 

フジ(関西テレビ)火9 7/18~ 僕たちがやりました 窪田正孝、永野芽郁、新田真剣佑、間宮祥太郎、葉山奨之、川栄李奈、三浦翔平、水川あさみ、板尾創路、古田新太、他

 “そこそこ”で生きていた、いかにもイマドキな4人の若者たちの青春逃亡サスペンス。原作は金城宗幸/原作、荒木光/作画の漫画『僕たちがやりました』。事件の容疑者となってしまった男子高校生たちが各々逃亡を開始。逃亡劇を通じて揺れ動く若者たちの心情が描かれる。主人公のトビオを演じるのは28歳の窪田正孝。ある日、通っている学校の向かいにあるヤンキー高校の不良たちに、仲間をボコボコにされた凡下(ぼけ)高校2年生の増渕トビオ(窪田)らはちょっとしたイタズラ心で、復讐を企てる。ところが、計画実行の日、それがとんでもない大事件に発展してしまう。気づいた時には、向かいのヤンキー高校が火の海となり10人の死者を出す。ワケが分からないまま、“爆破事件の容疑者”となった彼らが選んだ道は“逃げる”ことだった。こうして、若者たちの青春逃亡劇が始まるが、彼らを待っていたのは刑事や教師の追跡、不良たちの報復、抑えきれない欲望と仲間割れ、大好きなあの子との別れ、そして罪悪感。そんな彼らが右往左往しながらも成長していく様が描かれる。主要人物のキャスティングとして、まず、トビオの幼なじみ・蒼川蓮子役に永野芽郁、トビオと対立する矢波(やば)高校イチの不良・市橋哲人役に新田真剣佑、トビオの同級生・伊佐美翔役に間宮祥太朗、同じく同級生のマル(丸山友貴)役に葉山奨之、エロカワ系な伊佐美の彼女・新里今宵役に川栄李奈。さらに、凡下高校のOBで格段に“キャラ立ち”したパイセン(小坂秀郎)役に今野浩喜、クールで冷酷な刑事・飯室成男役に三浦翔平、ドラマオリジナルのキャラでトビオの担任教師・立花菜摘役に水川あさみ、いんぎん無礼な裏社会の弁護士・西塚智広役に板尾創路、そしてその西塚をアゴで使う謎に包まれた裏社会のドン・輪島宗十郎役に古田新太。逃亡する4人はトビオ、伊佐美、マル、パイセンとみられるが、はたしてシニア層にも鑑賞に耐えうるドラマかははなはだ疑問である。

 

 

TBS 火10 7/18~ カンナさーん! 渡辺直美、要潤、川原瑛都、斉藤由貴、山口紗弥加、トリンドル玲奈、朝加真由美、遠山俊也、他

 原作は、『YOU』(集英社)に連載された深谷かほるによる同名コミック。自由奔放な“ダメ夫”や姑、理不尽な会社の上司などに振り回されながらも、ハッピーに生きる女性主人公が描かれる。グラマラスな“ぽっちゃり体型”ながら人並みはずれたファッションセンスを持つ主人公・鈴木カンナを渡辺直美が演じる。男気あふれるサバサバした性格のカンナは、とあるアパレル会社の雇われファッションデザイナー。デザイナーとして大きな夢と斬新なアイデアを持つが、まわりの理解が得られず会社では浮いた存在だった。一方、カンナの夫・鈴木礼(要潤)は CG 制作会社を起業し、小さい会社ながらも社長を務める天才 CG クリエーター。イケメンで優しい夫にカンナはメロメロだ。二人の間には4才になる可愛い一人息子・麗音(川原瑛都)がいて仲睦まじく暮らしていた。そんなある日、信頼していた夫の浮気が発覚。さらに、理不尽な上司から押しつけられる大量の仕事、マザコン夫を溺愛する過保護な姑、わがままで泣き虫で甘えん坊な息子の子育て…などなど、さまざまな難題に襲われる。しかしカンナは持ち前の超ポジティブな性格とパワフルさでそれらから逃げることなく奮闘する。その他の主要人物には、まずゲス夫・礼の母親・鈴木柳子役に斉藤由貴、カンナが働くアパレル会社の先輩・片岡美香役に山口紗弥加、アパレル会社の同僚・境川翔子役にトリンドル玲奈らがキャスティング。多彩な才能で根強い人気を維持している渡辺直美だが、彼女の弱点とみられる演技力…。どれほど成長しているかが勝負の分かれ目か?

 

 

テレ朝水9 7/12~ 刑事7人(3) 東山紀之、高嶋政宏、片岡愛之助、倉科カナ、塚本高史、吉田鋼太郎、北大路欣也、他

 第1シリーズ 9.6%、第2シリーズ 10.3% とテレ朝刑事ドラマとしては決して良い視聴率ではなかったが昨年に続いて7月クールで第3シリーズを敢行。東山紀之演じる刑事・天樹悠を中心に7人のスペシャリストたちが難解な刑事事件に挑む。今シリーズでは、これまで事故によるとみられていた天樹の妻子の死に隠された衝撃の真実も明らかになるとか。刑事総務課課長・片桐正敏(吉田鋼太郎)が室長となり、東京臨海エリアを専従捜査する“第11方面本部準備室”が発足する。天樹のほか、沙村康介(高嶋政宏)、水田環(倉科カナ)、青山新(塚本高史)、山下巧(片岡愛之助)らに加えて、天樹の義父で法医学者の堂本俊太郎(北大路欣也)が招集され、『警視庁捜査一課12係』のチームが復活する(オリジナルメンバーからは鈴木浩介が抜けている)。2020年に向けて目まぐるしい再開発に伴う利権争いが激化し新たな犯罪の温床となりつつある臨海エリアで、複雑化、多様化、そして国際化する超凶悪犯罪に挑む活躍が描かれる。

 

 

日テレ水10 7/12~ 過保護のカホコ 高畑充希、黒木瞳、時任三郎、他

 遊川和彦オリジナル脚本の社会派ホームドラマ。人生すべて親任せで世間知らずの過保護女子大生が社会に出て自分と正反対の環境で育った青年と出会い、成長していく姿が描かれる。21歳になる女子大生の主人公・カホコこと根本加穂子(高畑充希)は何から何まで親の庇護のもと温々と生きてきた“奇跡の純粋培養人間”。就職間際の21歳にして、アルバイトもしたことがなく、一人で服を選べない。送迎付きだったため駅まで歩いた事もなかった。そんなカホコがついに社会に飛び込むことになる。ところが出会った一人の青年に『お前みたいな過保護が日本をダメにする』と告げられる。かくして、カホコの『自分探し』が始まり、毎回“初めて”な経験を通して自身の中に眠っていた本当の“力”が家族の問題を次々と解決していくことになる。カホコの母親・根本泉役に黒木瞳、父親・根本正高役に時任三郎がキャスティング。毒舌男に一括されて主人公が成長していくパターンはまさに『東京タラレバ娘』な感じ?

 

 

テレ朝木9 7/20~ 黒革の手帖 武井咲、江口洋介、仲里依紗、滝藤賢一、和田正人、内藤理沙、高嶋政伸、真矢ミキ、奥田瑛二、高畑淳子、伊東四朗、他

 またかと思ってしまうのだが、1978年から1980年に『週刊新潮』に連載された松本清張の名作『黒革の手帖』の3度めとなる連続ドラマ化(過去2回はいずれもテレビ朝日)。1982年は山本陽子主演、記憶に新しいところでは 2004年に米倉涼子主演で制作されている。愛と欲望渦巻く夜の世界で最強悪女の孤高の戦いが描かれる。派遣社員として勤めていた銀行から1億8千万もの大金を横領した原口元子(武井咲)はその金と借名口座のリストが記された“黒革の手帖”を盾に、銀座にクラブ『カルネ』をオープンし夜の世界の蝶へと華麗な変身を遂げる。危険と知りながらも“黒革の手帖”を武器に魑魅魍魎の“怪物”たちと渡り合い自らの野望を果たすべく戦いを繰り広げる。主要な登場人物には、元子との恋に悩む衆議院議員公設秘書・安島富夫役に江口洋介、『カルネ』のホステスで元子のライバルとなる山田波子役に仲里依紗、元子が働く東林銀行世田谷北支店の次長・村井亨役に滝藤賢一、元子が最初に働く銀座のクラブ『燭台』のママ・岩村叡子役に真矢ミキらがキャスティングされている。各登場人物の名前がいかにも昭和で、話ネタもかなり時代遅れな感じであるが、それよりも武井咲にしたたかな夜の女が演じきれるのか、そちらの方が心配だ。

 

 

フジ木10 7/13~ セシルのもくろみ 真木よう子、吉瀬美智子、板谷由夏、伊藤歩、長谷川京子、他

 原作は主婦層に人気のファッション誌『STORY』で2008年から2010年にかけて連載された唯川恵の同名小説。“美”から遠ざかっていた主婦が、運命のいたずらで読者モデルとなり一流のモデルとして成功の階段を駆け上っていく中で、ファッション雑誌業界を舞台に専業主婦・独身・共働き・シングルマザーなど様々な立場の女性たちが嫉妬や野心や友情の狭間でぶつかり合いながらも幸せを探していく群像劇。タイトルの“セシル”の由来はフランスの小説家・フランソワ―ズ・サガンの名作『悲しみよこんにちは』の主人公・セシルから。唯川恵の原作では、“セシル”が、かわいい顔をしているが恐ろしい“もくろみ”を持った少女に潜む悩み、葛藤、思惑などを抱いている“オンナ”の部分の意味で用いられている。主人公の専業主婦・宮地奈央(真木よう子)は、金型仕上げ工の夫と中学1年生の息子との3人暮らし。総菜屋にパート勤めをしており、自分を飾ることには興味がなくオシャレより実を取る母親。そんなある日、人気女性ファッション誌『ヴァニティ』の編集デスクにたまたま読書モデルとしてスカウトされたことから生活が一変する。奈央がタッグを組むことになる仕事崖っぷちライターや、美しさとプロ意識で他を圧倒するトップモデルらと接していくうちに“自分を美しく見せたい”という気持ちが強くなっていく。嫉妬、見栄、生存競争、経済格差、禁断の男女関係など、“オンナの世界”でもがきながら変貌を遂げる。主人公以外の主な登場人物とキャスティングは、まず奈央の憧れであり最大のライバルとなる『ヴァニティ』のカバーモデルで女性のすべての要素を兼ね備えたパーフェクトな女性・浜口由華子役に吉瀬美智子、『ヴァニティ』のライターとして半信半疑で読者モデルの奈央とタッグを組むことになる沖田江里役に伊藤歩、奈央をスカウトしファッション業界へと引き込む冷静沈着、かつ策略的な『ヴァニティ』の編集部デスク・黒沢洵子役に板谷由夏、『ヴァニティ』の元ナンバー2モデルで現在はテレビコメンテーターとして活躍する安永舞子役に長谷川京子。女性中心の女性ファッション誌の世界で繰り広げられる女たちの生き様が描かれる。“読モ”版『ファーストクラス』な感じの業界ドラマか?

 

 

TBS金10 7/14~ ハロー張りネズミ 瑛太、深田恭子、森田剛、山口智子、中岡創一(ロッチ)、片山萌美、他

 原作は1980年〜1989年にわたって講談社『週刊ヤングマガジン』にて連載された弘兼憲史の同名コミック。東京都板橋区下赤塚にひっそりと事務所を構える『あかつか探偵事務所』。誰も引き受けたがらない面倒な案件ほどやりたがる一風変わった探偵“ハリネズミ”こと七瀬五郎(瑛太)とその仲間たちが、人情味あふれる哀しい事件や想像を超えた難事件に挑む。主人公の五郎はスケベで多少おせっかいなところもあるが、情に厚く実直な男。ある事件をきっかけに五郎と知り合うことになる正体不明のミステリアスな美女・四俵蘭子を深田恭子が演じる。五郎と同じく『あかつか探偵事務所』に所属し、五郎の良き相棒である“グレさん”こと木暮久作役に森田剛、『あかつか探偵事務所』の所長で、昼間から酒をあおる飲兵衛だが、五郎たちを温かく見守る風かほる役に山口智子。そのほか、事務所の下にあるスナック『輝(キララ)』のマスター役に中岡創一、そこのバイト従業員・萌美役に片山萌美。人情モノもあれば、殺人ミステリー、超常現象、ホラー、国際犯罪、歴史ミステリーなど多岐に渡る事件を、一見頼りない探偵たちが抜群の潜在能力で解決していくちょっと変わった探偵コメディ。

 

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 7/28~ あいの結婚相談所 山崎育三郎、高梨臨、他

 動物行動学の准教授の経歴を持つ結婚相談所の所長が“ワケあり男女たち”の出会いを、あの手この手で100%結婚へと導くエンターテインメントコメディ。原作は2010年~2016年に『ビッグコミックオリジナル増刊号』に連載された、原作・矢樹純、作画・加藤山羊の人気コミック。主人公は不器用な恋愛を一刀両断する強烈なキャラクターを持つ結婚相談所所長・藍野真伍。これをドラマ初主演となる山崎育三郎が演じる。また藍野の相談所でアシスタントを務めるシスター・エリザベス役に高梨臨。毎回、結婚に悩むワケあり依頼者の願いを入会金200万円、成婚率100%の同相談所があらゆる手段を用いて成就させる。成婚率100%の秘密は、藍野の動物行動学の研究を活かした独自のカウンセリングにあった。藍野の『愛はよこしまなもの、余計な恋愛感情をできるだけ排除することが成婚への近道』という信念から、『婚約が成立するまでお相手の方と直接会ってはならない』とのルールを依頼者に守らせる。依頼者らはパソコン動画を通しての会話を重ねてお互いを知っていくことになる。また藍野は、その動物や昆虫に対する深い知識で依頼者と相手の性格や心理を分析し、彼らに毒舌を浴びせながらも最後には結婚へと導いてしまう。一方のシスター・エリザベスは修道服に身を包み、上から目線で失礼な言動を繰り返す藍野所長に対し怒りを露わにすることも。依頼者がイケメンだとすぐに惚れ込んでしまい、藍野の指示を無視して依頼者のために先走りしばしば失敗してしまう。最終的には藍野が見事にカバーして事なきを得ることから、藍野の手腕を認めざるを得ず必死についていこうとする。奇人の藍野と猪突猛進キャラのエリザベスのとんでもコンビと、毎回の“ワケあり”ゲストたちとのコミカルなやりとりが展開か。2011年の読売テレビのドラマ『四つ葉神社ウラ稼業 失恋保険~告らせ屋~』(古田新太他出演)風な感じでもある。

 

 

日テレ土10 7/8~ ウチの夫は仕事ができない 錦戸亮(関ジャニ∞)、松岡茉優、佐藤隆太、壇蜜、藪宏太(Hey!Say!JUMP)、イモトアヤコ、他

 見た目よし、学歴よし、収入よしでまさに“理想の夫”だったはずの主人公が、実は職場で足を引っ張りまくりのお荷物社員だった。“できる夫”と信じ込んでいる妻にお荷物社員ぶりを知られてはならないと奮闘する主人公だったが、繰り返す仕事のミス、屈辱、部下から向けられる軽蔑の視線に『会社辞めたい、もう限界』と思った時、妻の妊娠が発覚する。一家の大黒柱として会社を辞めるわけにはいかない。子供を産む妻を不安にさせてはいけない。仕事ができるようになりたいと、夫婦二人三脚の社会サバイバルをスタートさせるというお仕事ホームコメディ。主人公の、イベント会社『マックスエンターテインメント』に勤務する仕事ができない男・小林司役に錦戸亮、若くして結婚したためか若干世間知らずの司の妻・沙也加役に松岡茉優。司の上司でチームリーダーの土方俊治役に佐藤隆太。この男、『男の価値は仕事がすべて』という考えの持ち主で重要な仕事はすべて引き受けるため上からの評判はいいが、部下たちは仕事が増えて大変な思いをしている。司の上司のキャリアウーマン・黒川晶役に壇蜜、『男になんて負けたくない』と肩ひじ張って働き社内では男のように振舞うが、お酒が入ると人が変わる。そのほか、司の後輩で土方の腰巾着の田所陽介役に藪宏太、沙也加のマタ友(マタニティー友達)の町田あかり役にイモトアヤコ、司の姉・小林みどり役に江口のりこ。興味がそそられないコメディのようだが、果たして錦戸で視聴率が獲れるだろうか?脚本が朝ドラ『べっぴんさん』で不評だった渡辺千穂ということで、さらに心配。

 

 

NHK日8 継続 大河ドラマおんな城主 直虎 柴咲コウ、杉本哲太、財前直見、前田吟、春風亭昇太、宇梶剛士、吹越満、三浦春馬、貫地谷しほり、菅田将暉、高橋一生、でんでん、筧利夫、柳楽優弥、市原隼人、小松和重、浅丘ルリ子、阿部サダヲ、菜々緒、ムロツヨシ、和田正人、苅谷俊介、小林薫、山口紗弥加、光浦靖子、田中美央、矢本悠馬、寺田心、他

 直虎役の柴咲コウ、これから先、貫禄が出てくるのだろうか?甲高い声で『何を言っておるのじゃ』てな、ワンパターンなセリフ回し、いつまで続くのか?これまでのところ井伊家のドタバタホームコメディの様相で相変わらず戦国時代の緊迫感は皆無。辛抱強く視てきたが、これ以上視聴を続ける苦痛に耐えられず、10年以上続けてきた大河ドラマ視聴をついに断念!

 

 

TBS 日9 7/9~ ごめん、愛してる 長瀬智也(TOKIO)、吉岡里帆、坂口健太郎、大竹しのぶ、池脇千鶴、大西礼芳、六角精児、中村梅雀、他

 2004年に韓国 KBS ドラマで制作され高視聴率を獲得した韓流ドラマのリメイク。母親に捨てられ復讐を誓った男が、運命の女性に出会い、生まれて初めて人を愛すること、愛されることを知るラブストーリー。幼いころ母親に捨てられ不遇な環境で過ごしてきた岡崎律(長瀬智也)。血の気が多くケンカは強いが人間的な温かみを持つ男だった。裏社会で暗澹たる日々を送っていた律は、ひょんなことから一人の女性・三田凜華(吉岡里帆)を助ける。しかし、律は事件に巻き込まれ頭に致命的な怪我を負ったため、命がいつ尽きるかわからない状態になる。せめて最期に親孝行がしたいと実母を探し始めた律は母親・日向麗子(大竹しのぶ)を探し当てる。しかし律が目にしたのは、貧しさゆえに自分を捨てたと思っていた母親が息子のサトル(坂口健太郎)に溢れんばかりの愛情を注ぐ姿だった。サトルは元ピアニストの麗子の英才教育を受け実力派アイドルピアニストに成長していた。裕福で幸せそうな二人の様子に愕然とした律は母親への思慕と憎しみに葛藤する。そんな時、律は凜華と再会する。凜華は幼馴染みであるサトルに思いを寄せていたがその想いは届かず寂しさを抱えていた。しかし凛華は、律の内に秘める孤独と、人としての温かさに触れるうち、次第に律に惹かれるようになっていく。律と同じ児童養護施設で育った河合若菜役の池脇千鶴が、事故で高次脳機能障害を持つ8歳の息子の母親を演じる。また、サトルが、夢中になる個性的天才サックス奏者・古沢塔子役に大西礼芳、大西自身サックスが得意なんだとか。その他、律の出生の秘密を知るゴシップ記者・加賀美修平役に六角精児、麗子のマネージャで凛華の父・三田恒夫役に中村梅雀らがキャスティングされている。“頭の致命的な怪我”“実力派アイドルピアニスト”など韓流特有の怪しげなフレーズが気になるところである。

 

 

フジ 日9 7/9~ 警視庁いきもの係 渡部篤郎、橋本環奈、三浦翔平、長谷川朝晴、石川恋、清原翔、でんでん、寺島進、浅野温子、他

 原作は大倉崇裕の小説『小鳥を愛した容疑者』『蜂に魅かれた容疑者 警視庁いきもの係』『ペンギンを愛した容疑者 警視庁いきもの係』『クジャクを愛した容疑者 警視庁いきもの係』(いずれも講談社刊)。警視庁総務部総務課・動植物管理係(架空の部署とのことである)の鬼警部補と新米巡査のコンビが動物の生態をもとに事件解決に奔走する異色コメディーミステリー。叩き上げの鬼刑事だったが、ある事件で負傷し捜査一課を外された鬼警部補・須藤友三(渡部篤郎)が配属されたのは、容疑者や行方不明者などのペットを保護する窓際部署の“警視庁総務部総務課・動植物管理係”(通称=警視庁いきもの係)。そこで出会ったのは、獣医学部卒の動物マニア女子・薄圭子(うすきけいこ)巡査(橋本環奈)。人間よりもむしろ動物をこよなく愛しわが道を突き進む圭子に怒り心頭の須藤だったが、現場に残されたペットの様子を手がかりに、その豊富な知識と鋭い観察力から驚くべき推理を展開する圭子の実力を認め、凸凹コンビを組むこととなる。周りを固める配役は、まず、須藤の後輩で捜査一課時代に須藤とコンビを組んでいた警視庁捜査一課所属の巡査部長・石松和夫役に三浦翔平、須藤の元同僚で上昇志向が強く左遷された須藤を蔑視する警視庁捜査一課警部・日塔始役に長谷川朝晴、一見ギャル風ながら意外な洞察力を持ち合わせている警察博物館の受付嬢・三笠弥生役に石川恋、定年退職した元刑事で現場経験のない圭子に事件捜査に関するアドバイスを送る二出川昭吉役にでんでん、日塔、石松のもとで働く警視庁捜査一課所属の巡査・桜井薫役に清原翔、ある考えがあって須藤を“警視庁いきもの係”に異動させた須藤の元上司警視庁捜査一課管理官(警視)・鬼頭勉役に寺島進、“警視庁いきもの係”の唯一の事務担当職員で何かと須藤たちを気遣う警視庁総務部総務課・事務担当職員・田丸弘子役に浅野温子、そして、第1話で圭子に助けられその後総務課の飼い猫となる“ナオミ”役には映画『高台家の人々』(2016年6月4日公開)でも存在感を示したスター猫のティティ(猫種:スコティッシュフォールド)。毎回さまざまな動物たちがゲスト主役として出演するらしい。当節、“獣医学”のキーワードにはギクッとしてしまうのだが、まさか特別な意図はない?

 

 

日テレ 日10:30 7/16~ 愛してたって、秘密はある。 福士蒼汰、川口春奈、鈴木保奈美、遠藤憲一、小出恵介、鈴木浩介、岡江久美子、他

 秋元康が企画・原案を手がけるラブミステリードラマ。父親を殺した過去を隠し続ける主人公と、その秘密を知らずに付き合い続ける恋人との『真実の愛』をめぐる物語。主人公・奥森黎(福士蒼汰)は中学生の頃に母親・奥森晶子(鈴木保奈美)をDVから守るために父親を殺害した過去があった。父親が失踪扱いになったことで、殺人は母と二人だけの『秘密』となった。『自分には友人も恋人もいらない』と、誰とも深く関わることなく慎ましく生きてきた黎は司法修習生となっていた。そんなとき、黎は、同じ司法修習生・立花爽(たちばなさわ)(川口春奈)と出会い恋に落ち結婚を決意する。しかしプロポーズの直後から、『秘密』を知る何者かから不気味なメッセージが届き始める。『秘密』を暴こうとしている犯人はだれか?黎は恋人に『秘密』を告白できるのか?『秘密』を知ったとき彼女は黎を愛し続けられるのか?『秘密』を背負った愛の極限が問われる“自問自答ラブミステリー”なんだとか。その他の主要な登場人物とキャスティングは、黎が殺害した父親・奥森皓介役に堀部圭亮、看護師である母親・晶子の勤める病院医師・風見忠行役に鈴木浩介、黎の友人の司法修習生・安達虎太郎役に白洲迅、爽の父親・立花弘晃役に遠藤憲一、爽の母親・立花茜役に岡江久美子、爽の恩師で法科大学院講師の香坂いずみ役に山本未来など。なお、爽の兄でジャーナリストの立花暁人役に決まっていた小出恵介は女子高校生に対する飲酒・淫行強要の事実が発覚し降板が決まったようである。このドラマ、日曜夜に視るにはちと暗すぎる感じもするのだが…。

 

 

7月クールは

オーソドックスな医療ドラマ、探偵ドラマがある一方、

突拍子もない個性的な主人公が登場するコメディなど、

バラエティには富んでいるようだが、

とりわけ視聴意欲を掻き立ててくれるようなドラマは

残念ながら見当たらない。

『コードブルー』で巻き返しを図りたい月9だが、

1stシーズン15.9%、2ndシーズン16.6%のような高視聴率は

とても望めないだろう。

一方、瑛太ドラマがどれほどの視聴率を獲れるかが見もの。

楽しみにしたい。

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