MrKのぼやき

煩悩を解脱した中年男のぼやき

2021年1月新ドラマ

2020-12-30 14:52:06 | テレビ番組

年の瀬もいよいよ押し詰まり、明日を残すのみとなった。

2020年は新型コロナウイルスの流行で散々な一年だった。

もちろんテレビドラマ界も大混乱。

感染はまだまだ収束にはほど遠い状況だが、

ドラマの方はウィズ・コロナでなんとか足並みが揃いつつある。

 

いつもなら2020年秋ドラマについての総括をするところだが、

今一つ頭が整理できていないので、

今回は2021年1月ドラマのチェックのみとさせていただいた。

ご参考いただけたら幸いである。

 

©フジテレビ

 

フジ月9 2020/11/2 ~ 放映中(2クール) 『監察医 朝顔2』 上野樹里(主演)、時任三郎、風間俊介、加藤柚凪、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES/ジャニーズJr.)、戸次重幸、坂ノ上茜、平岩紙、三宅弘城、板尾創路、柄本明、他

2020年11月2日から始まり月9では異例の2クールにまたがっての放映中。各話で主人公の法医学者・桑原朝顔(上野樹里)が、遺体に関連する事件、事故と向き合う一方、縦軸には東日本大震災で行方不明となった母への思い、刑事の夫・桑原真也(風間俊介)の職務上のトラブル、老いとともに娘の死を受け入れようとする祖父・嶋田浩之(柄本明)の姿などが描かれていく。取り扱う事件一つ一つには大きなドラマはなく付け足しのような内容のため毎話スッキリ感は今一つだが、ドラマの狙いはそこではないのだろう。2クールの長丁場でちょっと退屈になってくるところもあるが、後半の展開に期待したい。

 

 

フジ(関西テレビ)火9 1/12 スタート 『青のSP(スクールポリス)~学校内警察・嶋田隆平~』 藤原竜也、真木よう子、明日海りお、山田裕貴、泉澤祐希、たくませいこ、渋谷謙人、智順、兒玉宣勝、金沢雅美 、音尾琢真、石井正則、須賀健太、遠藤雄弥、峯村リエ、升毅、山口紗弥加、高橋克実、他

日本の中学校で初めて導入されるスクールポリスが、SNSトラブルや生徒の薬物疑惑、盗撮事件などに取り組んでいくオリジナルドラマ。学校内に警察官が常駐しトラブル対応や予防活動を行う制度を取り入れた赤嶺中学校に、警視庁捜査一課の敏腕刑事だった嶋田隆平(藤原竜也)が自ら志願し配属される。この中学、表向きは何の変哲もない公立校だが、スクールポリスによって様々な問題があぶり出されていく。SNS、薬物、盗撮、さらにはマタハラやセクハラなど学校に潜む様々な問題に嶋田は想像を絶する方法で対処していく。法に触れれば、教師であれ、生徒であれ容赦なく逮捕。常に冷静で毒舌な嶋田が、学校にはびこる“悪”を痛快に成敗する。嶋田が配属される赤嶺中学校の国語教師・浅村涼子に真木よう子、校長・木島敏文に高橋克実、英語教師・水野楓に山口紗弥加、数学教師・一ノ瀬悟に石井正則、そして所轄の少年係刑事・三枝弘樹に山田裕貴らが配役されている。『この学校の生徒に守る価値があるのか確かめたかった』と意味深な言葉を放つ嶋田がスクールポリスとなった目的と知られざる過去が徐々に明らかになっていく。

 

 

TBS 火10 1/12 スタート 『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』 上白石萌音、菜々緒、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、間宮祥太朗、山之内すず、橋爪淳、宮﨑美子、高橋ひとみ、倉科カナ、ユースケ・サンタマリア、亜生(ミキ)、高橋メアリージュン、なだぎ武、久保田紗友、秋山ゆずき、他

安定志向の平凡女子が東京の大手出版社のファッション誌編集部で鬼上司などに向き合いながら恋や仕事に悪戦苦闘する。上白石萌音演じる主人公・鈴木奈未は、その名の通り『仕事も恋愛もほどほどに。人並み で普通の幸せを手にしたい』というイマドキの安定志向の持ち主。地方の田舎町で生まれ育った奈未は、夢もやりたいことも特にない平凡女子。東京で暮らす幼馴染で片思いの健也を追いかけるため、東京の大手出版社の備品管理部の求人募集を見つけ、採用されるが、配属されたのは備品管理部ではなくファッション雑誌編集部。そこで出会うのは、菜々緒演じる最年少編集長である宝来麗子。彼女は24時間仕事モードのまさに『バリキャリ』で、『超敏腕』『毒舌・冷徹』な鬼上司だった。麗子は生半可な気持ちで働く奈未に対して冷たく当たる。それを理不尽に感じていた奈未だったが、麗子の仕事に対する姿勢を間近で見ているうちに、奈未の仕事への意識が変わっていく。さらに、運命的に出会った玉森裕太演じる子犬系イケメン御曹司でカメラマンの潤之介から突拍子もない提案を受ける。鬼上司だけでなく子犬系御曹司にも振り回されることになった奈未は夢を見つけ、前に進むべく変わっていく。一方、御曹司の方も、元々超天然でマイペースだったが、奈未の優しさや温かさに触れるうち、自身にとって大きな一歩を踏み出す勇気を持てるようになる。さらに間宮祥太朗演じる出版社の先輩編集者・中沢涼太も奈未の真っ直ぐな心に惹かれていくことに。田舎育ちの女の子が上京して恋愛モードに突入という内容はまさに『恋は続くよどこまでも』の出版社版?

 

 

テレ朝水9 2020/10/14 ~ 放映中(2クール) 『相棒 season19』 水谷豊、反町隆史、川原和久、山中崇史、山西惇、石坂浩二、杉本哲太、仲間由紀恵、柄本明、浅利陽介、篠原ゆき子、他

2002年から続く人気シリーズ、19シーズンの後半クール。きわめてマンネリな内容だが、数あるテレ朝刑事ドラマの中ではやはり秀逸。

 

 

日テレ水10 1/13 スタート 『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』 菅野美穂、浜辺美波、福原遥、沢村一樹、川上洋平、岡田健史、大地伸永、長見玲亜、有田哲平、中川大輔、東啓介、中村雅俊、他

北川悦吏子・脚本によるオリジナルドラマ。恋愛小説家の母とオタクの娘のトモダチ母娘の二人が、それぞれ恋愛を始める。菅野美穂演じる売れっ子恋愛小説家でシングルマザーの水無瀬碧(みなせ あおい)の悩みの種は、浜辺美波演じる20歳の一人娘・空(そら)が筋金入りのオタクで、漫画やコスプレに夢中で彼氏ができないこと。一方、空の悩みの種はいい歳をして天然、暴走、世間知らずの三拍子が揃った『天然のアラフォー』の母親・碧。人にも男にもすぐ騙されてしまう。そんな天然の母としっかり者のオタク娘が、とある理由から突如「恋をしよう!」と恋活をすることを決意する。碧の幼馴染・ゴンちゃんに沢村一樹、碧の編集担当者・橘漱石に川上洋平、空の通う大学の同級生・入野光に岡田健史、漱石の恋人・伊藤沙織に福原遥らが配役されている。今の状況にはちょっと軽すぎる感じのドラマ。

 

 

テレ朝木9 1/21 スタート 『にじいろカルテ 』 高畑充希、北村匠海、井浦新、安達祐実、真島秀和、水野美紀、光石研、西田尚美、泉谷しげる、モト冬樹、半海一晃、池田良、他

岡田惠和・脚本によるオリジナルドラマ。とある病で秘密を抱える女ドクターが、山奥の小さな村の診療所で男2人の外科医・看護師とシェアハウス生活をしながら個性的な村人と暮らしていく。東京の大病院の救命救急の現場で働く医師・紅野真空(高畑充希)は“ある病気”が発覚したため仕事を辞め山奥にぽつんと佇む虹ノ村診療所にやってくる。降り立った村のバス停で迎えを待っていると、まるで座敷童のような少女が真空に手招きをしていた。導かれるように、村唯一の食堂「にじいろ商店」の中へ入ると、そこにはまるで妖怪のように個性豊かな虹ノ村の村人たちが大集合していた。やがて案内された診療所で、『本業は農家だ』と豪語するツナギにサングラスのヘンテコ外科医・浅黄朔(井浦新)、超優秀ながらすぐキレる若き前髪ぱっつん看護師の蒼山太陽(北村匠海)とともに一つ屋根の下で暮らすことになる。真空は医者でありながら患者でもあるという新たな人生と向き合いなら、徐々に虹ノ村にとってなくてはならない愛される存在へと成長していく。スーパードクターとはかけ離れた医師たちが織り成すチーム医療の成長譚が繰り広げられる。テレ朝木9では異色の内容。

 

 

フジ木10 1/7 スタート 『知ってるワイフ』 大倉忠義、広瀬アリス、瀧本美織、松下洸平、おかやまはじめ、森田甘路、川栄李奈、片平なぎさ、佐野ひなこ、安藤ニコ、猫背椿、生瀬勝久、他

 

原作は韓国の有料ケーブルテレビチャンネル・tvNで2018 年8月~9月に放送された同名ドラマ。恐妻家の男がある日突然大学時代にタイムスリップし、幸せな結婚生活を求めて人生を変えようとする。結婚生活5年目、夫も妻も相手への気遣いができなくなっていく頃、唯一の共通の思いは『なんでこの人と結婚してしまったのだろう』。銀行に勤め、結婚5年目で2児の父親である剣崎元春(大倉忠義)は、職場では上司から叱責され、自宅では妻・澪(広瀬アリス)から罵声を浴びせられる、そんな肩身の狭い毎日を過ごしていた。そんな時、大学時代“女神”と呼ばれ男子学生のあこがれの的だった後輩・江川沙也佳(瀧本美織)と偶然再会。沙也佳は巨大企業・西急グループの令嬢。彼女から『実は好きだった』と打ち明けられた元春は『彼女を選んでいたら』と強く後悔する。そんなある日、元春は街中で話しかけられた男からもらった500円硬貨がきっかけで突然大学時代にタイムスリップする。望んでいた人生を手に入れた主人公がどんな思いでやり直していくのか。“自分にとって大切な人とはどんな人なのか?”“誰かと人生を生きていくとはどういうことなのか?”そんな夫婦の普遍的ともいえるテーマを追求する。いかにも韓流ドラマらしいSFタイムスリップもの。

 

 

TBS金10 1/22 スタート 『俺の家の話』 長瀬智也(TOKIO)、戸田恵梨香、荒川良々、桐谷健太、平岩紙、永山絢斗、江口のりこ、三宅弘城、羽村仁成(ジャニーズ Jr.)、井之脇海、秋山竜次(ロバート)、他

工藤官九郎・脚本によるオリジナルドラマ。プロレスラーを引退し、能楽の人間国宝である父の介護をすることになった男が名家の遺産相続と介護で激しいバトルをする。主人公はプロレスラー・ブリザード寿こと観山寿一(みやまじゅいち)(長瀬智也)。寿一は幼少時代、二十七世観山流宗家にして重要無形文化財「能楽」の保持者である父の観山寿三郎(西田敏行)から一度も怒られたことがなかった。一緒に悪さをしても、怒られるのは弟子で芸養子となった寿限無(桐谷健太)のみ。しかし寿三郎は、初舞台以降「神童」と讃えられた寿一を褒めることもなく、それが幼い彼の心を傷つけていた。やがて寿三郎には反発した寿一は、母の死後、家を出てプロレスラーの道へ進む。時は流れピークを過ぎたレスラーとなってしまった寿一の元に寿三郎危篤の知らせが飛び込んでくる。急いで病院に駆け込んだ寿一は、久しぶりに会った弟の踊介(永山絢斗)と妹の舞(江口のりこ)から、一昨年に寿三郎が脳梗塞で倒れたことを聞かされる。別れの挨拶は2年前に済ませたと言い遺産や相続の話を始める弟妹に寿一は激昂する。そして寿一は二十八世観山流宗家を継承すべく、プロレスラーを引退することを決めた。しかし引退試合を終えた寿一を待っていたのは、寿三郎が退院したという知らせだった。寿三郎は一門の幹部、そして家族を前に、これまでの威厳はどこへやら、デイケアサービスで寿三郎の担当介護ヘルパーだった志田さくら(戸田恵梨香)と結婚すると言い出す。呆気にとられる寿一ら家族を余所に、自身の余命とすべての遺産をさくらに相続すると告げ混乱の渦へ。観山家を舞台に介護と遺産相続をめぐる壮絶バトルが勃発する。

 

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 2020/10/9 ~ 放映中 『24 JAPAN』 唐沢寿明、仲間由紀恵、佐野史郎、木村多江、筒井道隆、でんでん、栗山千明、池内博之、桜田ひより、高橋和也、神尾佑、前川泰之、桜井淳子、朝倉あき、片瀬那奈、他

物語が一話あたり1時間しか進行しないので非常にじれったい。唐沢寿明演じる主人公・獅堂現馬が孤軍奮闘するのだが、テロ対策ユニットの一員として総理候補・朝倉麗(仲間由紀恵)の暗殺計画阻止のために奔走するというよりも、人質に取られた自分の妻と娘を救うことが最優先で、そのために他の誰かが命を落とすことになってしまうという、あまりに自己中心的な振る舞いから主人公に全く共感することができない。テロ実行チームも層が薄く、テレ朝の気合いが入っている割にチープなドラマになってしまった(原作が怒るのでは?)。

 

 

日テレ土10 1/23 スタート 『レッドアイズ 監視捜査班』 亀梨和也、松下奈緒、趣里、シシド・カフカ、松村北斗、木村祐一、他

国内に500万台ある監視カメラなど最新の科学情報捜査を行う特別捜査官が、愛する恋人を殺した連続殺人鬼を追うオリジナルドラマ。最新鋭の監視システムを駆使して犯罪捜査に当たるKSBC(神奈川県警捜査分析センター)を舞台に、捜査官たちがリアルタイムで犯罪者を追跡するサイバークライムサスペンス。亀梨和也演じる元神奈川県警捜査一課の刑事だった伏見響介は神奈川県警と協力して捜査を行う民間の捜査機関KSBC(神奈川県警捜査分析センター)の特別捜査官に転身、民間捜査員として過去に犯罪歴がありながら天才的な頭脳を持つ人物たちを招集し、最新の科学情報捜査で難事件に挑みつつ、KSBCの捜査能力を駆使して愛する恋人を殺した連続殺人鬼の行方を追う。KSBCセンター長・島原由梨に松下奈緒、同所属情報分析官・長篠文香に趣里、KSBC 所属の元犯罪者の捜査官には、元大学教授で詐欺師の山崎辰二郎に木村祐一、ハッカーの小牧要に松村北斗(SixTONES)、元自衛官の湊川由美子にシシド・カフカが配役されている。

 

 

NHK日8 放映中 大河ドラマ『麒麟がくる』 長谷川博己、染谷将太、佐々木蔵之介、風間俊介、尾野真千子、伊藤英明、川口春奈、他

コロナ禍で調子が狂ってしまったが、なんといっても舞台は戦国時代。物語は徐々に盛り上がりを見せてきた。ただ、大仰で奇妙なセリフ回しをする一部のおっさん(堺○○とか片○○太郎)らのおかげで拍子抜け。最終回は2月7日だそうで、いよいよクライマックスは近い。

 

 

TBS 日9 1/17 スタート 『天国と地獄~サイコな2人~』 綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、北村一輝、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、他

森下佳子・脚本によるオリジナルドラマ。どん詰まりな女性刑事とサイコパスな男性殺人鬼の2人の魂が入れ替わり、複雑な世界が始まる。綾瀬はるかが演じる警視庁捜査一課の刑事・望月彩子(もちづき・あやこ)は努力家で正義感が強く、気が強く、融通が利かない、それに加えて上昇志向も強いが、慌てん坊で失敗も多い35歳。物事を「〜 すべき」「〜であるべき」と考える“べき論”タイプ。そのためその物言いや性格が上司や周囲の人たちに煙たがられている。とにかく融通が利かず一直線で、頑張りすぎて失敗も多い存在。そんな彩子は自分を馬鹿にする周囲に一矢報いるためには、大手柄をあげるしかないと意気込んでいた。そんなある日、独自の捜査でかき集めた証拠を手に、ある殺人事件の容疑者となる男を、自らの手で逮捕する大チャンスが到来したのだが、そんな矢先に彩子は不運にもその男と魂が入れ替わってしまう。そんな彩子と幸運にも?魂が入れ替わるサイコパスな殺人鬼・日高陽斗(ひだか・はると)を高橋一生が演じる。日高は、表向きは化学畑の研究者であり、若くしてベンチャーを立ち上げた、やり手の経営者。頭の良い人間にありがちな「上から目線」などまったくない超スマートな好人物だ。しかしそんな日高の本当の姿は、その類いまれなる頭脳と知識を駆使したサイコパスな殺人鬼だった…。この二人のほかの登場人物には、まず、彩子の家に居候中の、のんびり屋なフリーター・渡辺陸(わたなべ・りく)に柄本佑。陸は家賃、光熱費、食費などは一切払わず家事だけを担当する、彩子の完全なヒモ状態の男。それでも普段から敵の多い彩子にとっては、唯一の心の拠り所。さらに、彩子の先輩であり天敵とも言える刑事・河原三雄(かわはら・みつお)を北村一輝が演じる。河原は刑事としての能力は高く、結果も出すが、 そのためのやり方は何でもありという危険な匂いの漂う人物。しかしその裏では上の人間の弱みを握っているとも、便宜を図っているとも囁かれており、正義感の強い彩子はそのやり口を認めることができない。彩子にとってはまさに目のかたき。日高と入れ替わり、外見が殺人事件の容疑者となってしまった彩子を、河原はその独特な嗅覚で追い詰めていく。一風変わったSFドラマ。

 

 

日テレ 日10:30  1/17 スタート 『君と世界が終わる日に』 竹内涼真、中条あやみ、笠松将、飯豊まりえ、大谷亮平、笹野高史、安藤玉恵、マキタスポーツ、他

池田奈津子・脚本によるオリジナルドラマ。舞台は三浦半島の南端に位置する三浦市。事故でトンネルに閉じ込められた男が4日後に脱出すると、突然に警戒区域として封鎖された街でのサバイバルが始まる。自動車整備工の間宮響(まみやひびき)(竹内涼真)は、同棲中の研修医の恋人・来美くるみ(中条あやみ)にプロポーズするつもりだったその当日、通勤途中に謎のトンネル崩落事故に巻き込まれてしまう。数日後、命からがら脱出した響が目にしたのは、夜になると凶暴化し、生き血を求めて人間を襲う恐ろしい“生ける屍”だった。響は急いで自宅アパートに戻るが、荒らされた部屋から来美の姿は消えていた。生存者を探す響は近くの消防署にたどり着く。しかしそこで同級生で警察官の等々力(とどろき)(笠松将)から銃を向けられる。陸の孤島となった消防署に身を寄せていたのは等々力の他、その上司、本郷(大谷亮平)。女子大生・佳奈恵(飯豊まりえ)、三原紹子(安藤玉恵)と小学生の娘・結月ゆづき(横溝菜帆)の親子、屈強なバイク便ライダー・吾妻(鈴之助)、引っ越しアルバイトの韓国人・ミンジュン(キム・ジェヒョン)とその上司の甲本(マキタスポーツ)。そして、壮年の男性・宇和島(笹野高史)。響はそこで、化け物に噛み付かれることで伝染する“謎の感染症”がパンデミックを起こし避難指示が出ていることを知る。しかし救助に来るはずだった“避難所”とは前日から音信不通になっていた。化け物に占拠された街で極限状態の中、来美が“避難所”にいると信じる“世界イチ諦めの悪い男”間宮響の、死と隣り合わせの壮絶なサバイバルが始まる。日曜日の夜にはあまり見たくない内容だ。

 

 

全体にロケの少ない、カネのかからないお手頃ドラマが

主体のようである。

とはいえ一時に比べオリジナルドラマが増えてきているのは

いい傾向のように思う。

2021年が、じっくりドラマ・ウォッチできる

穏やかで明るい年になることを心から願いたい。

コメント

そしてわたしはどうなるの?

2020-12-02 14:47:07 | 健康・病気

遅くなりましたが11月のメディカル・ミステリーです。

 

11月15日付 Washington Post 電子版

 

The unusually flexible joints that gave her a boost in gymnastics portended a malady that took years to diagnose

異常に柔らかい関節は体操への意欲を高めてくれたが、それはある疾患の前触れに過ぎなかった。そしてその診断が得られるまで数年を要した。

By Sandra G. Boodman,

 Tarryn Simone Jacobson(タリン・シモンヌ・ヤコブソン)さんは、名門のニュージャージーの体操チームの入団テストの会場を出ると母親の車に乗り込み手首を骨折したと涙ながらに訴えたことを覚えている。母親は疑問に思った:何か深刻なことが9歳の娘に起こったのならコーチらが彼女に説明をしてくれているはずでは?と。

 数時間後、レントゲン検査でこの少女の訴えが裏付けられた。まず Jacobsonさんの growth plate(成長軟骨板)に数ヶ所骨折がみられ、さらには多発性の捻挫、脱臼、靱帯損傷も確認されたが、一方で若い体操選手として、また後には大人になってゆく彼女に降りかかることになる苦悩も始まることになる。

 「私の絶え間ない受傷の原因を調べようと考える人はいませんでした」ニューヨーク市に住む現在37歳になる Jacobson さんは言う。

 Jacobson さんによると、健康障害について話し合うことを避けるようにしていた家庭に育った彼女は、正常より高頻度で、異常に強いように思われた自身の痛みを訴えないことを幼いころから守ってきた。ほぼ持続的にみられた腹痛を口にすることも控えていた。

子供のころから Tarryn Simone Jacobson さんは、捻挫や、他の筋骨格の問題に悩まされていた。「私の絶え間ない受傷の原因を調べようと考える人はいませんでした」と彼女は言う。彼女は自身の疾病に伴う疼痛や凝りのために頸椎装具を装着している。

 

 Jacobson さんが 35歳の時に重大な股関節の傷害で治療を受けたときにようやく専門医が長期にわたって生じていた彼女の症状の原因を明らかにした。しかし、生涯に渡る疾病のその診断は、どのようにそれに対処していくべきかについて多くの問題を提起した。

 「私にその病気があることを告げると『じゃあね、バイバイ』という感じでした。今後の治療の計画などありませんでした」と彼女は言う。

 

Unusually flexible 異常に柔軟

 

 Jacobson さんの問題は早くに始まった。生後数ヶ月の時、彼女は、つま先が内側に向く状態である pigeon toes(内反足)を矯正するために膝下から足首にかけてギプスが装着された。その後ギプスから矯正靴となり、生後18ヶ月まで Jacobson さんはその靴を履いた。

 3歳のとき、彼女は体操教室に通い始めた。教師やコーチらは揃って彼女の異常な身体の柔らかさを指摘し、このスポーツがたちまち「世界で私の大好きなことの一つ」になったと彼女は言う。

 運動神経が良いことは彼女の家族の中で高く評価され、彼女にとっても重要だった。「スポーツは私自身の形成に有用でしたし、いくらか基本的価値観を教えてくれました」と彼女は言う。

 しかし彼女の柔軟性は、しばしば正常の位置から飛び出してしまう異常に緩んだ関節によって可能となっていた。Jacobson さんは手関節と足関節にテーピングしていたが、体操中はそれらを支持するにはほとんど効果がなかった。しかし、股関節の同じ問題を矯正するためにはテープを使用できなかった。そこで彼女は慎重に動くことを覚え、それによって股関節がはずれてもすぐに元に戻っていた。

 9歳のときの手首の骨折の2年後に、Jacobson さんは最初の足首の捻挫を経験し、その後数回繰り返した。15歳のとき、両手関節がひどく痛んだためこの段階で体操をあきらめざるを得なくなった。

 その一年後、フィールドホッケーのプレイ中に膝蓋骨が部分的に脱臼した。さらに彼女には慢性的な頸部の凝りがみられるようになった。

 何が原因で彼女が再発性に受傷するのか医師らはわからないと言った。「彼らはいつも私は問題ない、ただ生まれつき柔軟性が高く、二重関節の持ち主である可能性があると言っていました」と Jacobson さんは言う。

 大学時代は受傷は減少したが、歩いているときに時々足首を捻っていた。

 27歳のとき、マンハッタンでファッション・デザインの仕事をしていた Jacobson さんが重いスノーブーツでドタドタと歩いていたとき、突然右足に刺すような痛みが生じた。最初、彼女はそれを気にしないでいた。しかし 2、3日後、痛みが我慢できなくなったため整形外科医を受診したところ、どういうわけか足関節の一番上の骨が折れていると告げられた。

 20代後半にJacobson さんは原因不明の失神発作を起こしたが、おそらく低血圧によるとみられた。意識消失の原因を鑑別する tilt table test(傾斜台試験)が陽性であることがわかった。これは Jacobson さんに自律神経障害があることを示唆していた。これは、血圧や心拍数を調節する自律神経系の異常である。彼女はヨウ素添加塩を摂取し、脱水状態にならないよう言われた。

 2014年、Jacobson さんは、自身がデザインしたハンドバッグを販売する自営ビジネスを始めることになった。この仕事に当たってはバッグが製造されるスペインに定期的に出かける必要があった。

 彼女によると、この遠出は職業的には心躍るものだったが、肉体的には過酷だった。「私は、バックパックとローラーキャリーバッグの旅を続ける努力をしました」と彼女は言う。しかし、彼女の肩と頸は常に抑えがたい痛みに襲われた。

 2018年9月、Jacobson さんは左の股関節の突然の衝撃で目が覚めた;寝ている間にその関節が飛び出したのである。彼女はひどく足元が不安定だったためゆっくりでも歩くことができず、関節も元に戻らなかった。数日後、極度の痛みの中、彼女はニューヨークの緊急室に行ったが、そこで frayed labrum(関節唇不安定症)と診断された。これは、股関節の受け皿の外周に沿う輪状の軟骨の慢性損傷で、この組織は正常では緩衝効果と確実な関節の安定化を提供するものだった。

 股関節の専門医は手術を勧めたが、Jacobson さんは理学療法を選択した。彼女の理学療法士はリウマチ専門医を受診することを提案した。

 診察台に座っていた時、そのリウマチ専門医が彼女に、両足に広がるアザについて質問したのを覚えている。はっきりとした理由なしにしばしばアザができるのだと彼に説明した。

 「彼が私の皮膚を触り、いつもこのように柔らかいのかどうか尋ねたことをはっきりと覚えています」と彼女は言う。Jacobson さんは、その柔らかさを自慢に思っており、はいと答えた。その医師は、その弾性を調べるため、前腕、頸部、および頬の皮膚を引っ張った。

 「その途端、彼が会話を中断してしまったことを覚えています」そう彼女は思い起こす。

 

Where to turn? どこに向かうべき?

 

 さらに検査が行われ、そのリウマチ専門医は Jacobson さんに、彼女が Ehlers-Danlos Syndrome(EDS, エーラス・ダンロス症候群)の一型であることが疑われると説明した。これは、皮膚、骨、血管、および各臓器の支持を担っている結合組織に欠かせない頑丈な線維性タンパクであるコラーゲンの欠損によって引き起こされる遺伝性疾患である。これらが欠損することによって、軽度の loose joints(動揺関節)から、生命を脅かすような突然の腸の破裂に至るまで様々な問題が起こりうる。EDSには13の亜型があるが、根本的な治療法はない。

 「その病気のことについて耳にしたことがありませんでした」と Jacobson さんは言い、家族の誰もその診断を受けたことはないと付け加える。

 最も頻度の高いタイプで Jacobson さんにみられた hypermobile EDS(関節可動亢進型 EDS)は動揺関節、柔軟で伸び縮みするアザをつくりやすい皮膚、異常な創傷治癒、および重症となることもある慢性疼痛を特徴とする。5,000人に一人(その大半が女性)が罹患すると推定されている本症候群に特異的な検査はない。この性差は、出産時に必要な関節弛緩性を促進する女性ホルモンの影響による可能性がある。EDS にはしばしば、自律神経障害や、腹部膨満、嘔気、および嘔吐などの胃腸症状を伴うことがある。

 治療の目標は、重大な合併症を予防することと、理学療法、薬剤、運動、あるいは他の非外科的手段によって疼痛や他の症状を緩和することとなる。EDS のタイプと重症度に依存するが、手術は創傷治癒の障害や過度の出血の可能性がありリスクが高い。一方で多くの病型の患者は正常と同じ平均余命を有する。

 Jacobson さんは自身の種々の症状を評価し対処してもらおうと様々な専門医を受診し始めたが、ほどなく自身の治療を調整することが半端なく困難であることがわかった。

 「治療計画はありませんでした」と彼女は言う。

 2019年には、彼女の健康状態はさらに脆弱化した。Jacobson さんは股関節の傷害の後、ハンドバッグ事業を中断、自身の状態を観察しケアを管理することのできる EDS に通じた医師によって提供される専門的知識が必要との結論を出した。

 そんな専門医の一人が Clair Francomano(クレア・フランコマーノ)氏だった。彼女は遺伝学者であり、遺伝性結合組織疾患の専門家である。

 Francomano 氏は、昨年、バルチモアからインディアナ大学医学部の医学分子遺伝学の教授になるためにインディアナポリスに異動となるまで、Greater Baltimore Medical Center(グレーター・バルチモア医療センター) の一部である Harvey Institute for Human Genetics(ハーヴェイ人類遺伝学研究所)の Ehlers-Danlos National Foundation Center for Clinical Care and Research(エーラス・ダンロス国立財団臨床ケア・研究センター)のトップを務めていた。

 国立衛生研究所の一部である National Human Genome Research Institute(国立ヒトゲノム研究所)の遺伝医学部門の元チーフでもあった Francomano 氏の診察予約には1年かかると Jacobson さんは言われた。彼女は2020年5月に予約を取った。

 しかし彼女は運が良かった。2月下旬、パンデミックで旅行禁止となる数週間前に Francomano 氏の事務所からキャンセルがあったことを知らせる電話が入った。すぐに Jacobson さんと母親はインディアナポリスに飛んだ。

 

'Pretty typical' ‘非常に典型的’

 

 「彼女は非常に典型的な例にみえました」2月24日に出会ったときのことを Francomano 氏はそう思い起こす。40年間のキャリアでこの遺伝学者が診てきた約1,000人の EDS の患者の多くと同じように、Jacobson さんの診断は遅きに遅れていた。

 「彼女は、高い機能を持った多くの私の患者がしてきたことをしてきました。彼女は多くの良くないことを続けてきていましたが、何とか切り抜けてきています」と Francomano 氏は言う。

 Francomano 氏は、医学的に患者を評価するだけでなく、患者が自身の病気を管理するのを支える包括的なプランを立てることに尽力している。

 「私は同時にすべての問題に対応するようにしています」と彼女は言う。Jacobson さんのように、EDSの患者の中には自律神経障害や消化器系の異常のほかにも、無関係にみえる他の症状に苦しむ人がいる。

 患者らは苦しい戦いに直面する可能性があると Francomano 氏は言う。医師らは症状に懐疑的になりがちであることから、治療を受けることも困難となりうるからである。

 「私は医学生のとき『全てが悪いというような場合、実際には悪いところは存在しないものだ』と教わりました」と Francomano 氏は言う。彼女によるとEDS の患者には圧倒されるように感じるという。「彼らは、症状を書いた長いリストを持って入ってきて、治療を強く求めるのです」と彼女は言う。

 多くの医師らは許容されない時間的制限がある中で業務しており、「とても10分間では一つの問題にさえ取り組むことはできません」と Francomano 氏は話す。

 しかし「EDS のような病気もあるのです。それは単なる曲がりやすい関節ではないのです。早期の発見と早期の治療が非常に重要です」と彼女は言う。

 Francomano 氏は、一見関係のないように思われる複雑な多系統の訴えを持つ人では EDS を考慮すべきであると考えている。患者の関節を2分間評価することで関節の過可動性を見つけ出すことができると彼女は言う。

 Jacobson さんは Francomano 氏とそのチームのスタッフと3時間を過ごし、治療、さらなる検査、および疼痛を緩和する実践的戦略についての個別の提案などが盛り込まれた計画を持ってニューヨークに戻った。

 以来、彼女は電話と電子メールで定期的にチェックしている。彼女の次回の対面での予約は2月に予定されている。

 「彼女は私にいくつかの答えを与えてくれました。そして、私が理解できなかったすべての未解決の事柄をまとめてくれました。今、私には繋がることのできる誰かがいるのです」と Jacobson さんは言う。

 

 

Ehlers-Danlos syndrome(EDS, エーラス・ダンロス症候群)は

皮膚、関節、血管など全身的な結合組織の脆弱性を来す

遺伝性疾患である。

詳細は難病情報センターのサイトをご参照いただきたい。

 

その原因と症状から6つの主病型(古典型、関節可動亢進型、

血管型、後側弯型、多発関節弛緩型、皮膚脆弱型)に

分類されている(さらに亜型を加えると13のタイプがある)。

また最近、『D4ST1欠損に基づくEDS(DDEDS)』など

新たに疾患概念が確立された病型も発見されている。

EDS 全体の頻度はおよそ5,000人に一人と推定されている。

コラーゲン分子、あるいはコラーゲン成熟過程に関与する

酵素の遺伝子変異が原因となっている。

各病型で変異遺伝子が明らかにされてきているが、

それぞれの遺伝子変異がどのような機序で多系統の合併症を

引き起こすのかといった治療に直接繋がる詳細な病態解明には

至っていない(関節可動亢進型の遺伝子変異はまだ

同定されていない)。

 

古典型においては、皮膚の脆弱性(容易に裂ける、

萎縮性瘢痕を残す)、関節の脆弱性(柔軟で脱臼しやすい)、

血管の脆弱性(内出血しやすい)、心臓弁の異常(逸脱・逆流)、

あるいは上行大動脈の拡張などがみられる。

関節可動亢進型では関節の脆弱性(脱臼・亜脱臼・慢性疼痛)が

中心となる。

血管型では動脈解離、動脈瘤、血管破裂・腸管破裂・子宮破裂など

重篤な合併症を呈するとともに、小関節の弛緩、

特徴的な顔貌(尖った顎、細い鼻など)、皮下静脈の透見などが

みられる。

DDEDSでは進行性結合組織脆弱性(皮膚過伸展・脆弱性、

全身関節弛緩・慢性脱臼・変形、巨大皮下血腫、心臓弁逸脱・逆流、

難治性便秘、膀胱拡張、眼合併症など)と、さらには

発生異常(特徴的顔貌、先天性多発関節拘縮など)など

特徴的な症状がみられる。

 

EDSに対する根本的治療法は今のところない。

古典型における皮膚・関節のトラブルに対しては、

激しい運動を控えることやサポーターを装着するなどの

予防的対策が有用である。

関節可動亢進型では

関節を保護するリハビリテーションを行うとともに、

装具を使用したり、疼痛に対して鎮痛薬の投与を行ったりする。

血管型における動脈病変については定期的な画像検査を行い、

発症時にはできる限り保存的治療を選択するが、

困難な場合には血管内治療を考慮する。

腸管破裂への備えも必要で、発症時には迅速な手術を行う。

DDEDSにおいては、定期的な骨格系(側弯・脱臼)の評価、

心臓・血管の評価、泌尿器系評価、眼科的精査を行い、

腹部症状には必要に応じて対応する。

 

患者は進行性の多彩な結合組織脆弱性関連症状(皮膚・関節・

血管・内臓の脆弱性、疼痛など)によりQOLが低下する。

古典型では反復性皮膚裂傷、全身関節脱臼、疼痛がみられ、

関節可動亢進型では、進行性の全身関節弛緩による運動機能障害、

反復性脱臼、難治性疼痛、自律神経失調症、過敏性腸症状、

慢性呼吸不全により著しく生活が制限される場合がある。

血管型では動脈合併症、臓器破裂により若年での死亡例がある。

 

EDSの予後については、欧米の大規模調査によると、

若年例において生命に関わる重大な合併症が生じうることから

死亡年齢の中央値は48歳と報告されている。

 

いまだに対症療法以外に有効な根本的治療法が発見されていない

難病であり、QOL を妨げる様々な症状を呈することから、

患者に対する身体的・精神的両面からの十分なサポートが

必要である。

 

EDS患者・家族を支援する団体、

日本エーラス・ダンロス症候群友の会のサイトもご覧いただきたい。

コメント

謎の腹痛、謎に包まれた原因

2020-10-30 20:55:19 | 健康・病気

10月のメディカル・ミステリーです。

 

10月24日付 Washington Post 電子版

 

Stomach pain was ruining her life. Then a scan provided a life-changing clue.

彼女の生活は腹痛で台無しにされていた。しかしある検査によって人生を変える手がかりが得られた。

 

By Sandra G. Boodman,

 悪化していく痛みと6年間闘ってきた Olivia I. Bland(オリビア・I・ブランド)さんは、病気で欠勤したり、運動教室を休んだり、友人たちとのディナーをドタキャンしたりする理由を人に説明することをやめた。

 「トイレに行きたいのだと人に話すことが恥ずかしく、うんざりしていたのです」現在37歳になる、Albuquerque(ニューメキシコ州アルバカーキ)の会計士は言う。2012年から2018年にかけて、彼女はかかりつけ医を受診し、ひどい腹痛のときには緊急ケア・センターや緊急室を8回訪れた。Bland さんはさらに、激しい倦怠感とともに、夕方には解熱する微熱に見舞われた。「私は午後9時30分に2杯のコーヒーを飲み干し、10時までにはぐっすりと寝付くことができたのですが」と彼女は思い起こすが、その10時間後、目を覚ますと再びぐったりとしていたという。

 彼女のかかりつけの内科医は“バランスの取れた食事をする”よう助言した。あるリウマチ専門医は何も問題を見出すことができないあげく、二度と彼女を診察したくないと彼女に告げた。

 

アルバカーキに住む 37歳の Olivia Bland さんは6年間、増悪する腹痛に苦しめられたが、その痛みには驚くべき原因が潜んでいた。彼女は2019年に手術を受け成功した。

 

 しかし2018年7月、Bland さんの最近行われたCT検査を見直したある放射線科医が、それまで見逃されていたとみられる2つの問題箇所に気づいた。しかし効果的な治療法への苦難の道はさらに一年ほど続く。

 「毎日目を覚ますと痛みのことを考えています」最近、Blandさんはそう語り、それが消失したことに驚きを隠さない。「今それがどれくらい前と違っているか、言葉では表現できません」

 

Doubled over 身体を捻じ曲げて

 

 Blandさんの消化器系は長らく繊細だった。18歳のとき、彼女は irritable bowel syndrome(過敏性腸症候群)と診断された。これは下痢や腹部膨満などの症状を含む包括的診断名である。しかし、最初の子が生まれて2年後の 2012年に始まった下腹部の痛みはそれまでとは違っていた。それは、鈍い痛みと、虫垂炎でないかと心配になるほどの鋭い痛みとの間で変化した。通常は彼女は痛みに対してあまり多く注意を払わなない人間だった:彼女は痛みの閾値が高く、鎮痛薬を使用することなく2度の出産ができたほどである。

 かかりつけの内科医は腹部CT検査を行ったが正常だった。そのうち腹痛は消失した。しかし2人目の子供が生まれて1年後の2014年までに、痛みが再び毎月起こるようになり、数日から一週間の範囲で持続した。市販の鎮痛薬を最大量内服しても効果はなく、Blandさんは緊急ケアセンターやERを受診したが、毎回医師らには原因がわからなかった。

 2017年3月、Blandさんはかかりつけの内科医を受診したが、その医師は素っ気なく「女性には皆、腹痛があるものよ」と言って胃酸逆流を治療する薬を処方したと、Bland さんは言う。Blandさんが、この痛みは逆流ではないと反論すると、その医師は彼女に、「バランスの良い食事をしなさい」と言い捨てて部屋を出て行ったという。

 次に彼女が相談したのは、最初の子供の分娩を担当した看護助産師だった。彼女は endometrial ablation(子宮内膜アブレーション)を勧めた。これは、通常、過多月経の治療に行われる手技で、その看護師によると、ひどい腹痛のある女性でこの治療が有効であった人がいたという。Blandさんはこの治療を予定したが、効果が得られない可能性があることを心配してキャンセルした。

 11月、かつて炎症や疼痛を引き起こす自己免疫疾患である lupus(ループス)の疑いで受診したことがあったリウマチ専門医を再度受診してみた。彼女は自身の疲れやすさを証明するために診察に夫の Jeff(ジェフ)を連れて行った。Blandさんはさらに、活動性の低下を起こしうる甲状腺機能低下が検査で明らかになるのではないかと強く思った;両親と妹が甲状腺疾患で治療を受けていたからである。

 Blandさんにはループスも甲状腺機能低下もないことをそのリウマチ専門医から告げられると彼女は泣き出した。

 「彼は私を見てこう言いました。『血液検査が正常だったから泣いているの?』」そう、彼女は思い起こす。「自分がどんなにおかしく見えたのかわかっていましたが、やはり検査が陰性だったという結果に対応できなかったのです」

 彼からの抗うつ薬の提案を断ったところ、経過に変化がない限りもはや彼女を診察しないとその医師は告げた。

 しかし、それらの症状はさらに頻回に起こり始めており、Blandさんの家庭生活に影響が及んでいた。「誕生日、母の日、そしてクリスマスごとに、夫は、私の欲しいものを聞いてくれていましたが、私は泣き崩れて『私はただ寝たいだけ、それだけ!24時間寝ていたいの!』と言いました」

 Charade のゲーム(ジェスチャー・ゲーム)のさなか、私の幼い息子は、小さな歩幅で前かがみになって歩くキャラクターを表現した。不正解の答えがひとしきり寄せられたあと、7歳のその子は興奮して口を滑らせてしまった。「ママ、です!」Blandさんは涙を必死でこらえていたのを思い出す。「私はまさに最悪の気分でした。私は子供たちからそんな風に見られていたということですから」

 2018年、別の協力的な内科医が大腸内視鏡検査を依頼し、celiac disease(セリアック病)の検査をオーダーした。この病気は、グルテンを摂取することによって引き起こされる、よくみられる自己免疫疾患である。さらに潰瘍を起こす細菌である H pylori(ヘリコバクターピロリ)の検査も行った。しかしすべて正常だった。Bland さんによると、そのころから自身の精神的健康に疑問を持ち始めたという。

 「私は他人からの注目を必要としていたの?実は私はいいかげんな人間だった?私は、他のみんなが考えているような人間なのではないかと思い始めていました。すなわち、自分の子供たちと遊ぼうとしない嫌な人間、心気症患者なのではないかと」

 2018年7月、痛みが背部に移動したため Bland さんは腎結石ではないかと考えた。彼女の内科医が尿検査を行うと尿中に血液が検出された。その医師は彼女の腹部と骨盤部のCT検査をオーダーした。Blandさんは過去に同じ検査を受けていたが、今回の検査は彼女の人生を変えるものとなる。

 

'Sign me up!' 「私を予定に入れて!」

 

 そのCT検査で、時に相互に関連することのある2つの病態が Blandさんに存在するように見えた:pelvic congestion syndrome(骨盤内うっ血症候群)と、さらにまれな nutcracker syndrome(ナットクラッカー症候群=くるみ割り症候群)である。Pelvic congestion syndrome症候群は、怒張した静脈が卵巣周囲に発生するもので、しばしば妊娠中あるいは妊娠後に発症する。これらの静脈は拡張し、血液がうっ滞し著しい痛みを生ずる。

 Pelvic congestion は nutcracker syndrome が存在する可能性を示唆する。この病態は左腎臓によって濾過された血液を運ぶ左腎静脈が圧迫され血流が障害される。Nutcracker syndrome は男性にもみられることがあるが、しばしば何ら症状を起こさないこともある。しかし、一部のケースでは、50年以上前に初めて記載されたあまりよくわかっていない loin pain hematuria syndrome(腰痛血尿症候群)と呼ばれる血尿とひどい腹痛を引き起こす病態に移行することがある。

 「『これはこれまでで最善のニュース』みたいな感じでした」と Bland さんは思い起こす。6年経って彼女はようやく答えを得たのである。彼女が狂っていたのではなかったのだ。

 彼女の内科医は婦人科医に紹介したがどのように治療すべきかわからなかった。そのため、この診断を下したインターベンショナル・ラジオロジスト(カテーテル治療放射線科医)を受診した。彼は塞栓術、すなわち、血液がうっ滞するのを防止するために卵巣静脈にコイルを留置する手技を含む治療法を提案した。しかし、この治療法では彼女の nutcracker syndrome の症状を悪化させる可能性があると彼は警告した。

 Blandさんは当初怯むことはなかった。「もし、ただちに自分の小指を切り落とす必要があり、それで痛みがなくなると言われたら、それをするでしょう!」彼にそう話したことを覚えている。「私を予定に入れてください!」

 しかし治療の予定を決めて間もなく彼女は二の足を踏んだ。彼女の家族の反対があった。さらにその放射線科医が脳での塞栓術しか行ったことがなかったのである。さらに nutcracker syndrome 患者の支援グループのウェブサイト上にあった明確な警告を目にした彼女はこの治療をキャンセルした。

 オンラインで彼女は nutcracker syndromeあるいは loin pain hematuia syndrome によって引き起こされた痛みを治療するために、自己腎移植手術を受けた女性を知った。大手術となる自己腎移植は、問題を起こしている腎臓と、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管である尿管を一旦摘除し、反対側にそれを移動させるものである。本手術では臓器拒絶反応のリスクはない。麻酔薬の注射など、より低侵襲な治療選択が使い尽くされた患者には適している。

 そんな時、ある名前が何度も思い浮かんだ:ウィスコンシン州 Madison にある the University of Wisconsin(UW, ウィスコンシン大学)の草分け的な移植外科医 Hans Sollinger(ハンス・ソリンジャー)氏である。

 2018年9月、Blandさんは Sollinger氏に連絡を取った。彼はその後引退し、現在は名誉教授となっている。UWの移植コーディネーターとの接見や、彼女の記録の検証が行われた後、Blandさんは prerequisite test(前もって必要なテスト)を受ける必要があると告げられた。この検査は、Sollinger 氏と彼の仲間たちが、どのような患者が移植によって利益を受けられるかを決定するために開発したものである。

 この検査には尿管への局所麻酔薬の注入が含まれる。これにより少なくとも12時間無痛状態が続く患者は移植手術の対象とみなされる。Sollinger氏のeメールによると、腰痛血尿症候群は繰り返す spasm(痙縮)によって痛みが生ずる、すなわち尿管に由来すると考えられており、その痛みを彼は『持続的に腎結石が通過しているような状態』と例えている。

 Blandさんはニューメキシコ州の3人の外科医に電話をかけたが、いずれもこの検査を行うことを拒んだ。しかも、彼女はさらに大きな障害に直面した:彼女の保険が州外での治療をカバーしなかったのだ。また、彼女を支える夫はフェイスブック上の根拠のない情報に基づいて手術に突き進む彼女を心配し反対した。

 一ヶ月後、この夫婦は Sollinger 氏の部下の一人だった移植外科医 Robert RedfieldⅢ(ロバート・レッドフィールドⅢ)と電話で話した。(Redfield 氏は最近 University of Pennsylvania [ペンシルベニア大学] の

 「私たちは彼に多くの質問をしました」と Bland さんは言う。「それから彼は夫と話したいと言いました。彼は『彼女をあきらめないでください、そしてあなたたちの結婚生活もあきらめないで。私たちは彼女の力になることができます』」

 「それは大きな形勢変化でした」と彼女は言う。数か月後、自由に保険申し込みできる期間となったため、Bland さんの夫は州外での治療をカバーするプランに彼らの保険を切り替えた。

 

Game change 形勢変化

 

 Redfield 氏によると、結婚生活やその他の人間関係がぎくしゃくする移植候補の患者の配偶者としばしば話をするという。「患者が、ずっと続いてきた症状のために、重大な心理的影響がもたらされるのはめずらしいことではありません」と彼は言う。Bland さんの痛みは「確かに彼女の quality of life(QOL:生活の質)に重大な影響を及ぼしていました」

 Redfield 氏によると、過去4年間で Wisconsin チームは200人の患者を診断し、約80例に自己腎移植を行ったという。「おそらく患者の80パーセントで痛みの完全に近い解消が得られています」と彼は言う。

 麻薬に頼っている人たちもいる。彼らの中には Dilaudid(ジラウジッド、一般名ヒドロモルフォン)の持続注射を受けている十代の若者もいた。移植術後、彼女の痛みは消失し、麻薬の必要もなくなったと Redfield 氏は言う。

 「問題となるのは、果たして移植手術で彼らのQOLを向上させることができるか?そしてリスク・ベネフィットの比率が手術を正当化できるのか?」そう彼は問いつつ、いまだ研究が十分でないことから腰痛血尿症候群については不確定要素にあふれている点を指摘する。「その病態生理学について学ばなければならないことがまだまだたくさんあります」

 2019年5月、Blandさんは術前検査を受けるため Madison に飛んだ。彼女の痛みは24時間以上消失した:次の日、彼女の36歳の誕生日に Redfield 氏から彼女が移植手術の対象者になると告げられた。

 「それはこれまでで最高の誕生日プレゼントでした」と彼女は思い起こす。彼女の保険会社は当初、この手術をカバーするのを拒否したが、UV Health からの要請によって方針を転換した。

 2019年7月に予定された Bland さんの手術までの2ヶ月間はほとんど耐えがたいものだった。80%の時間は動くことができず、「Redfield 医師が私に電話をかけてきて、やっぱり私は手術の対象者にはならないと考えていると言うのではないか」と不安だったという。

 Redfield氏によって行われた7時間の手術の後、6日間入院し、その後11日間は近隣の移植患者のための宿泊施設で過ごした。完全回復までは約9ヶ月を要した。その後 Bland さんの腹痛、極度の疲労、および発熱は消失し再発はみられていない。

 「Redfield 医師と彼のチームにどれほど感謝しているか言葉にすることができません。彼らが私を救ってくれたのです」そう Bland さんは言う。

 

 

今回の病気には複雑な病態が絡み合っているようなので

本文中に出てきた疾患について一つずつ簡単に解説する。

 

pelvic congestion syndrome(骨盤内うっ血症候群)

MSDマニュアルより

 

骨盤内うっ血症候群は慢性骨盤痛の一般的な原因である。

静脈瘤および静脈不全は卵巣静脈でよくみられるが、

しばしば無症候性である。

一部の女性で症状がみられるが、その機序は不明である。

妊娠後に骨盤痛が生じることが多い。

痛みはその後の妊娠のたびに悪化する傾向がある。

典型的には痛みは鈍痛だが,鋭い痛みやまたは拍動性のこともある。

1日の終わり(長時間座位または立位をとった後)に悪化し、

横になることで緩和する。

痛みは性交によっても悪化する。

腰痛や下肢の痛み、異常な月経出血を伴うことがしばしばある。

診断には痛みが6ヶ月を超えて存在することと

診察時の卵巣圧痛が重要。

超音波検査が行われるが臥位では静脈瘤が描出されないことがある。

骨盤内静脈瘤を確定するために静脈造影、CT、MRIが行われる。

骨盤痛が高度で,かつ原因が同定されない場合は,腹腔鏡検査を行う。

非ステロイド系抗炎症薬で対応するが、無効で痛みが強い場合には

塞栓術や硬化療法を考慮する。

 

 

nutcracker syndrome(ナットクラッカー症候群、くるみ割り症候群)

時事メディカルより

左側の腎臓からの血液は左腎静脈を介して下大静脈に合流するが、

この左腎静脈は腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に挟まれるように

走行しているため、内臓脂肪が少ない人や血管の位置の個人差によって

圧迫を受け血液が流れにくくなることがある。

これにより腎臓側の静脈の圧が上昇し、左腎臓の細い血管が破れると

血尿となる。蛋白尿がみられたり腰の痛みが生ずることがある。

 

 

 

 

loin pain hematuria syndromeLHPS, 腰痛血尿症候群)

論文:Clin Kidney J. 2016 Feb; 9(1): 128–134 より

LHPSは1967年に初めて報告された稀な疼痛疾患で

いまだその病態は十分に解明されていない。

この症候群は、肉眼的あるいは顕微鏡的血尿を伴う

間欠的あるいは持続的な強い側腹部痛が一側あるいは両側に

みられるのが特徴である。

LPHSの発症頻度は約 0.012%ときわめてまれである。

患者の大半は若い女性であり、70%を占めるとの報告もある。

多くは30歳までに症状が出現する。

自然経過については十分な記載はないが自然寛解もあると

考えられている。

また LPHS自体が二次的な腎障害を起こしたり、

死亡率を上昇させたりすることはないことが知られている。

しかし繰り返す痛みは患者に深刻な不快を起こし、

日常生活活動に多くの制限をもたらしうる。

LHPSは基本的に除外診断で診断され、

これまでいくつかの診断基準が提唱されているものの、

いまだコンセンサスの得られた有効な診断基準はない。

LPHSの病態生理学に関していくつかの機序が提唱されているが、

実際に病因が特定されていない状況のため

治療は対症的なものとなっている。

LHPSに対する治療法は、消炎鎮痛薬による鎮痛、

麻薬による鎮痛、さらには自己腎移植など様々である。

その中でも自己腎移植は有望な結果をもたらしているようだが、

LPHSの治療としては保存的手段がまずは用いられるべきである。

本文中にあったように、

外科的治療のリスクとベネフィットは慎重に検討され、

保存的代替治療と厳格に比較されるべきであり、

それぞれの患者が個別に評価されなければならない。

この先、本症候群の確実な病態生理学、診断法、治療法を

決定するためには、より多くの基礎科学研究と

対照比較臨床研究が行われる必要がある。

 

 

いずれの疾患も、明確な原因が明らかになっていない謎の多い

病態のようである。

当然診断も難しくなるとみられるが、

患者の苦痛を少しでも早く取り除いてあげる治療が望まれる。

コメント

体中に不気味に広がっていく痛み

2020-10-01 13:33:39 | 健康・病気

10月になりましたが、9月のメディカル・ミステリーです。

 

9月26日付 Washington Post 電子版

 

The pain gripped his left ankle. Within months, it ominously began to spread.

その痛みはまず彼の左の足首を襲った。その後数ヶ月のうちに不気味に広がり始めた。

 

By Sandra G. Boodman,

 Ram Gajavelli(ラム・ガジャヴェリ)さんは 42歳になったとき心に誓っていた:自身の健康にはもっと気を付けようと。

 しかし定期的な運動を始めて2、3か月後の 2017年8月、このソフトエンジニアの左足首に腫れと痛みがみられるようになったが、彼には足首を怪我した覚えはなかった。

 それから18ヶ月にわたって、その痛みは背中、両肩、および両足に広がった。その一方で、6ヶ月前までは正常とみられていた数本の歯が虫歯に侵された。

 Gajavelliさんを診た医師らには、内科医、リウマチ専門医、足治療医、神経内科医、そして整形外科医2人がいたが、諸検査でも根底にある原因を解明できなかったため誰もが当惑した。ある理学療法士は、問題は彼の頭の中にあるのではないかとも考えた。

フィラデルフィア地区でソフトウェアエンジニアをしている Ram Gajavelli さんはインドの専門医を受診し、正体不明の痛みを起こしている原因の解明に手を貸してもらった。

 

 追い詰められた Gajavelli さんは、フィラデルフィア近郊に住んでいたが、8,000マイル以上も離れた彼の故国インドの専門医を頼った。親戚に会うため一週間滞在していた間に彼は二人の専門医を受診したが、そのうちの一人が極めて重要となる検査をオーダーした。

 「早い段階から、彼の症状には何か普通でないところがありました」彼がインドから戻って数週後に診断を下した University of Pennsylvania(ペンシルベニア大学)の内分泌専門医 Mona Al Mukaddam(モナ・アル・ムカダム)氏は言う。「もし誰かが実際に彼の病歴を取り、(彼のケースにおける)すべての要素を見ていれば、それほど長くかかることはなかったでしょう」

 

A puzzling stress fracture 不可解なストレス骨折

 

 左足首の痛みは最初は軽度だった。Gajavelliさんによると、運動のために定期的に歩き続け、民間療法を試し、痛みを和らげるために、ストレッチや温熱療法も行ったという。しかし、10月に、息子とちょっとしたハイキングに行ったあと足首が腫れたため整形外科医を受診した。X線検査では何もみられなかったが、MRI検査でストレス骨折の可能性が指摘された。

 医師は Gajavelli さんに歩行用ブーツを履くように指示した。しかし 8週間後、彼の足首は依然として痛かった。そして2度目のX線検査でも変化はみられなかった。

 「なぜ私がストレス骨折に?」そう疑問に思ったことを Gajavelli さんは覚えている。「医師は私に、唯一のできることは悪くならないようにすることだと言いました」

 2ヶ月ほど様子をみたあと Gajavelli さんは足関節の専門医である2人目の整形外科医を受診した。「彼は何も診察せず、『おそらくあなたは治癒に時間がかかる人たちの一人にすぎません』と言った以外何も説明しませんでした」そう Gajavelli は思い出す。血液検査では骨を作るビタミンDの数値が正常だったため、彼に理学療法の指示が出された。

 一定の理学療法により彼の足首の痛みは和らいだが、一時的に過ぎなかった。5月までに、その痛みは右膝から腰背部に移動していた。一ヶ月後、彼の metatarsals(中足骨:バランスを保ち、体重を分散させる複数の足の骨)が痛み始めた。それから痛みは彼の両肩に移行した。肩の症状は、おそらく自宅での彼の階段の上り方によって引き起こされているのであろうと Gajavelli さんは考えた。痛む足首に体重をかけないよう、Gajavelli さんは手を前に差し出して手すりを掴み、身体を引き上げていたからである。

 やがて、横になったり、座位から立ち上がったりすると痛みを感じるようになった。

 かかりつけの内科医は Lyme disease(ライム病)を疑ったが検査は陰性だった。またリウマチ専門医からオーダーされた血液検査では問題はなかった。さらに神経内科医は electromyography(EMG:筋電図)を行った。これは神経筋疾患を同定する検査である。しかしこれもまた正常だった。

 Gajavelli さんが受診した足治療医は彼の足に異常を見つけることはできなかった。彼は Gajavelli さんに、詰め物の入った異なるブランドの靴を履くよう勧めたが、これも一時的な効果しかなかった。

 2018年11月までに、つま先で歩いたり、堅木張りの床の上に立つことが極度に辛くなっていた。右側の肋骨の痛みが強かったので Gajavelli さんはリクライニングチェアで寝るようにしていた。彼は処方用量の ibuprofen(イブプロフェン)を頼りに、日中を、そして夜間も、何とか乗り切っていた。

 かかりつけの歯科への12月の定期受診のとき、歯科医は2本の親知らずに著明な虫歯をみつけ驚いた:そのうち一本は文字通り崩壊していた。6ヶ月前には彼の歯は正常だったからである。抜歯目的で彼は Gajavelli さんを口腔外科医に紹介した。他の症状と同じように、彼の突然の歯牙の悪化の原因は不明だった。

 「私は苛立っていました」そう Gajavelli さんは思い出す。「しかし医師らが何も見つけることができなかったことで逆に私は安心していたのです」

 2019年1月、彼は足関節の専門医を再び受診した。彼によると、その整形外科医は変化がないことを見てさらなる理学療法が有効ではないかと提言したという。

 当時、Gajavelli さんはインド南部の親戚に会うため短い旅行を計画していた。ニュージャージー州 Atlantic City で医師をしているいとこに相談し、インド南部 Hyderabad(ハイデラバード)の病院のリウマチ専門医と整形外科医の受診予約を行った。ただし彼は自腹を切る必要があった ― 検査と治療の費用は総額約1,000ドルとなりそうだった ― しかし、彼らのうちのどちらか一人は原因を見つけ出してくれるかもしれないと期待していた。

 

A terrifying result 恐るべき結果

 

 その整形外科医は Gajavelli さんに症状について質問し、手始めに骨シンチなどいくつかの検査を行った。この核医学検査は少量の放射性トレーサーを用いるもので、骨の痛みの原因を特定するのに有用である。

 その結果は恐るべきものだった。Gajavelli さんの中足骨から始まり、彼の顎骨に至るまで多発性のストレス骨折が認められたのである。その整形外科医は Gajavelli さんに、彼には広く転移した癌があるか、ある種の代謝性骨疾患がある可能性が高いと説明した。彼は Gajavelliさんにフィラデルフィアに戻ったら内分泌専門医だけでなく腫瘍専門医を受診するよう助言した。

 「私はひどく動揺し話をすることができませんでした」と Gajavelliさんは思い起こす。

 フィラデルフィアに戻った彼は家庭医に電話をしたところ、受診予約まで4週間かかると言われた。「私は本当にパニック状態となっていました」と彼は言う。

 医師である彼のいとこは、彼ら二人と付き合いのあった専門医に電話をかけてみるよう勧めた:Penn’s Abramson Cancer Center(ペンシルベニア大学アブラムソン癌センター)の Cancer Therapeutics Program(癌治療プログラム)の責任者の一人 Ravi K. Amaravadi(ラビ・K・アマラーバティ)氏である。

 Amaravadi 氏は癌の画像検査とともに血液検査を行った:後者には骨と歯牙の形成に重要なミネラルであるリンの濃度を測定する項目が含まれていた。Gajavelli さんではその数値が低かったのである。これが原因究明の重要な手がかかりとなった。彼が受診した他の医師の誰一人としてリンの測定という単純な検査を行っていなかったのだ。というのも、この検査は血液検査の標準的項目に含まれていないからである。

 癌が除外されたあと、Amaravadi 氏は Gajavelli さんの診療記録を、Penn Bone Center(ペンシルベニア大学骨センター)を管理する臨床医学・整形外科学の准教授 Al Mukaddam 氏に送った。最も疑わしい原因がまれな骨疾患であるとみられたからである。

 驚いたことにそれはAl Mukaddam 氏が最近経験していた疾患だった。数週間前に、彼女は、自身の経験上初めての症例を診療していたのである。

 Al Mukaddam 氏は Gajavelli さんに、彼が tumor-induced osteomalacia(TIO:腫瘍性骨軟化症)に侵されていると考えていることを伝えた。これは、一つまたはそれ以上の、一般的に良性の緩徐に発育する腫瘍によってもたらされる骨脆弱性の疾患である。これらの腫瘍が fibroblast growth factor 23(FGF23:線維芽細胞増殖因子23)と呼ばれるタンパクを大量に産生し、これが腎のリン再吸収能を抑制する。Oncogenic osteomalacia(腫瘍原性骨軟化症)とも呼ばれる本疾患の最初の徴候は、骨折、骨痛、および筋力低下などである。Gajavelli さんにはこれら全ての症状がみられていた。

 TIO はほぼ確実に過小診断されている現状はあるが極めてまれである:これまでに世界中で1,000例以下が報告されている。

 「TIOに関連して最も求められる要素の一つはこの診断を思いつきリンを測定することです」と Al Mukaddam 氏は言う。それに続く検査で、Gajavelli さんの FGF23 の値が上昇しており、尿中にリンが失われていることが確かめられた。

 本疾患の診断は第一関門であるに過ぎない。医師らには続いて腫瘍を見つけることが求められる。しかしこれは骨の折れる作業である。なぜなら腫瘍はしばしば小さく、体内のどこにでも存在しうるからである。また2つ以上の腫瘍がある患者もいる。一般に腫瘍を切除する手術が望ましい治療である。なぜなら、それによって疾病を治癒せしめることができ、見られることの多い再発も予防できるからである。

 腫瘍を検出する核医学検査である高精度のガリウムシンチ検査を用いて、医師らは Gajavelli さんの左股関節の裏側に隠れていた豆粒大の腫瘍を発見した。整形外科医らにとって次の難題は、若い患者に対して股関節全置換術を行うことなくそれを全摘する最善の方法を見つけ出すことだった。

 手術前の3ヶ月間、Gajavelliさんは、リン濃度を上昇させ、筋力低下を改善させるためにサプリメントを摂取した。ほぼ短期間で「それらによってずいぶん気分がよくなりました」と彼は思い起こす。

 2019年8月、彼はペンシルベニア大学病院で Robert J. Wilson 氏によって高難度の9時間半の手術が行われた。この整形外科医は、Gajavelli さんの股関節を置換することなく腫瘍を丸ごと摘除することに成功した。

 手術翌日、Gajavelli さんの FGF23 は正常となった。一週間後、リン濃度も正常に復した。すべての回復には数ヶ月を要した。クリスマスには2年以上ぶりに痛みなしに1マイル歩くことができた。

 Al Mukaddam 氏によると、例の小さな腫瘍は恐らく数年前から存在していたとみられるが、Gajavelli さんの運動療法が症状の進行を速めていた可能性があるという。

 彼のケースは、医師らが「自分たちが的をはずしているかもしれない可能性を考えていながら、わかっている範囲で話を進めた」ことの重大さを強調するものだ、と彼女は言う。

 「もし、知っているかもしれない人に紹介しても答えがわからないのならばいいのです。しかし、医学の分野にいる私たちはみな謙虚な姿勢で新しいことを学ぶべきなのです」と彼女は言う。

 

 

骨軟化症については日本内分泌学会のサイトをご参照いだたきたい。

 

骨軟化症とは、骨や軟骨の石灰化障害により、骨が脆弱化する病気で、

骨成長後の成人に発症するものを「骨軟化症」という。

これに対して骨成長前の小児に発症するものは「くる病」と呼ばれる。

本邦におけるくる病・骨軟化症の原因として最も多い先天性疾患は

PHEX変異によるX染色体優性低リン血症性くる病・骨軟化症

(X-linked hypophosphatemic rickets/osteomalacia:XLHR)である。

 

全身性の代謝性骨疾患で、骨強度の低下により骨折や疼痛の原因となる

骨軟化症の病因には、低リン血症、ビタミンD代謝物作用障害、

石灰化を障害する薬剤(アルミニウム、エチドロネート等)による

薬剤性などがある。

低リン血症の病因には、ビタミンD代謝物作用障害、腎尿細管異常、

線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23:FGF23)作用過剰、

およびリン欠乏などがある。

FGF23は、腎尿細管リン再吸収と腸管リン吸収を抑制し、

血中リン濃度を低下させるホルモンである。

過剰なFGF23活性により低リン血症性骨軟化症をもたらす病態に、

腫瘍性骨軟化症(TIO)や含糖酸化鉄による低リン血症などがある。

TIO については後述する。

 

骨軟化症の症状では、骨痛を訴えることが最も多くみられる。

初期にははっきりした症状を訴えることは少なく、

腰背部痛、股関節・膝関節・足の漠然とした痛みや

骨盤・大腿骨・下腿骨などの痛みが出現する。

特に股関節の痛みが非常に多くみられる。

鈍い痛みは、股関節から腰、骨盤、脚、また肋骨まで

広がることがある。

また骨の脆弱化に伴い骨折を起こしやすくなる。

さらに発見が遅れ進行すると、

下肢筋や臀筋の筋力低下による歩行障害、

脊椎骨折による脊柱の変形などがみられる。

 

骨軟化症は、骨粗鬆症などの各種他疾患との鑑別が重要だが、

症状とともに、大部分の症例で低リン血症や

血中の骨型アルカリホスファターの上昇がみられる。

また、ビタミンD欠乏性骨軟化症の診断には

血中25-水酸化ビタミンD 濃度の測定が必須である。

 

特徴的な画像所見としては、

骨シンチグラフィーで多発性の取り込み、

単純X線写真では全身の骨にみられる小さなひびが見られる。

大腿骨頸部、骨盤、肋骨などの骨表面に垂直に走る

ルーサー帯と呼ばれる小さな骨折線が特徴的である。

 

骨軟化症の確定診断には骨生検が必要だが、

通常はX線検査と血液・尿検査のみで臨床的に診断される。

成人発症例で原因不明の疼痛や骨折を繰り返すケースでは

骨粗鬆症と診断する前に骨軟化症の可能性を考慮することが重要である。

 

骨軟化症の治療は病因により異なり、

それぞれの病因に即した治療を行う。

薬剤性の骨軟化症では原因薬剤を中止する。

ビタミンD欠乏における薬物療法としては活性型ビタミンD3製剤を

投与する。

また、XLHRでは活性型ビタミンD3製剤に加えてリン製剤の投与も行う。

腫瘍性骨軟化症の場合には原因腫瘍の完全除去により治癒が期待される。

 

最後に TIO について説明する。

詳細は 論文アブストラクト(邦文訳)参照いただきたい。

 

TIOは、腫瘍原性骨軟化症としても知られる稀な腫瘍随伴性障害で、

腫瘍組織から分泌される FGF23 が原因で発症すると考えられている。

FGF23はリン排泄とビタミンD合成の役割を担うため、

TIOでは、リンの腎尿細管再吸収の低下、低リン血症、

活性型ビタミンD濃度の低下などの特徴が認められる。

慢性低リン血症は、最終的に骨軟化症につながる。

通常、TIOは、骨の痛み、脆弱性骨折および筋力低下に伴って、

慢性的な血清リン濃度の低下が見られる場合に疑われる。

原因となる腫瘍は特定の組織型に限定されない。

良性では、Phosphaturic mesenchymal tumor

(mixed connective tissue variant)

[リン酸塩尿性間葉系腫瘍(混合性結合組織異型)]と呼ばれる

稀な間葉系腫瘍のほか、線維性骨異形成、血管腫、骨巨細胞腫

などが報告されているが、前立腺癌、肺がん、骨肉腫などの悪

性腫瘍が原因となるケースもある。

さらに、母斑や肉芽腫などの非腫瘍性病変の報告もある。

発生部位としては、大腿骨、副鼻腔、咽頭、下顎骨などが

挙げられているが、体内のどこにでも存在しうる。

一般には成長の遅い、非常に小型の病変が多く、

骨内に存在するものも多いことから、

原因となる腫瘍を発見することが困難な場合が多い。

原因腫瘍が発見できれば、その外科的除去が唯一の決定的治療法になる。

原因腫瘍が発見できない場合や完全切除不能例では、

リン製剤や活性型ビタミンD製剤による治療が必要となる。

現在注目を集めている抗FGF23モノクローナル抗体KRN23は、

TIOの原因となる切除不能な腫瘍を有する症例において

有望な治療法の1つになると期待されている。

また最近いくつかの腫瘍で、フィブロネクチンと

線維芽細胞増殖因子受容体1(FGFR1)との融合分子が、

FGF23 産生のドライバーとして働くことが発見されている。

発症機序の解明が今後の標的治療の開発につながることが

期待される。

 

ともあれ、原因が何であろうと、骨軟化症は早期に診断し、

治療を開始することが重要である。

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大麻への強い想い

2020-08-27 22:47:00 | 健康・病気

連日強烈な暑さが続いているが、ようやく9月。

Covid-19 感染が収まる気配のないまま、

この先気温が下がっていくとなると、

また別の心配が生まれてくる。

今のうちにしっかりと診断体制を整えておく必要が

あると思うのだが…

 

ま、それはさておき、

8月のメディカル・ミステリーです。

 

8月22日付 Washington Post 電子版

 

For days she couldn’t stop getting sick. At first she doubted the probable cause.

何日も、彼女は症状の悪化を止めることができなかった。彼女は、最初、推定された原因ではないと考えた。

By Sandra G. Boodman,  

 

 その嘔吐はほとんど前触れなく、何ら明らかな理由もないままに起こった。

 それは Alice Moon(アリス・ムーン)さんが友人たちと外出した翌日に時々見られることがあった。また、ロサンゼルスの広報のスペシャリストである彼女が空港に向かう途中の車の中、あるいは飛行機の中で起こることもあった。この症状は頻回にみられたので、Moon さんは起こったときのためにビニールのゴミ袋を持ち歩くようにした。その嘔吐は旅行の不安に対する反応ではないかと友人たちは推測した。

 最悪の症状の一つは2018年3月に起こった。それはたいへん楽しみにしていた彼女の母親の誕生のお祝いで Moon さんがニューヨーク市で5日間を過ごしていたときだった。

 「私がずっと以前から食べたいと思っていた凍らせたココアを買ったときでした」と彼女は思い起こす。突然、Moon さんは腹痛、嘔気、そして発汗の発作に襲われたが、汗が大量だったため、マイナス1℃の気温にもかかわらず、彼女は帽子もコートも手袋も脱ぎ捨てた。彼女はこの旅行の多くを、心配した母親とともにホテルの部屋で過ごすことになったが、あまりに体調が悪かったのでずっと前から計画していたことが実行できなかった。

 

Alice Moon さんは cannabis products(大麻製品)の販売を推進している。彼女の予測できない嘔吐の症状は 2016年のハロウィーンの夜に起こった。

 

 数週間後、胃腸専門医は Moon さんの予測できない嘔吐の疑わしい原因に焦点を絞り行動指針を示した。しかし、Moon さんはこれを疑わしく思い、その年の残りの期間を試行錯誤に費やしたが、症状は徐々にひどくなっていく一方であり、結局その診断に疑問の余地がない状況となっていった。

 現在31歳になる彼女は今もその結果に立ち向かっており、それによって思いも寄らなかった形で身体的、精神的、そして職業的に自身の生活が変わったのである。

 

Insomnia remedy 不眠治療

 

 最初の症状は2016年のハロウィーンの夜に起こった。Moon さんと友人が trick-or-treaters(ハロウィーンでお菓子をねだる子供たち)を見ながら近所を歩き回っていたときのことだった。突然 Moon さんが嘔吐し始めたのである。「意味がわかりませんでした」と彼女は言う。

 彼女は自宅に戻り、少しマリファナを吸った。マリファナで嘔気や嘔吐を和らげることができることから化学療法を受けている人たちの間で用いられていることを彼女は知っていたからである。Cannabis products(大麻製品)を販売促進する Moon さんは、2011年からマリファナ産業の分野で働いてきた。その一環として、ある薬局では「すべての人たちでそれが有用だと思う」と彼女は語っている。(カリフォルニア州は1996年に医療用として、また2016年にはレクリエーション(娯楽)目的で cannabis を合法化している)。

 Moon さんは、長く続いていた不眠と闘い、不安やうつを抑える目的で、この数年間、夜間に cannabis を用いてきた。彼女は自身を、毎日使用するが中毒にはなっていない人間であると表現する。「私は一日中マリファナでハイになるような人間の一人では決してありませんでした」と彼女は言う。

 例のハロウィーンの症状は2、3時間続いたが、その数日後に受診したところ胃食道逆流症と診断された。医師は彼女に、香辛料の利いた食べ物やトマトなどの酸味の強い食べ物を避け、処方箋がなくても購入可能な制酸剤を内服するよう助言した。

 2、3ヶ月間は、それらの方法が有効に思われた。しかし、2017年の初めになると嘔吐が再び出現した。その症状は、週に一回起こっており、Moon さんにはたとえ少量であってもアルコールの消費に一致している様に思われたので飲酒を中止した。

 しかし、嘔吐は続いた。彼女は月に一回は仕事で飛行機に乗っており、「私が車内で嘔吐した Ubers(配車サービスの車)がどのくらいの数になるのかわからなくなるほどでした」と彼女は言う。

 「私が憂慮していたのは確かですが、何をすべきなのかわかりませんでした」と Moon さんは言う。元から痩せていたが、彼女はさらに体重が減り始めた。彼女は5フィート6インチ(約171cm )の身長で、体重は110ポンド(約50kg)だった。

 2017年の終わり頃、彼女は cannabis 常用者の一部にみられる異常な症状についてのブログ記事を読んだ:それは何日も続くことのある治療の決め手がない難治性の嘔吐だった。

 「イカレた目をした人物のイラストが描かれていたのを覚えています」と Moon さんは言う。「しばらくの間、私はそのことを頭の中にとどめていましたが、自分の話としては納得できませんでした。しかし私は確かにマリファナを使った翌日に嘔吐し続けていたのです」

 症状が頻度とひどさを増していく中、Moon さんは、嘔吐の時間を抑えてくれるように思われる唯一のものが hot bath(温浴)であることを発見した。「それがなぜ効くのかは分かりませんでした」と彼女は言う。「浴槽から出るや否や、私は嘔吐し始めていたのです」疲れ切って脱水状態となったまま浴室の床の上で寝てしまう夜もあった。

 

Unconvinced 納得できない

 

 悲惨だった例のニューヨークへの旅行のあとすぐに Moon さんが受診した胃腸科医は理学的診察を行い 自分が cannabis の常用者であることを Moon さんが彼女に告げると、彼女は詳細な質問を行った。Moon さんの症状と温浴によって症状が緩和されたことに基づいて、彼女は cannabinoid hyperemesis syndrome(CHS, カンナビノイド過嘔吐症候群)を疑った。これはまさに数ヶ月前に Moon さんが読み、そして却下した疾患だった。

 この稀な疾患は 2004 年にオーストラリアの医師らによってはじめて報告された。彼らは、cannabis を頻回に使用する人のうち、熱いシャワーや入浴によって緩和される激しい嘔吐を起こす少数例を記載した。Moon さんのように、制吐作用を持つマリファナを用いることで嘔吐を抑えようとするも失敗に終わった人も少数いた。しかしヘビーユーザーの一部には、消化管への作用を持つ cannabis が逆説的効果を有することから、制御不能なひどい嘔吐を引き起こす可能性がある。オーストラリアの研究者らの報告によると、それを止める唯一の方法はマリファナを断つことだったという。

 かつてはまれと考えられていたが、cannabis を合法化している州において米国の医師による CHS の症例報告が増加してきている。

 「私の cannabis の使用が彼女を非常に心配させることになりました」と Moon さんは思い起こす。その胃腸科医は Moon さんに、マリファナの使用を3~6ヶ月間中止してみて、それでももし症状がみられるようなら再開してみるよう助言した。その専門医は Moon さんに、他の疾患を鑑別するために、不必要かもしれない高額で危険を伴う可能性のある検査を依頼したくないと話した。

 Moon さんは異議を唱えた。「私はこれが原因であると納得していませんでした」と彼女は言う。彼女はこれについてじっくりと考えたが、Malibu(マリブ)で行われた cannabis をテーマにしたディナー・パーティに出席することを決意した。

 しかし自宅に戻って数時間後、Moon さんに嘔吐が始まった。そしてそれは2週間以上止まらなかった。

 症状が始まってから4日して Moon さんは自宅近くの緊急ケアセンターに行った。当直の医師は CHS について知らなかった。ひどい脱水を治療するため彼は点滴を行い、彼女に制吐剤を投与した。制吐剤は一般的に CHS に対して無効である。しかし、彼女が軽快したかに見えたため彼は彼女を自宅に帰した。

 数時間後、Moon さんは再び嘔吐し始めた。彼女のルームメイトは出かけて、香辛料のチリ・ペパーに含まれる活性成分由来のカプサイシンをベースにした処方なしで購入できるクリームを買った。チリ・ペパーは CHS によって引き起こされる嘔吐を軽減することが知られている。Moon さんは腹部に少量を塗ると眠り込んだ。

 ところが数時間後、彼女は激痛で目が覚めた。

 「私のお腹の上にガスバーナーを当てたような感じでした」と彼女は言う。彼女は必死になってそのクリームを取り除こうとして濡れた布でお腹を擦ったがそれは燃える感じを増強させただけだった。(Moonさんはその後、水ではなくミルクを用いるべきだったことを知る)

 3日後、依然として嘔吐が続いていたため、友人が彼女を再び緊急ケアセンターまで車で連れて行った。前回彼女が受診した医師は彼女に点滴を行い、彼女がかかっていた胃腸科医に電話した。彼女は血液検査に加え CT と MRI 検査を依頼したが全て正常だった。

 その胃腸科医は、Moon さんの嘔吐が cannabis によって引き起こされているとの疑いを繰り返した。彼女は嘔吐がいつ止まるのか予測できなかったが、数日後、ようやく嘔吐は止まった。

 Moon さんによると、それからの5ヶ月間、不眠やうつと闘いながら cannabis をほとんど避けるようにしたという。

 しかし 9月下旬に彼女は CBD カプセル(ヘンプオイルカプセル)を間欠的に使い始めた。それによって、摂取用や吸入用のマリファナより嘔吐の誘発を抑えてくれるのではないかと考えたからである。12月22日まではなんとか抑えられていたようだったが、その日、祝日で家族のもとを訪れたとき、Moon さんはこれまで経験した中で最悪の発作に見舞われた。嘔吐があまりにひどかったため、Moon さんは旅行を切り上げ、ロサンゼルスに戻り、当地の病院に4日間入院した。彼女によると、そこの医師の診断は gastroparesis(胃不全麻痺)だった。これは胃がきちんと内容を空にできないことによって引き起こされる疾患である。Moon さんはさらに潰瘍と細菌感染症の診断を受けた。彼女は自身の CHS の診断について病院のチームに伝えたという;彼らはその病名を聞いたことがないと彼女に話した。

 

'A lot of suffering' 多大な苦痛‘

 

 「私は死にかけているようだと言われていました」と Moor さんは思い出すが、その後ゆっくりと回復した。いかなる種類のものであれ薬を彼女をが使用したのはあの時が最後になった。「それに手を出す気持ちは毛頭ありませんでした。使った結果に見合う価値がなかったのです」と彼女は言う。

 しかし、Moon さんは、とりわけ彼女の職業的、社会的生活が cannabis を中心に展開されていたことから、禁薬ができるとは思っていなかったという。「それは非常に辛いものでした」と彼女は言う。

 ロサンゼルスにある Cedars-Sinai Medical Center(シダーズ・サイナイメディカルセンター)の精神医学・行動神経科学部門の教授 Itai Danovitch(イタイ・ダノヴィッチ)氏によると、Moon さんの経験は、cannabis が何日もの発作性嘔吐を引き起こしているときであっても、多くの患者が直面する禁薬の困難を映し出しているという。(彼は Moon さんの実際の治療にはあたっていない)。

 「皆、使用している薬物を強く信じる考えを持っています」と Danovitch 氏は言う。彼は中毒精神医学が専門である。「そこには多くの、cannabis に対する文化的、宗教的、社会的、および地域的捕らえ方があり、それらが薬物使用者らの cannabis への執着を強くしているのです」

 多くの人たちは、薬物を使用していること、あるいは彼らがそれに依存していることを医師に告げようとはしないと彼は付け加えて言う。「CHSは依然として医師から過小認識されている状態にあります」と彼は言う。一般には CHS は他の疾患が除外されることで確定される除外診断となっている。

 なぜ一部の常用者が影響を受けやすいのか、あるいは、なぜ温水が症状を緩和するのかはわかっていない。ある研究によると、患者が CHSと診断されるまでに平均して7回の緊急室への受診、3回の入院を要していたことが明らかにされている。

 「CHSは、それがあることで非常にストレスの多い孤立化しやすい疾患です」と Danovitch 氏は付け加える。「患者が診断されるまでにしばしば長い時間がかかり、そこに至るまでに多大な苦痛が続きます」

 今、Moonさんはその苦痛と決別でき喜んでいる。彼女は現在、不眠の治療に瞑想を取り入れており、うつに対しては薬を内服している。これまで CHSの存在を信じない人たちや、彼女が症状を誇張していると主張する人たちからの攻撃に直面してきたと彼女は言う。

 彼女は、自身の経験を明らかにすることが他の人たちの救いになることを望んでいる。最近 Moon さんは、the Institute for Safe Medication Practices Canada(カナダ安全薬物療法協会)による cannabis 使用者向けの情報資料の原稿作成を手伝った。また彼女のウェブサイトにも CHS についての情報が載せられている。「広く伝えていくよう努力しています」と彼女は言う。

 

本邦では、大麻については大麻取締法により、

その所持、譲受、譲渡、栽培、輸出入が禁じられており、

事実上大麻使用することはできない。

一方、海外では医療用だけでなく、レクリエーション薬としても

合法化され、使用が認められている。

マリファナ、または cannabis は Cannabis sativa(大麻)と

して知られるアサ科の植物から抽出される天然物質である。

Cannabis は、レクリエーションとして陶酔するためや

治療上の目的で、喫煙、吸入、摂取されるなどして、

何世紀にもわたって用いられてきている。

米国では28州で医療用に使用され、そのうち8州では

レクリエーション用にも使用が認められている。

一般には副作用のない無害の物質であると考えられているが、

本記事にある Cannabinoid hyperemesis syndrome(CHS)は

慢性的な cannabis 使用例にみられる続発症である。

長期に渡って cannabis を使用している人で、

難治性の嘔気や嘔吐がみられ、その症状が

温水につかることで緩和される場合には、

臨床医は CHS を強く疑うべきである。

制吐剤に対する反応の欠如は CHS の診断の助けとなる。

CHS の治療を成功させる唯一の治療は cannabis からの

離脱だが、治療選択肢の一つの可能性がある薬剤として

ハロペリドールが検討されている。

CHS を経験している患者では cannabis の使用継続が

さらなる症状の引き金となるため、

使用を避けるためのカウンセリングを受けるべきである。

CHSはいまだ、その発症機序については不明な点も多く、

cannabis の使用者が増えている米国では注意喚起が

なされている。

マリファナの所持が禁じられている日本では

ほとんどお目にかかることはないと思われるが、

知識として持っておく必要がありそうだ。

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