MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

2017年1月新ドラマ

2016-12-11 16:22:47 | テレビ番組

まずは 2016年10月クールのドラマを総括します。

どのドラマも出演者のギャラ以外は

たいして金のかかってなさそうなショボいドラマばかり。

そんな中、独断でファインプレー賞を授与するとすれば

下の3女優に送りたいと思います。

テンポの良さと存在感絶大の石原さとみ

強烈な変顔とラップで頑張った志田未来

そして主役・松岡を引き立てた清水富美加


 

 “地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子” より


“レンタル救世主” より


“家政夫のミタゾノ” より

 

低調なドラマが続くなか、

個々の役者の技量を堪能するしか楽しみはなさそうです

 

とりあえず今クールの各作品を、12月4日放送分までの

平均視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]上位から

順にコメントしていきます。( )内数字は平均視聴率

 

『Doctor X~外科医・大門未知子~第4シリーズ』 21.2%)木曜21時 テレビ朝日系

フリーランスの外科医・大門未知子、2年ぶりのご活躍だったが、内容的には完全にマンネリ化。過去のシリーズの登場人物を続々と舞い戻らせるなど、ドラマとして前進は見られない。医学的にも現実との解離は大きかった。それでも 20%超えの平均視聴率はすごいとしかいいようがないが、音楽でいえば懐メロを聴いているような感じの新鮮味のないドラマだった。

 

『相棒(15)』 14.9%)水曜21時 テレビ朝日系

一時の20%越えの視聴率は獲れなくなっているが、今回も15%前後の視聴率をキープできているのはさすが。個人的には完全に卒業。

 

『逃げるは恥だが役に立つ』 13.0%)火曜22時 TBS系

雇い主と雇用者の関係で二人の間に距離を保ってスタートした契約結婚だったが、徐々に男女を意識するようになっていくラブコメディ。ガッキーのかわいらしさやドラマ最後の“恋ダンス”が話題となり右肩上がりの視聴率を獲得。ただ、ドラマの中で、ガッキー演じるみくりが何を考えているのか不明で共感できかねる点も多くストーリーにも別段面白みを感じなかった。TBSらしからぬあっさりしたドラマ作りだったため視聴者にとって見やすい作品になったのかもしれない。

 

『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』 12.4%)水曜21時 日本テレビ系

今、おしゃれ大好きスーパーポジティブ女性を演じさせたら石原さとみの右に出る女優はいないかもしれない。校閲部という本来超地味なはずの職場が舞台となっているにもかかわらず、派手目なドラマに仕上がった。石原さとみの独壇場となってしまいそうなドラマだったが、彼女と張り合う菅田将暉の存在感もなかなか。もう少し視聴率が伸びてもよかったように思う。

 

『IQ 246~華麗なる事件簿~』 11.2%)日曜21時 TBS系

北鎌倉を舞台にIQ246の天才が難事件を膨大な知識と鮮やかな推理で解決する本格ミステリー。事前の予測通り、織田裕二がとても IQ246 の持ち主に見えなかったし、IQ246 を駆使して解き明かすにしてはミステリーがショボ過ぎた。おまけに、“(古畑任三郎+杉下右京)÷2”な感じ(自分には“ルーズベルトゲーム”の手塚とおるのモノマネに見えた)の珍妙な織田裕二の喋りには違和感を感じたが、回を重ねるうちに織田のテンションが下がってしまうという一貫性の欠如。残念ながらシリーズ化は難しそうだ。

 

『砂の塔~知りすぎた隣人』 9.7%)金曜22時 TBS系

タワーマンションを舞台に、悪意を持った隣人たちによって主人公が孤立し追い詰められていくサスペンスドラマ。全くKY な主人公に同情の余地はなくイライラの連続。視聴者のミスリードを誘う展開の連続に疲れるばかり。窮地に追い込まれたときの夫役の田中直樹の表情が、NHK の“ LIFE ”のコントシーンにしか見えず緊迫感が一気に失われた。完全なミスキャスト。金曜の夜には見たくない内容のドラマで低調な視聴率にもうなずける。

 

『THE LAST COP/ラスト・コップ』 8.3%)土曜21時 日本テレビ系

事故から30年ぶりに目を覚ました昭和感覚肉食デカ・京極浩介(唐沢寿明)と平成草食系若手刑事・望月亮太(窪田正孝)の凸凹コンビによるとんでもアクション・コメディ。のっけから、しつこく繰り返される耳障りな窪田の甲高い叫び声、何とかならないか?あまりにリアリティに欠けるアクションも幼稚で本格派刑事ドラマを期待していた人にとっては全くの期待外れ。というわけで初回のみ視聴でリタイア。

 

『メディカルチーム レディ・ダヴィンチの診断』 8.1%)火曜21時 フジテレビ系(関西テレビ)

最初は反目し合っていた女性医師たちが、次第にお互いを認め合うようになり、原因不明の病気に苦しむ患者たちを救うべく懸命に原因を解き明かそうとするドラマ。医療ミステリーの一面も持つが、出てくる病気が難しすぎて一般受けしなかったのでは?また診断に至るまでの手がかりも小出しにし過ぎであり、あたかも少ない情報から診断する NHK の“総合診療医ドクターG”を見ているかのよう。こういったドラマはさじ加減をよく考える必要がある。

 

『カインとアベル』 8.1%)月曜21時 フジテレビ系

旧約聖書に登場するアダムとイブの子となる兄弟、カインとアベルをモチーフに、弟の兄へのコンプレックスと兄の弟への嫉妬が描かれるヒューマンラブストーリー。父親役の高嶋政伸と長男役の桐谷健太が兄弟にしか見えないし、主人公の山田涼介は高校生にしか見えないといったミスキャストに加え、第2回まで祖父役で出演していた平幹二郎が急死する不幸も。寺尾聡が代役を務めたがまるっきり別人物の雰囲気に…。また大手デベロッパーの社員としての主人公の仕事が、徹夜でのジオラマ作りや建築についてのにわか勉強など小学生並み、脚本も学芸会レベル。そもそもこのドラマ、どうして『カインとアベル』というタイトルになったのか?低迷が続く月9だが、社長は続行の方針とか。今後がとても心配になる低レベルの月9ドラマだった。

 

『家政夫のミタゾノ』 7.6%)金曜23時15分 テレビ朝日系

松岡昌宏演じるスーパー家政夫が、派遣先の家の汚れだけでなく、その家庭・家族に巣食う“根深い汚れ”までスッキリ落としていくという物語。一話毎に家庭の問題が解決していくことから爽快感が味わえ、個人的には今クールのドラマの中で最も楽しめた作品だった。最初松岡の女装がキモ過ぎたが、視聴を重ねるうちに徐々に違和感は薄れていった。恐ろしいことである。

 

『キャリア~掟破りの警察署長』 7.2%)日曜21時 TBS系

玉木宏演じるキャリアの警察署長自らが現場に出て独自の捜査方法で事件を解決するコミカルヒューマン刑事ドラマ。遠山の金さんばりの活躍をするのだが、決め手となる桜吹雪の入れ墨の代わりは何だろうかと思いきや、『この桜に誓って悪事は見逃しません』と言って警察手帳の桜の代紋をかざすだけ、というショボさ。辛抱強く視聴を続ければ良かったのかも知れないが、あえなく第2話で脱落。

 

『レンタル救世主』 7.2%)日曜22時30分 日本テレビ系

借金返済のためレンタル救世主をさせられることになった主人公が命をかけて人助けをする。なんとなく支離滅裂気味にドラマが展開されるのが逆に良い。前述の志田未来のラップも、話し下手でラップの方が伝わりやすいから、ということだが、逆にわかりにくかったりする。視聴率は低かったが、暗くなりがちな日曜の夜、何も考えずに見たい人には向いていたかも。

 

『Chef~三ツ星の給食』 7.0%)木曜22時 フジテレビ系

優秀なシェフでありながらプライドが高すぎて三ツ星レストランをクビになった主人公が、それまでバカにしていた学校給食に挑戦し、挫折を繰り返しながらも小学校の子供たちに「最高に美味しい」と言ってもらうべく奮闘する物語。三ツ星シェフが給食に取り組む姿を普通に描けば良かったのに、その姿をテレビ番組の企画として取り上げるという不自然な物語展開にしたために逆につまらないドラマになってしまった。もう少し、企画・脚本をしっかり練っていれば面白い作品に仕上がった可能性があった。残念!

 

 

というわけで、10月クールドラマのことは忘れて

来年1月からの新ドラマをチェックしてみましょう。

 

 

フジ月9 1/23~ 突然ですが、明日結婚します 西内まりや、山村隆太(flumpool)、山崎育三郎、中村アン、岸井ゆきの、加藤諒、杉本哲太、石野真子、沢村一樹、他

キャスト選びにかなり難航したようである。原作は『プチコミック』(小学館)で連載中の宮園いづみの漫画『突然ですが、明日結婚します』。“結婚したい女” と “絶対に結婚したくない男” によるラブコメディ。バリバリのキャリアウーマンだが専業主婦を熱望する主人公が、価値観が合わない以外はすべて完璧という結婚否定男とバトルを繰り広げるうちに次第に惹かれ合うようになり恋愛モードに突入するという複雑で滑稽なラブストーリーが展開される。主人公の高梨あすか(西内まりや)は、大手銀行に勤め、数々の金融に関する資格を持つバリバリの20代 OL。しかし、あすかは人一倍結婚願望が強く「専業主婦になること」が夢だった。5年付き合った彼氏に突然フラれてしまい婚活を始めるが、ことごとく惨敗。そんなときイケメンで優秀な人気アナウンサー・名波竜(ななみ・りゅう)(山村隆太)と出会う。しかし名波は典型的な “嫌婚男子” だった。結婚によって自由を失うことを嫌うだけでなく、結婚は女性の逃げ場と蔑んでいた。一方、あすかにとって、名波は結婚に関する価値観の相違以外は全て理想の相手だった。お互いを知れば知るほど二人は強烈に惹かれ合い、ついには付き合うことになるが、結婚に関する “価値観バトル” が始まることに…。視聴者層が限られそうな内容のドラマだが、いきなりロックバンドのボーカリストをメインキャストに持ってきていいことはないように思うのだが、2008年、“ゆず” の北川悠仁を抜擢したドラマ“イノセント・ラヴ”を思い出してしまった。低迷する月9、もう何でもありでいいのかもしれない。

 

フジ(関西テレビ)火9 1/10 ~ 嘘の戦争 草彅剛、藤木直人、水原希子、菊池風磨(Sexy Zone)、マギー、姜暢雄、野村麻純、大杉漣、山本美月、安田顕、市村正親、他

2015年1月クールで放映された草彅剛主演ドラマ『銭の戦争』に続く復讐シリーズ第2弾。前作は韓国ドラマを原作として後藤法子が脚本を担当していたが、今回は彼女によるオリジナルドラマ。幼い頃に家族を殺された主人公が、犯人に復讐すべく天才的な詐欺師となり、犯人に迫っていく仇討ちサスペンス。主人公・一ノ瀬浩一(草彅剛)が9歳のとき、父親が母と弟を殺し自ら無理心中するという事件に見舞われる。しかしそれは仕組まれた殺人事件だった。犯人の顔を見た浩一は、警察に「犯人は父ではない、自分は真犯人の顔を見た」と繰り返し訴えるが、信じてもらえない。それどころか、嘘つき呼ばわりされ、親戚からも奇異な目で見られることとなる。やがて浩一は成長しタイに渡り、偽の経歴を手に入れ名前を変えて詐欺師となる。記憶の中の真犯人と再会した彼は復讐を誓い日本に戻って来る。殺人事件当夜に起こった真実に迫る中で関係者たちが浮かび上がってくる。30年の時を経て真実を知った浩一は、詐欺師ならではの手法で事件関係者たちに罠を仕掛けていく。スキャンダルを暴き、犯罪者としての顔も暴いて、彼らを社会的に抹殺しようとするが、それを阻もうとする大企業の社長・二科隆(藤木直人)との間で熾烈な攻防戦が繰り広げられていく。浩一の相棒女性詐欺師・十倉ハルカ(水原希子)、大企業会長の愛娘の女医・二科楓(山本美月)も登場し、浩一を巡る三角関係から複雑な愛憎劇も展開される。そのほかのキャストには、隆の腹違いの兄で、隆や社員たちから疎まれる存在となっている二科晃に安田顕、浩一が面倒を見ている見習い詐欺師・八尋カズキに菊池風磨、らが決まっている。

 

TBS 火10 1/17 ~ カルテット 松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし(サンドウィッチマン)、八木亜希子、Mummy-D、もたいまさこ、他

夢が叶わなかった30代男女4人が織りなすヒューマンサスペンス・ラブストーリー。脚本は坂元裕二。それぞれの境遇から夢破れて軽井沢に集った弦楽奏者の4人がひと冬の共同生活を開始し自身の人生について見直していく。主人公の巻真紀(まき・まき)(松たか子)はヴァイオリニスト。カルテットの中で第一ヴァイオリンを担当していたが、家庭があるため普段は都内で生活、演奏のため週末だけ軽井沢に通っている。極端なネガティブ思考の持ち主で自ら主張することなく他のメンバーたちより一歩引いた存在だが、時々核心に触れる発言をするなど、とらえどころのない人物。チェリストの世吹すずめ(せぶき・すずめ)(満島ひかり)は無職のためメンバーの一人である司の祖父が所有する軽井沢の別荘に住みついている。基本的に寝て過ごしていることが多いが、ひとたびチェロを手に取ると人が変わる。常にマイペースでのんびりしているがカルテットに加わったのにはある目的があった。第2ヴァイオリン奏者の別府司(べっぷ・つかさ)(松田龍平)は音楽一家に生まれドーナツ会社に勤めている。4人の中で唯一、冷静にほかの人物とコミュニケーションを取ることのできるリーダー的存在。カルテットの活動拠点として祖父の所有する別荘を提供する。一見、何不自由ない生活を送っているように見える司にも、誰にも言えない秘密があった。そしてヴィオラ奏者・家森諭高(いえもり・ゆたか)(高橋一生)は妙に理屈っぽく自己のこだわりの強い一風変わった男。これら4人の共同生活は偶然のように始まったかに思われたが、その“偶然”には大きな秘密が隠されていた。このほかに、カルテットの4人が訪れるライブレストランの従業員・来杉有朱(きすぎ ありす)を吉岡里帆が演じる。演技派の4人と坂元裕二のコラボというTBSらしからぬ雰囲気のドラマだが、果たしてどのような展開を見せるのか、期待したい。

 

テレ朝水9 継続 相棒(15) 水谷豊、反町隆史、仲間由紀恵、石坂浩二、川原和久、山中崇史、他

 シーズン15はもう1クール続くようだが、このシーズンで反町は降板とのことである。次シリーズの相棒はまだ正式には決まっていないようだが、濱田岳の名前が上がっているとか。

 

日テレ水10 1/18 ~ 東京タラレバ娘 吉高由里子、榮倉奈々、大島優子、坂口健太郎、鈴木亮平、他

原作は講談社『Kiss』連載中の東村アキコの同名コミック。「〜できタラ」「〜できレバ」と言い続けて30歳を迎えた主人公の悲哀がコメディタッチかつ辛辣に描かれる。主人公は独身、彼氏ナシの30歳・鎌田倫子(吉高由里子)。職業は売れない脚本家。「キレイになったら、もっといい男が現れる!」「好きになれれば、結婚できる!」そんなタラレバを繰り返し、親友の山川香(榮倉奈々)、鳥居小雪(大島優子)と3人で女子会ばかりやってきたが、ある日、金髪のイケメンで人気モデルのKEY(本名・鍵谷春樹)(坂口健太郎)に「タラレバ女!」と言い放たれ、現実を直視するはめに…。このほか、鈴木亮平が演じるのが倫子がかつて勤めていた制作会社のディレクター・早坂哲朗、かつてADだった新人時代に倫子に結婚を前提に交際を申し込んだが断られている。「私たちって、もう女の子じゃないの?」「本気出したら恋も仕事も手に入れられると思ってた…」「立ち上がり方が分からない」「恋に仕事に、お呼びでない?」などなど。そんなタラレバ娘たちが、もがきながらも幸せを探して突き進むアラサー女子のリアルドラマ。

 

テレ朝木9 1/12 ~ 就職家族~きっと、うまくいく~ 三浦友和、黒木瞳、前田敦子、工藤阿須加、他

就活をテーマにしたホームドラマ。平穏な生活を送っていた家族が、あるきっかけから一家揃って就職活動をすることとなり、それぞれの立場から就活を通じて「働くとは」「生きるとは」が問われていく。父・富川洋輔(三浦友和)は大手鉄鋼メーカー・日本鉄鋼金属で人事部長を勤めるエリートサラリーマン、新卒採用とリストラ勧告という重大な責務を負っていた。不器用な面があるため同期と比べると出世が遅れていたが、部下からの信用は厚く、ようやく役員に手が届きそうというところで信念を曲げた仕事をしてしまい、それまで築き上げてきたものすべてが崩れ去る。洋輔の妻・水希(黒木瞳)は私立中学の国語教師。おっとりした性格だが、マイホームの購入を夢見ていた矢先に衝撃的な出来事に直面する。長女・栞(前田敦子)は宝飾メーカーで働いているが、セクハラに遭い部署の異動を願い出る。しかし異動先は想像以上に過酷だった。就職活動中の長男の光(工藤阿須加)は三流大学生。周囲が次々と内定を決める中、焦りを感じている。正義感が強く真面目だが、父親譲りの不器用さと頑固な性格が邪魔をする。それぞれに悩みを抱え、「働くこと」について思いを巡らせている家族に突然襲いかかる衝撃的な現実。バラバラになりそうな家族の絆は“就活”を通して取り戻せるのか?なお前田敦子の恋人役として本ドラマに出演予定だった成宮寛貴が突然の引退宣言で渡辺大が代役出演という注文がついた。ドクターXに続くドラマとしては地味過ぎる感もして、視聴者層は限られそうだ。

 

フジ木10 1/12 ~ 嫌われる勇気 香里奈、加藤シゲアキ(NEWS)、椎名桔平、相楽樹、戸次重幸、丸山智己、桜田通、飯豊まりえ、正名僕蔵、升毅、他

アドラー心理学をテーマに一躍ベストセラーを記録した同名書籍(岸見一郎・古賀史健著)を原案として“アドラー女子”こと、批判を恐れず我を行く女性刑事の物語としてドラマ化。『嫌われる勇気』は、続刊の『幸せになる勇気』と併せ、フロイト、ユングと並ぶ「心理学界の三大巨匠」とされるアルフレッド・アドラーが20世紀初頭に創設したまったく新しい心理学・アドラー心理学を、悩みを抱える青年と、哲学者との対話形式でわかりやすく解説した著書。アドラー心理学では、“トラウマ”による支配を否定した上で、「人間の悩みは、全て対人関係の悩みである」と断言し、他者からどう思われるかは、自分にはコントロールできない「他者の課題」であり、自分の課題と他者の課題を切り離す「課題の分離」により対人関係の悩みから解き放たれることを説いている。他者から嫌われることを恐れない「嫌われる勇気」を持ち得たとき、人は初めて自分だけの人生を歩みはじめることができるというのがアドラー心理学の本質となっている。本ドラマの主人公はそんなアドラー心理学を100%体現できる“嫌われる勇気”を持った人物。自己中心的に見える振る舞いで周囲になじまず、常に組織の論理と反目する孤高の女刑事が主人公の、一話完結型で爽快感あふれる刑事ミステリードラマとなる。主人公の女刑事は香里奈演じる庵堂蘭子(あんどう・らんこ)、32才。独身、彼氏なしの警視庁刑事部捜査一課8係の刑事。難事件を次々と解決に導いてきた実績を持ち高い検挙率を誇る桜田門のエースだが、組織になじまない一匹狼タイプで、周囲の意見には耳を貸さず、常に自分が信じる道を行く“アドラー女子”。周囲からは“嫌われている”のだが、周りの評判など一切気にしない。そんな蘭子とコンビを組むことになるのは、あこがれの捜査一課に異動してきたばかりの青山年雄(加藤シゲアキ)。正義感が強く、人に対して常に明るく接するのだが、優柔不断で心配性な一面も。蘭子とは正反対に、他人の目がとても気になる“嫌われたくない男”。自分勝手で何も説明してくれない蘭子に振り回され、彼女のことが心底嫌いになる。しかし、蘭子と行動を共にすることで、アドラー心理学を学び、少しずつ成長していく。また『犯罪心理学』を専門としている帝都大学文学部心理学科の教授・大文字哲人(だいもんじ・てつと)に椎名桔平。大文字は事件の犯人像に関する情報を警視庁に提供している特別コンサルタント。アドラー心理学を含め、犯罪心理以外の心理学にも詳しく、人間の裏側にある悪の側面を知っているためかどこか厭世的で皮肉屋。蘭子のことを理解できない青山に、アドラー心理学の存在を教える。蘭子の生き方を通して『自由、そして幸せになるための勇気』の必要性が問われるアカデミックなドラマ。“嫌われ”女優の香里奈がそのまんまの役を演ずることになるとは洒落にもならないが、いまだに主役に抜擢されるとは、やはり何か(コネ?)を持っている女優なのだろう、きっと。

 

TBS金10 1/13 ~ 下剋上受験 阿部サダヲ、深田恭子、山田美紅羽、要潤、風間俊介、若旦那、皆川猿時、岡田浩暉、川村陽介、小芝風花、他

中卒の父と偏差値41の娘が受験塾にも行かず二人三脚で最難関中学を目指した“奇跡の実話”をドラマ化。小学校5年生の夏から中学受験までの約1年半にわたる家族の奮闘が描かれる。原作は2014年に産経新聞出版から刊行された桜井信一の同名タイトルの著書。不良で勉強もせず中卒で働き出した桜井信一(阿部サダヲ)は、今はひょうきんで口が達者な下町の熱血オヤジ。気が強いが可愛い中卒の妻・香夏子(深田恭子)、一人娘の佳織(山田美紅羽)との家族三人で暮らしている。貧乏生活ではあるが幸せな毎日を送っていた。しかし佳織が受けた全国テストの悲惨な結果をみた信一は、娘をエリートにすべく中学受験させることを決意する。が、塾にも通わせず、中卒の自分が猛勉強し、娘に教えるという無謀な決断をする。佳織と同じく最難関中学を目指すライバル・麻里亜の父親で、東大卒・大手ゼネコン2代目社長という対照的な経歴を持つ信一の同級生・徳川直康に要潤、中学受験経験者であることからアドバイザー的役割を担う信一の職場の後輩・楢崎哲也に風間俊介、そして信一の父親で信一とは折り合いの悪い中卒叩き上げの大工・桜井一夫に小林薫がそれぞれキャスティング。そのほか信一の中卒仲間を若旦那、皆川猿時、岡田浩暉、川村陽介らが演じる。やたら “中卒” “最難関中学” といった差別的ニュアンスを持つ言葉が繰り返され、さすがの阿部サダヲ主演でも気分よく見たいと思う視聴者は少ないのではないか。

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 1/20 ~ 奪い愛、冬 倉科カナ、三浦翔平、大谷亮平、水野美紀、榊原郁恵、キムラ緑子、三宅弘城、秋元彩加、ダレノガレ明美、西銘駿、他

鈴木おさむによるオリジナル脚本で“奪い合う恋愛”=“奪い愛”が描かれるドロキュンドラマ。ドロドロしてるがキュンとする“攻める恋愛ドラマ”。主演は倉科カナ。倉科演じるデザイン会社社員の池内光は裕福ではない家庭に育ったものの持ち前のガッツと頭脳で仕事も優秀にこなし、会社の後輩である婚約者にもめぐまれ、充実した生活を送っていた。ところが、そんな彼女の前に突如、かつて死ぬほど愛した元カレが現れたことから事態は急転する。婚約者がいながら、妻のいる元カレとの“禁断の愛”に走り出してしまう。一方、光の婚約者・奥川康太(三浦翔平)は金持ちのボンボンで優柔不断な癒し系男子だが、自分のやりたいことを実現するため親のコネで入った会社を辞めて再就職するという強い意志を持っていた。しかし、光の心が離れてしまったことから嫉妬のあまり“嫌な自分”へと変貌する。さらに元カレの妻の心にも嫉妬の炎が燃え上がる。加えて、康太に想いを寄せる同僚や康太を溺愛する母親からも横槍が入るなど、ドロドロの人間模様が展開される。そのほか、元カレの森山信(旧姓・小田)役に大谷亮平、光に激しい嫉妬を燃やす信の妻・森山蘭に水野美紀、康太の母親・奥川美佐に榊原郁恵、光の母親・池内麻紀にキムラ緑子らが配役されている。

 

日テレ土9 1/14 ~ スーパーサラリーマン佐江内氏 堤真一、小泉今日子、ムロツヨシ、佐藤二朗、笹野高史、高橋克実、賀来賢人、中村倫也、早見あかり、富山えり子、島崎遥香、金澤美穂、犬飼貴丈、他

藤子・F・不二雄が手がけた数少ない大人向けSF漫画『中年スーパーサラリーマン佐江内氏』の実写化。あるきっかけからスーパーマンになってしまった中年のおっさんが超人パワーで世の中の理不尽と戦っていく。“パーマン”の大人向け的内容となる社会風刺作品。ごく平凡な中年サラリーマンの佐江内は、ある日“スーパーマン”と自称する初老の男性に付きまとわれ、スーパーマンになってくれないかと懇願される。しかし、佐江内はそれを真に受けず相手にしなかったが、娘の危機を知りしぶしぶ引き受けることに。譲り受けたスーパー服には様々な能力があり、それを生かして正義のために、世界平和と、鬼嫁や思春期の子供たちとの家庭問題の間で板挟みになりながらも日夜戦わなくてはならない羽目となる。しかし彼の戦う相手は悪の組織や怪獣かと思いきや、ごく日常のもめ事ばかりだった。佐江内に厳しい鬼嫁・円子に小泉今日子、娘のはね子に島崎遥香、息子のもや夫に横山歩、スーパーヒーロー担当の怪しい男たちに笹野高史、佐藤二朗らがキャスティングされている。

 

NHK日8 1/8~ 大河ドラマ おんな城主 直虎 柴咲コウ、杉本哲太、財前直見、前田吟、春風亭昇太、宇梶剛士、吹越満、三浦春馬、貫地谷しほり、菅田将暉、高橋一生、でんでん、筧利夫、柳楽優弥、市原隼人、小松和重、浅丘ルリ子、阿部サダヲ、菜々緒、ムロツヨシ、和田正人、苅谷俊介、小林薫、山口紗弥加、光浦靖子、田中美央、矢本悠馬、寺田心、他

2017年度大河ドラマ。戦国時代の女領主・井伊直虎が主人公となる。井伊直虎は、徳川四天王の一人に数えられ彦根藩の藩祖となった名将・井伊直政の後見人役として知られる。ときは1540年頃、遠江(静岡県浜松市)を治める井伊家当主・井伊直盛(杉本哲太)と妻・千賀(財前直見)の間には後を継ぐ男子がいなかった。そこで一人娘のおとわ(新井美羽→柴咲コウ)と分家の嫡男・亀之丞(のちの直親)(藤本哉汰→三浦春馬)を婚約させ、亀之丞を次の当主にするつもりでいた。ところが井伊家は、実質的には強大な今川義元(春風亭昇太)の支配下にあり、亀之丞の父・井伊直満(宇梶剛士)は今川方に謀反を疑われ殺害され、亀之丞も命を狙われ信濃に逃亡する。直満の謀反を今川に井伊家を窮地に陥れたのは家老の小野政直(吹越満)と噂される。政直は自分の嫡男・鶴丸(小林颯)とおとわを婚約させようとするが、おとわは亀之丞とのある“約束”を守るため誰とも結婚できないよう龍潭寺で出家してしまう。住職の南渓和尚(小林薫)は両親を納得させるためおとわに “次郎法師”いう男の名をつけた。しかし井伊家では不運が続き戦や謀略により次々と男子が亡くなり、跡継ぎは直親の子である2才の虎松(寺田心→菅田将暉)を除いて皆絶えてしまう。南渓和尚は次郎法師を男として還俗(出家した者が元の俗人に戻ること)させる案を出し、次郎法師自ら“直虎”と名乗り、虎松の後見人として城主となる。駿河の今川、甲斐の武田、三河の徳川と、3つの大国が虎視眈々と領地を狙う中、資源も武力も乏しいこの地で、頼れるのは己の知恵と勇気だった。直虎は仲間と力を合わせて国を治め、幼い世継ぎの命を守ってたくましく生き延び、その後の発展の礎を築いた。彼女の原動力となったのは、幼いころに約束を交わしたいいなずけへの一途な愛だった。愛を貫いて自らの運命を切り開き戦国を生き抜いた女の激動の生涯が描かれる。

 

TBS 日9 1/15 ~ A LIFE~愛しき人~ 木村拓哉、竹内結子、浅野忠信、松山ケンイチ、木村文乃、菜々緒、及川光博、他

ついに木村拓哉がゴッドハンドを持つ職人外科医になる(彼がドラマで演じる職業人はこれでちょうど20職種めとのことである)。元?SMAP の木村が演じる外科医・沖田一光は、医師として駆け出しの頃、親友の画策により病院を追われ、恋人の壇上深冬(竹内結子)を置いて単身アメリカに渡る。技術を磨くため、ひたすら手術経験を重ね、知識を身につけた沖田は心臓血管外科と小児外科を専門とする職人外科医となっていた。渡米して10年、沖田はかつての恋人の父であり恩師でもある東京の大病院・壇上記念病院の院長の手術を行うべく日本に戻ってくるが、院長の娘である深冬はすでに病院後継者として脳外科医・壇上壮大(だんじょう・まさお)(浅野忠信)を入り婿に迎えていた。10年前、沖田を裏切ったのはこの壮大だったのだが、そのことを沖田は知らずにいた。戻ってきた病院にうごめく様々な人たちの思惑や親友との対立に沖田は巻き込まれていくことになる。愛、欲望、友情、嫉妬、プライドが渦巻く病院で「愛しき人の命」「かけがえのない人生」を巡って繰り広げられるヒューマンラブストーリー。このほかのキャストとして、関東外科医学会会長の息子で、将来は満天橋病院を継ぐ2世医師、過度の自信と野心を持つ壇上記念病院の心臓血管外科医・井川颯太を松山ケンイチ、外科医をしのぐほどの知識を持つため高いプライドを持つ手術室ナースの柴田由紀を木村文乃、その美貌を武器に政財界と強いパイプを持ち壮大とも浅からぬ関係を持つ壇上記念病院の顧問弁護士・榊原実梨を菜々緒、明るく社交的で周囲の評判は良いがある理由から心の奥は屈折している壇上記念病院第一外科部長の心臓血管外科医・羽村圭吾を及川光博らが演じる。イントロダクションを読む限り、大病院が舞台になっているというものの、一民間病院という狭い空間でのゴタゴタが描かれるだけのチャチな感じがする医療ドラマ。

 

フジ 日9 1/8~ 大貧乏 小雪、伊藤淳史、成田凌、神山智洋(ジャニーズWEST)、内田理央、今井暖大、野澤しおり、滝藤賢一、奥田瑛二、他

『失恋ショコラティエ』『リッチマン・プアウーマン』などを手がけた安達奈緒子のオリジナル脚本。シングルマザーが権力者の陰謀や社会の理不尽に立ち向かっていく奮闘劇。主人公の七草ゆず子(小雪)は1才年下の夫に裏切られてしまい離婚、暴れん坊の息子とおてんば盛りの娘をシングルマザーとなって育てていた。そんな中、勤めていた会社が突然倒産してしまう。貯金も失って一文無しの“大貧乏”生活に転落してしまう。途方に暮れていたゆず子に、元同級生で高校時代からゆず子に憧れ思いを募らせてきたエリート敏腕弁護士・柿原新一(伊藤淳史)から連絡が入る。柿原は会社の倒産には必ず裏があると助言し、調査により30億円もの大金がプールされている可能性があることを突き止める。最初は職探ししか考えていなかったゆず子だったが、柿原の説得を聞き、気を遣う子供達の姿に心を打たれ、強い母親になることを決意、新一との凸凹コンビで陰謀の核心に迫っていく。弱き正義が強き悪をやっつける痛快逆転劇ということだが、小雪&伊藤のコンビで視聴率が獲れるのか?

 

日テレ 日10:30 1/22 ~ 視覚探偵 日暮旅人 松坂桃李、住田萌乃、多部未華子、濱田岳、北大路欣也、木南晴夏、木野花、他

2015年11月20日に放送されたSPドラマの連続ドラマ化。原作は山口幸三郎のコミック、『探偵・日暮旅人の探し物』ほか、『探偵・日暮旅人』シリーズ9作品。脚本・福原充則、監督と演出・堤幸彦。主人公の日暮旅人(ひぐらし・たびと)(松坂桃李)は、5才の頃にある事件に巻き込まれ五感のうち視覚以外の四つの感覚(聴覚、嗅覚、味覚、触覚)を失ってしまう。しかし残された視覚は研ぎ澄まされていた。匂い、味、感触、温度、重さ、痛みなど、目に見えないモノを“視る”能力を身に着けたことで事件を解決していく。保育士の山川陽子(多部未華子)はある日、保護者の迎えが遅い園児、百代灯衣(ももしろ・てい)(住田萌乃)を自宅まで送り届ける。日暮旅人と名乗った灯衣の父親はどう見ても二十歳そこそこで、娘とは名字が違っており血の繋がりもなかった。探し物専門の奇妙な探偵事務所を営む旅人、そして人形のように美しい灯衣。この不思議な親子に惹かれた陽子は、たびたびその探偵事務所を訪れ、旅人の持つ能力を知ることになる。濱田岳演じる青年・雪路雅彦は旅人を“アニキ”と慕い探偵事務所を手伝っている。また北大路欣也演じる旅人の主治医・榎木渡は、目を酷使する旅人に対し、幾度となく『失明してしまうぞ』と警告する。昨年のSP ドラマでは謎のままとなっていた、旅人の障害の原因、灯衣との関係なども本ドラマで明らかにされそうである。

 

お寒いドラマのオンパレードですが、

この中では『嘘の戦争』『カルテット』『東京タラレバ娘』に

多少期待が持てるかも。

新しい年、2017年も、

しっかりドラマチェックを続けていきたいと思います

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“ 見えていなかった ” 眼の症状

2016-12-01 11:29:22 | 健康・病気

11月のメディカルミステリーです。

 

11月21日付け Washington Post 電子版

 

This 33-year-old thought he could shake off his migraine. His girlfriend knew better.

33 才の男性は片頭痛を治せると考えていた。しかし彼のガールフレンドは慎重だった。

 

By Sandra G. Boodman,

 Craig Klein さんは、2015 年3月のフロリダでの休暇中に襲われたガンガンする頭痛の原因について、たぶんそれは強い太陽のせいだと考えていたことを覚えている。

 「それは頭の右側に起こり、だらだらと続く感じでした」現在33才になる Klein さんはそう語る。Klein さんは頭痛を気にしないようにし、市販薬の鎮痛薬を内服したが効果はなかった。眼が光に敏感になっていることに気付いた Klein さんは原因を知ろうとした。

 「これは片頭痛にちがいない」彼はそう考えた。

 しかし、それからの目がくらむような2週間のうちに、その頭痛が片頭痛でなく、決定的に彼の人生を変えることになる病気の前触れであったことを Klein さんは知ることとなる。

 「それを十分に理解し、愛する人たちに伝えることは実に難しいものでした」異常なスピードで得られたその診断について彼はそう話す。「もっとも辛いことの一つに、その病気の転帰について曖昧な点があまりに多かったことがあります」

 Klein さんとガールフレンドの Kelly O'Connell さんがコロンビア特別区のアパートに戻るまで、Klein さんの頭痛は一週間続いていた。彼は心配していなかったが、O'Connell さんは医師を受診するよう言い張った。一週間続く頭痛はあまりに長すぎると彼女には思われたからである。

 Klein 氏によると、それまで彼の健康状態は良好だったため、かかりつけ医がいなかったという。そのため Montgomery 郡にある予約なしで行ける診療所に向かったが、そこで処方薬が手に入れば、それで症状は速やかに解決すると彼は考えていた。

 「私に必要なのはトリプタンだと思っていました」大手製薬会社の営業マンの Klein さんは、片頭痛によく用いられている薬剤の種類名を挙げてそう話す。Klein さんの担当医と会うや否や、彼はトリプタンの処方を要求したという。

 しかし、その医師は簡単な神経学的検査を行い、目で医師の指を追うよう Klein さんに求めたところ、Klein さんは、目を動かすのが“かなり、痛い”と伝えた。その医師は検査を中止した。彼は、処方を行わないで精密検査のために彼を眼科医に紹介すると Klein さんに告げた。

 「彼はこう言いました。『片頭痛ではないと私は思います。あなたの視神経は炎症を起こしていると考えます』」そう Klein さんは思い起こす。眼球の後ろに位置する視神経は網膜から脳の視覚中枢に視覚を伝える神経である。

 Klein さんの視神経に問題があるかどうかを決定するには瞳孔を散大させることが必要だった。紹介先の眼科医がその日のうちに彼を診察してくれることになり安堵を覚えたと Klein さんは言う。

 その眼科医はすぐに、Klein さんの視神経がひどく腫れていることを確認した。その病態は視神経炎と呼ばれるものである。しかし、Klein さんへの説明では、その根本にある問題には、その医師が提供できる以上のさらに専門的な検査が必要だということだった。

 Klein さんは North Bethesda で開業している神経眼科医の David M. Katz 氏に紹介された。米国に19,000人以上の眼科医がいる一方、約500名しかいない神経眼科医は神経学と眼科学の両者の訓練を受けている;彼らは、眼球ではなく神経系に由来するまれな視覚障害を専門としている。

 原因が不明であることに加え視力が増悪していることに対して不安が増大していた Klein さんはその翌週の前半に Katz 氏の予約を取った。

 「その週末にかけて、右眼の視力が急速に悪化しました」と彼は言う。まるで太陽を長く見過ぎたときのように色彩が褪せて見えていた。

 Klein さんを診察しながら、Katz 氏はその炎症の強さに驚いた。視神経炎には、ライム病、多発性硬化症、梅毒など多くの原因がある。原因疾患が見つからないこともしばしばある。可能性を絞るために Katz 氏は MRI 検査と一連の血液検査を依頼した。

 多発性硬化症(MS)があるかもしれないと Katz 氏から告げられたことを Klein さんは覚えている。Klein さんはこの疾患をよく知っていた;彼の祖母と従兄弟の一人がこの進行性の自己免疫疾患だった。この病気は、中枢神経系の神経線維を取り囲む髄鞘が障害されて、脳、脊髄、および身体の各部の間の信号の伝達が損なわれ発症する。MS にはいくつかのタイプがあり、運動、視覚、認知機能が損なわれ、言語機能が障害されることもある。

 他の自己免疫疾患も“私の家系には多々認められています”と Klein さんは付け加える。

 Klein さんによると、Katz 氏はさらに別の疾患についての検査を依頼していると彼に告げたが、当初はその病名を挙げなかったという。

 Katz 氏は Klein さんにおいては MS の可能性を考慮する一方、MS 患者で見られるより視神経炎の重症度が高いことから、もう一つ別の疾患名が示唆された:それは NMO(neuromyelitis optica, 視神経脊髄炎)である。中枢神経系を侵すこのまれな自己免疫疾患は、Devic's disease(デヴィック病)とも呼ばれ、はるかにめずらしいものである。米国においては、約400,000人いる MS 患者に対し、NMO は約4,000人しかいない。

 

A mistaken attack 誤った攻撃

 

 NMO は、免疫系が誤って、脊髄や眼の健康な細胞を攻撃するときに発症し、眼痛、失明だけでなく、筋力低下、しびれ、時には手足の麻痺を引き起こすこともある。さらに膀胱や排便の機能障害も起こりうる。

 NMO を診断する血液検査が Mayo Clinic の研究者らによって開発された 2000 年以前は、NMO と MS を鑑別する手段はなかった;NMO は MS の重症型であると考えられていたのである。

 現在、両者は別々の疾患であり、異なる治療が行われるべきであると医師らは考えている。MS はMS に特異的な薬剤で治療され、疾患の進行を遅らせることはできるが治癒させることはない。一方、NMO 治療に特異的に認可された薬剤はない;患者はしばしば、将来の発作を予防しうる免疫抑制薬で治療されるが根治的ではない。このような薬の一つに Rituxan がある。これは白血病の治療にも用いられる化学療法薬である。

 NMO の発作は MS により引き起こされるそれより重症である傾向があり、集中的に起こり得る。またしばしば数年ごとに繰り返すこともある。少数民族、特にアフリカ系アメリカ人ではリスクが高い。男性より女性に多く、女:男は 6:1 である。また、この疾患は小児にも成人にも見られ、思春期と40才前後に発病のピークがある。

 検査により Katz 氏の疑いが確かめられた。血液検査で本疾患の診断的特徴である NMO-IgG 抗体が検出され、腰椎穿刺によってさらなる確証がもたらされた。

 最初の受診から一週間も経っていない 3月15日、Klein さんと O'Connell さんは Katz 氏と面談し告知を受けた。

 「私たちはこう言いました。『一体 NMO って何?MS だと思ってました』」そう Klein さんは思い起こす。

 NMO の予後はむしろ良いかどうか Katz 氏に尋ねたと Klein さんは言う。彼によるとその医師は“その質問への答えを避けた”という。

 しかし、すぐに行ったインターネットでの検索はこのカップルを怖がらせる結果となった。O'Connell さんはこの診断に“ひどくショックを受けた”が、Klein さんは懸命にそれを受け入れようとしたという。

 3週間前まで Klein さんは全く健康だったことから、この思いがけない知らせに動揺したが、親戚や親しい友人たちに告知するという、気持ち的に大変つらい行動を開始した。

 「最初に電話をかけた相手は父親でした」と彼は言う。「こう言いました。『お父さん、私は病気になってしまったよ』」そう Klein 氏は思い出す。それからの会話はどこか曖昧なものとなったままである。

 

The aftermath その後

 

 失明に向かって急速に悪化していた Klein さんの右眼の視力を回復させることを期待して Katz 氏が高用量の副腎皮質ホルモンの静注を開始したところ、これによって腫脹が緩和され、視力は回復した。診断から1ヶ月以内に、彼は Johns Hopkins の NMO の専門医を受診した。Klein さんに Rituxan の点滴が始まったが、これまでのところ発作の再発は抑えられている。一度の発作しかない NMO の患者も時に見られるものの、ほとんどの症例で再発が認められる。

 Klein さんには MS や他の自己免疫疾患の家族歴があるが、NMO は遺伝性ではないと考えられている。

 昨年、彼と O'Connell さんは、彼女の妹の近くで生活して家族としての計画を進めるためにコロラド州に転居した。現在 O'Connell さんは妊娠中であり、赤ちゃんが1月に生まれる予定である。

 Klein さんは医薬品販売の仕事を続けている。彼はデンバーにある University of Colorado の NMO の専門医を定期的に受診するとともに、カリフォルニアを拠点とする NMO の支援支持団体である Guthy Jackson Charitable Foundation に関わるようになった。その加入によって彼は他の患者と交流を持つようになった。

 「一年半が過ぎ、自身の治療の経過にかなり自信を持てるようになりました」と Klein 氏は言う。“自分にできる限りのことをする”という信念に加え、“時間の経過と、自分でコントロールできないものは解き放ってしまうこと”によって、自身の病気を受け入れることが可能となったのである。

 「今回のようなスピードで診断が得られたことを大変幸運に感じています」と Klein さんは付け加える。彼はわずかに5%の視力を失っただけで済んでいるが、一回だけのエピソードしか経験しない幸運な NMO の患者の一人になれることを願っている。

 スピードが重要であると、20年のキャリアで数人の NMO の患者を治療してきた Katz 氏は言う。それらの患者のうち Katz 氏のもとを受診するまで 10年間 MS と誤診されていた女性は、一眼を失明し、反対側も急速に視力を失い始めていた。検査で彼女が NMO であることが判明した。適切な薬物治療で、低下しつつあった眼の視力の回復が得られ、移動能力も改善した。

 医師のこの疾患を認識できる能力、あるいは診断できる専門医に紹介できる能力が重要であると Katz 氏は言うが、本疾患は依然として認識されていなかったり、誤診されたりしている状態だという。

 「もし視神経炎の非常に悪いケースを、特に少数民族の患者で認めたなら NMO の検査をすることが重要です。もしそれを診断することができれば、彼らの視力を救い、彼らの脊髄を救い、彼らの命を救うことができるのです」そう Katz 氏は言う。

 

視神経脊髄炎(NMO)は、重度の視神経炎と

横断性脊髄炎を特徴とする炎症性中枢神経疾患である。

 

NMO についての詳細は下記 HP を参照いただきたい。

難病情報センター

MS CABIN

MS ネットジャパン

東北大学多発性硬化症治療学寄付講座

日本神経治療学会 標準的神経治療:視神経脊髄炎

 

NMO は1894年にフランスの神経内科医、ユージン・デビックが

重篤な視神経炎と横断性脊髄炎を呈した45才女性の剖検例と

それまでの報告例をまとめて記載したことから

 “デビック(Devic)病”と呼ばれてきた。

しかし、長らく中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患の代表である

多発性硬化症(MS)と類似した点があったため

その一病型(視神経脊髄型MS)と考えられてきた。

ところが、2004年に NMO の患者で

星状グリア細胞(アストロサイト)の細胞膜に発現する

アクアポリン4 に対する抗体であるAQP4抗体(NMO-IgG)が

特異的に発見され、さらにその後 NMO と MS との間に

様々な相違点があることが明確となったため、

この10年で両者は区別されるようになった。

NMO の原因はいまだ明らかではないが、MSと同様に

自己免疫機序を介した炎症が関与していると考えられている。

ただし、免疫系の攻撃の標的が

MS では神経の鞘を作る希突起グリア細胞であるのに対し、

NMO では星状グリア細胞である点が異なっている。

 

NMO の多くは再発性で、女性に多く、発症年齢は

30才代後半と MS より高い(MSは20才代にピーク)。

本邦でも 3,000~4,000名ほどの患者がいると推測されている。

NMO の視神経炎は一回の再発で失明することもまれではなく、

両眼性に起こることも多い。

脊髄病変は横断性に出現し、両下肢の麻痺、しびれ、排尿障害

などが認められ、重症例では車椅子生活となるケースもある。

なお NMO では延髄背内側や第3および第4脳室周囲に

病変が認められることがあり、

延髄の病変では難治性のしゃっくりや呼吸障害を起こすことがある。

各症候は高頻度に再発を見るが、

再発の頻度は MS よりやや高いとされている。

 

診断には、眼底検査とMRI検査が行われる。

視神経炎と急性脊髄炎を認め、

さらに、AQP4 抗体陽性、

脳MRIにてMSの診断基準を満たさない、

MS に比べて長い(3椎体以上)脊髄病変の存在、

のうち二つ以上が当てはまるとNMO と診断されるが、

全例がAQP4 抗体陽性というわけではない。

鑑別診断として、ベーチェット病、サルコイドーシス、

全身性エリテマトーデス、脊髄腫瘍などの疾患を

除外する必要がある。

 

NMO の治療は、急性増悪期の治療、再発予防の治療、

および急性期・慢性期の対症療法・リハビリテーションの

3つが柱となる。

急性増悪期には

ステロイドパルス療法(ステロイド大量点滴静注療法)が行われるが、

無効例に対しては血液浄化(血漿交換)療法が有効なことがある。

再発予防にはステロイド、免疫抑制薬のほか、

白血病治療にも用いられる抗CD20モノクローナル抗体の

 rituximab(リッキサン®、静注)が試みられている。

また、補体C5に対するモノクローナル抗体である

eculizumab やIL-6 阻害薬である tocilizumab の

有効性が報告されている。

なお MS 再発予防の第一選択薬であるインターフェロンβ

は NMO には無効で、むしろ再発率を増加させることも

あるため投与すべきでないとされている。

フィンゴリモド、ナタリズマブなどのMSに有効な治療薬でも

NMO を増悪させることが知られており、

NMO と MS の病初期における鑑別の重要性が強調されている。

慢性期には、後遺した疼痛、異常感覚、痙性麻痺、あるいは

排尿障害に対するリハビリテーションが行われる。

 

まれな疾患ではあるが、

症状が急速に進行して深刻な後遺症を残したり

再発を繰り返したりするなど

比較的若い成人にとっては辛い経過であることから

早期の的確な診断が重要である。

その意味でこの記事に登場した最初の医師の対応は

ファインプレーだったといえそうだ。

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