2022年最後のメディカル・ミステリーです。
Her crippling digestive problems were caused by a ‘zebra’ malady
彼女のひどい消化器系の症状は稀な疾患 (zebra) が原因だった
A primary care doctor’s commitment and the patient’s tenacity helped ferret out the cause of her distressing symptoms
一人のプライマリーケア医の関わりと患者としての執念が彼女の悩ましい症状の原因を探し出す力となった
By Sandra G. Boodman,
(Cam Cottrill for The Washington Post)
Julie Gellert(ジュリー・ゲラート)さんは正常に機能しない消化器系によってもたらされる苦痛に対処できるようになるまで 10年を費やしていた。彼女は、高度の腹痛、慢性の下痢、および繰り返す嘔吐を治療するために、手術を受け、注射に耐え、様々な薬を内服した。薬剤の中には米国では使用制限されているものもあった。
しかし、3年前、Gellert さんは発作的な嘔吐が予測不可能となりアリゾナ州にある彼女のアパートに緊急時の “barf bags”(嘔吐袋)を用意しておかなければならなくなったとき、この症状はどこまで悪くなるのだろうかと思った。
4人の胃腸専門医にかかり、最初彼女の症状は胃酸逆流に起因していると考えられたが、その後、食べた物の排出が極度に遅い疾患である胃不全麻痺が原因とみなされた。しかし長期にわたって、いかなる治療も Gellert さんからまともな生活を奪ってしまうほどの症状を制御できないようだった。
2019年の終わり、特殊な検査が行われ、なかなか発見できなかった彼女の長期に及ぶ症状の原因が明らかになった。遅れた診断は辛い治療を要したが、それによって彼女の命が救われた可能性がある。Gellert さんは、その診断名を探し出すことができたのは、代わった新しいプライマリーケア医の関心と彼女自身の執念のおかげだと考えている。
「もしそれらがなかったら、いまだにこの病気を抱えて生きていたことでしょう」現在58歳になる Gellert さんは言う。現在彼女の健康状態はかなり改善しているという。「悲しいことですが、運が良かったという一面もあったのです」
GERD (gastroesophageal reflux disease) surgery GERD(胃食道逆流症)の手術
2010年、薬物治療に反応しない重症の胃酸逆流症に悩まされていた Gellert さんは食道の一部を強化して胃酸の逆流を防止する手術を受けた。その後すぐに彼女はひどい吐き気と頻回の下痢に見舞われ数回入院することになった。
Phoenix(フェニックス、アリゾナ州州都)の胃腸専門医は、その原因がわからないと話したため、彼女は新たな専門医を受診した。二人目の胃腸専門医は、脳・消化器系間で信号を伝える迷走神経を外科医が誤って損傷したのではないかと考えていると説明した。その結果として起こるのが胃不全麻痺で、胃から小腸への食べ物の動きが遅くなってしまう。
Gellert さんによると、下痢は通常、胃不全麻痺の徴候ではないことから、彼女が非定型的な症状を呈している可能性があるとその新たな医師が考えていたという。「それは私にはあまり納得のいくものではありませんでしたが、さしあたりその回答を受け入れました」そう彼女は思い起こす。
彼女は別の病院の胃腸専門医に紹介されたが、その医師 Gellert さんが胃不全麻痺であることに同意見だった。同時期に彼女は食事療法士を受診、食餌変更を勧められたがそれによっていくらか症状が緩和した。
その胃腸専門医は彼女に domperidone(ドンペリドン)の投与を始めるよう助言した。この薬剤は心停止や突然死と関連する可能性があるとの懸念から 2004年に米国市場から外されていた。(胃不全麻痺やその他の難治性の胃腸疾患を持つ一部の患者に対して限られた条件の下で投与可能となっている)
Gellert さんは南太平洋の小さな国、Vanuatsu(バヌアツ)の会社からこの薬剤の注文を開始した。その医師の提案で、彼女は胸部皮下ポートと呼ばれる装置を埋め込む手術を受け、それによって吐き気止めの薬を静脈内に自己投与することが可能となった。彼女はまた下痢を治療する処方薬の内服も始めた。
6ヶ月後、吐き気と嘔吐は顕著に減じたのでポートは除去された。しかし下痢は続いておりその原因は誰も説明できなかった。Gellert さんはそれから2、3年にわたって数回入院、その間医師らは原因を見つけようと努力したものの無駄に終わった。
C. difficile(クロストリジウム・ディフィシル)という細菌による根絶困難な感染症に対する検査が繰り返し行われたが常に陰性だった。大腸内視鏡検査では異常は発見されず、深刻な胃腸疾患である Crohn’s disease(クローン病)は医師によって除外された。
「私が受けた検査はすべて下痢の原因を説明できませんでした」と Gellert さんは言う。
医師らは困惑したが、ありきたりの説明に落ち着いた。下痢は胃不全麻痺とは関連がないのが普通だが「あなたの場合、関連しているに違いありません」と告げられたことを彼女は思い起こす。
Pain that was ‘worse than labor’ 「分娩よりひどかった」痛み
2015年、Gellert さんは胃不全麻痺に起因するひどい腹痛に襲われた;痛みはこの疾患ではよく見られる症状である。その時には彼女は自宅により近いところの4人目の胃腸専門医にかかっていた。彼は、domperidone を中止するよう助言し、消化の過程で開いたり閉じたりする胃の弁である幽門への Botox(ボトックス、ボツリヌス毒素)の注射を勧めていた。Botox は食べ物がより迅速に小腸に到達するのを可能にすると考えられている。広く用いられているものの有効性が疑問視されていることが記載されているこの治療法が有効かもしれないと彼は彼女に説明した。
外来で行えるこの治療を受けるとすぐに彼女の具合は良くなったと Gellert さんは言う。しかし、その翌朝、彼女は“分娩よりひどい”激しい苦痛で目を覚ました。数日後、彼女の腹痛はかなり軽減したが下痢は持続した。Gellert さんは数ヶ月の間隔でさらに2回 Botox 治療を続けたが同じような結果だった。
4人目の胃腸専門医は「非常に同情してくれて原因を解明するために懸命に努力してくれました」と Gellert さんは言う。画像検査で、彼女のGERD 手術が失敗に終わっていることがわかったため、彼は再手術を受けることを勧めたがその選択肢を Gellert さんはきっぱりと断った。「私はこう言いました。『再びそこに戻る人はいないでしょう』」
そこから一つのサイクルが始まった。Gellert さんによると腹痛が耐えられなくなると医師の診療室に電話をし、physician assistants(PA、準医師資格者)の一人に診療予約をして助けを請うという繰り返しである。
「私はこれにより消耗させられるのだと彼らに言い続けました」と彼女は思い起こす。彼女によると彼らの反応は徐々に冷たくなっていったという。彼女が大げさにいっていると彼らが考えているのは明らかなようだった。PAの一人は不機嫌に「私たちはできることのすべてをやっています」と言い、別の一人は痛みは胃不全麻痺で予測されるものだということを彼女に思い出させようとしたという。
一定期間ごとに彼女にはX線検査やCTスキャンが行われたが、新たな有意義なものは何も発見できなかった。Gellert さんによると、どうにかこうにかやっており、雇用主が彼女の欠勤について理解してくれていたので安心できていたという。
「実に辛かったです」オンラインの大学準講師として働いているシングルマザーの Gellert さんは言う。「非常に、非常に気分が悪く多くの時間をトイレで過ごしていました」
2018年、医療保険の変更があり Gellert さんは新たな家庭医を受診することになった。彼女は彼が著しく親身になってくれる人物であると感じていた;彼は原因を見つけ出そうと固く心に決めていたようだった。彼は、彼女の繰り返す症状が、消化管の内側を侵す炎症病変であるdiverticulitis(憩室炎)を示唆しているのではないかと考えたが、それは除外された。Gellert さんによると、その頃には嘔吐が変化していたと言う。誘因は全くないようだった;時にはそれによって彼女は深い睡眠から目覚めることもあった。
「それはあまりに急激でした。トイレに駆け込むこともできませんでした。そのため準備をしておく必要があったのです」と彼女は言う。それが彼女が barf bags を準備していた理由だった。
Gellert さんはさらに新たな一見無関係に思われた症状に悩まされた。彼女は数年前に閉経していたが、原因不明の体熱感、顔面紅潮、および極度の倦怠感が出現した。2019年の終わり頃、彼女のプライマリケア医はさらにもう一度 CT スキャンを行った。
今回の結果はこれまでと違っていた。
A zebra diagnosis 稀な疾患 (zebra) の診断
そのCTスキャンで Gellert さんの膵臓に鉛筆の消しゴムより少し大きい 7mm 大の腫瘍が見つかった。感傷的な面談の中で、家庭医は、膵臓癌で最も多い致死率の高いタイプである adenocarcinoma(腺癌)ではなく、むしろ稀な pancreatic neuroendocrine tumor(pNET, 膵神経内分泌腫瘍)だと考えていることを伝えた。
アリゾナ州Mesa(メサ)市の Julie Gellert さんは原因が発見されるまで何年もの間ひどい腹痛に襲われていた。どうにかこうにかやっていたが、雇用主が彼女の欠勤について理解してくれていたので安心できていたとGellert さんは言う。(Family Photo)
「私は本当にショックを受けました」と Gellert さんは言う。ドッと泣き出したことを覚えている。「私は癌かもしれないという思いが確かに頭をよぎっていました」と彼女は言うが、これまでほぼ5、6回行われた過去の検査でなぜ何も見つからなかったのか理解できなかった。(彼女はその後、悪性腫瘍の大きさと部位によって、標準的なCTスキャンでは発見が難しいと説明された)
この pNETは膵臓のホルモン産生細胞に生じる腫瘍で、膵臓癌の約7%を占める;今年、およそ米国民 4,300がそのような腫瘍の診断を受ける見込みである。アップルの共同創業者である Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)や歌手の Aretha Franklin(アレサ・フランクリン)が pNET で死亡している。両人とも診断から約8年生存していた。
この腫瘍は一般的にゆっくりと増大し、急速に増大する傾向があり、通常転移した後に発見される腺癌に比べるとはるかに予後は良い。治療には手術が行われ、時に癌のステージに応じて化学療法やホルモン療法が追加される。ほとんどの pNET は非機能性(ホルモンを放出しない)だが、そのような腫瘍は発見されるまでに増大し、肝臓やリンパ節に転移している可能性があり治療のリスクが高くなり困難となる。
Gallert さんのプライマリーケア医は彼女を腫瘍専門医に送り、dotatate(DOTA-octreotate, オクトレオ)スキャンと呼ばれる特殊な PET/CT(ペットCT)が施行され診断が確定した。
「このスキャンは神経内分泌腫瘍にきわめて特異的です」と話すのは腫瘍専門医の Satya Das(サティヤ・ダース)氏である。彼はテネシー州ナッシュビルにある Vancerbilt University(ヴァンダービルト大学)付属 Ingram Cancer Center(イングラム癌センター)の神経内分泌腫瘍プログラムに所属しており、進行した消化器系癌の患者に対する治療を専門としている。「もしCTスキャンだけ行ったなら、それを見逃してしまいます」。医師らは Gellert さんの腫瘍は、一つには彼女に顔面紅潮と体熱感がみられたことから機能性ガストリノーマではないかと考えた。このような腫瘍は胃酸の産生に関与するホルモンであるガストリンを過剰に分泌する。
症状の出現から pNET の診断までの平均期間は約7年だと Das 氏は言う。神経内分泌腫瘍は “zebras”(稀な疾患を指す医学隠語)でもあり、また“great imitators(模倣の名人)”(他の疾患と混同されやすい多彩な症状を呈する疾患:結核、梅毒、ビタミンB欠乏症などが代表)でもある。それは、それら腫瘍が引き起こす下痢等のいくつかの症状には他の多くの原因が存在するためだとこの腫瘍専門医は話す。
「しばしば患者は、7~8年の間どこも悪いところはないと言われ、その後、癌転移と診断されます」と彼は言う。Gellert さんのケースでは特殊な PET スキャンが3~4年前に行われていれば診断につながっていたかもしれない。Das 氏によると、Gellert さんが2010年に手術を受けた重症の胃酸逆流症もこの癌によって引き起こされていた可能性があると考えているが、現在知ることはできない。
「小さな腫瘍がしばしば恐ろしく衰弱させる症状を引き起こします」と Das 氏は言う。
彼女の腫瘍専門医は2つの選択肢を提示したと Gellert さんは言う;癌を切除する手術か、もしくは、彼女の腫瘍が小さく手術は負担が大きいことから厳密な経過観察か、だった。Gellert さんは手術を選択した。
2020年3月、彼女は distal pancreatectomy(膵体尾部切除術)を受けた。これは膵臓の尾部と体部を切除する手術である。Gellert さんは幸運を感じた:彼女の癌は最も予後良好な grade 1(グレード1)に分類されたからである;それは肝臓やリンパ節に転移していなかったのである。手術は必要なただ一つの治療法だった。ただし pNET は再発の可能性があるため Gellert さんは10年間観察される予定である。
しかしその手術で彼女はほとんど死にかけていた。術後数日以内に Gellert さんに膵液漏出が生じ、腹部膿瘍、血栓症、および、高い死亡率の重篤な全身感染症である重症敗血症を引き起こした。回復まで6ヶ月かかったが、「何とか乗り越えました」と彼女は言う。
手術前からその危険性を通告されていた膵機能不全も生じ、治療には生涯に渡って酵素補充薬が必要となったが Gellert さんの腹痛は消失した。下痢と嘔吐は時々みられたが管理可能であり、もはや彼女の生活を支配することはなかった。
「私は以前に比べはるかに調子はいいです」と彼女は言う。
Gellert さんによると彼女の小さな腫瘍がそれほどまでに彼女の体調を崩していたという事実は逆に恩恵だったと言う。なぜなら「それによって私は留意することを余儀なくされていたからです」癌が発見されるまで転移していなかったことは信じがたいほど幸運だったと彼女は感じているが、彼女がかかってきた医師たちには、難治性の症状が “zebra” の結果かもしれないことを考慮してほしかったと思っている。
「私にできたことがもっとたくさんあったかはわかりません。私はかなり厳しく医師らに圧力をかけていたのですが」と彼女は言う。「問題の根本原因にたどり着くことを固く決意している医師を見つけることがまさに重要なのです」
記事中に出てくる “zebra” という用語については、
過去の拙ブログ記事をご参照いただきたい。
膵・消化管神経内分泌腫瘍については下記サイトを参照いただきたい。
膵・消化管神経内分泌腫瘍診療ガイドライン2019年【第2版】
神経内分泌腫瘍(NET)とは、人体に広く分布する神経内分泌細胞を
起源とする腫瘍で、
発生学的な器官である、前腸(肺・気管支・胃・十二指腸・膵)、
中腸(小腸・虫垂・結腸右半)、および後腸(結腸左側・直腸)から発生する。
本邦では特に膵と直腸に多く小腸(中腸)には少ないとされているが
欧米では、消化管は小腸に多く直腸に少ないことから、
発生部位には人種差があると考えられている。
膵臓に発生する神経内分泌腫瘍(pNET)は記事中にあるように
いわゆる膵臓の腺癌と比較すると増殖速度は遅いが、
良性のものから悪性のものまでその悪性度は様々である。
WHO分類では、細胞増殖に関連するKi-67指数や
核分裂像の比率が基準として用いられている。
NETは高分化型の神経内分泌腫瘍(NET, neuroendocrine tumor)と
低分化型の神経内分泌癌(NEC, neuroendocrine cancer)に分類され、
前者はさらに悪性度(増殖性)の低い順から
NET-G1、NET-G2、NET-G3に、後者はNEC-G3に分けられている。
また、ホルモン産生症状を有する機能性(症候性)と
ホルモン産生症状のない非機能性(非症候性)にも分類される。
機能性NETでは産生するホルモンにより様々な症状が出現する。
ホルモン別の症状は以下の通り。
①インスリン:低血糖症状(ふらつき・冷や汗・意識消失)
②ガストリン:再発性の胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、下痢
③グルカゴン:糖尿病、壊死性遊走性紅斑、体重減少、貧血
④ VIP(血管作動性腸管ペプチド):水様性下痢、低カリウム血症
⑤セロトニン:皮膚紅潮、下痢、喘息、心疾患
非機能性NETの場合には症状が出にくいため発見が遅れることが多く、
画像検査で偶然に診断されたり大きくなってから診断されることがある。
pNET の90%以上は孤発性に発生し遺伝性はないが、
多発性内分泌腫瘍症1型(multiple endocrine neoplasia type 1 : MEN1)、
フォンヒッペル・リンダウ病(von Hippel-Lindau disease:VHL)などの
遺伝性疾患に伴って発生する例もある。
診断
pNETの診断には腹部超音波検査、超音波内視鏡(EUS)、造影CT、
MRI検査などが用いられる
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)により組織を採取し
確定診断が行われる。
前述の高分化NET(NET-G1、NET-G2、一部のNET-G3)では
神経内分泌細胞に本来備わっているソマトスタチン受容体を
高頻度で発現していることから、
ソマトスタチンの類似物質であるペンテトレオチドに
診断用の放射性同位元素であるインジウム(111In)を標識した
放射性医薬品(商品名:オクトレオスキャン)を注射し、
撮影を行うことで、腫瘍が同定される(オクトレオスキャン)。
pNETが疑われるがCTなど既存の画像診断法では病巣を
確認できない場合に有効である。
また同検査でソマトスタチン受容体の発現の有無を調べることで、
後述するソマトスタチン受容体を用いた治療薬
(ソマトスタチンアナログ製剤やPRRTなど)の治療適応を
考慮する際にも用いられる。
治療
pNET治療の第一選択は外科的治療で膵切除(膵頭十二指腸切除、
膵体尾部切除、核出術、膵全摘)が行われ根治を望むことができる。
遠隔転移を有する場合(特に肝転移)でも外科的切除を
考慮する場合がある。
肝臓に転移した腫瘍をすべて切除できない場合には、
カテーテルで抗癌剤を動注し癌細胞を死滅させる
肝動脈化学塞栓術(TAD)や、針を用いて腫瘍を焼く
ラジオ波焼灼術(RFA)などの局所療法が行われる。
一方、オクトレオチド(消化管NETのみ適応)や
ランレオチド(膵・消化管NETに適応)などの
ソマトスタチンアナログ製剤の抗腫瘍効果が証明されており
保険適応となっている。
また分子標的薬としてエベロリムス、スニチニブや、
ニトロソウレア系抗腫瘍薬であるストレプトゾシンが使われている。
悪性度の高い腫瘍に対しては、肺小細胞癌の化学療法に準じて
エトポシド+シスプラチン(EP療法)や
イリノテカン+シスプラチン療法(IP療法)などが選択される。
ソマトスタチン受容体に親和性の高いペプチドに
放射性物質を結合した薬剤を注射し、
患者の体内から放射線照射する放射性核種標識ペプチド療法
(peptide receptor radionuclide therapy;PRRT)も
2021年以降行われるようになっている。
予後
これまで希少疾患と呼ばれていた腫瘍だが、近年増加傾向にあり、
また50歳代の比較的若い年代でも発症し転移を認めるケースがある。
膵消化管神経内分泌腫瘍の5年生存率は60~80%と報告されているが、
pNET では発見時には約半数例でリンパ節・肝転移が認められており、
遠隔転移があるケースでは5年生存率は39%と不良である。
診断がむずかしく健診でも見逃されて発見が遅れてしまうため、
決して予後が良いとはいえない腫瘍である。
まずはこの腫瘍が存在する可能性を疑うことが重要と思われる。