MrK は冷え症ではないが、いつも手が冷たいと言われる。
ここのところ、かなり気温も下がってきて
我が手温(?)は下がる一方だ。
それでも「手の冷たい人は、心が温かい」という言い伝え?に、
言い訳を求めてきた。
しかし、もし MrK が初対面の人と握手をしたら、その人から、
潜在意識下に、「この人は心温かい人間ではない」と
思われてしまう可能性があるという。
そんな研究結果が報告された。
10月23日付 Washington Post 電子版より二つの記事
Warm Hands Lead To Warm Hearts, Sneaky Study Shows
『温かい手は温かい心を誘導する―巧妙な研究が示す』
『温かい手は心を温めてくれる』
あ
ここでは、前者の記事を引用する。
古くから言われている“冷たい手の人は心が温かい”という言い習わしは更新すべき時かも。
最近の研究では、何か暖かいものに触ることで、他人に対してより温かい気持ちになり、温かい行動がみられることが明らかにされた。
他人に、その人の人柄が温かいとみなされるか冷たいとみなされるかは、強力な第一印象となる。
人をより高く評価する下準備が意識下になされる、という過程を経ることにより、肉体的な温かさが精神的な温もりを促進しうるのではないか、との予測がエール大学の科学者たちの頭に浮かんだ。この検証にはなんとも巧妙な研究手段が用いられた。
科学者たちは性格調査を行うという触れこみで41名の大学生を採用した。
研究員は参加者をエール大学の心理学の建物のエレベータに案内し、クリップボードに学生の名前を記録する間、コーヒー(ホットあるいはアイス)の入ったカップを代わりに持ってくれるようさりげなく頼んだ。その後研究室に入ると、その学生たちは、勤勉で、慎重で、決意の固い人間として表現された架空の人物の記述を与えられ、それからその人物の推定される性格特性を評価してもらった。
熱いカップを持ってもらった学生たちは、冷たいカップを持ってもらった学生たちに比べ、より寛大で、社交的で、気立ての良い人物と評価した。
これらの性格の特性はいずれも心理学者が“温かい”性格と考えているものである。
この結果を研究者たちは雑誌 Science の金曜日版に発表した。
しかし、正直さ、魅力、あるいは強さといった類の、性格の温かさ・冷たさと関連のない特性の評価では、両グループの間で差はみられなかった。続いて2番目の研究には53名の異なる学生を用いた。
彼らには、疼痛治療として薬局で売られている温かいパッド、冷たいパッドのどちらか一つを製品調査の一環ということにして短時間持ってもらった。協力への感謝品として学生たちがどのように景品を選ぶかが、目的とするテストである。
アイスクリームのクーポン券あるいは、瓶詰め飲料のどちらかを、自分自身のために選ぶか、あるいは友人のために選ぶかというものだ。温かいパッドを持ってもらった学生たちは、友人のために景品を選ぶ傾向が見られたが、冷たいパッドを持ってもらった学生たちは、自分自身のために景品を選ぶ傾向が強かった。
この話から得られる教訓として、自分の第一印象を良くさせたい時には温かい飲み物を渡すべしということになるのだろうか?
そういうことではない。
導かれる重要なメッセージは、環境からのごくわずかな信号からも、我々は行動や感情に多大な影響をこうむりうるということだ、と研究グループのリーダーである Lawrence Williams 博士は言う。
彼はこの研究を、エール大学院心理学の学位研究として行った。肉体的、精神的な概念は「これまで思っていた以上にはるかに密接に関係している」と、現在はコロラド大学にいる Williams 氏は言う。
実際、肉体的な温度変化の情報を処理する“島”と呼ばれる脳の領域が、社会的温もりに関連する信頼や思いやりの感情をコントロールする役割を持っていることが他の研究で発見されている。
「肉体的な運動であれ痛みであれ、そういった肉体的属性を処理することが知られている脳の部分では、同じ回路がますます多くの精神的特性との連動性が認められるようになっています」と、この新しい研究に資金を提供している National Institute of Mental Mealth の Caroline Zink 医師は言う。
「このような相同性が存在することは神経科学者の観点から見てもきわめて興味深いことです」社会的温もりの観念は小児期に学ばれるものである、と Williams 氏は言う。
同氏が挙げるのは、愛情や親愛の情が、赤ちゃんが食事を与えられることを単に保証されることよりも、肉体的な温かみを感受する抱擁や寄り添いに強く依存していることを指摘した古典的な心理学的研究である。今回の知見の実用性については一例として、食料品店に置かれている無料の食品サンプルは、もしそれらが温かい方が、より多くの買い物客をおびき寄せることになるでしょう、と Williams 氏は助言するが、同氏は今、マーケティングを研究する助教授としてお勤めなのである。
昔から、人の性格の評価に「あの人は心の温かい人だ」
「あの人は冷たい」という風に、『温かい』『冷たい』といった
『知覚表現』を用いていること自体、
本来、人間の脳の中で肉体的知覚と精神的知覚の間に
密接な関係があることを示しているのではないかと、
Tampa にある University of South Florida Center of
Excellence for Aging and Brain Repair の
Paul Sanberg 所長は指摘する。
今回の研究結果から、周りの温度を変化させることによって、
自分自身に対する他人の評価を変えることが可能かもしれない。
しかし、あなたの知ってる人たちにも同じ結果が起こるか、
あるいは温暖な気候に住むことがあなたに対する認識に
よい影響を及ぼすかどうかは不明だという。
あ
ところで、大脳の“島”という部位が、
肉体の温度変化の情報を処理するとともに、
社会的温もりに関連する感情にもかかわっているとは知らなかった。
脳の部位、“島”に関しては、言葉のど忘れに関連する部位と
いうことで以前話が出たことがある(拙ブログ、TOTを参照のこと)。
“島”は手術の時に、切っても構わない場所と教わってきたが、
実は様々な働きを持っているようだ。
あ
さて、温かい感覚が人間の情に影響を及ぼす可能性はわかったが、
実際に人の心を温かくするのは、何も温覚だけではないだろう。
温かい笑顔、温かい言葉、温かいしぐさ、などなど…
そんなことを思いながら細部にいたるまで気を配り、
人に接するのが良いのだろう。
しかし、何にも増して大切なのは温かい心で接すること、
これに尽きるのではないだろうか。
手だけではなく、自分の内部が温かくなることで、
ひとの心をも温めることができると思うのだ。