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細菌との飽くなき闘い

2014-06-10 14:51:16 | 健康・病気

1970年代以降、
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)が拡大し、
21世紀に入ると多剤耐性結核菌や
多剤耐性のアシネトバクター、緑膿菌など
抗生物質・抗菌薬に対する細菌の逆襲が
医療上大きな問題となっている。
こういった多剤耐性菌に対して私たちは
とっておきの切り札を常に用意しておく必要が
あるのだが、現実にはそう簡単なことではない。

6月3日付 Washington Post 電子版

A new weapon in the battle against MRSA
MRSA との闘いにおける新たな武器

BY LENNY BERNSTEIN,

Mrsa

MRSA とヒト白血球の相互作用。示されている細菌は市中感染型(病院感染ではない)MRSA の強毒変異株 MW2 である。

 抗菌薬耐性について発してきた最近のあらゆる警告の中で、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、すなわちMRSA をはじめとする急性の皮膚、軟部組織感染症と闘う新しい薬剤の米国食品医薬品局(FDA)による承認の件を述べなかったとしたら、手抜きと言われることになるだろう。
 その薬剤 Dalvance(ダルバンス)は政府の Generating Antibiotic Incentives Now(GAIN)プログラム(抗菌薬開発インセンティブ条項)の下、FDAによって承認された第1号である。同プログラムの試みは製薬会社に対して増長する抗菌薬耐性菌の問題と闘うよう促すものである。この問題が世界中で増大しているにもかかわらず流通している新薬の数は次第に減少してきており、製薬会社はより収益の高い薬剤にターゲットを絞ってきた。
 薬剤に対するQualified Infectious Disease Product(適格感染症薬品)の指定は迅速な審査をもたらし、さらに、通常享受できる独占期間にさらに5年間の市場優先権(排他権期間)が追加して与えられる。
 Dalvance(一般名 dalbavancin)は皮膚感染症 1,289人の成人を対象として2つの臨床試験が行われ、既存の強力な抗菌薬バンコマイシンと同等の有効性があることがわかった。副作用には嘔気、頭痛、下痢、および肝酵素の上昇がある。2回(週一回)の静脈内投与が行われるが、製造業者の Durata Therapeutics(デュラタ・セラピューティクス)は今のところ価格情報を提供していない。FDA は本薬剤を5月23日に承認した。
 世界保健機関は抗菌薬耐性の超強力な細菌の拡大を大いに懸念しており、4月に次のように述べている:「この問題はきわめて深刻であり、現代医学の達成に脅威を及ぼすものである」。同機関によると21世紀は、標準的治療がもはや機能せず、かつては容易にコントロールできていたありふれた感染症も致死的となるような“ポスト抗菌薬時代”を見ることになるという。
 3月、米国疾病管理予防センターは、将来、病院や他の医療施設において、25人に1人が MRSA などの感染症にかかり、毎日200人以上がこれらの感染症で死亡することになると述べている。
 Durata 社によると、2005年から2011年までの間に、皮膚および軟部組織感染症で480万人の患者が病院に入院しているという。彼らの大多数は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌によって引き起こされており、そのうちブドウ球菌感染症の約59%がメチシリン耐性株であった。

これまで MRSA は院内感染が問題となってきたが、
最近、医療機関にかかったことのない患者に
いきなり感染症を起こすMRSAが増加してきている。
これは市中感染型 MRSA
(community-associated MRSA, CA-MRSA)と
呼ばれるものである。
その多くは皮膚・軟部組織感染を引き起こしている。
院内感染型 MRSA
(hospital-acquired MRSA, HA-MRSA)に比べると
感受性を示す抗菌薬は多いが、発育が早く、
産生毒素プロファイルがHA-MRSAと
明らかに異なっている。

現在、本邦で使用可能な抗MRSA薬は
グリコペプチド系(バンコマイシン VCM・
テイコプラニン TEIC)、
アミノ配糖体系(アルベカシン ABK)、
オキサゾリジノン系(リネゾリド LZD)、
環状リポペプチド系(ダプトマイシン DPT)の
4系統5薬剤である。
我が国では
2011年9月にダプトマイシンが使用可能となって以降、
新しい抗MRSA薬は登場していない。
耐性菌の発生に有効な新薬の開発が追い付いていない
現状がある。
MRSA の他にも様々な抗菌薬耐性菌の出現が
問題となっているが、
薬の効かない菌が蔓延し手術もできなくなるような事態は
何としても回避しなければならない。

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