MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

50年以上かかってたどりついた診断

2019-12-27 23:41:53 | 健康・病気

2019年もあとわずか…

ということで、2019年最後のメディカル・ミステリーです。


12月22日付 Washington Post 電子版

 

All his life, his health was poor. It took more than 50 years to find out why.

生まれてからずっと彼は病弱だった。ようやくその原因が判明するまで50年以上を要した。

 

 

By Sandra G. Boodman,

 

 覚えている限り Steven Knapp(スティーヴン・ナップ)さんは体調が良いと感じたことはなかった。

 「それは幼少期からまさしく当てはまっていたのです」 自称“Army brat(転校を繰り返す軍人の子供)”だったという Knapp さんは言う。彼は、ドイツに生まれ、トルコで育ち、米国内では高校時代から住んでいるジョージアを含め6つの州で過ごてきた。

 現在61歳になるこのテクノロジー・ライターは、小児期に緊急室に出かけることもまれではなかったという。体格が小さくやせこけた子供だった彼は事故を起こしやすかった。彼はまた、気管支炎の発作を繰り返し、一過性の嘔気、さらにはアレルギーと考えられた季節性の咳もみられた。しかし医師らは疾患を特定できなかった。

 成人になると、それらの問題から脱却するどころか、むしろ増悪した。彼の咳は一年中みられるようになったが、喘息様の症状によるものだった。また彼の消化器症状は胃酸逆流あるいは過敏性腸症候群によるとされた。ある医師は Knapp さんの症状は精神的なものである可能性があると言った。他の医師たちは彼のバラバラな症状を理解できなかった。


子供の頃から Steven Knapp さんは多くの健康問題に直面してきた。しかし、新たな専門医への受診が、驚くべき結果と答えをもたらした精密検査へとつながった。

 

 50年以上が過ぎて、Knapp さんは自身の病弱の原因を知ることになった。新たな専門医への受診が、驚くべき結果をもたらした精密検査につながったのである:それは、一般には小児期に診断される進行性の寿命を短縮させる病気だったが、その中のほとんど知られていない型だった。

 「困難を極めた一つには、私の症状の多くが非常にありふれたものだったことにあると思っています」と Knapp さんは言う。彼は今、アトランタ郊外の Marietta(マリエッタ)に住んでいる。彼が中年になるまで医学的知識が十分に進歩してこなかったのが主たる理由だったが、そのためにこれまで彼が長い年月、受けてきた無効な治療について時々怒りを感じることがあると彼は言う。

 しかし、「筋が通っているとみられる診断を最終的に得られたことについては概ね非常に幸運に感じています」と Knapp さんは言う。

 

Frightening weight loss ゾッとするほどの体重減少

 

 30歳代になると彼の健康は急降下したように思われ、原因不明の発作的な極度の疲労感に襲われていたと Knapp さんは思い起こす。しかし、医師らが彼を検査すると、常に「私の血液検査は驚くほど良好でした」と彼は言う。

 彼を最も困惑させた厄介な症状の一つは、季節的なものから、年中みられるものへと変化した慢性の咳であり、これには副鼻腔の閉塞を伴っていた。Knapp さんは扁桃摘出術と副鼻腔手術を受けたが、いずれも効果はなかった。改善がみられなかったことが医師らの頭を悩ませた。

 「彼らはこう言いました。『喘息のようには思えませんが喘息のように治療しましょう』喘息治療の要である吸入ステロイドについてそう彼は思い出す。何年間か彼はそれを使用したがほとんど効果はなかった。Knapp さんはさらに、鍼治療、マッサージ、麻薬性鎮咳薬、そして慢性咳嗽の治療にしばしば用いられる抗てんかん薬 Neurontin(ガバペンチン)を試した。しかし、効果があったのは咳の薬だけだった。

 胃腸の症状も同じように厄介だった。Knapp さんは慢性の便秘と胃酸の逆流に悩まされた。1995年、37歳のときには、レストランで食事をしていた時に食べ物が食道に引っかかった。検査では食道に stricture(異常な狭窄)が認められた。Knapp さんは食道の拡張術を受けた。それがこの先の15年に渡って受けることになったいくつかの治療の始まりだった。

 2013年、Knapp さんと彼の妻 Jo Ann(ジョー・アン)さんは健康の向上を目指し、2型糖尿病になるリスクを減らすために低炭水化物の食事療法を試すことにした。

 当初、たんぱく質、健康に良い脂質、および野菜を重視したこの食事は有効のように思われた。

 「私は一日で約1ポンド(約450g)体重が減りました」と Knapp さんは思い起こす。

 しかし数週間のうちに彼はただならぬことに気付いた:彼がどれほど多く食べても体重減少の勢いが収まらなかったのである。

 「私はひどく空腹を感じるようになりました」そう Knapp さんは思い出す。彼は日常的にディナーをまるまる食べる前にベーコンとチーズが主体のかなりの食事前“軽食”を摂取していた。

 一方同じ頃、彼の疲れやすさは増悪し自宅の階段を上るのも困難な状態になっていた。

 「振り返ってみると、食事療法を守ることにやや神経質になっていたように思います」と Knapp さんは言い、自身の飽くなき空腹感と新しく始めた食事療法とを結びつけて考えなかったと付け加える。「何かをすると決めると徹底的に守ってしまう人間なのです」

 6ヶ月のうちに、身長 5フィート3 (160cm)の彼は、体重が140ポンド(63.5kg)から112ポンド(50.8kg)まで低下していた。

 Knapp さんは昔からのかかりつけの内科医に相談した。彼女は心配してくれたが、途方に暮れていた。

 彼女は Cynthia Rudert(シンシア・ルデルト)氏を受診した方が良いと勧めた。彼女は、1時間以上時間をかけることもあるセカンド・オピニオン外来を専門にしているアトランタの胃腸科医である。彼女の受診に保険はきかない。

 受診には自腹を切る必要があったが Knapp さんは予約をとることにした。「選択肢はないように感じていましたし、失うものは何もないと思っていました」と彼は言う。

 

A fresh perspective 新たな視点

 

 2013年8月に最初に会ったとき、Rudert 氏は詳細に病歴を聴取した。彼女は、Knapp さんの異常な空腹感と彼の低身長が印象に残ったことを覚えているという。その低身長は遺伝性ではない可能性があった(Knapp さんの母親は 4フィート10〔147cm〕しかなかったが、彼の父親は 5フィート8〔173cm〕で彼の兄は 178cmだった)。

 Knapp さんは、49歳で食道癌で死去した兄が膵臓の重度の炎症である再発性の膵炎にかかっていたことを報告した。胃の裏側にあるこの臓器は消化に必須の酵素を産生する。

 Rudert 氏は Knapp さんの身長と異常な体重減少が、食べたものがきちんと消化・吸収されるのを阻害し成長を障害する膵臓疾患の結果ではないかと考えたという。彼の長年にわたる症状が、低炭水化物の食事によって悪化した可能性があった。

 彼女はまた、治療に反応していないとみられる原因不明の呼吸器症状の彼の長い病歴に驚かされた。

 過去3年間、ヒドロコドン(hydrocodone)を含有する鎮咳薬を常用していたと Knapp さんは彼女に伝えた。彼の咳を抑えることのできた唯一の薬だったからである。2005年、彼は有名なメディカルセンターで詳細な精密検査を受けていたが、その咳は『感染後反応性気道疾患』と診断されていた。

 「『それは何かの感染にちがいない』と私は思います」Rudert 氏はそう考えていたことを覚えている。

 彼女によると、彼女の最大の関心事は、Knapp さんに膵臓あるいは肺に癌がないということを確認することだった。

 検査で両者が除外されると、Rudert 氏は Knapp さんが膵外分泌不全(exocrine pancreatic insufficiency)ではないかと考えていることを伝えた。膵臓が小腸内で食物を分解するのに必要な消化酵素を産生し輸送することができないこの病態には、セリアック病(celiac disease)をはじめとする多くの原因がある。胃のバイパス術あるいは他の小腸手術や、慢性膵炎や嚢胞性線維症(cystic fibrosis, CF)の結果として起こることもある。

 Rudert 氏は補充用の経口膵酵素薬を毎日内服するよう処方し、Knapp さんに炭水化物を摂取するよう助言した。するとゆっくりと彼の体重が増え始め体調が改善した。

 Rudert 氏によれば、彼の副鼻腔疾患、治療抵抗性の咳、そして、様々な検査結果を含め、Knapp さんの個人の病歴や家族歴から、まだ探索されていない方向が示唆されるように思っていたという。彼が嚢胞性線維症(CF)の一型である、非定型的CF(atypical CF)あるいは 軽症CF(mild CF)と呼ばれる疾患である可能性があると彼女は考えた。

 白色人種で最も高頻度にみられる遺伝性疾患である典型的CF(classic CF)は両親それぞれから1つずつ受け継いだ2つの欠損遺伝子によって引き起こされる。肺疾患として知られているが、CFは、器官を閉塞する粘稠な(粘り気の強い)粘液が産生されることで副鼻腔、生殖器官、膵臓、および他の消化器官など体内の他の部位も侵される。

 何十年もの間、この疾患を引き起こすには2つの遺伝子が必要であると医師らは考えてきた。1つだけ欠損遺伝子を引き継いだ人は、彼らの子供にCFを受け渡すキャリアであるとみなされ、彼ら自身は発症しないと考えられてきた。

 しかし近年、新たな見方が出てきている:CF に関連する遺伝子を持っている人も時々、重症度は低いが発病する可能性があるというものである。非定型的 CF のケースは思春期や成人期に発見される傾向があり、肺は概ね無傷だが、膵臓や他の臓器が障害される。典型的 CF と同様にその重症度や疾病経過には個人差がみられる。

 Rudert 氏は2つの検査を行った:CF の遺伝子スクリーニング検査と汗の検査である。CF では、汗腺を構成する細胞、肺、消化管、および生殖器官の上皮細胞の正常機能が障害される。CF の患者では通常、正常人に比べ汗中の塩素イオンが高値である。

 Knapp さんの汗の検査は正常だったが、遺伝子解析で、最も高頻度に CF と関連している単一遺伝子の存在が明らかになった:それは delta f508 変異である。Knapp さんの長期に及ぶ症状は彼が恐らく非定型的嚢胞性線維症に侵されていることを示唆していると Rudert 氏は考えた。

 「しばしばこの病気はきわめて軽度な症状で始まり、経時的に悪化します」と Rudert 氏は言う。「彼は、これが徐々に悪化する進行段階にありました。しかし誰も個々の症状を集めて全容を明らかにできなかったのです」子供のいない Knapp さんだが、55歳にしてついに、それまでの生涯にわたる病弱の原因を知ったのである。

 医師が本疾患の亜型が存在することを知らないために Knapp さんのような成人患者が診断されないでいる可能性があることを Rudert さんは懸念しているという。

 Knapp さんは、医師である隣人の一人に彼が CF の検査を受けていることを話したときこのことを身をもって経験した。

 「それは小児期にだけ診断されるのだと思っていました」その隣人の医師がそう話したことを彼は覚えている。

 遺伝子検査の結果を受け取って数ヶ月後、Knapp さんは Emory University(エモリー大学)の adult CF Clinic (成人CF クリニック)の患者となった。

 現在、彼は年4回の代謝および肺機能の検査を受けている。また彼は年に一度か二度、Rudert 氏の診察を受けている。咳は続いているが Knapp さんの肺は良好な健康状態にある。一方、膵臓の機能不全に関連する消化器症状とは闘い続けている。今までのところ、糖尿病などの CF の他の代謝性合併症は何とか回避できている。体調を管理するために内服する薬剤で、年間約12万ドル(1,300万円)ほど保険会社から費用が出ていると彼は見積もっている。

 「幸いにもこの進行はゆっくりのようです。これまでのところなんとか対応できる慢性疾患です。それでも、いまだに体調がいいわけではありません。ただ数年前にくらべると具合の悪さは減っているように感じています。しかし依然として苦闘の毎日が続いています」と彼は言う。

 

 

 

 

嚢胞性線維症(cystic fibrosis, CF)の詳細については

以下のサイトを参照されたい。

難病情報センター

嚢胞性線維症の診療の手引き


本疾患は

cystic fibrosis transmembrane

conductance regulator(CFTR)遺伝子の

変異を原因とする全身性の常染色体劣性の遺伝性疾患である。

白人で頻度が高く、2,500人に1人の割合で発症し、

患者数は約30,000人に達するが、

アジア人種では頻度が低く、

本邦では 150~200万人に1人の頻度で、

2018年1月現在で35人の患者が登録され治療を受けている。

CFTRタンパクは全身管腔臓器の主要な陰イオンチャネルである。

CFでは、CFTRの機能低下により、

気道、腸管、膵管、胆管、汗管、輸精管の上皮膜や粘膜を介する

塩素イオンと水の輸送が障害される。

そのため、気道、腸管、膵液などの粘液や分泌液が

著しく粘稠となり、管腔が閉塞、感染を起こしやすくなって

多臓器の障害を来す。

膵臓では膵外分泌不全から消化吸収不良を来たしたり、

肺では呼吸器感染を繰り返して呼吸不全に陥ったりする。

これまでに報告された遺伝子変異は1,900種類を超え、

人種や国により多様である。

また同じ遺伝子変異を持つ患者でも、

障害される臓器や重症度が異なっており

病態形成の機序には不明な部分が多い。

 

典型的な症例にみられる症状は、胎便性イレウス、

膵外分泌不全による消化吸収不良、胆汁のうっ滞である。

障害される臓器と重症度は様々であるが、

単一臓器のみが障害される患者もいる。

胎便性イレウスは、国内のCF患者の40~50%に見られ、

しばしば生直後にみられる。

粘稠度の高い粘液のために胎便の排泄が妨げられ、

回腸末端部で通過障害が生じる。

呼吸器症状は、ほぼ全例のCF患者に見られる。

出生後、細気管支に粘稠度の高い粘液が貯留し、

病原細菌が定着すると細気管支炎や気管支炎を繰り返し、

呼吸不全に陥る。

膵外分泌不全は、CF患者の80~85%に見られる。

タンパク濃度の高い酸性の分泌液で小膵管が閉塞し、

次第に膵実質が脱落する。

変化は胎内で始まり、典型的な症例では2歳頃に

膵外分泌不全の状態になり、脂肪便、栄養不良、低体重を来す。

胆汁うっ滞型肝硬変は国内のCF患者の20~25%に見られる。

また 汗腺の塩素イオンの再吸収が障害されるため、

汗の塩分濃度が高くなる。

 

診断は、臨床症状、汗中の塩化物イオン濃度の高値、

CFTR変異の確認による。

 

現在のところ根本的な治療法は無く、呼吸器感染症と

栄養状態のコントロールが中心となる。

生涯治療を継続する必要がある。

肺移植や肝移植が必要となる場合が多い。

高力価の消化酵素薬、

気道内の膿性粘液を分解するドルナーゼアルファ吸入液、

トブラマイシンの吸入薬により、予後の改善が期待されている。

胎便性イレウスに対しては高浸透圧性造影剤の浣腸が行われるが、

手術が必要となる場合も多い。

呼吸器症状の治療は、肺理学療法(体位ドレナージ、タッピング)、

去痰薬、気管支拡張薬の組み合わせにより喀痰の排出を促進させ、

呼吸器感染を早期に診断し適切な抗菌薬を使うことが基本である。

ドルナーゼアルファは、

気道内の膿性粘液中のDNAを分解することにより

喀痰を排出し易くする。

高張食塩水(6~7 %)の吸入も喀痰を排出し易くする。

緑膿菌感染を早期に検出し、治療を開始することが大切である。

膵外分泌不全には膵酵素補充療法を行う。

消化吸収障害に、気道の慢性感染症と咳嗽による消耗が加わって

栄養不良となることが多い。

充分な量の消化酵素製剤を補充して、健常な子供よりも

30~50%多いカロリーを摂る必要がある。

栄養状態が良好になると肺機能が改善する。

なお、今年2019年10月にCFTR遺伝子に1つ以上の

delta f508の変異を有するCFに対する治療薬として

Trikafta(一般名 elexacaftor/ivacaftor/tezacaftor)が

米国食品医薬品局(FDA)に承認された。

本薬剤により汗中の塩化物濃度の低下がみられ呼吸器症状の改善が

得られている。

しかし、日本人の遺伝子変異は欧米人とは異なるため、

治療薬開発に向けて遺伝子解析と変異タンパクの機能解析が

進められているところである。

 

生まれてすぐに発症せず、

しかも症状が典型的でない非定型例嚢胞性線維症では、

本疾患が念頭にない限り診断は困難と思われる。

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2020年1月新ドラマ

2019-12-16 20:23:39 | テレビ番組

令和元年も残すところあとわずか。

平成から令和に変わってもドラマ界には特に大きな変化は

なかったようだ(昭和から平成のときはバブルが

弾けたこともあって大きく変わった記憶がある)。

今や若い人たちがテレビを見ない時代となり、

ドラマにも興味を示さなくなってしまっているが、

この傾向はこれからもさらに進んで行くだろう。


日テレ土10『俺の話は長い』より

 

まずは、令和元年最後のクール、10月ドラマについて

12月15日放送分までの

平均視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]上位から

コメントする【( )内数字は平均視聴率】。

 

 

①テレ朝木9 『ドクターX~外科医・大門未知子~第6シリーズ』(18.29%)

フリーランスの天才外科医・大門未知子(米倉涼子)が東帝大学病院を舞台にAIを駆使した最先端医療と対決。出演者の健康問題なのか、ギャラを抑える目的なのかは不明だが、権威者たちが時折お休みする回があり高視聴率ながら裏方は盤石ではないようだ。手術の下手な医師の手が途中で止まりそこに大門未知子が登場するというワンパターンを繰り返す展開で、さすがに飽きがきたと感じるのは自分だけだろうか?

 

 

②テレ朝水9 『相棒(18)』(14.61%)

相変わらずシニア視聴者をターゲットにした鉄板路線でさすがの高視聴率を維持。今シーズンでは前シーズンで不自然に消滅した小料理屋『花の里』のシーンはなかった(なくても問題ないのかも)

 

 

③TBS 日9 『グランメゾン東京』(12.51%)

アレルギー食材を誤って使用したことでドン底に落ちたフランス料理シェフが人生の再起を図る“大人の青春”ドラマ。相変わらずのキムタクの演技に苦笑してしまうしかなかったが、ストーリーはともかく、毎回次々と映し出されるおいしそうな料理を見るだけで満足?とことんまで最高の料理をめざす料理人たちの努力は伝わったが、調理の合間にキムタク演じる尾花夏樹が腕を組み両手を両脇の下に挟むポーズはなんとかならないか。料理に臭いが移りそう?なわけで、キムタクにこう言わせてほしい。『料理なめんじゃねえぞっ!』

 

 

④日テレ水10 『同期のサクラ』(10.58%)

北の小さな離島から1人上京した忖度できない主人公・サクラ(高畑充希)の10年にわたる社会人生活を描いた成長劇。1年で1話が進むという、『十年愛』でもみられた遊川和彦お得意のドラマ構成。そもそもそれぞれの登場人物が一年ごとにサクラに洗脳されていくという不自然な演出に作為を感じるため、個人的にはネットで称賛されるほど心に響かなかった。

 

 

⑤フジ月9 『シャーロック』(9.77%)

アーサー・コナン・ドイルの小説『シャーロック・ホームズ』を原案に、令和の東京を舞台にフリーランスの犯罪捜査屋と精神科医がバディを組み難事件に挑むストーリー。ディーン・フジオカと岩田剛典という、“演技力に期待できない”二人がメインキャストということで心配したが、ディーン様の方は特に感情表現が求められない役だったせいか淡々と演じていて不自然さはなかった。一方の岩田君は以前より演技力が上がっていたようだ。とりあえず、このドラマで一番印象に残ったのはディーン様のバイオリン演奏?

 

 

⑥フジ(関西テレビ)火9 『まだ結婚できない男』(9.34%)

『結婚できない男』13年ぶりの続編作。独身を貫き、偏屈さにさらに磨きのかかった53歳の主人公・桑野を通して、晩婚化の進んだ令和日本を描いたドラマ。前作当時と比べるとさらに未婚率が上がり、晩婚は普通の時代となったことから、『おふざけが過ぎてはNG』感が強くなってしまい、前作ほどの視聴率(16.9%)とは程遠い結果に終わりそう。なぜ13年ぶりにこのドラマなのかという疑問も残されたままである。

 

 

⑦日テレ土10 『俺の話は長い』(8.45%)

30代無職、口だけ達者な屁理屈ニートと家族とのやりとり描いたホームコメディ。個人的には今回一推し。格段大きな事件はないのだが、日常生活の中で繰り広げられる小さなできごとが“サザエさん”的に半話ごとにプツンプツンと描かれた(特に毎話のタイトルが昭和の4コマ漫画的)。主人公を演じる生田斗真とその姉役の小池栄子の長ゼリフの応酬がドラマを盛り上げた。東京の下町が舞台となっており、ドラマの端々に昭和な雰囲気が感じられた。

 

 

⑧TBS金10 『4分間のマリーゴールド』(7.44%)

人間の余命が視える特殊体質の主人公と余命1年の義姉との禁断のラブストーリー。救命救急士の主人公が手を重ねた人の最期の姿が視えるという非現実的な設定に基づいて物語が成り立っているため、感情移入することが困難、また主人公が、何度か救急患者の最期を見ることができたからといえ、最愛の人の最期について絶対的な自信を持っていることには驚く。さらに、いくら血のつながりはないとはいえ、幼いころから姉弟として過ごしてきた2人に恋愛感情が生まれるという状況にも共感しがたい。一つ屋根の下に暮らす主人公以外の血のつながった3人の兄妹もそれぞれのクセが強すぎて、全く兄妹には見えず、まるで他人の寄せ集めのように感じられた。

 

 

⑨TBS 火10 『G線上のあなたと私』(7.43%)

大人のバイオリン教室で習い始めた、恋愛、仕事、家族などで様々な問題で悩む男女3人が、ぶつかり合いながらも互いに支え合う恋と友情の物語を展開する。主役の波瑠にメガネをかけさせ、仕事も婚活もうまくいかない地味な女性を演じさせようとしているのだが、演技力の問題もあるのか説得力に欠けた。恋に悩む理人役の中川大志も同様。唯一、家庭問題に悩む主婦役・松下由樹の好演のおかげでかろうじて視聴を続けることができたように思う。

 

 

⑩日テレ 日10:30 『ニッポンノワール~刑事Yの反乱』(6.88%)

殺害された刑事の真相をめぐって一人のやさぐれ刑事と警察内部の闇との対決を描いたミステリー。物語の展開を面白くするための演出かもしれないが、ドラマ冒頭で完全に記憶をなくしていた主人公の警視庁の刑事・遊佐清春が、回が進むにつれ都合よく?逆行性に小出しに記憶が戻っていくってのはどうなのか。実に不自然さを感じざるを得ない。ドラマはなんでもありの展開で、視るのに多少疲れてしまうのだが、エンディングロールで不釣り合いに穏やかなサザンの『愛はスローにちょっとずつ』が流れるのが救い?

 

 

⑪テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 『時効警察はじめました』(6.09%)

時効成立事件を趣味で捜査する変人警官・霧山が、時効廃止された現代日本を舞台に12年ぶりに第3シリーズとして再始動。コメディ要素をふんだんに?取り入れておりそれが逆にドラマに対する興味を削ぐ形となった。特に“時効管理課”全員お揃いで演じるギャグは寒すぎる。しかもしつこい。時効を迎えた事件の捜査を純粋に描いた方が良かったのでは?過去2シリーズほどの人気は得られず視聴率は伸び悩んだ。

 

 

⑫フジ木10 『モトカレマニア』(4.42%)

元カレが好きすぎるモトカレマニア(MKM)女子の生態を描いたラブコメディ。元カレの存在を引きずる“イタカワ女子(イタいけどカワイイ女子)”のぶっ飛びOLの混乱と暴走と試行錯誤の物語が展開された。予想どおりの大コケで厳しい低視聴率。表情に乏しい新木優子にこの手のコメディはまだ無理。高良健吾も出演選択を完全に誤った?さらに所々にみられるチョー寒い演出がドラマを一層安っぽいものとした。特に、脳内会議と称して、『弱気ユリカ』『堅実ユリカ』『陰湿ユリカ』『甘い見通しユリカ』『いい女ユリカ』がぞろぞろ登場し、『議長ユリカ』のもと議論を始めるシーンは寒さを通り越して痛々しくさえ感じてしまった。

 

 

(番外)NHK日8 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(8.11%, 第1話から)

NHK大河ドラマにとっては色々と辛い一年だったに違いない。一話一話はそれなりに見どころのある作りにはなっているのだが、一連のドラマとしては山も谷もない、単調なドキュメンタリードラマのような流れに終わった。制作発表のときから、低視聴率に沈むのでは?と不安視していたが、ここまでひどいとは…。ま、今後の作品がこれ以下になることはないと思われるので、これからはスタッフも気楽に作れるのではないだろうか。一年間ご苦労様~。

 


超マンネリでも『ドクターX』がさすがの安定の高視聴率。

テレ朝は堅実に数字を獲っている。

もはや恋愛コメディでは数字は獲れないというのは明白。

どのドラマも平均視聴率10%が一つの壁になっているようだ。

 

 

それでは、ここからは次クール1月ドラマに話を移す。

2020年1月からの新ドラマをチェックしてみたい。

 

 

 

フジ月9 1/6 ~ 『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~ (4) 』 沢村一樹、横山裕、本田翼、水野美紀、森永悠希、高杉真宙、上杉柊平、マギー、柄本明、他

過去の犯罪、防犯カメラ映像、メール・電話・SNS の通信履歴など、あらゆるビッグデータからAIが統計学的にこれから起こる重大犯罪を割り出し、それらの未然に阻止する『未然犯罪捜査班』(通称・ミハン)の刑事たちが悪戦苦闘する。脚本家・浜田秀哉によるオリジナルドラマ。2018年7月クールに放映された前期のメンバーが続投。ミハンのリーダー・井沢範人を沢村一樹が演じる。元公安のエリートだが物腰の柔らかい飄々としたキャラクターの持ち主。妻と娘を無残に殺された過去を持ち、犯罪を未然に防ぎたいという思いが人一倍強く、犯罪者に対する怒りが強すぎるあまり、刑事としての一線を越えてしまいそうな激しい凶暴性を持ち合わせており上層部から危険視されている。横山裕演じる山内徹は、特殊捜査班から捜査一課を経て、ミハンのメンバーとなる。今回は新たな辞令を受け、“警察が警察を取り締まる”監察官としての立場となる。表向きはミハンがおこなう住居侵入やクラッキング(ネットへの違法アクセス)などの違法捜査をチェックするためとなっているが警察上層部による井沢監視が目的だった。本田翼演じる小田切唯は、かつて生活安全課の女性警官だったが、痴漢で逃走する容疑者を必要以上に暴行しミハンに異動となった。高校生の頃に男に襲われた過去から男性恐怖症となり、その反動で男性に対し異常に冷たく粗暴に振る舞ってしまう。今作は、大規模なテロが今まさに起きようとしている数ヶ月後の未来から物語が始まる。何者かによって渋谷、新宿、霞ヶ関をはじめとした複数の場所に警戒最大レベルの爆発物が仕掛けられ、官邸からは非常事態宣言が発動される。SATや爆発物処理班が出動する中、ミハンの山内と小田切も捜査に参加。小田切が爆発物の捜索現場となった部屋駆けつけると、拳銃を手にした男性が立ち尽くし、目の前には銃殺された女性が横たわっていた。涙を浮かべ立ち尽くしている男性は井沢だった…。毎話で新たな事件への取り組みが描かれる中、ドラマは衝撃の未来の冒頭シーンへと繋がっていくという設定。今回は、法務省官僚でミハンの統括責任者・香坂朱里役で水野美紀が新たに加わる。そのほか、コンピューターに向き合うことに疲れた伝説の天才ハッカー・加賀美聡介に柄本明、新人研修でミハンに配属され不満を抱えているキャリア警察官・吉岡拓海に森永悠希らがキャスティングされている。大コケもしなければ大ブレークもしなさそうな無難なネタとみられる。

 

 

フジ(関西テレビ)火9 1/14 ~ 『10の秘密』 向井理(主演)、仲間由紀恵、仲里依紗、渡部篤郎、山田杏奈、名取裕子、遠藤雄弥、他

脚本家・後藤法子が手がけるオリジナルドラマ。娘の誘拐をきっかけに明らかになる様々な『秘密』が交錯し人間の欲望に翻弄されるサスペンス。向井理演じる主人公・白河圭太は、14歳の娘・瞳(山田杏奈)と二人暮らしの建築確認検査員。大学時代から付き合う由貴子と結婚して娘も生まれたが、ある事件をきっかけに由貴子との関係が悪くなり、離婚を切り出されシングルファザーとなった。“娘第一主義”で何でも話せる良い関係を築き、娘の友達からうらやましがられるほどの理想の父親で、娘のために自分を犠牲にする生活を送ってきた。圭太の元妻で、仲間由紀恵演じる仙台由貴子は大手建設会社の顧問弁護士。貧しい家で育ち、努力して這い上がってきたため、『上を目指したい』が口癖。圭太との間に一人娘をもうけたが、“仕事に専念したい”と、離婚届を置いて家を出た。そんなある日、圭太のもとに電話がかかってくる。『娘を預かった。命が惜しければ元妻を探せ』。一方、由貴子はある“秘密”を抱え、消息を絶っていた。瞳を探すにつれ、別れた妻のセレブな暮らしに隠された秘密を知るばかりか、何でも知っていると思っていた娘にも秘密があることを知ることに…。そのほかの出演者には、圭太の家の近所の住む保育士で、圭太とは幼なじみの石川菜七子に仲里依紗。面倒見のいい性格で保育園での父母からの評判も良かったが、彼女もまたある“秘密”を抱えていた。由貴子が顧問弁護士を務める大手建設会社の社員・宇都宮竜二に渡部篤郎。上昇志向の強い由貴子に興味を持ち、互いに認め合うようになる。会社の“秘密”を守るため、圭太や由貴子に関わっていく。関テレ制作のサスペンスドラマにはこれまで何度も失望させられてきたが果たして本作は大丈夫だろうか?

 

 

TBS 火10 1/14 ~ 『恋はつづくよどこまでも』 上白石萌音、佐藤健、香里奈、蓮佛美沙子、毎熊克哉、渡邊圭祐、山本耕史、他

原作は円城寺マキの少女漫画 『恋はつづくよどこまでも』。新米看護師とドSドクターによるラブコメディ。主人公・佐倉七瀬を演じるのは上白石萌音。無謀ながらもまっすぐに想いつづける新米看護師。5年前のある日、偶然起きた出来事で運命の男性となる医師・天堂浬(かいり)(佐藤健)と出会う。彼に会いたい一心で猛勉強した七瀬は晴れて看護師となり、5年ぶりに天堂と再会を果たしたが、あこがれの医師は思い描いていた人物とはまるで別人だった。天堂は.容姿も仕事の腕もピカイチで完璧主義のエリートだが、超ドSで同僚に対して過度に攻撃的、毒舌を吐きまくるため『魔王』と恐れられている存在だった。七瀬はそんな天堂に憤慨しつつも、純粋に素直な思いを伝え続ける。仕事にも恋にもまっすぐな七瀬は持ち前の根性で次々に起こる困難にぶつかっていくさながら『勇者』のよう。そんな七瀬の姿に、徐々に天堂の鉄の心が溶かされていく?のだった。実は天堂が『魔王』のようになったのにはある悲しい理由があった。『勇者』・七瀬と『魔王』・天堂の間で繰り広げられる院内ラブコメ。あまり期待できそうにない…。原作では七瀬の真っ直ぐで熱い想いに次第に浬の凍り付いた心が溶かされ、七瀬に惹かれるようになり、ついには恋人同士となるらしいのだが…。

 

 

テレ朝水9 継続 『相棒(18)』 水谷豊、反町隆史、浅利陽介、川原和久、山中崇史、山西惇、神保悟志、仲間由紀恵、石坂浩二、杉本哲太、柄本明、他

10月~12月の内容については前述した。このまま安定した視聴率が続くとみられる。

 

 

日テレ水10 1/8 ~ 『知らなくていいコト』 吉高由里子、柄本佑、重岡大毅(ジャニーズWEST)、本多力、小林きな子、和田聰宏、山内圭哉、関水渚、森田甘路、今井隆文、秋吉久美子、佐々木蔵之介、小林薫、他

大石静によるオリジナル脚本ドラマ。週刊誌記者の成長を描いたお仕事ドラマ。週刊誌記者ながら自身もまたスキャンダラスな部分で人生を狂わしていく。主人公は、政治家の不正から芸能人のスキャンダルまで数々のスクープを世に送り出す週刊誌『週刊イースト』の女性記者・真壁ケイト(吉高由里子)。自信家ながらも母譲りの人ウケの良さと人懐っこさで仕事も恋も絶好調の日々を送っていた。しかし、そんなある日、シングルマザーとしてケイトを育て上げた母・杏南(秋吉久美子)が急死。母が最期の言葉で告げたのは、今まで決して明かしてこなかった父親の名前だった。それは誰もが知るあのハリウッドスター…。謎めいた母の言葉から自身に関わる驚愕の真実を知ったケイトの人生は一変、アイデンティティを失う。週刊誌編集部を舞台に一話完結で、毎回、現代社会の時事性の高いトピックスを扱うとともに、世の真実を暴く週刊誌記者という自身の立場との葛藤と闘いながらケイトが記者としてだけではなく人として成長していく姿を描く。その他の登場人物には、フリーランスの動物カメラマン・尾高由一郎に柄本佑。報道カメラマンだったが、あることがきっかけで転身。ケイトの元カレで、現在は妻子持ち。『週刊イースト』連載班・野中春樹に重岡大毅。ケイトの今カレ。そろそろプロポーズを考えている。わがままな作家の懐に飛び込むのが得意。『週刊イースト』編集長・岩谷進に佐々木蔵之介。売上部数1位を維持する『週刊イースト』の顔として部下から厚い信頼を得ている。さらにドラマ中盤から物語を大きく動かす謎の男・乃十阿徹に小林薫がキャスティングされている。この枠お得意のお仕事ドラマのようだが、コメディではなさそうだ。一方、社会派ドラマではなく、サスペンス要素もあるということで、今のところ予想がつかないドラマである。

 

 

テレ朝木9 1/16 ~ 『ケイジとケンジ~所轄と地検の24時~』 桐谷健太(主演)、東出昌大(主演)、比嘉愛未、風間杜夫、柳葉敏郎、矢柴俊博、菅原大吉、峯村リエ、西村元貴、八木亜希子、他

横浜を舞台に、元体育教師の情熱刑事と東大卒の頭でっかちな超エリート検事が仲良くケンカしながら難事件に挑む。福田靖・脚本によるオリジナルドラマ。昔ながらの気質で走り出したら止まらない神奈川県警の“元体育教師の異色な刑事”・仲井戸豪太に桐谷健太、頭脳明晰すぎて逆にズレている横浜地方検察庁の“東大卒の頭でっかちな超エリート検事”・真島修平に東出昌大、のW主演。豪太はコンプライアンス無視で、『とにかく犯人を逮捕して、被害者に感謝されたい』と躍起になる男。一方の修平は『犯罪者を裁くための一番の社会正義は起訴すること。そのために証拠を集める刑事は、検事の“駒”である』と考える男。そんな相容れない豪太と修平だが、ぶつかり合いながらも徐々に共鳴が生まれ絆を深めていく。この二人以外の登場人物には、まず、豪太の妹で、周平とペアを組む立会事務官・仲井戸みなみに比嘉愛未。何かと対立する豪太と修平に振り回されながらも、修平からは思いを寄せられており、しっかりと二人の手綱を握っていく。豪太の所属する、神奈川県警横浜桜木警察署の署長・大貫誠一郎に風間杜夫。まだ半人前の豪太の良き理解者であり、その行く末を温かく見守っている。一方、修平の所属する横浜地方検察庁みなと支部の部長検事・樫村武男に柳葉敏郎。修平の未熟さを知っており、彼には重犯罪を担当させないが、彼の潜在能力を感じ取っている。せっかくの企画だが演技力に疑問の桐谷と東出のW主演ではちょっと心配。『ドクターX』の後番組としては荷が重そうだ。

 

 

フジ木10 1/9 ~ 『アライブ がん専門医のカルテ』 松下奈緒、木村佳乃、清原翔、岡崎紗絵、木下ほうか、藤井隆、他

内科医&外科医の女医がバディを組んだ医療ドラマ。がん治療に特化した腫瘍内科を舞台に繰り広げられるオリジナルのメディカル・ヒューマン・ストーリー。彼女らが治療に携わる患者たちの生き様や、彼女たち自身もそれぞれに痛みと秘密を抱えながら絆を深め合い、人生を生き抜いていく姿が描かれる。松下奈緒演じる主人公は腫瘍内科の医師・恩田心。人を救う職業に就きたいという思いから医師を目指し、奨学金で医学部に進学。医学部卒業後、最初は放射線科に進むが、画像診断でがん患者を救った経験をきっかけにがんの専門家になりたいと思うようになり、腫瘍学を学び国内ではまだ数少ない“がんのスペシャリスト”である腫瘍内科医を目指すことになる。周囲からは名前の『オンダ・ココロ』を略して“オンコロ先生”と呼ばれているが、メディカル・オンコロジー(腫瘍内科)の駄洒落ということらしい。学生時代に知り合った男性・匠と結婚し、一人息子をもうけ、順風満帆な毎日を送っていたが、3ヶ月前に夫の匠が転倒事故に遭い、緊急手術を受けるも意識が戻らないままでいる。職場では気丈に振る舞っているが、自身は未だに現実を受け止め切れていない。そんな時、勤務先の病院に移籍してきた有能な消化器外科医の薫(木村佳乃)と出会う。腫瘍内科の必要性を理解してくれる外科医として、そして、太陽のように明るい性格で心の支えになってくれる同僚として、この年齢になってできた大切な友人となった彼女との出会いは、心にとって、公私ともに突然差し始めた一筋の光のように感じられていた。『癌治療』のドラマとなると、必ずしも『ドクターX』のようにハッピーな結果にはならないことが予想される。医療ドラマではあるが、このような重いテーマで果たして視聴率が獲れるのか?

 

 

TBS金10 1/17 ~ 『病室で念仏を唱えないでください』 伊藤英明、中谷美紀、ムロツヨシ、松本穂香、余貴美子、萩原聖人、堀内健、唐田えりか、宮崎美子、泉谷しげる、土村芳、他

伊藤英明が僧侶にして救命救急医の主人公を演じる異色の医療ヒューマンドラマ。その独自の死生観によるコミカルでシリアルなやりとりを描く。原作はビッグコミック増刊号で連載中の、こやす珠世の漫画『病室で念仏を唱えないでください』。僧侶でありながら救命救急医でもある異色の主人公・松本照円を伊藤英明が演じる。彼の奮闘を通して、『生きること』を問う一話完結形式ドラマで『生きること』『死ぬこと』が問われる。松本は、幼少期に目の前でおぼれている幼馴染を救えなかったことから仏門に入り、さらに大切な人の死を前にして命を救いたいという思いから医者を志した。病院では救命救急医として医療に従事しながら、霊安室での枕経や、終末期の患者の心のケアといった僧侶としての仕事も兼任しているため、法衣のまま救急センターに運びこまれた患者の処置にあたることもあり、時に患者に「自分が亡くなってしまったのでは?」と勘違いさせるなど騒動を起こしてしまうことも。また、何かにつけて念仏を唱えたり説法をしたりすることで、患者だけではなく同僚からも煙たがられてしまうが、本人は医師としても、僧侶としても明るく真面目に取り組んでいる。その一方で、美人に気をとられるなどの煩悩を断ち切れていない。伊藤以外の主要キャストには、まず、松本と同じ救命救急センターの医師で、松本とは意見が異なる部分がありつつも、お互いの実力を認め協力しあう女医・三宅涼子に中谷美紀。医者として有能な上に美人なのに、少し抜けたおちゃめな部分がある。そして、松本と度々衝突する超エリートの心臓血管外科医・濱田達哉にムロツヨシ。その濱田の下で働く新人心臓血管外科医・児嶋眞白に松本穂香。プレッシャーに弱く濱田に役立たず扱いされながらもひたむきに医療に向き合う。さらに、松本を僧医として病院に迎え彼を陰ながら支える理事長・澁沢和歌子に余貴美子。松本の上司である救命救急センター部長・玉井潤一郎に萩原聖人。医師としての腕は確かだが気弱なところがあり、時に無茶なことをしたり他部門と衝突したりする松本にハラハラさせられている。そして、松本に時に怪しげな取引をされながらも医療面での協力関係・個人的な友情を育んでいく整形外科医・藍田一平に堀内健。この役のために剃髪したという伊藤英明の活躍が期待されるが、最近の彼はちょっとキモすぎ?

 

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 1/24 ~ 『女子高生の無駄づかい』 岡田結実(主演)、恒松祐里、中村ゆりか、町田啓太、他

女子校ならではのグダグダな日常を描いたJKコメディ。ニコニコ動画から漫画、アニメと躍進したビーノの漫画 『女子高生の無駄づかい』をドラマ化。不評だった2019年1月のこのクール『私のおじさん~WATAOJI~』の岡田結実を再び主演に。岡田が主人公の『バカ』こと田中望を演じる。そしてこの『バカ』といつもつるんでいる、『ヲタ』こと菊池茜を恒松祐里、『ロボ』こと鷺宮しおりを中村ゆりかが演じる。そしてそんな3人が通う、さいのたま女子高等学校(通称:さいじょ)の1年2組担任・『ワセダ』こと佐渡正敬(さわたりまさたか)を演じるのが町田啓太。『若さ』という最大にして最強の武器を持つ『女子高生』たちが、女子高生活をただただ無駄に浪費するハナクソレベルの日常が描かれる。岡田 19才、恒松 21才、中村 22才が高校1年生?イントロダクションを読んだだけで視聴意欲はゼロ!になった(オッサンには無理)。

 

 

日テレ土10 1/11 ~ 『トップナイフ~天才脳外科医の条件~』 天海祐希、椎名桔平、広瀬アリス、永山絢斗、古川雄大、三浦友和、他

天才の中の天才が集まる『脳外科医』たちの姿を追った医療ドラマ。原作は『コード・ブルー』の脚本家、林宏司の小説『トップナイフ』。外科医の中でも一握りの『手術の天才』が集う“脳外科”を舞台に、わずか0.1ミリの手元の狂いが患者の生死を分けるプレッシャーの中で常に完璧を求められ、手術はすべて成功して当たり前…そんな最高の医師(トップナイフ)たちがそれぞれに抱える秘密と苦悩を巡る群像劇。天海祐希演じる主人公・深山瑤子は東都病院に勤務する脳外科医で脳動脈瘤のスペシャリスト。部長の今出川から脳神経外科をまとめるように言われ管理職的役割を与えられる。自分の実力一つで患者の人生が変わるのが脳外科医だと実感、その責任と重要性を自覚して患者の命を第一に考えている、しかし、その裏では家族を捨てたという罪悪感を抱えていた。そして深山を取り巻く重要人物として、東都病院脳神経外科の脳腫瘍のスペシャリスト・黒岩健吾に椎名桔平、『愛に飢えた手術室の暴君』『世界のクロイワ』の異名をとり、マスコミにもたびたび取り上げられる。自分第一主義。仕事で散々人の命を救っているのだからそれ以外はすべて自分を優先してもいいと考えている。東都病院脳神経外科の専門研修医・小机幸子に広瀬アリス。『自称“天才”のド新人』。幼い頃から神童ともてはやされ一番が当たり前、トップ中のトップになる人生を歩んできた。しかし実技はからっきしダメな新人と噂されるも本人にその自覚なし。東都病院脳神経外科の脳外科医・西郡琢磨に永山絢斗。『心を閉ざした孤高の秀才』。外科もカテーテルも出来る二刀流。表面的には手技に絶対的な自信を見せるが中身はコンプレックスの塊。東都病院脳神経外科部長・黒岩健吾に三浦友和。『真意を見せない脳外科のクセ者』。医者としては平凡だが、人の適材適所を見分ける能力には長ける。天才医師たちをこの脳外科に集めたのには秘密があった。脳外科医ってそんなにすごいのかっ!と思わずツッコミを入れたくなるイントロダクションだが、果たしてその中身はいかに?

 

 

NHK日8 1/19 ~ 大河ドラマ『麒麟がくる』 長谷川博己、染谷将太、佐々木蔵之介、風間俊介、尾野真千子、伊藤英明、川口春奈、他

最新研究に基づく新たな明智光秀像を描いた2020年度大河ドラマ。池端俊策のオリジナル脚本。久々の戦国時代大河ドラマで、安定視聴率が期待されていたのだが、スタート前から濃姫役の女優の降板があり放映開始日が延期になるなど前途多難(4Kでフル撮影と制作にはかなり気合いははいっていたのだが…)。王が仁のある政治を行う時に必ず現れるという聖なる獣・麒麟。応仁の乱後の荒廃した世を立て直し、民を飢えや戦乱の苦しみから解放してくれる救世主の出現が期待されていた。若き頃、下剋上の代名詞ともいわれる美濃の斎藤道三を主君として勇猛果敢に戦場を駆け抜け、その教えを胸にやがて織田信長の盟友となり、多くの群雄と天下をめぐって争った智将・明智光秀。これまでほとんど描かれていない謎めいた光秀の前半生にも光を当て、彼の生涯をめぐる戦国の英傑たちの運命の行く末が描かれる。ドラマは光秀の20代の青春時代から始まる。この明智光秀を長谷川博己が演じ、織田信長には染谷将太、豊臣秀吉に佐々木蔵之介、徳川家康に風間俊介がキャスティングされている。これまでのイメージと異なり、保守的かつ中世的な側面を持ち、父・信秀から実直に受け継いだ財政面、経営面での才覚を発揮した信長、さらに親子二代で美濃をのっとったという説に基づく斎藤道三、反織田勢力を自由自在に操り、室町幕府の再興をなそうとする権謀術数にたけた第15代将軍・足利義昭など新たな認識をもとに主要人物が描かれていく。

 

 

TBS 日9 1/19 ~ 『テセウスの船』 竹内涼真(主演)、榮倉奈々、鈴木亮平、上野樹里、ユースケ・サンタマリア、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、芦名星、安藤政信、笹野高史、麻生祐未、他

竹内涼真が日曜劇場初主演。死刑囚の父を持つ息子が、30年前にタイムスリップして事件の真相を辿っていくSFミステリー。原作は週刊漫画誌『モーニング』(講談社)で連載されていた東元俊哉の漫画『テセウスの船』。タイトルの『テセウスの船』とは、ギリシャ神話がモチーフとなったパラドックス(逆説)に由来する。英雄・テセウスの船を後世に残すために朽ちた部品が全て新品に交換されることで、“この船は、同じ船と言えるのか?”という矛盾を問題提起するエピソード。過去を変えても、未来の家族は同じと言えるのかという難しい課題に主人公が挑む。竹内涼真が演じるのは、家族の運命を変えた警察官の父親が起こした殺人事件の謎を追う青年・田村心(たむらしん)。心が生まれる前に連続毒殺事件の犯人として父親が逮捕され、以後、心は母親・姉兄とともに、世間から後ろ指を指されながら身を隠すように生きてきた。しかし、心の父親が殺人犯と知りながら両親の反対を押し切って結婚した最愛の妻・田村由紀(上野樹里)から「お父さんを信じてみて」と言われた心は拘置所にいる父に会うことを決意。しかし、昔の事件現場に向かう途中、突然の霧に包まれ、30年前にタイムスリップ。そこは、父が殺人事件を起こす直前の平成元年、事件現場となる雪深い村だった。その“過去”で父・佐野文吾(鈴木亮平)と母・佐野和子(榮倉奈々)と出会う。父・文吾は当時、村の駐在警察官、底抜けに明るく豪快な二児の良き父親(心はまだ生まれていない)、家族からも村人からも愛される男だった。心は文吾の人柄に初めて触れ、「父は本当に殺人犯なのか?」という疑問を抱く。一方、母・和子は、大きな愛で家族を見守り、時に叱咤激励する明るく逞しい母親だった。失われてしまった家族の笑顔を取り戻すため、父の無実を信じて心は父の事件を阻止しようと過去を変えるべく立ち上がる。定番のタイムスリップ・ドラマなので現実性からは逸脱するが、エンターテインメントとして楽しむにはよいドラマかもしれない。

 

 

日テレ(読売テレビ) 日10:30 1/12 ~ 『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』 清野菜名、横浜流星(W主演)、佐藤二朗、要潤、白石聖、山崎樹範、吉田美月喜、他

驚異的な身体能力を持つ謎の女・ミスパンダと彼女を操る男・飼育員がバディを組み、“Mr. ノーコンプライアンス”からの指令を受け、警察やマスコミが触れない世の中のグレーな事件にシロクロつける。主人公は清野菜名演じる川田レン。かつては“天才美少女棋士”と騒がれたが10年前のある事件をきっかけにネガティブで弱気な性格になってしまった囲碁棋士。いつも守りに入ってしまい勝ちきれないでいた。しかし彼女にはもう一つ全く別の顔があった。世の中にはびこる様々な“グレーゾーン”にシロクロつける謎の存在、“ミスパンダ”。動物的な直観から生まれる予期せぬ行動とトップアスリート顔負けの身体能力を持ち合わせていた。闇に隠された真実をあぶり出し、“クロ”と認定したターゲットを嬉々として公開処刑する。この“ミスパンダ”とバディを組むのは、彼女が“飼育員さん”と呼ぶ森島直輝(横山流星)。大学で精神医学を学ぶ一方、メンタリストNとしてテレビにも出演。裏では“Mr. ノーコンプライアンス”の指示で世の中の“グレーゾーン”にシロクロつける活動を行っている。卓越した記憶力、観察力、洞察力、推理力で、対峙する相手のほんの少しの心の揺れを敏感に感じ取り、相手が考えている事を瞬時に把握することができる。また対象者の眠っている記憶や力を呼び起こしたり、うまく同調できれば別の人格をすり込み相手の行動をコントロールしたりすることも可能だ。しかし、しばしば言うことを聞かず自由気ままな行動をとるミスパンダに手を焼いている。実は直輝の活動の根本には、8年前に突然失踪し遺体で見つかった父の死の真相を突き止め復讐を遂げるという目的があった。そんな直輝の能力に目をつけ、グレーな事件にシロクロつける指令を出す謎の人物・Mr. ノーコンプライアンスを佐藤二朗が演じる。週刊誌がワイドショーで騒がれる事件がグレーなまま間違った噂や憶測をはびこらせている現状に対し、法律では裁けない真実を暴き出す活動をしている。その行き過ぎた正義感には過去に下した“ある決断”が関係していた。清野菜名と横浜流星のW主演抜擢が吉と出るか、凶と出るか?

 

 

なんと医療ドラマが4本…

そして事件物のドラマも多い。

残念ながら次クールも高視聴率が期待できそうなドラマは

ほとんどなさそう。

個人的には、吉高由里子の日テレ水10と、

竹内涼真の日曜劇場にかすかな期待を抱いているのだが…

 

 

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一度決めたら二度とは変えぬ

2019-12-01 19:17:09 | 健康・病気

月が変わってしまいましたが11月のメディカルミステリーです。

 

11月24日付 Washington Post 電子版

 

Her lungs seemed to be a mess. But the problem that nearly

killed her lay elsewhere.

彼女の肺はちょとしたトラブルのように思われた。しかし、彼女の命をほとんど奪ってしまおうとした病気が他に存在していたのである。

 

 

By Sandra G. Boodman,

 

 なぜ?Gail Multop(ゲイル・マルトップ)さんは繰り返し疑問に思った。なぜ医師たちは、難治性に思われる彼女の肺の病気を終わらせることができないの?

 Multop さんの症状はゆっくりとだが、確実に進行している様にみえた。2016年11月、彼女は肺炎にかかった。6ヶ月後、2度目の肺炎が起こった。そのころには、この幼児教育の専門家には激しい咳がみられており、徐々に増悪する疲労感と息切れも感じていた。

 大量の薬物や的を絞った治療は増悪していく彼女の症状を緩和するのにほとんど効果がなかった。2人の呼吸器専門医、耳鼻咽喉科医、アレルギー専門医、心臓専門医、感染症専門医、そして彼女の家庭医たちはなぜ彼女が良くならないのかを説明することができず困惑しているようだった。

 その後 Multop さんが医師の診察室で突然倒れ、瀕死状態となって近くの病院に救急搬送され、彼女の悪化の原因が明らかとなったのは2018年5月になってのことだった。

 

Gail Multop さんの病気に対する治療の遅れは生命を脅かす結果をもたらした。

 

 彼女の潜在的な疾病の治療が長期に遅れたことによって持続する深刻な結果がもたらされたことを Multop さんは知ることになる。彼女はその結果を“自分の人生において爆発した爆弾”に例えた。

 「私は非常に理解のある人間であろうと努力しましたが、そのことについて話したり、あるいはカルテを見たりするといまだにとても感情的になってしまいます」現在67歳になる Multop さんは言う。「医師たちは皆、型通りの考え方をしていただけで、従来の常識にとらわれずに考えることをしていなかったと思います」

 

Sinusitis or something else? 副鼻腔炎それとも何か他のもの?

 

 Multop さんは最初の肺炎のことをありありと覚えている。それは2016年の Election Day(大統領選挙日)だった。ソファに横になりながらもうろうとした理解力で華氏103度(摂氏39.4度)の結果を見ていたことを思い出す。その高熱が彼女の非現実的な感覚を増長させたという。

 それまではMultop さんはほぼ健康だった。Northern Virginia Community College(北バージニア・コミュニティカレッジ)の2ヶ所のキャンパスで講義を行っているのに加えて、Fairfax County(フェアファックス郡)在住の彼女は保育所でフルタイムで働いていた。後者では日常的に大量の細菌にさらされていた。

 「私は長い間病気に罹ったことはありませんでした」と彼女は言う。

 2017年5月、6ヶ月で2度目の肺炎と診断されたため Multop さんは肺の専門医への紹介をかかりつけ医に依頼した。しかし彼は紹介は必要ないと彼女に告げたため Multop さんは友人に紹介を頼んだ。友人が勧めてくれた呼吸器専門医へ受診し始めてからその後一年に渡っておよそ18回に及ぶ電話のやりとりと受診を行った。

 最初の受診のとき、その医師は彼女の持続性の咳に注目した。その咳には、しばしば痰だけでなく長く続く軽度の喘息が生じていた。彼がCTスキャンを行ったところ副鼻腔炎と軽度の気管支拡張症が認められた。気管支拡張症は繰り返す炎症や感染によって引き起こされる慢性の肺疾患である。その呼吸器専門医は新しい喘息の治療薬を処方した。

 数週間後、彼女は再び彼の診療所を受診した。彼女の副鼻腔はきれいになっていたが、咳は長引いていた。その翌月、新たな肺炎とみられる症状で再診した。その呼吸器専門医は前回より強力な2剤めの抗菌薬を処方し追跡の胸部レントゲン検査を行った。Multop さんによるとゆっくりと改善がみられたという。

 3週間後彼女は再診した。咳が悪化し、疲れを感じるようになったので日中2度昼寝をするようになったと彼女はその医師に説明した。

 しかし、彼女の胸部レントゲン写真では改善がみられていた。彼女によると、その呼吸器専門医から、なぜ彼女の具合が良くならないのかわからないと告げられたという。

 『彼女の症状はすべて潜在する気管支拡張症に関連していると考える』と彼は記載していた。彼はさらに1週間分の抗菌薬と Aerobika(エアロビカ)を処方した。Aerobika は吸入器に似た器具で、気道から粘液を排出させるのに用いられる。

 また彼は感染症専門医に彼女を紹介した。恐らく真菌もしくは非定型細菌が感染を引き起こしているため抗菌薬に反応しなかったのだろうとその医師は Multop さんに説明した。

 2017年10月に行われた CT 検査は6ヶ月間で顕著な悪化が認められるという気がかりな結果だった。Multop さんの胸部には腫大したリンパ節が認められ、肺や心臓の周囲に液が貯留、atelectasis(無気肺)も認められた。無気肺とは腫瘍や粘液によって気道が閉塞することによって生ずる局所的な肺の虚脱のことである。

 Mulgtop さんは、特に横になったときに多くみられたが、間欠的な胸痛があると呼吸器専門医に説明した。その痛みが“心臓に関連している可能性”がないかどうかその医師に尋ねたことを彼女は覚えている。

 彼は心臓専門医を受診するよう助言するとともに、bronchoscopy(気管支鏡)を目的にインターベンショナル呼吸器専門医に彼女を紹介した。細い管を喉から肺まで到達させる侵襲的手技である気管支鏡は肺や気道の精査が可能で、医師は組織や粘液の試料を除去し閉塞した気道を開通させることができる。

 心臓専門医は transthoracic echocardiogram(経胸壁心エコー検査)を施行した。これは、超音波を用いて心臓のビデオ画像を作成する日常的に行われる非侵襲検査である。CT検査で示されていたのと同様にこの検査で Multop さんの心臓と肺の周囲には液体が認められた。しかし、彼女の ejection fraction(心臓駆出率:心臓がどの程度効率良く血液を駆出しているかの測定値)は64%と算出された。この値は正常範囲内に保たれており、また心臓弁にも異常所見はなかった。

 2週間後に行われた気管支鏡検査でもほとんど異常は見つからなかった。インターベンショナル呼吸器専門医は大量の粘液を吸引したが、その他には、腫大したリンパ節の中にも癌を含め何も異常は認められなかった。その専門医は肺の周囲には著しい液の貯留を認めなかった。

 これらの検査結果に基づいて、Multop さんの最初の呼吸器専門医は、彼女の主たる病状は粘液の過剰であるようだと結論づけた。そこで彼は粘液を排出させるのに有効な SmartVest(スマートベスト)と呼ばれる身体に着用できる装置を処方した。

 Multop さんは一日に2回このベストを着用してみたところ有効なように思われた。11月下旬まで彼女の体調は良くなっていた。胸部レントゲン写真もきれいであり、培養検査でも真菌感染の徴候は認められなかった。

 

Sudden collapse 突然の卒倒

 

 しかしその改善も長続きしなかった。

 2018年の初めまでに『非常に突かれやすく、ひどい息切れを』感じるようになっていたことを覚えている。街を1ブロック歩くだけで数回の休憩が必要だった。

 その呼吸器専門医は困惑していた。「彼はこう繰り返していました。『あなたのように軽い気管支拡張症でありながらこれほど多い症状がある理由がわかりません』」彼がそのように言っていたことを Multop さんは覚えている。彼は解析のためにさらに多くの喀痰標本を送り、彼女の増え続ける投薬リストを調整した。

 Multop さんによると、彼女はなんとか肺炎の再発を回避しながらその冬と春を難儀しながら乗り越えたという。彼女は治療用ベストを着用しながら時々粘液とともに水様の液体を喀出したことがあると呼吸器専門医に説明したという。

 「液体ということはありえない、それは嘔吐だと彼は言いました」そう Multop さんは思い起こす。

 5月1日、咳が悪化したため彼女は呼吸器専門医を受診した。

 新たに行われた胸部レントゲン検査では肺炎が疑われたが、2種類の抗菌薬に反応しなかった。

 呼吸器専門医は Multop さんに、もし状態が悪化した場合には緊急室に行くよう繰り返し助言していたが彼女はなかなかそうしたがらなかった。昔若い頃に娘たちを連れて行ったときのように数時間 ER に座っていたくないと彼女は思っており、また院内感染を恐れていたという。後から考えると行っておけば良かったと思っている。

 5月21日、夫の Ridge さんと呼吸器専門医の診察室に座っていたとき、Multop さんに嘔吐がみられ、その後意識を失った。医師は911を要請し、救急車は Inova Alexandria Hospital(イノヴァ・アレキサンドリア病院)に彼女を救急搬送した。そこの医師に彼女は命を救われたのである。

 Multop さんは死亡率50%の病状であるところの心原性ショックに陥っていた。心原性ショックは通常、重症の心臓発作(心筋梗塞)あるいはうっ血性心不全と呼ばれる最重症の心不全で引き起こされる。ショックは身体が必要とする十分な血液を心臓が送り出せないときに起こる。

 医師らは直ちに心筋梗塞を除外し、Multopさんの病状が進行した心不全であると断定した。彼女の心臓は、心機能を障害する cardiomyoopathy(心筋症)の結果、恐らく何ヶ月もの間に機能しなくなっていたとみられた。問題の中心は彼女の肺ではなかったのである。

 Alexandria の医師らは彼女を安定させ、Inova Fairfax Hospital(イノヴァ・フェアファックス病院)まで緊急ヘリ搬送し、彼女はそこで約2週間過ごした。そこで、絶え間なく続く咳、全身倦怠、重度の息切れ、胸痛、そして体液過剰がすべて心不全の徴候だったことを彼女は知った。

 

Recovery — and regret  回復 ー そして後悔

 

 「肺疾患と心疾患はしばしば混同されます」Inova Fairfaxで進行した心不全と心臓移植を担当する心臓専門医で Multop さんを治療したチームの一員である Mitchell Psotka(ミッシェル・プソトカ)氏は言う。「この二つの臓器は常に影響し合っているのです」

 Psotka氏によると、実際には心疾患を煩っている患者で肺疾患と診断される患者をみることはまれではないという。

 「心不全の早期の段階では見逃されやすいのです」と彼は言う。理由の一つは、この疾患がしばしばゆっくりとだが知らない間に進行していくためである。そして警告症状である息切れは肥満や鼻閉など様々な健康状態によって引き起こされると彼は言う。

 それでは Multop さんには肺疾患はなかったのだろうか?それは不明であると Psotka 氏は言う。「彼女に幾ばくかの肺のダメージがあったことは確かですが、それは慢性心不全による可能性がありました」

 「彼女の呼吸器の医師は心臓専門医に彼女を診てもらっており、適切な対応を行っていたと思います」と彼は付け加える。心臓超音波検査で心不全を見つけることはできるが、Multop さんの心不全がなぜ見逃されたのかは不明である。

 「心臓専門医が何を見たのかはわかりませんが、今回起こったことを私が判定することは困難です。心臓超音波検査で異なる医師によって異なる解釈がなされるのはありがちなことです」と Psotka 氏は言う。

 Multopさんには、高血圧や糖尿病など、心不全の一般的な危険因子は認められなかった。その病状を感知し監視するのにしばしば参考にされる徴候である足首の腫れも見られなかった。(彼女の場合、体液は胸部に貯留していた)Psotka氏によると、医師らは彼女の心筋症の原因を確定できていないが、遺伝的なものではないかと考えている。

 Multop さんは、かかった医師らの誰もが最初の肺疾患の診断を疑問に思わなかったようであったこと、彼女が良くならなかった後も別の原因を探そうとしなかったことにいまだに心を痛めているという。

 「彼らの頭の中で肺だと思い込んでいたのでしょう。そしてそれが全てに対する説明になっていたのだと思います」と彼女は言う。

 そのような誤解はよくあることだが、命にかかわることもある。診断ミスには誰でも生涯に少なくとも一回は遭遇する可能性があり、毎年、入院患者8万人の米国民の死につながっていると推計されていることが研究で分かっている。

 これらのミスは日常的な認識の誤りの結果である可能性がある。それらの一つに anchoring(固着)がある。それは、医師が早期にある診断を決めると別の可能性を考慮しなくなるというものである。そのような誤りはdiagnostic momentum(診断モメンタム:一度診断ラベルを患者に貼りつけてしまうとその後固着性が高まる傾向のことをいう。最初は『可能性』として始まった診断名がその後に確定病名となるまでモメンタムが増加するため他の可能性はすべて排除されてしまう[MrK註])によって持続する。そこでは、当初の診断が疑われることなく受け入れられてしまうのであるが、これは“bandwagon effect”(楽隊車効果:ある選択肢を多数が選択している現象が、その選択肢を選択する人を更に増やしてしまう効果[MrK註])ともいわれるものである。

 Multop さんのケースでは正しい診断は最初だけだった。

 彼女の心臓はひどく障害を受けていて機能していないことがわかったため、昨年はほぼ7週間 Inova Fairfax で過ごし、最終的には10月5日に心臓移植が行われるに至った。

 「私に必要だったときに心臓移植を受けることができたことに非常に感謝しています」と Multop さんは言う。彼女によると、前よりも強い気持ちが持てるようになり、個人トレーナーとともに運動することができているが、以前よりは持久力は落ちているという。

 今のところ、彼女の免疫系がいまだに脆弱なことから、教室ではなくオンラインで教えている。

 「彼女を多く診察しなくなっているという事実は彼女がしっかりとやっているということを意味しています」と Psotka 氏は言う。

 彼によると、Multop さんの経験は、医師たちにとっても、患者たちにとっても重要な教訓を浮き彫りにしているという。「現在の治療戦略で事態が改善しないなら、治療しているのが正しい疾患がではない可能性があるということです」

 

 

一つの診断に固執せず別の疾患である可能性を

常に考えながら治療にあたることが重要だということであろう。

くれぐれも “診断一路” にはご注意!である。

とはいえ、“後医は名医”、

後から診た医師の方が断然有利であることは間違いない。

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