MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

2008 医療ニュース・トップ10

2008-12-28 00:00:57 | 健康・病気

2008 年も残すところあと4日となった。

今年の MrK は、ブログ・ネタに行き詰まり、

(困ったときの)海外の医療ネタが多くなってしまったことを

反省せねばなるまい。

医療の進歩にはめざましいものがあるのだが、

それについてゆくのは至難の業である。

ABC News に

今年、最も重要で、興味深かった医療ニュース、トップ10が

まとめてあったので、簡単にまとめて紹介する。

原文に即して No. 1 から紹介するが、

重要度順の番号づけではないように思われるので申し添えておく。

12 月 23 日付 ABC News 電子版
The Top 10 Medical Stories of 2008

No. 1: The JUPITER Trial (JUPITER 試験)

この臨床試験については

拙ブログ、11 月 12 日のエントリー『長生きへの道』で紹介した。

JUPITER 試験とは、薬品メーカー、アストラゼネカ社の

コレステロール降下薬(スタチン)、商品名 クレストールの

18,000 人を対象とする大規模な臨床試験で、

クレストールが心臓発作、脳卒中、心疾患による入院や他の指標を

56 %減少させた。

さらに、コレステロール値は正常でも、体内の炎症を示す

C-reactive protein(CRP)値が高い患者には

とりわけ投与すべきであると結論づけた。

この結果が医師たちに与えた影響は大きく、

New England Journal of Medicine の

ウェブサイト投票の結果によると、

2,500 人の回答者の 48 %は JUPITER 試験後、

これまでの認識を転換し、スタチンを使うべきだと感じていたという。

No. 2: Birth From a Whole Ovary Transplant (全卵巣移植からの出産)

12 月 10 日、一人の女の赤ちゃんが

史上初めての完全卵巣移植から誕生した。

赤ちゃんの母親は、15 才の時、医学的問題から早期に閉経し、

妊孕能を失っていた。

後年、彼女の双子の姉(赤ちゃんのオバ?母親?)が、

彼女が妊娠できるよう、自分の機能を持つ卵巣を提供した。

これにより 38 才での初めての出産に至ったのである。

セントルイスにある不妊治療センターの

Sherman Silber 医師たちによる報告である。

これまでに少数の子供が移植卵巣、特に外卵殻移植による

誕生はあるが、この技術は必ずしも成功してるわけではない。

今回の成功により、医師たちは受精に問題を抱える女性や

化学療法から卵巣を保護したいというがん患者の希望に応えるため

この技術を応用できると見込んでいる。

凍結卵巣の移植技術は、将来、女性の妊孕期間を延長させるのに

用いられるようになるかもしれないと、Silber 氏は語っている。

No. 3: The ENHANCE Trial (ENHANCE 試験)

1月、期待の大きかった ENHANCE 試験の早々のニュースは、

大きな話題となっていたコレステロール薬 Vytorin の

有効性の確証を期待していた医師や薬品メーカーを驚かせた。

ENHANCE 試験は、コレステロール低下薬シンバスタチンと、

シンバスタチンとエゼチミブ(商品名ゼチーア)の合剤である

Vytorin とを比較した。

早期のデータによれば、Vytorin に、

動脈壁の厚さの減少効果においてシンバスタチン単独を上回る

有効性は示されなかった。

1月15日、米国心臓病学会はウェブ・サイトで

次のように声明を出した。

「患者がパニックに陥る理由は見当たらない。

心臓イベントの全体の発生率は両治療グループでほぼ同じであり、

両薬物は全般に耐容性は良好だった」

確かに Vytorin それ自身は、悪玉である LDL コレステロールを

効果的に減少させることが証明されている。

しかし ENHANCE 試験失敗のニュースにより、

米国食品医薬品局(FDA)は、患者がスタチン内服に

見切りをつける結果につながるのではないかと懸念する。

「Vytorin の議論の捕らえ方が、きわめて重要であるはずの

LDL コレステロールの測定値に無関心な方向に

人々の目を向けてしまうことに私は大きな懸念を抱いています」と、

FDAのウェブ・サイトで Robert Temple 氏は記している。

No. 4: Malaria Vaccine(マラリア・ワクチン)

マラリアがどのように感染を起こすかは発見されて久しく、

それをどのように予防するべきかを科学者たちは把握しているが、

国際的推計では、毎年約 100 万人がこの疾患で死亡している。

最も感染の多い地域では感染予防計画の多くを実行に移すことが

極度の貧困によって妨げられている。

12月8日、将来が期待されるマラリア・ワクチンの初めての成績が

国際ニュースに衝撃を与えた。

共同通信による報道によれば、このワクチンが幼小児における

マラリア予防に 50 %以上の有効性があったと

初期レポートが伝えたという。

マラリアは概して若年者をターゲットとし、最初に原虫は肝臓に感染、

その後急速に全身に回り、錯乱、発熱、および悪寒を引き起こす。

この研究はアフリカの2ヶ国にのみ重点的に取り組まれているが、

さらに長期で大規模な研究が 2009 年に始まる予定である。

No. 5: Continuous Glucose Monitoring(持続的血糖監視)

9月、フロリダの研究者たちは一日中持続的に血糖値を測定する

初のグルコース・モニターを公表した。

この発明はもっとも治療が難しい1型(若年型)糖尿病の

症例の治療に劇的な意味を持ち、

将来は2型糖尿病の重症例にも用いられるようになるだろうと

医師らは ABCNews.com に語った。

1型糖尿病を持つ人はインスリンを産生する能力を失っており、

生存するためにはインスリンが必要だが、

血糖値が極端に低下したり、急上昇したりしないよう

血糖値の監視が重要である。

1型糖尿病患者は重篤な短期的合併症(昏睡や死亡など)を

回避できたとしても、失明など長期的合併症に苦しむ可能性がある。

持続的な血糖値の監視を用いて糖尿病のコントロールが改善すれば、

長期的合併症を減らすことができ、

QOLにも多大な長期的利益をもたらし、

医療費の低減にもつながると考えられている。

No. 6: Stem Cell Genes and Alzheimer's Disease(幹細胞遺伝子とアルツハイマー病)

1月、アーヴィンの University of California の科学者たちは、

神経変性疾患や脳損傷に加えて、

今後アルツハイマー病の治療にも幹細胞治療への道が開かれる

初期段階に達したと発表した。

同科学者たちは、胎児脳を発達させて言語、視覚、意思決定などを

コントロールする“思考中枢”や大脳皮質を形成する過程で

細胞に指令する Lhx2 と呼ばれる遺伝子を発見した。

「大脳皮質の発達における Lhx2 の役割の理解は、

脳の障害部位に置き換わる新しい皮質ニューロンを成長させる

幹細胞研究の取り組みに応用できる可能性があります」と、

同大学の病理学の assistant professor である

Edwin Monuki 医師は声明で述べた。

Lhx2 が発見された今、Monuki 氏の研究室のメンバーは、

次にこの遺伝子を活性化させ、“思考中枢”細胞を随意に

成長させることをめざすこととなる。

これはやがてアルツハイマー病や他の脳疾患で修復不能な

脳の障害を治療する第一歩となるだろう。

No. 7: Progress on Parasites(寄生虫対策の進展)

今年、Guinea worm(糸状虫)と呼ばれる

痛みを伴う全身性寄生虫症の根絶に大きな成果がみられた。

1986 年には 20 ヶ国で 350 万人の症例が報告されていた。

2008 年は6ヶ国 4,410 例まで減少しているが、

これは主として The Carter Center の尽力と、

イギリス政府やThe Bill & Melinda Gates Foundation による

資金援助の賜物である。

「過去数年の Guinea worm の我々の調査では

確実かつ急速に減少が見られています」と、

前米国大統領の Carter 氏はAP通信に語った。

公衆衛生当局は本疾患を 2009 年までに

公式に撲滅させることを見込んでいる。

Guinea worm は汚染された飲み水から幼虫として

取り込まれる。

一年経つと、虫体は3フィートの長さに成長し

ゆっくりと皮膚から這い出てくる。

この疾患は致死的ではないが数ヶ月間耐え難い痛みを生ずるという。

a

No. 8: Early Blood Test for Down Syndrome(ダウン症候群についての早期血液検査)

San Diego に本社がある Sequenom という企業によって

開発された SEQureDX と呼ばれる非侵襲的な血液検査は、

妊娠第1期の 12 ~ 13 週で胎児のダウン症候群を診断できる。

これまでの検査は妊娠 18 週前後に施行されることがあるが、

検査には母体にも胎児にも高いリスクがある。

ダウン症候群の子供を懐胎している女性のおよそ 87 %は

分娩までその事実を知らずにいた。

赤ちゃんの 733 人に一人の割合で、

年間約 5,500 人がダウン症候群として生まれてくるが、

これは米国で最も頻度の高い遺伝子異常であり、

子供にも両親にも、多くの身体的、精神的問題をもたらす。

新たな議論は、早期の妊娠検査が両親にダウン症候群の胎児を

中絶する気にさせてしまうのか、

あるいは医療側は中絶を勧めるべきなのか、という問題である。

ABCNews.com によれば、

ダウン症候群の子供を妊娠していることがわかった場合、

女性の約 90 %はその妊娠を中絶するだろうという結果となっている。

No. 9: Stem Cell Trachea Transplant(幹細胞気管移植)

バルセロナに住む 30 才の女性、

Claudia Castillo さんは、自身の幹細胞だけから形成した

気管移植を受けた世界最初の人間となった。

2005 年に移植を行った例では

提供者の組織と自身の組織を組み合わせたものであった。

Castillo さんの治療では、免疫抑制治療を受けたり、

拒絶反応の危険にさらされながら生きてゆく必要が全くないことを

意味しており重要だ。

これまで気管移植はごくわずかしか行われていない。

Castillo さんは何年も前から結核を患っており、

肺の重症の虚脱による合併症から気管を失っていた。

この技術は、Castillo さんの臀部から採取した骨髄幹細胞を用いて

提供者の枠組みの上に気管を再生させる方法である。

これは重要な進歩だが、完全な臓器を作れるようになるのは

まだ先の話だという。

No.10: Face Transplant Breakthroughs(顔面移植の飛躍的進歩)

この詳細は

拙ブログ、12 月 19 日のエントリー、

ただの顔、されど顔、やはり顔』で紹介した。ご一読あれ。

12 月初旬、Cleveland Clinic の外科医らは、 22 時間にも及んだ、

瞼、骨、歯、鼻などを含む顔面の 80 %を、死体から生きている

女性患者へと移植する手術を行った。

これまでにも、中国やフランスにおいて、同じような手術が

3例に対して行われていたが、今回は、この種のものでは

もっとも大がかりな手術であったと考えられる。

しかし、2008 年の顔面移植のニュースは

すべてが朗報だったわけではない。

この画期的な報道から一週間も経っていない 12 月 22 日、

世界で2番目の顔面移植を受けた中国の患者が

死亡していたことが伝えられた。

この男性の主治医は、この男性が拒絶反応抑制剤のかわりに

漢方薬を内服していたため死亡したと話しているそうである。

以上が今年のトップ10の医療ニュースであるが、

トップ10のうちの2件を拙ブログで取り上げていたとは

鼻が高い(そうかい)。

ま、とにもかくにも、新型インフルエンザのパンデミックといった

超ネガティヴなニュースが登場しなかったのはよかったと言える。

来年がどんな年になるかわからないが、やっぱり明るいニュースで

占めていただきたいと切に願うところである。

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ソリー・クリスマス

2008-12-24 16:49:30 | 社会・経済

Merry Christmas ↓ ………

…どうも今年のクリスマスは

メリーな(陽気な)気分になれないのは MrK だけだろうか?

(我がブログを振り返るに、昨年はずいぶん浮かれていたようだ) ↓

『クリスマスの頃には』

『イーヴン・イヴ』

というわけで、本エントリーのタイトル、『ソリー・クリスマス』は

タイプミスではないのだよ。

米国金融不安、世界同時不況、

日本では続発する派遣社員の契約打ち切り…

一方で政府は財政再建のため消費増税の議論。

まさに、Sorry (悲しい)Christmas ↓↓

これが言いたかったのだ(つまらんよ)。

22 日にはトヨタが赤字決算の見込みを発表という、

トヨタ・ショック第2弾の衝撃。

いよいよ日本も本格的な不況に突入したようで、

11 月の貿易統計速報によると輸出額の減少が顕著で、

貿易収支は 2234 億円の赤字となった。

11 月の赤字は 1982 年以来 26 年ぶりだそうである。

こんな沈うつな気分での年越しにはかなりつらいものがある。

11月23日付 Washington Post 電子版

Plunge in Exports Reverberates Across Asia;
輸出の急落がアジア全体に拡大;
Japan Reports Record Drop as Regional Trade Slows; Toyota Warns of First Loss in 70 Years
日本は地域貿易の停滞を受けて輸出の記録的な下落を公表;トヨタは 70 年間で初の赤字決算を通告

Toyotaswoe

日本は 22 日、11 月の輸出額の前年比下落が 27 %と記録的な数字であったことを発表した。
これは、世界第2位経済の劇的な悪化と、多くのアジアの国々を高揚させてきた輸出主導型の好況の終焉を示すものである。

実際、最強のトヨタですらこの 70 年間ではじめての営業損失が見込まれることを明らかにしたが、これは、世界で最も利益を出していた企業が世界同時不況により、今、いかに急速に打撃を受けているかの鮮明な例を示してくれている。

日本の驚くべき輸出額の下落はアジア全体に波及しているが、そのアジアでは多数の国が厳しい見通しをさらに越えたデータが公表されている。
タイでは 11 月の輸出額が約 19 %下落したと発表されたが、これは過去 17 年間で最大の減少である。
同じように台湾の輸出額は 11 月に 23 %下落しており、本日発表されることになっている政府の将来の輸出注文に関する報告ではさらに急落を示すと目されている。

「どこもかしこも一緒に下落しています。27 % の下落は実際のところ驚くべき数字であり、より重大な衰退の前兆となっています」と、Cornell University で通商政策学の先任教授をつとめる Easwar Presad 氏は言う。
「重要な点は、輸出主導の成長に依存してきたこれらの多くの国々が今回のことから脱却するためには内需に頼らなければならないということでしょう」

中国は 11 月の輸出はこの7年で最も大きな下落を示したと発表したが、この下落はアジアじゅうに波紋を呼んでいる。
それは、多くの近隣国にとって中国が最も大きな輸出市場となっているからである。
日本の対中国輸出は 25 %減少したが、これは過去 13 年間で最大の下げ幅である、と日本の財務大臣は述べた。

中国の貿易の約 50 %は加工処理に関連している。すなわち、半導体や他の部品を、日本、韓国、あるいはその他の近隣から買い、それらを低コストで、ソニー、パナソニック、あるいはサムスン向けの製品に仕上げるというものだ。
事実上、中国は広大な世界生産ネットワークの最終組み立て工場のようなもので、それが今や、プッスン、プッスンと音を立てて止まりそうになっているのである。

日本はアメリカ経済との密接な関係の余波を受け、すでに本格的な不況に突入しており、不況の影響を緩和とするために日本政府は金利を引き下げ、国内支出を増大させた。
しかし、トヨタの苦境は、1982 年以降世界貿易における初めての落ち込みになると世界銀行が予測する最新の徴候である。

昨年、トヨタの営業利益は 250 億ドル以上あり、これは大部分がハイブリッドカーのプリウスなど低燃費モデルの成功に起因していたといえる。
最近までトヨタは3月期までの会計年度で約 70 億ドルの営業利益を見込んでいた。
しかし昨日、トヨタの渡辺捷昭社長は、同氏が言うところの百年に一度の消費者需要の落ち込みと急速な円高により、同社は 17 億ドルの赤字を出す見込みであると発表した。

「厳しい状況は、予想されたよりもはるかに早く、広く、また深く我々を襲ってきています」と同氏は名古屋市での沈鬱な雰囲気の記者会見の場で述べた。

米国では、トヨタはプリウスの生産拠点として予定していた新しい工場の稼動を延期し、テキサスにある工場での Tundra pickup truck の生産台数を減らした。
またトヨタはヨーロッパ、アフリカ、あるいは中国の工場についても同様の発表をしている。

11 月の数字がクリスマス前の販売を反映するため、この先数ヶ月はさらに大きな下落が予測される。
確かにそうではあるのだが、すでに多くの国々により輸出額の急落が発表されつつある。

例えば、サウジアラビアは、来年には、金属製品、電気製品、および工業設備品などの非石油輸出が 30 %下落すると見込まれている。今年は昨年より 21 %の増加をみていたところである。

インドにおいては、自動車部品の輸出は、今期 20 %の成長が見込まれていたが、自動車部品協会は、過去 20 年余の間で初となる、同品の輸出額の減少が見込まれている。
インドの部品メーカーは、コスト削減に躍起な米国の自動車メーカーからの需要によって支えられてきており、至近の会計年度には輸出額を 36 億ドルにまで増大させていた。
しかし今やデトロイトは急激に生産量を圧縮してきている状況だ。

スイスでは、高級時計産業もまた打撃を受け、11 月の輸出額は 19 %低下した。11 月はクリスマス前のもっとも重要な月であるのだが。
この下落は、数千ドルで売られている高級モデルと、もっともベーシックなプラスチック製のスウォッチ腕時計の両者を襲っていると、同産業の団体は言う。

日本の輸出危機は、一ドル 90 円となる 13 年ぶりの円高、すなわち円価値の驚異的な上昇によって増幅された。
米国が不況に突入した今年、円はドルに対して約 24 %値を上げたが、急騰する通貨は日本製品の価格を著しく上げ、それによって需要が弱まり、トヨタのようなグローバル企業の利益が減少した。
厳しい輸出速報が発表された後の昨日、円は、ドル、ユーロに対して急落した。

まさに急転直下のトヨタの業績悪化には驚くばかりである。

先が読めなかったとはいえ、

2兆円超の収益を上げていた時期にも、

外需に向けてさらなる投資を続けていたことに

今回の急落の原因がありそうだ。

その時期にこそ、国内需要を高める努力が

払われてしかるべきだったのではないか。

これはトヨタに限ったことではないのだが…。

経営状態の悪化で、

即、非正規雇用者を切り捨てるような方策を打ち出すことは

社会不安を増長させ、ますます内需を低迷させる結果につながる。

正規、非正規問わず、犠牲を分散させ、雇用を最優先に守ることが、

これまで莫大な利益を得てきた

巨大企業の責任ではないだろうか(偉そうに)。

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ただの顔、されど顔、やはり顔

2008-12-19 18:01:00 | 健康・病気

ついに移植医療もここまできたか、という印象だ。

このたびアメリカで、顔面の 80 %を他の女性から

ある女性に移植する顔面移植手術が実施された。

顔面の移植手術は、

これまでフランスで2例、中国で1例の計3例に行われているが、

今回の移植手術はそれらに比べはるかに広範なものであるという。

まずはその記事から。

12月17日付 Washington Post 電子版

Cleveland Clinic Team Outlines Details of First U.S. Face Transplant
オハイオ州クリーブランド・クリニックの医療チームが、米国初となる顔面移植手術の詳細を発表

Photo

今日 17 日、外科医らは、死亡した女性の顔面の大部分をレシピエントに移植する難度の高い 22 時間に及んだ米国初の顔面移植手術について説明した。
そのレシピエントの顔面はひどく変形していたため、彼女はこの危険性の高い手術を進んで受け入れたのだ。再び普通に笑ったり、臭いを嗅いだり、食べたり、息をしたりできるようになり、子供たちを怖がらせることなく表に出たいという希望が強かったのである。

この2週間で行われた手術で 30 人のメンバーからなる Cleveland Clinic チームは、下側の瞼、鼻、頬、上あごと、それを支持する骨、筋肉、神経および血管と一緒に、顔面のほぼ中央部のすべて、顔面全体の約 80 %を再建した。

この手術は、上瞼、額、下唇と下あごを除くすべてを移植するもので、物議を醸しているこの手術が北米で行われるのは初めてであり、またこれまでで最も広範囲な顔面移植となる。

「私たちがついにやり遂げたことを皆さんにお伝えできて光栄ですし興奮しています」と、このチームのリーダーである形成外科医の Maria Siemionow 氏は言う。
「この患者の経過は良好です。彼女が両手で顔を触り、鼻があること、あごがあることを感じることができた時、どんなに幸せに思われたかをお伝えしなくてはなりません」

ドナーとレシピエントのプライバシーを守るため、レシピエントの家族からの声明以外には、両者について詳細は公表されなかった。

その声明では次のように述べられている。
「怪我を乗り越えて以来、わたくしどもの姉に再び普通の生活を送るチャンスが訪れるとは一瞬たりとも考えたことはありませんでした。新たな出発ができるような人間としていただいたこと、そこには喜びと苦悩の涙があります」

事故、腫瘍や他の外傷によって障害を受けた数千の患者を救う他の多くの同様の手術の幕開けとなったとして多くの専門家たちはこの手術を賞賛した。

「これはすばらしい進歩です」と、American Society of Reconstructive Transplantation の L. Scott Levin 氏は言い、ノース・カロライナ、マサチューセッツ、テネシーの複数の病院ではすでに同様の手術を計画中であると語った。
「北米のすべての形成外科の団体は大々的にこれに飛び込もうとまさに崖っぷちにいるのです」

この手術に対する初期の自粛ムードは3年前のフランスにおける第1例目以来緩和されてきたと外科医や生命倫理学者は語る。
しかしやっかいな問題はまだ数多く残されており、移植片がどのくらい長く生着するのか、利益が危険を上回るのかなどの疑問が到底明らかになっていないことから、この手術の正当性は疑問視しされ続けてきた。

「移植片を失えば、患者は顔面の大半で傷が開いたままとなります」と、University of Tennessee College of Medicine の人間価値倫理学教授である Carson Strong 氏は言う。
「患者は移植前の状態より悪くなるのは明らかです」

この手術が、単に美容的な目的や、さらには誰かの身元を盗みとる目的で行われるようになるのではないかといった危惧を含めた、様々な懸念を社会にもたらすことを研究者たちは認めている。

「この重要な進歩の誤用を防ぐため、できるかぎりの努力をするつもりです」と、当チームの一員である生命倫理学者 Eric Kodish 氏は言う。

飼い犬に咬まれた女性に対して最初の部分的顔面移植がフランスで行われた 2005 年、このニュースは国際的に非難の嵐を巻き起こした。
それに続き、2006 年、熊に襲われた中国の農民に対し、さらには 2007 年、フランスで遺伝的要因(フォン・レックリングハウゼン病)により顔面が変形した男性に対して顔面移植が行われた。

それらの移植が救命のためではなく患者のQOLを向上させることを目的としていることから論議を呼んでおり、さらに術後生涯にわたって患者が飲み続ける必要がある強力な免疫抑制薬の重大な副作用を含めた諸々の危険を冒す価値が果たしてこの治療にあるか否かについて問題が提起されている。

しかし、最初のレシピエントである Isabelle Dinoire さんは、その回復に困難がついて回ったが、徐々に正常の皮膚感覚と顔面筋の運動を取り戻しており、手術が彼女の人生を変えたと伝えられている。

「有能なチームならこの手術をうまくやり遂げることができると確信できるようになりました」と、University of Pennsylvania の生命倫理学者である Arthur Caplan 氏は言う。
「現在の顕微鏡手術、美容形成手術、免疫抑制管理のレベルを考えると、患者に他に望みがないという条件下でこの手術を行ってみることには意味があるというところまできていると私は思います」

これまで危惧されていたような、移植された組織がドナーに似ることはないということを聞いて安心したという人もいる。

「顔面移植を考える時、フランケンシュタインかなにかのように、我々は誰かの顔が別の人につけられるように思いがちです」と University of Minnesota の生命倫理学者 Jeffrey Kahn 氏は言う。
「しかし実際にはそんなことは起こりません。顔がどのようになるかを実際に決めるのはレシピエントの深部の構造なのです」

しかし、それでも警戒感を拭いきれない人たちがいる。

「心臓移植が必要な患者にとっては、移植を受けないことは死につながります。これは顔面移植を必要とする患者には当てはまりません」と Strong 氏は言う。

Siemionow 氏らは、動物や遺体での訓練を含めた 20 年以上に及ぶ研究に基づいているとして、この手術を擁護する。
最初の患者を選ぶ際、多くの候補者たちから徹底的な精神医学的検査を受けさせるなどして厳密に選別を行った。
最終的に選ばれた女性は、それまで数度におよぶ再建手術を受けていたが、普通に食事をしたり、会話したり、あるいは呼吸したりすることができない状態であった。

手術は、ドナーの家族の同意を得て、この2週間のうち、ある日の、午後 5 時 30 分に始まった。
二人の女性の組織がよく合うことを確認したのち、午後 8 時ころ外科医らは注意深くドナーの顔をはずし始めたが、これには 9 時間以上かかった。

隣の部屋では、2番目のチームがレシピエントの準備をしていた。
採取された顔面組織は翌朝のちょうど午前 5 時を過ぎたころ、彼女の手術室に運ばれてきた。
さらにほぼ3時間、外科医らは血液循環を再構築するために患者の血管と顔面の移植組織の血管を吻合した。
組織がピンク色に変わると、手術は成功である。
多くの専門家たちの外科チームは休んだり、睡眠をとったり、話し合ったりしながら作業を交代し、午後 4 時 30 分に手術が終了した。

「これまで行った中では最も複雑な手術だったと思います」と、同チームのメンバーである Frank Pupay 氏は言う。

ボストンにある Bringham & Women's Hospital で顔面移植を計画している Bohdan Pomahac 氏は言う、「たいへん興奮しています。この領域において画期的なできごとです」

この患者にはこれから先、長く、おそらく危険な道が待ち受けていることを医師らは強調した。
拒絶反応のすべての徴候について注意深い監視が行われていく。
なんら合併症が起こらなければ、2、3ヶ月腫れが続いたあと顔面の皮膚感覚は約6ヶ月以内には戻ってくることが期待される。
集中的理学療法で、運動機能は約1年のうちに回復するはずである。
最終的に、彼女の潰れた右目は義眼に置き換えられることになっている。
もし生着に失敗した場合、自身の身体の別の部位から採取した皮膚の移植が検討されているという。

「もし移植が失敗に終わり、拒絶反応が起こってしまったら、ほとんど想像できない事態となるでしょう。顔面が剥がれ落ちるわけですから。食事もできませんし呼吸もむずかしくなります」と、Caplan 氏は言う。

顔面移植は、我々が自己および他人のアイデンティティをどのように考えるかを再評価する機会を与えてくれたと指摘する人たちもいる。

「他人の顔をもらうことに関係するきわめて根深い心理学的不安を多く持っています」。この問題を取り上げた『Someone Else's Face in the Mirror』という題で近々刊行される著書の共同執筆者である Allegheny College の Carla Bluhm 氏は言う。
「この手術が、自分は一体誰なのかという感覚をどれほど深く壊すことになるであろうか?また、その結末はどうなるのだろうか?私たちにはまださっぱり理解できていません」

臓器提供カードに署名する人たちに、心、腎、その他の臓器に加えて、顔面も移植に使ってもらうように勧めるべきか否かの問題もある。

「自分の臓器提供カードに署名した時、自分の顔もとられるなんて考えてもいなかったです」と、Caplan 氏は言う。
「ほとんどのアメリカ人も同じではないでしょうか。また家族にも同意してもらわなくてはならないでしょう?他の誰かに自分たちの愛する家族の顔を見るという感情的には重大な結果がもたらされるわけですから。たとえ外見は違っているとしても、家族は故人のことを思い起こすことになるでしょう」

しかし Siemionow 氏は、この手術が結果的に多くの人たちを救うことにつながるだろうと語る。

「非常にたくさんの患者さんがいます。彼らは、悪口を言われたり、恥ずかしいという理由から、食料品店や町にでかけるのを恐れ、社会から隠れて生活しているのです」と Siemionow 氏は言う。
「世間に向き合うためには顔が必要なのです」

顔はあくまで身体の中の組織の一部にすぎないが、

やはり特殊な組織であるといえる。

誰でも、顔にできものができたり、発疹が出たりしただけで、

人とは顔を合わせたくないと思うだろう。

顔面に大きな損傷や変形のある人が

自宅にこもりがちになる気持ちも理解できる。

( MrK のように少々見劣りのある容貌でも、

“正常範囲”に入っていればありがたいと思わなくてはなるまい)

しかし、記事中にあるように、

顔面の醜貌は直接命にかかわる状態ではない患者への

移植手術には問題を伴う。

救命目的以外で移植を行うことについての倫理的議論は、

1988 年、フランスの外科医が遺体から初の手の移植を行った際に

持ち上がった。

以来、手の移植は多く行われ、その他にも、発声を取り戻すための

喉頭移植や舌の移植など他の非救命的移植手術も

行われるようになった。

しかし顔面移植をこれらと同レベルで考えるわけにはいかない。

もし移植が失敗に終わった場合、術前よりはるかに悲惨な状況が

待ち構えることになるからだ。

やはり最終的にこの手術の是非は、

顔を表に出すことができず、

普通の人生を送ることのできない患者の苦しみが、

重大なリスクを承知の上であえて治療に挑む気力を生むか否かに

かかっているのではないかと思う。

一方で、顔面を提供する側の脳死者の遺族の気持ちは

いかばかりであろうか。

愛する家族が亡くなった後、声やしぐさは記憶から遠のいても、

故人の笑顔はいつまでも心に残っているに違いない。

顔面の提供という問題、

日本人にはとうてい受け入れ難いのではないかと思うのだ。

この移植手術については

IT media News も参照のこと。

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肥満への運命(さだめ)

2008-12-16 22:27:52 | 健康・病気

NHKの連続テレビ小説 『だんだん』 の二人のヒロイン、

のぞみとめぐみ。

一見そっくりな二人だが、よく見ると顔が違う。

舞妓ののぞみの方がかなり不細工だ…(失礼)。

ま、それはよしとして、二人の体型はそっくりではないか。

二人の半生は、

ゆりかごの中で聞いた「赤いスイートピー」までは一緒らしいが、

その後は全く異なる環境で、

離ればなれに暮らしていたにもかかわらず、である。

な、ばかな、それはドラマ上の話でしょう!

実際の茉奈・佳奈の二人は同じ環境で育ってきたはず。

そう、確かに、そうなのだが、

一般に、同じ遺伝子を持つ二人なら、

それぞれが全く異なる食生活で育ったとしても

体型にそれほど違いが出ないのではないかと推察させる

研究成果がこのほど発表された。

食環境は違っても、結局のところおしなべて実際に食べる量が

あらかじめ脳にプリセットされているのではないかということらしい。

生来、設定の甘い人ならば、残念ながらその人は

肥満に陥ってしまう可能性がきわめて高いといえそうだ。

12月15日付 BBC NEWSより

Obesity 'controlled by the brain'
肥満は脳によって制御される

Photo

科学者によって発見された7つの新しい遺伝子変異は、肥満がかなりの部分で精神的問題に関わっていることを強く示唆する。

この発見は、食欲の調整に脳が主要な役割を果たしており、肥満を安易に代謝障害のせいにはできないということを示唆するものである。

科学雑誌 Nature Genetics に発表された二つの国際的研究はごくわずかな遺伝子変化について数千人の人々から得られた検体を調べたものだ。

7つの重要な変異型の多くが脳内で活性化しているようである。

食欲や食行動への脳の影響は、脂肪を蓄えたり、燃焼消費したりするからだの能力を変化させるいかなる遺伝子の変異より重要である可能性を示す。

すべての7つの変異はアイスランドの会社 deCODE Genetics の主導による研究により発見されたもので、この7つのうち6つは Giant consortium の異名をとる国際チームによるもう一つの独立した研究によっても同定された。

両者とも、研究者らは微小な変異の影響を見極めるために数千人の人たちから得られたDNAのサンプルを精査した。

発見された変異のそれぞれは、肥満に対して与える影響は小さかったが、それらすべてを持つ人は平均より約 1.5kg から 2.0kg 体重が重かった。

身長と体重に基づいて算出される肥満度である body mass index の変動の 70%に相当する部分は環境要因よりむしろ遺伝的背景に依存していると推定された。

deCODE Genetics の研究者 Dari Stefansson 氏は次のように語った。
「肥満に対するより良い対策を開発しようとする時、少なくとも、からだがどのようにエネルギーを使ったり貯蔵したりするかという代謝因子に対するのと同じぐらい食欲の調整にも焦点を当てる必要があることを示しています」

Major step forward
重要な前進

US National Human Genome Research Institute の Alan Guttmacher 博士は、本研究はヒトのからだが体重をどのように調整しているかを理解する重要な前進であると言う。

しかし、British Heart Foundation の Peter Weissberg 教授は警告を発した。
「本研究は、持っている遺伝子のために肥満に至る危険がより大きい人がいるという近年高まりつつある一連の証拠をさらに増大させるものです」

「遺伝的背景のために他の人より食べ過ぎる誘惑に抗しがたい人がいることを示唆するとともに、もがき苦しむ人がいる一方でなぜ一部の人は何の問題もなく体重を低いままで保つことができるのかを説明できることになるでしょう」

「しかし、これらの遺伝子は何世紀も前から存在しており、また肥満の蔓延は比較的新しい現象であることから、この結果が肥満の現在の広がりの説明にはなりえません」

現在、イギリスのほぼ4人に1人が肥満であるとされており、専門家たちは、この割合は今後急速に増え続けるだろうと予測している。

ここに出てくる脳による制御とは、

意志の強弱といったレベルの問題ではなく、

摂食・満腹中枢の設定に関わる無意識下の体重コントロールを

指すのであろう。

いわゆる肥満遺伝子については、以前より話題になっていた。

それらの遺伝子は、本来肥満になるためではなく、

食糧不足の時代でも生き延びてゆくために

脂肪貯蔵のために変異を獲得したとも考えられる。

つい 100 年足らず前までの、食物が不足がちで、

移動には自分の足を使っていた時代には

必要な遺伝子であったと思われる。

そして、ここ数十年で人は急速に飽食の時代に突入し、

自動車などの移動手段が発達したことで運動量が激減した。

そんな急激な変化では肥満遺伝子に抑制がかかることはなく、

結果として肥満が激増することとなったのだろう。

肥満傾向の遺伝子を持つ人は

並大抵の心がけでは肥満を免れることはできないのかも知れない。

医療費削減の目的で減量の覚悟を決めさせるため、

遺伝子の検査結果を健診で告知される日も近いかも。

あるいは、いつまでもスリムなパートナーを欲する独身者には、

金に飽かしてでも手に入れたい貴重な婚前情報となるに違いない

(くわばら、くわばら…)。

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2009年1月新ドラマ

2008-12-13 13:01:22 | テレビ番組

2008 年も残すところあとわずか。

2008 年 10 月ドラマもいよいよ終了である。

今クールは期待はずれの作品が多かった。

てか、最初からあまり期待はしていなかったが。

そんな中、『風のガーデン』は現地視察の効果もあって、

個人的にはなかなか良かった。

さて、いよいよ 2009 年、

1月新ドラマの点検時期がやってきた。

さっそく紹介しよう。

『ヴォイス~命なき者の声~』(フジ月9)

瑛太、生田斗真、石原さとみ、矢田亜希子

『篤姫』でも好演した、今、最も旬な俳優、瑛太が

月9の主役に抜擢。

法医学ゼミに所属する医学生たちの青春ストーリー、ん?

瑛太、生田、石原らが“失われた命のメッセージ”を伝える

法医学生役とか。

医学生たちが難事件でも解決してゆくというのだろうか?

産休明けの矢田亜希子が法医学の先生役で

3年ぶりテレビ復帰とか。

お母さんになったら、もう学生役は無理ですかね。

『メイちゃんの執事』(フジ火9)

水嶋ヒロ、榮倉奈々、佐藤健、山田優、忽那汐里、向井理、

谷村美月、岩佐真悠子、星井七瀬、大政絢、小嶋陽菜、姜暢雄、

津川雅彦

イケメン執事に囲まれたスーパーお嬢様学校を

舞台にしたラヴ・コメディー。

宮城理子作同題コミックのドラマ化である。

この不景気な世の中でも、イケメン、な場合ですかね?

『神の雫』(日テレ火10)

亀梨和也 他

亜樹直(あぎただし)原作、週刊「モーニング」連載中の

本格ワイン漫画をドラマ化。

この亜樹直は作者姉弟二人のペンネームである。

同漫画は韓国でも人気で、ヨン様が主役でのドラマ化が

予定されているとか。

『十二使徒』と呼ばれる12種のワインの謎をめぐり、

ワイン対決が繰り広げられる。

ワインに関する情報がちりばめられ、ワイン好きにはたまらないドラマ。

『トライアングル』(関テレ火10・1/6 ~)

江口洋介、稲垣吾郎、広末涼子、相武紗季、堺雅人、谷原章介、

佐々木蔵之介、小日向文世、大杉漣、風吹ジュン、北大路欣也

新津きよみ著サスペンス・ミステリー小説『トライアングル』のドラマ化。

出演者は錚々たる面々である。

江口は医者の設定で毎度のことかと思いきや、

小学生の時初恋の相手が目前で殺害されたというトラウマから

医者をやめて国際警察のメンバーとなる。

パリの街でその殺されたはずの初恋の人にそっくりの女性に出会う。

すでに時効となっている事件を追い続けてゆくのだが…

『相棒7』(テレ朝水9・放映中)

水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽、益戸育江、岸部一徳、川原和久、

大谷亮介、山中崇史、六角精児、山西惇、片桐竜次、小野了、

神保悟志、志水正義、久保田龍吉

第2回までは、何とか見たのだが、後が続かなかった。

寺脇はなかなかいい味出しているのだが、ドラマは現実味に欠ける。

寺脇演ずる亀山は、この先死んでしまいそうな予感だが、

果たしてどういう展開になるのか?

『キイナ~不可能犯罪捜査官~』(日テレ水10)

菅野美穂、平岡祐太、塚地武雅、小池栄子、草刈正雄、沢村一樹

『キイナ』は『奇異な』ではなく、主人公の名前。

常識では解決できそうにない不可能犯罪を、菅野演ずる春瀬キイナが

天才的ひらめきで解明に挑む。

ガリレオの女性捜査官版か?

科捜研技官、工藤真一郎をドランクドラゴン塚地武雅が演ずるのだが、

なんとこの工藤が主人公キイナの元カレという笑える設定!

コメディーな香りも漂ってくるのだが…

『渡る世間は鬼ばかり (9) 』(TBS木9・放映中)

次々に問題が起こるが、

どれも短時間で解決し視聴者の緊張は続かず。

最終的には、無尽蔵にある『おかくら』の財力にものをいわせるので

安心して見ていられる。

三女、文子の亭主の浮気発覚と

野々下加津の東大合格が今のところ一番の

見所だろうか(東大ってそんなに簡単に入れる所かいっ!)。

『特命係長 只野仁』(テレ朝木9)

高橋克典、櫻井淳子、永井大、蛯原友里、田山涼成、三浦理恵子、

梅宮辰夫

2003年からテレビ朝日系列の

金曜ナイトドラマ(23:15~0:10)枠から今回 21 時枠にシフト。

AV女優も出演していたこれまでの“アダルト路線”は変更か?

『ありふれた奇跡』(フジ木10)

仲間由紀恵、加瀬亮、陣内孝則、井川比佐志、戸田恵子、松重豊、

風間杜夫、岸部一徳、八千草薫

『風のガーデン』に続く、フジテレビ開局 50 周年記念ドラマ第2弾。

脚本は倉本聰から本作では山田太一に引き継ぐ。

人間の心の傷を描いたシリアス・ドラマ。

ただ陣内の名前を見ると不安がよぎってしまう。

『1リットルの涙』でも浮いてたし…(陣内にシリアス物は無理)。

主役は、仲間と、映画 『犬と私の 10 の約束』で好演の加瀬亮。

『必殺仕事人 2009』(朝日金9)

東山紀之、松岡昌宏、大倉忠義、水川あさみ、和久井映見、

中越典子、野際陽子、白木万里、菅井きん、藤田まこと

1972 年、『必殺仕掛人』でスタートした

“必殺シリーズ”の 2009 年版。

『必殺仕事人』の開始が 1979 年ということで、

今回は 30 周年記念バージョン。

『ラブ・シャッフル』(TBS金10)

玉木宏、香里奈、松田翔太、貫地谷しほり、吉高由里子、DAIGO、

小島聖、谷原章介

「高校教師」「人間・失格」など衝撃的ドラマを手がけてきた、

脚本・野島伸司、プロデュース・伊藤一尋の久々のコンビ。

タイトルのラブ・シャッフルは「恋人交換」の意。

高級マンションの同じフロアに住む2組のカップルが

それぞれのパートナーを交換、その結末は…

ストーリーもさることながら、

主題歌はアース・ウィンド&ファイアの「 FANTASY 」とか。

なにやらレトロなテイストが感じられるのだ。

『銭ゲバ』(日テレ土9)

松山ケンイチ 他

1970 年「週刊少年サンデー」で連載開始となった、

ジョージ秋山氏の衝撃的同名コミックのドラマ化。

極貧から拝金主義で悪の限りを尽くしながら成り上がっていく

主人公蒲郡風太郎の生き様が描かれる。

少年雑誌での反社会的漫画の連載に、

当時様々な論争を巻き起こし、流行語にもなった。

怪優、唐十郎・緑魔子らの出演で映画化もされた。

現代版にアレンジとのことだが、

「世界的不況」「ITバブル崩壊」「ワーキング・プア」のこの時代に

あえてこの題材とは、ちょっと違和感を感じる。

大河ドラマ『天地人』(NHK日8)

妻夫木聡、北村一輝、常盤貴子、長澤まさみ、高嶋政伸、

田中美佐子、小泉孝太郎、東幹久、玉山鉄二、相武紗季、比嘉愛未、

高島礼子、阿部寛、吉川晃司、笹野高史、小栗旬、深田恭子、

城田優、上地雄輔

戦国時代、越後上杉家の家臣、直江兼続の生涯を描く。

原作は火坂雅志による同名小説。

出演者の顔ぶれを見るに、みんな若い!

人気俳優の寄せ集め、という感じ。

てか、自分が年をとっただけなのか…

『本日も晴れ 異状なし』(TBS日9)

坂口憲二、松下奈緒、青木崇高、岡本麗、半海一晃、大森暁美、

近藤芳正、宇梶剛士青山倫子、夏未エレナ、前田美波

那瑠美島という架空の沖縄の離島に新しく赴任した駐在と、

島の住人たちとのふれあいを描くヒューマン・ドラマ。

警視庁で暴力団相手にバリバリの活躍を見せていた警官が、

沖縄県警との人事交流で南海の孤島に、

島ではじめての駐在として着任する。

最初は警察を必要と思わない島民たちに拒絶されるが、

心のふれあいを通じて連帯感が生まれてくる、

という見え見えのストーリー。

日曜劇場は連続で裏切られており、期待度小。

このほかには

TBS土8、『RESCUE~特別高度救助隊~』

レスキュー隊の物語でしょうか?

中丸雄一、増田貴久ほか

フジ土11、『赤い糸』

原作はケータイ小説、南沢奈央、溝端淳平ほか

以上、全体に視聴率優先の策略が目立つ作品が多く、

今ひとつ期待が持てないが、

一週間が待ち遠しくなる番組が

せめて一つくらいはあってほしいものである。

コメント (2)
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