MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

『北』を知るには紅茶占い?

2009-05-29 19:49:02 | 国際・政治

5月25日、
北朝鮮が2回目となる核実験を行ったが、
その背景には、健康問題を抱える
金正日総書記の後継問題が絡んでいるとの
見方がある。
4月5日にテポドン2号が発射された直後の
9日に行われた最高人民会議において
増員された国防委員の一人に、
金正日総書記の妹の夫、張正沢氏が選出された。
さらに、総書記の三男、金正運氏も
国防委員会の指導員に任命されたという。
軍部を抑えるための金一族の重職への配置が
粛々と進められている模様だ。
昨年、脳卒中を患ったとみられる金正日だが、
4月の劇ヤセ映像を見て、まだまだ長生きしそうな
印象を受けたが、実際には、
かなり健康に不安を抱えていると見るべきか。
実の息子とはいえ
できが悪かったり、若すぎたりで、
今のままでは、後継を託しても
軍部を掌握することは難しいと考えているのであろう。
金正日自身は長男の正男氏より三男の正運氏を
推しているやに伝えられるが、真実は不明のままである。
いずれにしても、偉大なる将軍様は
国際世論や世界平和よりも、
一族による体制維持が最重要課題であると
お考えなのであろう。

5月25日付 New York Times 電子版

Test delivers a Message for Domestic Audience 核実験は国内向けのメッセージ

Nukemap_2

 二回目の核実験を行ったと北朝鮮が突然月曜日に声明を出したとき、これはワシントンからさらなる譲歩を引き出すための北朝鮮による新たな挑戦的な策略だというのがこの領域における最初の見方であった。
 それは過去に何度も繰り返されたパターンであり、今回も同様に一つの動機ではあるようだと、北朝鮮ウォッチャーは言う。しかし今回については、北朝鮮の後継者問題が第一の要因であると多くの専門家たちは信じており、今回の核実験を聞かされる人たちが、米国民だけでなく、その国の全国民であることを指摘する
 月曜日の核実験はより独断的な外交政策への転換の最たるものであり、そういった政策は北朝鮮指導者の金正日が脳卒中を患ったとみられる8月からほどなく始まったようだとみる識者もいる。後継者についての憶測は、一番下の息子、金正雲に注目が向けられているが、3代目への一族の世襲制を続けようとしているものであり、共産主義国家では類のないものだ。
 今回の核実験が北朝鮮の強力な軍隊との結束を示すことを目的とした権力の誇示であると指摘する専門家たちがいる。一方、軍隊の支持は金氏による後継者の選択を磐石なものとするのに不可欠である。必要最小限の食料や電気すら供給できなくなっている政府において技術的躍進の誇示が年老いた金氏の遺産としての役割を果たすことを目論み、この声明を北朝鮮の大部分の貧困層に向けたものとみなすものもいる。
 いずれにしても、北朝鮮政府がおそらく今回の核実験で権力の円滑な移行が確かなものになることを望んでいるのであろう。そして、おそらく、少なくとも当分は年配の金氏がいまだ権力の座にあることを示している。
 「金正日は、国家に強大な核兵器をもたらしたことを示したいと考えています」と、ソウルを本拠地とする研究機関、Institute of Foreign Affairs and National Security で上級研究員を務める Yoon Deok-min 氏は言う。「この実験は間違いなく国内向けのデモンストレーションです」
 識者たちはこの核実験を、支配者一族が移行に向けての準備をしている兆しと呼んだ。先月、金正日の義弟、張成沢が、北朝鮮政府における最も権力のある集団、国防委員会に加わったと、ソウル高麗大学の国際関係学教授 Kim Sung-han 氏は語った。彼によれば、張氏の昇任は金正日の健康悪化の場合に軍からの支持を確実にするための動きかもしれないという。
 4月、韓国ニュース・メディアは、20代半ばの金正雲が委員会の下級職に任命されたことを報じた。Kim Sung-han 氏によれば、若い金氏が、年長を重んじる社会において権力者に就任できる年齢に達するまで張氏が後見人の役目も果たすことになるのではないかと言う。
 「今回の実験は軍との良い関係を築こうとする金正日の願望のメッセージです。軍が継承問題の鍵となっているのです」と彼は言う。
 確かに、北朝鮮識者が認めているように、このきわめて秘密主義の政府の動機を理解しようとすることはまさに紅茶占いの訓練である。そして北朝鮮がいまだにワシントンから可能なかぎり多くの援助や食糧を引き出すために核による瀬戸際政策をしたがっているということで多くの北朝鮮ウォッチャーの意見は一致している。そういったやり方はこれまでに実証済みである。
 北朝鮮はこれを1998年に試みた。この時、北朝鮮は日本の上空へ多段階ロケットを発射し、その数ヶ月後長距離ミサイルの発射実験を中止する申し出で追い打ちをかけた。それらの譲歩はワシントンとの関係に緩和をもたらす結果となり、2年後に Madeleine Albright 国務長官による画期的な訪問へとつながっていった。
 問題は、これらの関係改善がしばしば長続きしなかったことである。ちょうど一年前、北朝鮮はその兵器計画を断念することに同意した後、主要な核兵器プラントで冷却塔を爆破した。しかし、北朝鮮は4月にその約束を破り、長距離ロケット打ち上げ実験に対する国連の制裁措置への怒りから、その計画を再開した。
 月曜日の実験における北朝鮮の主たる目的が、イスラエルやパキスタンにならって独自の核抑止力を築くために、その核技術を進展させることであったにすぎないという人たちもいる。早期の地震記録が示したところでは、北朝鮮北東部の地下爆発は3年前の最初の核実験よりはるかに強力であったと韓国のニュース・レポートは述べている。
 核爆弾や他の兵器の開発が現体制の存続を確かにする最善の方策であると北朝鮮が見ているというのが、多くの専門家による共通の見方だ。ちょうど米国がインドに対する反対を取り下げ、結局関係を修復したように、今回の実験によって北朝鮮を核武装国家として米国に認めさせるのを北朝鮮が望んでいるとも彼らは言う。
 「ピストルを突き付けて誰かにプロポーズしているようなものです」と東京、慶応大学の政治学者、小此木正夫氏は言う。「北朝鮮の目的とその手段の間には大きなギャップがあります。しかこれは北朝鮮が操作法を知っている唯一のやり方なのです」
 北朝鮮は、ワシントンの注意を引くことを主たる目的として月曜日の実験をおこなったと、小此木氏はみている。継承の危機とイランへの関心の集中を考えるとき、北朝鮮が新しいオバマ政権にとって低い優先度であり、そういった米国の見方が北朝鮮を軽視しようとする政策を反映しているという感覚が同国指導者たちの間に広がっていると彼は指摘する。
 「彼らは核武装国家として認められたいと思っているのです」と、高麗大学の Kim 氏は言う。「もしワシントンがそれを認めたとしたら、北朝鮮はアフガニスタン支援の軍隊を進んで送ることさえするだろうと確信しています」と、いくらか誇張を交えて付け加えた。

金正日は、切れ者といわれる張成沢に
一族の命運を託すつもりなのか?
金正日の68才は、まだまだ老けこむ歳では
ないと思われるのだが、
今回の核実験は、
彼が明日をも知れぬ重病を抱えている可能性を
感じさせるやけくそとも思える暴挙であり、
独断的な行為である。
しかし、そうは言うものの、
我が日本も、
クラスのいじめっ子に対して、臆病な生徒が見せがちな
一対一では何も言えないくせに、
学級会になると先頭に立って糾弾するといった
いかにも性格の悪そうなやつにみられる行動を慎み、
各国と協調して非難の足並みを揃えるべきだと
思ってしまうのだ。

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待ち遠しい汎用インフルエンザ・ワクチン

2009-05-22 21:59:44 | 健康・病気

新型インフルエンザの流行は、発生したメキシコでは

収束に向かっているとのことだ。

しかし、日本においてはいまだ予断を許さない状況だ。

一方、新型インフルエンザ・ウイルスは増殖が遅く、

ワクチン製造に遅れが出る見込みだそうである。

さて、季節性インフルエンザ・ウイルスに対するワクチンは

ウイルスが変異するごとに効果を失うことから、

流行が予測された株に対するワクチンを

毎年接種しなければならなかった。

もしインフルエンザ・ウイルス(たとえばA型)に

共通、かつ変異の影響を受けない部分があって、

そこをターゲットに抗体産生を促すワクチンが製造されれば、

それを一回接種するだけで

今回のような新型のA型インフルエンザに対しても

十分予防効果を期待できることになる。

そのようなワクチンを汎用インフルエンザ・ワクチンと呼ぶ。

汎用インフルエンザ・ワクチンの開発はかなり以前より

行われてきたがいまだに実用化されていない。

そこには一体どのような問題があるのだろうか?

そんな話題である。

519日付 New York Times より

A long Search for a Universal Flu Vaccine

汎用インフルエンザワクチンに向けての長年の探求

Universalfluvaccine

科学者たちは汎用インフルエンザ・ワクチンの探究に取り組んでいるが、新たな豚インフルエンザ株との戦いには間に合わないようである。写真は豚インフルエンザ・ワクチンの製造を進めているスコットランドの会社 Virology のラボ。

 小児期に行われる2回の麻疹ワクチンの接種は生涯その人を守ってくれる。ポリオワクチンの4度の接種も同じである。しかし、インフルエンザワクチンは毎年行わなくてはならない。だからといって、その効果は完全な予防にはならない。

 他のほとんどのウイルスに比べてインフルエンザウイルスがはるかに急速な変異を起こすことがその理由である。あるウイルス株に対して免疫を獲得した人は異なる株に対しては十分に防御されないのだ。

 今秋予測される豚インフルエンザの株によるパンデミックに全世界が備える今、これは主要な問題となりつつある。その株にマッチしたワクチンが製造される前に一体何人の人たちが死亡するかを予測するのは不可能である。

 しかし、科学者やワクチン製造者はすべてのタイプのインフルエンザに対して有効な、いわゆる汎用インフルエンザワクチンに懸命に取り組んでいる。その目標は、一生涯ではないにしても、何年間かは、すべての季節インフルエンザ株やパンデミック株に対して予防効果を維持させることであり、インフルエンザの予防接種を麻疹やポリオのそれに近づけるものとなる

 「汎用ワクチンはインフルエンザワクチン接種やり方を完全に変えることになるでしょう」と、Oxford 大学のワクチン専門家 Sarah C Gilbert 氏は言う。「汎用ワクチンを手に入れるのは早ければ早いほど良いのです。なぜなら、次のパンデミックが起こることを心配する必要がなくなるからです」

 一回こっきりですべてにOKなワクチンができれば、来冬の季節性インフルエンザワクチンにどの株を含めるべきか科学者たちが決定する毎年初めに行われる推測ゲームも終わらせることができるだろう。現状では、もし誤った推測をすれば、ワクチンの有効性は低くなる。

 そして、現在、こうした毎年の取組みを行う余裕がない国々にとって、インフルエンザに対する免疫付加実用的なもの

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豚インフル vs 鳥インフル

2009-05-19 18:20:06 | 健康・病気

今にして思うのだが、
あれだけの水際対策は本当に必要だったのか?
水際で引っかかったのは数人。
その後、国内二次感染例が続出。

いえいえ、水際対策で蔓延を遅らせることができ、
その間に体制を整えることができた意義は大きいって?
それって、本当?
関西では発熱外来がパンク状態になっており、
水際対策より、もっと早く、国内感染対策を
講じておくべきだったのでは?
…時すでに遅し。

昨日の厚労相(そういえば週末このお方
さっぱり見かけなかったな)の会見では、一転して
季節性インフルエンザと変わらない対応に変更とか。
関西での国内感染例の急増を見て
時々刻々の情報提供、迅速な対策変更が求められる。

豚インフルエンザと鳥インフルエンザについて
今一度復習してみることにしましょう。

5月16日付 ABC NEWS より

Swine Flu vs. Bird Flu: Which Is the Greater Pandemic Threat?
豚インフルエンザ対鳥インフルエンザ:パンデミックの脅威はどちらが大きい?
New Research Hints at Why Swine Flu Overshadows Bird Flu in Pandemic Potential.
パンデミックの可能性において豚インフルエンザが鳥インフルエンザに先んじた理由を新たな研究が示唆

Swinefluvsavianflu

 世界中の保健当局が先月発生した豚インフルエンザの監視を続ける中、過去10年にわたって発生した周期的な鳥インフルエンザとの比較が必要だ。
 特に、次のような質問をする人たちがいる:鳥インフルエンザが本格的なパンデミックを起こしていない今、我々は豚インフルエンザのことを真剣に懸念すべきなのだろうか?
 感染症の専門家たちは、両ウイルス間でパンデミックの可能性に数多くの重要な差異があることを指摘しており、金曜日に Journal PLoS Pathogensに発表された新しい研究ではこれらの違いの一つについて言及している。この研究では、英国と米国の研究者たちは、鳥インフルエンザは華氏89.6度(摂氏32度:人の鼻腔の温度)で死滅するため、ヒト‐ヒト感染が起こりにくいということを明らかにした。
 言い換えると、単にヒトの鼻は環境的に気温が低すぎて、鳥インフルエンザの蔓延を助長できないということになるかもしれない。これが全く真実かどうかはいまだわかっていないが、鳥インフルエンザがヒトにとってパンデミックの脅威となるには、このウイルスにかなりの変異が生じなければならないだろうと研究者たちは述べている。
「鳥インフルエンザは常に存在しているが、一定の変化を起こして初めてパンデミックを起こしうるのです」と、この研究論文の著者の一人、ロンドン Imperial College の Wendy Barclay 氏は言う。「我々の研究は、ウイルスが変異してヒトに感染するためにどのような種類の変化が必要とされるのかについての重要な手がかかりを与え、そのことはどのウイルスがパンデミックにつながる可能性があるかを解明する手がかりとなります。
 この研究はまた、一般的なウイルスの変異のメカニズムを科学者に提供してくれることになり、それによってどのウイルスがヒトで広がりやすいかを予見することができる。
 テネシー州ナッシュビルにある Vanderbilt University School of Medicine の予防医学の教授 William Schaffner 博士は、この研究を、「なぜ鳥インフルエンザがヒトで簡単に感染を起こさないのかについてこれまでにない説明を加えたきわめてすぐれた論文」と評価した。
―ヒト‐ヒト感染において鳥インフルエンザを出し抜いた豚インフルエンザ
 「これまで、鳥インフルエンザウイルスは上気道の細胞には付着せず、より下部に付着する可能性が示されてきていました」と、Schaffner 氏は言う。「この最新の研究によって別の可能性が説明されました」
 University of Texas School of Health Information Sciences and School of Public Health の公衆衛生情報科学の准教授 Ed Hsu 氏も同意見である。「この研究はなぜ鳥インフルエンザが実際にヒトからヒトへの感染を起こさないのかについての有力な説明を提供しています。こういった要因はパンデミック・レベルを上げるのに重要な指標となっています」
 しかし、ニューヨーク、ブルックリンにある SUNY Downstate Medical Center で Graduate Program in Public Health の部長 Pascal Imperato 博士は、これがイン・ビトロ研究、すなわちシャーレ内で起こった事実であるということから、ヒトで実際に起こることをそれらが正確に反映しているかどうかを確認するさらなる研究が必要であると警告している。
 「その知見は信用性を得るために確証が求められます」と Imperato 氏は言う。「その一方で、病原体の感染性を決定する要因はほかにもたくさんあります。今回の知見は興味深いものですが、インフルエンザウイルスの病原性についての私たちの現在の理解を実際に覆すものではありません」
―鳥インフルエンザ対豚インフルエンザ:パンデミックの可能性に差はあるのか?
 どのインフルエンザウイルスにとってもヒトの鼻は重要な感染部位であるため、鳥インフルエンザの恐怖の真っただ中にあっても、同ウイルスにヒト‐ヒト感染の証拠がほとんどない理由の説明にこの新しい研究が役立つかもしれない。
 世界保健機関(WHO)のウェブサイトによれば、2003年に鳥インフルエンザが再び姿を現わしてから、世界中での報告例はわずかに423例、年平均約60例である。
 ほとんどの鳥インフルエンザの症例は生きている家禽と濃厚な接触を持った後に発症している。ヒト‐ヒト感染によって発生したことが疑われる症例は現在のところほとんどない。また、ほとんどの例で、家禽群の組織立った破棄によって感染拡大の封じ込めに成功している。
 鳥インフルエンザはそもそも、鳥の内臓にみられる華氏104度(摂氏40度)の心地よい状況に適しているように思われる。また、とりわけヒトインフルエンザもまたそのような状況下で安定しているが、鳥インフルエンザウイルスと異なり、より低い気温が不利な影響を及ぼさない。
―依然豚インフルエンザの脅威について警告を続ける保健当局
 低い温度によって影響を受けないウイルスが問題となる可能性が高いと、研究者たちは言う。たとえば、豚インフルエンザは広い範囲の温度で増殖できる可能性があり、今回の迅速な蔓延はそのことで説明できるのかもしれない。これまでのところ米国、カナダ、マレーシア、英国をはじめとする26ヶ国で4,694例の発生がある。このインフルエンザ株の毒性は弱いが、より強毒性となる変異が大きな被害につながる可能性がある。
 例として、鳥インフルエンザの毒性を取り上げよう。Hsu 氏によれば、鳥インフルエンザのヒトの症例は比較的少数であるにもかかわらず、このウイルスによって2003年以降258人が死亡しており、致死率は60%以上であるという。
 「ひとたび、鳥インフルエンザウイルスが、低温という『障害』の大元の経路を通過してしまうと、急速に複製が始まり、しばしば宿主を圧倒することで高い致死性をもたらすことになるのです」と Hsu 氏は言う。
 そして、もしウイルスが何らかの形でこの障害を乗り越えることができるようになったとしたら、一層由々しき事態となり得る。
 「さらに多くの人たちが鳥インフルエンザの株にさらされるにつれ、より効率的な鳥‐ヒト感染につながる変異が生ずる危険性が高まります」と、Chapel Hill にある University of North Carolina の研究者で疫学者である Ella Nkhoma 氏は言う。「しかし、そのような変異ウイルスがヒト‐ヒト感染を効率的に維持する十分な適合性を維持できるかどうかは不明です。これまでのところ、ヒト‐ヒト感染はきわめてまれなのです」
 事実、鳥インフルエンザよりも目下の流行の方を懸念すべきであるという意見で、感染症の専門家たちの見方は一致している。
 「今、専門家たちの多くは、現在のH5N2 鳥インフルエンザウイルスはヒト感染性株への変異がみられていないことから、4-5年間はパンデミックは起こりそうにないと考えています」と、Schaffner 氏は言う。「今は、H1N1 豚インフルエンザウイルスの方がパンデミックを来たす可能性がはるかに高いのです」
 こういった脅威の認識がこれまで国際的な保健当局に浸透してないわけではない。金曜日、WHOは、豚インフルエンザの弱まりつつあり一見軽微に見える感染拡大の状況を見て、もう大丈夫なのではないかという誤った感覚を抱くことに対して警告を発し、この新型のウイルスについて最悪の時は終わっていない可能性があると通告した。
 加えて WHO のMargaret Chan 事務局長は、東南アジアで格段の脅威を与えつつある株について依然『重大な不確定要素』があると述べた。

鳥インフルエンザのパンデミックがいつか
我々に襲いかかってくることは間違いなさそうだが、
今回は鳥インフルエンザ級の病原性の強いウイルスを
想定した防疫対策に固執しすぎてしまったきらいがある。
国はリーダーシップを欠き、自治体は混乱。
一方、現場では抗インフルエンザ薬の使用法に
一応の方針は示されているものの
厳密な基準がなく、混乱を招きそうである。
第2段階から第3段階への移行が考えられる中、
どういったケースに抗インフルエンザ薬を用いるべきか?
発症の多い十代感染者に対するタミフルの投与は?
医療従事者の予防投与の基準は?
早急に具体的で厳密な
指針が明示されるべきだろう。
今、適切な対応がとれないようであれば、
今後、豚インフルエンザの病原性が上がったり
いよいよ鳥インフルエンザのパンデミックが
勃発したりした時には、日本中、
とんでもないパニックに陥ってしまうことだろう。

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教皇の目論見

2009-05-13 22:49:20 | 国際・政治

前回のエントリーで、
ヴァチカンのコンクラーベを舞台にした
小説&映画『天使と悪魔』を取り上げたばかりだが、
現実社会の教皇も色々とお悩みのご様子だ。

国際紛争において
偉大なる宗教指導者の果たす役割とは一体何か?
どのようなスタンスをとるべきだろうか?
あくまで中立な立場を貫くべきか?それとも
あるいはどちらか一方に正義があると明言するべきか?
ホロコーストをはじめとする反ユダヤ主義に対する
ヴァチカンの姿勢は微妙な状況にあり続けている。
今回、就任後初めて中東を訪問したドイツ人教皇、
ベネディクト16世においては、
反ユダヤ主義との間に確実に一線が引かれているとは
言い難い言動が指摘されている。
果たして今回の中東訪問の意義は?
そんな話題である。

5月11日付 Washington Post 電子版

Pope, in Israel, confronts dark history of Germany
教皇、イスラエルの地でドイツの暗い歴史に対峙

Benedictxii

 ローマ教皇ベネディクト16世は、5月11日月曜日、イスラエル訪問の初日に、彼の祖国ドイツの暗い歴史に対峙することとなった。そこで彼は、6人のホロコーストの生存者と握手し、「大虐殺の犠牲者の方々の命は失われたが、決してその名を失うことはないだろう」と述べた。
 最近ホロコーストを否定した司教(聖ピオ十世会)の破門を解く決定を彼が行って以来、ユダヤ人とのぎくしゃくした関係を緩和しようとするベネディクトの企ては部分的な成功を収めたに過ぎなかったようだ。イスラエルにあるホロコースト記念館で二人の高官は、当地での演説で謝罪しなかったことや、『殺人』や『ナチス』の言葉を使わなかったとして教皇を非難した。
 また、戦時中の教皇、ピウス12世がホロコーストでユダヤ人を救うべく十分な努力を行ったかどうかについてのヴァチカンとイスラエルの間にある積年の見解の相違の解決に明確に進展をもたらすことはなかった。
 しかし、エルサレムにある Yad Vashem ホロコースト記念館で花輪を捧げ、『永遠の炎』に点火した月曜日に教皇が見せた感情的な一面はこれまで殆ど目にすることがなかった。
 声や手を震わせながら、この82才の教皇はなくなった人たちについて流暢に語った。
 「私は、彼らの両親が子供の誕生を心待ちにしていた時の喜びに満ちた期待をただ想像することしかできません。この子に何という名前をつけようか?彼、彼女にはどんな未来があるのか?あのような悲しい運命が待ち受けていることを誰が想像できたでしょうか?」
 「静かにここに立っている時、彼らの叫びが今でも私たちの心に響きます」
 2度目となるローマ教皇のイスラエルへの公式訪問はおそらく9年前の初回のような高揚なドラマの再現とはならないだろう。当時はベネディクトの前任者ヨハネ・パウロ2世が、ユダヤ教の最も聖なる場所 Western Wall(嘆きの壁)で、キリスト教徒のユダヤ人差別を謝罪し手書きのメモを残した。
 それでも今回、ベネディクトは、赤絨毯、聖歌隊、旗や赤いカーネーションを振る子供たち、イスラエルのノーベル平和賞受賞者 Shimon Peres 大統領による Benedict の名を冠した新しい小麦の株の贈呈など満載の格別な暖かい歓迎を受けた。
 「あなたには平和の推進者、偉大な精神的指導者の姿を見ます」と Peres 氏は言い、ナノテクノロジーを用い、小さなシリコン粒子に記録した30万語のヘブライ語で書かれたユダヤ教聖典のテクストをベネディクトに寄贈した。
 「ヴァチカンにはこういったものは一つもお持ちでないでしょう」と Peres 氏は冗談めかして言った。
 ユダヤ人との緊張を緩和することがベネディクトの最優先の目論見であることは明らかだった。しかし、空港に到着した時、イスラエルのそばにパレスチナ人の独立した国家を提唱する注目すべきコメントは新しい強硬派のイスラエル政府とは相容れない立場に彼を置く可能性があった。
 イスラエル人もパレスチナ人もともに、『確定的で国際的に認められた国境に囲まれた自分自身の祖国で平和に暮らすべきである』とベネディクトは述べた。
 イスラエルの Benjamin Netanyahu 首相はベネディクトがこのように語った時すぐそばに立っており、イスラエル当局は後で、この教皇の訪問の目的は政治的なものではないとし、対立の火種をもみ消そうとした。イスラエル外務省の Yigal Palmor 報道官は、米国やヨーロッパ諸国によって共有される何年も前から続いている立場を教皇が表明したのだと述べた。
 しかし、教皇の到着後間もなく、地域の争いがその邪魔をすることになった。パレスチナの聖職者 Taysir Tamimi は、ある異教徒間の集会でマイクロフォンを奪い取り、イスラエルによる最近のガザでの戦争や西岸地域の占領を糾弾する予定外の演説を行った。
 そういったことがなければきわめて台本通りの一日で終わるはずだったところに、このできごとはドラマをもたらすこととなった。ヨルダン西岸地域とガザ地区のイスラム最高位にある Tamimi 師は、彼を説得して演壇から降ろそうとしたキリスト教の聖職者を無視した。群衆の中には拍手喝采したものもいたが、明らかな不快感を示すものもいた。教皇は明確な反応を示さなかった。
 これに対しヴァチカンは『この割り込みは会話があるべき姿の直接的な否定となった』との声明を行い非難した。
 ベネディクトは教皇となる前、ユダヤ人とのよい関係を推進する人物であると好評を博していたが、彼の経歴や教皇就任以来のユダヤ人の感性に対するこれまでに感じられる彼の無神経さはイスラエルに不安を抱かせている。
 この教皇はホロコーストを否定するイギリスの司教の破門を解いたことで、今年初め、ユダヤ人の怒りを買ったが、ベネディクトは、この司教の過去を知らなかったと後日説明していた。イスラエルの最近のガザへの軍事攻勢のさなかに、その地域はさながら、『広大な強制収容所のようだ』とヴァチカンの上級職員が話したことで、関係はさらに悪化した。
 しかし、カトリック教徒とユダヤ教徒との間の論争の最大のポイントは、やはり、第二次世界大戦におけるピウス12世の果たした役割である。ベネディクトは彼を『偉大な聖職る者』と呼び、ユダヤ人が戦時中の彼の行いを憂慮しているにもかかわらず、彼を聖人にまつりあげようとする取り組みを支持している。
 Yad Vashem では、ベネディクトは記念館の主要な箇所を訪れなかったが、実はそこの写真の説明文には、ピウスはナチスによるユダヤ人虐殺に抗議することなく、概して“中立な立場”を保ち続けたと書かれている。
 Yad Vashem の評議委員会の委員長であり、イスラエルの前チーフ・ラビであったMeir Lau は記念碑でのベネディクトの演説は重要とみなしたが、物足りない点もあるとも述べた。
 「 “killed” と “murdered” の間には明らかな違いがあります。ホロコーストの何百万人と表現するのと、600万人と表現するのとの間にも違いがあります。6という数字は述べられませんでした」自身がホロコーストの生存者である Lau はイスラエル・テレビにこう語った。「そこには明らかに謝罪はありませんでした」
 Yad Vashem の館長 Avner Shalev もまた概括的にはこの演説を称賛したが、彼が期待したもののうち二つは叶わなかったと言う。教皇が反ユダヤ主義に触れなかったこと、そして誰がホロコーストを行ったかについて明言しなかったことである。「彼はナチスもナチスドイツもあるいはその協力者にも言及しませんでした」と Shalev は言う。
 しかし、教皇に会った生存者の一人 Edward Mosberg は満足していると言った。
 「これはきわめて重要なできごとでした」と、Mosberg は言う。
 ベネディクトは聖地パレスチナへの一週間に及び巡礼の旅を行うことでイスラム教徒やユダヤ教徒と心を通わせようとしている。彼はイスラエルに到着する前には隣国ヨルダンで3日間を過ごしていた。
 3年前、イスラムの預言者モハメッドの教えのいくつかを“邪悪で非人間的”、特に“武力によって信仰を広げよとの彼の命令”などと表現した中世の文章を彼が引用した時、イスラム世界の多くの人たちを怒らせた。彼はその後、自分の発言がイスラム教徒の怒りを招いたことに対して遺憾の意を示した。
 ヨルダンを出発する前、彼はイスラムに対して“深甚な敬意”を持っていると語った。
 しかし、イスラム教徒は、ユダヤ教徒と同じく、月曜日にはベネディクトに対して明らかに混在した反応を持った。
 教皇がエルサレムの大統領居住地を訪れている間、3年前にハマスの兵士たちに捕えられ、ガザ地区にいまだに監禁され続けているイスラエル兵士 Gilad Schalit の両親と会った。
 ベネディクトがイスラエル人捕虜の家族には会いながら、イスラエルで捕らわれの身となっている11,000人のパレスチナ人のいかなる縁者にも会おうとしていないとガザのパレスチナ人たちは怒りをあらわにしたのである。

どちらかに肩入れすれば必ず他方からの反発を招き、
関係は悪化する。
いかに偉大な宗教指導者であっても
紛争解決の糸口を掴むことは至難の業といえそうだ
(いや、かえって難しいのかもしれない)。
カトリック教会とユダヤ教、イスラム教との関係。
もう少し勉強しなくてはならない。

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『天使と悪魔』:宗教と映画

2009-05-06 10:58:59 | 映画

『ダ・ヴィンチ・コード』の続編となる映画、
『天使と悪魔』がいよいよ、来週、全世界同時公開となる。
前作のキー・パーソンがダ・ヴィンチだったのに対し、
今回はガリレオ・ガリレイ。
『宗教 対 科学』がキー・ワードとなる。
地動説の登場など、科学が宗教的根拠を脅かす存在と
なりつつあった17世紀、
教会はガリレオを逮捕するなど科学者たちへの弾圧を始めた。
科学者集団は秘密結社イルミナティを結成し、地下に潜る。
そして現代、ローマ教皇の選出の儀式、コンクラーベを舞台に、
400年の沈黙を破ってイルミナティの復讐が始まる。
新しい教皇の候補者となる4人の枢機卿が拉致され、
彼らの惨殺が予告される。
また、スイスのセルン研究所から盗み出された『反物質』による
ヴァチカン爆破の脅迫も…
今回、トム・ハンクス演ずるラングドン教授は、
ガリレオが残した暗号を頼りに、ヴァチカンを救うべく奔走する。
創造主である神、そしてイルミナティが武器とするのは
神に匹敵するほどの莫大なエネルギーを生み出す『反物質』。
息をのむ展開が予測されるが、やはりヴァチカンは
この映画に賛意を示していなかったようだ。

5月3日付 abcNEWS より

Ron Howard: Vatican Obstructed ‘Angels & Demons’(ロン・ハワード曰く『“天使と悪魔”をヴァチカンが妨害』)

Angelsdemons

 Ron Howard 監督は日曜日、彼の宗教的スリラー作品 “Angels & Demons” のとあるシーンの撮影許可を得ようとしたところをヴァチカンによって妨害されたと述べた。ヴァチカン側は、そのような非難は単に宣伝目的に過ぎないと反論した。
 Tom Hanks 主演で Dan Brown によるベストセラー小説に基づいて作られたこの映画は月曜日に世界的プレミアとしてローマでも公開される。
 “Angels & Demons” には、イルミナティ(illuminati)と呼ばれる古くからの秘密結社、教皇のコンクラーベ、バチカンを吹き飛ばすことのできるハイテク兵器が登場する。
 日曜日の記者会見で、Howard は、多くのカトリック指導者たちを怒らせた Brown の別の小説 “The Da Vinci Code” の撮影で遭遇した反対に備えてあらかじめヴァチカンへの協力要請はしなかったと述べた。
 しかし、彼の撮影許可に対してヴァチカンは影響力を行使したと彼は語った。そして、背景に教会が映っているローマのシーンを撮影することもまかりならぬと通告された。
 「一般にローマでの撮影に際しては、ヴァチカンは何ら影響力を持っていないというのが公式声明です」と彼は言う。「すべてはきわめて順調に進行していましたが、ロケ地のいくつかで撮影を始める予定の数日前、ヴァチカンが何らかの影響力を行使したと非正規ルートなどから非公式な説明を受けました」
 「驚いたかって?時々悔しい思いをしたかって?そりゃ、そうですよ」と彼は言った。
 それでも、映画のセットで風景を再現することで、多少の制限はあるものの全体として “Angels & Demons” の体験感覚を保持することができたように思うと彼は言った。ただシスチナ礼拝堂(Sistine Chapel)では、止めるように言われるまで、制作スタッフ20人ほどが旅行客を装って教皇が選出される小さな礼拝堂のすべてのフレスコ画、床のモザイクや絵画を撮影したと、映画のウェブサイトには書かれている。
 “Angels & Demons” は “The Da Vinci Code” で一躍有名となった Harvard 大学の宗教象徴学者 Robert Langdon を主人公に配しているが、映画ではこれを Hanks が演じている。同映画ではイルミナティが次期教皇の有力候補と考えられている4人の枢機卿を誘拐し、彼らを一時間毎に一人ずつ殺害し、その後ヴァチカンを爆破すると脅迫してきたことから、ヴァチカンは Langdon を頼ることになる。
 ヴァチカンのスポークスマン Federico Lombardi 師は、教会の介入に関する Howard の申し立てについてコメントを拒否したが、彼の申し立ては単に映画の評判を高めるべく意図されたものだと主張した。
 昨夏、その映画は教会の理念と一致していないとして、ローマ教区は制作者たちが2ヶ所の教会(MrK註:サンタ・マリア・デル・ポポロ教会とサンタ・マリア・デラ・ビットリア教会)の内部を撮影することを禁止していたことを認めた。
 この映画では Hanks 以外には、教皇の死に関わる諸事に対処し、新しい教皇が選出されるまでヴァチカンの運営を行う司教、カメルレンゴに Ewan McGregor を配している。また、枢機卿たちを救出するため Langdon が暗号を解読するのを手助けする科学者 Vittoria Vetra 博士をイスラエル生まれの女優 Ayelet Zurer が演じている。(MrK 註:そのほかにも『マンマ・ミーア』のステラン・スカルスガルド、『ナイトミュージアム』のピエルフランチェスコ・フィヴィーノらが出演)
 2006年の映画 “The Da Vince Code” は世界中で7億5,000万ドルの興行収益を上げたが、この映画は、イエスが結婚し、子供を成したという考えや、保守的なカトリック運動 Opus Dei を殺人的カルトと表現したことで、世界中の教会指導者たちからボイコットの要求を招くこととなった。
 今回 “Angels & Demons” に対する教会指導者たちの反応はその時よりは抑えられているがものの、イタリア人司祭 Antonio Rosario Mennonna は土曜日、この映画はカトリック教会に対して『きわめて侮辱的、中傷的かつ攻撃的である』と述べたと、ANSA news agency は報じた。
 記者会見で、撮影中最も大変だったことは何だったかと聞かれたとき Hanks の答えは笑いを誘った。それは、まさに走ることだったと。
「普通の敷石の道などないし、まっすぐの階段もありません。この永遠都市には横断しやすい道なんてないんです」と彼は言った。「ゆっくりの散歩ならと思って外に出れば、死の落とし穴や足首の捻挫が待ち受けていると言ってもいい。脛を傷めたりすることもなく、また足の周りにエースの包帯を巻かずに撮影できたことは不思議と言っていいでしょう」
 「きっと神のご加護があったに違いありません」と彼は言った。

あくまでフィクションと銘打った映画でも、
実在する宗教名や組織名が登場していたならば
問題なのだろうか?
MrK 自身はクリスチャンではないのでお気楽に
この映画がヴァチカンやキリスト教を冒涜しているようには
まったく思えないと言えるのだが…
こういった宗教的スリラー映画では、
全く架空の宗教でストーリーを繰りひろげても、
何の緊迫感も得られないことだろう。
実在の宗教、実在の施設、実在のイベントをモチーフにしてこそ、
映画としてのエンターテインメント性が
成り立つのではないかと思う。
それが許されないとなれば、
映画にタブーな領域を作ってしまうことになる。
至極淋しいことと思えるのである。

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