MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

脊髄損傷患者の大きな一歩

2011-05-28 15:16:02 | 健康・病気

先月のエントリー『幹細胞移植』は神の意志に続いて
脊髄損傷に対する治療研究のブレイクスルーである。

5月20日付 The Wall Street Journal 電子版

An Electrical Jolt for Paralysis Research  脊髄麻痺研究にとっての“電気的”ショック
A New Technique That Stimulates Key Nerve Cells in the Spinal Cord Offers Hope for Patients, Scientists Say
脊髄の重要な神経細胞を刺激する新しい技術は患者に希望を与えてくれると、科学者は言う

By Katherine Hobson
 脊髄損傷の治療に飛躍的な進歩が期待される中、胸から下が麻痺した一人の男性が、集中的な身体リハビリテーションに電気的刺激を組み合わせると、移動し起立する能力をいくらか取り戻した。この組み合わせはこれまで動物でのみ効果が示されていた。
 これは人体における最初の成功例である。そのため University of Louisville、University of California, Los Angeles、および California Institute of Techynology のこの症例の研究者たちは依然慎重である。こういった結果が多くの患者で再現されなければならないこと、および脊髄刺激をさらに一般的に使用することが考慮されるには多くの技術的問題が解決されなければならないと指摘する。
 ただし、この研究が今後の研究でも効果を維持できるなら、脊髄麻痺の患者の見通しを改善させうる新たな治療への扉を開くことになると、脊髄損傷の専門家は言う。
 Rob Summers さん(25)は2006年に車にはねられ、胸から下が麻痺したが、損傷部位以下の領域の感覚はいくらか残っていた。University of Louisville における研究プロジェクトの一環として、彼は26ヶ月間の運動訓練を受けた。これはトレッドミルの上にハーネスで吊るされた状態で療法士が彼の脚を動かして踏み出す運動をさせるリハビリテーション・テクニックである。(いくらか運動機能を残している患者ではこの療法だけで改善がもたらされる効果がある)

Paralysisresearch01

対麻痺(両下肢の麻痺)となった Rob Summers 氏は、脊髄の電気刺激と集中的身体リハビリテーションによって、立ち、繰り返し足を踏み出すことができるようになった。

 それから Summers 氏は脊髄の重要な部位に16個の電極を取り付けた装置を埋め込む手術を受けた。持続的な電気信号を送るこの装置によって、Summers 氏は支持のためのバーを握っている間、自身の下肢筋力を用いて立つことができるようになった。研究者によると、4分間、体重を支えながら立ち続けることができ、介助を受けながらトレッドミル上で足を踏み出すことができるという。
 「4年間、わたしはつま先を動かすことさえありませんでした」と、Summers 氏は言う。「わたしは刺激装置が作動して3日目に立ちました」と彼は言う。「どんな気持ちだったか十分に表現できる言葉は見つかりません」
 刺激下では、Summers 氏は股関節や足首やつま先を自発的に動かすこともできる。さらに彼は、膀胱機能や性機能もいくらか取り戻していた。

Paralysisresearch02

正常
①足を動かしたいと思うとき、脳は脊髄のニューロンに信号を送り、そのニューロンが信号を身体に伝える。
②脳はまた、身体からの感覚情報を受け取り、それ自身の働きで踏み出し運動を始めるよう神経回路の準備化を行う。

電気刺激下
①脊髄損傷においては脳からの信号は脊髄のニューロンまで十分に到達できない。そのため損傷部位より下の脊髄に埋め込まれた電極はニューロンの準備化において脳の代わりを部分的に果たすことができる。
②神経回路が刺激されることで患者は一部の基本的な運動を行うことができた。たとえば、立ちあがることや介助下に足を踏み出すことなどである。

 「今回のケースは恐らくこの領域をかなり劇的に変えることになります」と、ミネソタ州 Rochester にある Mayo Clinic の物理療法・リハビリテーション部門の副部長 Ronald Reeves 氏は言う。彼は今回の研究には関与していない。「脊髄の電気刺激によって良好な運動系の反応をもたらすことができるという説得力のある科学的エビデンスが認められたのは初めてのことです」
 多くの脊髄損傷で見られるのと同じように、Summers 氏の脊髄は完全に切断されていたわけではなかったが、その損傷の程度は、運動を起こすよう脳から脊髄に信号を送ることができないほど重症だった。
 5月19日に Lancet 誌に発表された本研究は、脳が通常脊髄に送る信号の代わりをする電気的信号を用いることで少なくとも基本的な運動を生ずるのには十分であることを示唆するものである。その刺激は神経細胞に準備を促し、最悪脳が存在しない場合であってもそれら神経細胞が感覚情報を受け取り、それに基づいて反応することができるのである。
 「それらの細胞は何が起こっているかを識別し感知できるだけでなく、次に行うべきことを了解しているのです。もし、片方の足で立ち、関節が一定の位置にあるなら、それは足を踏み出す準備に入っているというサインになっているのです」本研究の共著者でUCLAの統合生物学・比較生理学部門の Reggie Edgerton 氏は言う。
 一つだけわからないことがある:脊髄が完全に切断されている患者で運動がこの電気刺激によって生み出されるかどうかということだ。
 より精巧な刺激装置についてさらなる研究が必要である―現在の刺激装置は疼痛コントロールで通常用いられているものである―そして薬物を加えることで脊髄内の神経回路をより鋭敏にする可能性についての研究も必要であると、本研究の共著者で、University of Louisville、Kentucky Spinal Cord Injury Research Center のリハビリテーション研究部長の Susan Harkema 氏は言う。
 本研究は Christopher & Dana Reeve Foundation と National Institutes of Health から支援を受けている。

これまで脊髄損傷に対しては、特に治療法はなく、
褥瘡・感染・関節拘縮などの予防に努めるしかなかった。
脊髄損傷によって
寝たきりや、車椅子の生活を余儀なくされてきた患者にも
ここ数年の研究によってわずかではあるが光明が
見えてきたようである。

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ありふれた症状、まれな原因

2011-05-21 14:59:28 | 健康・病気

恒例のメディカル・ミステリーです。

5月17日付 Washington Post 電子版

Common symptom, uncommon cause ありふれた症状、まれな原因
By Sandra G. Boodman,

 その症状はゆっくりと始まったので最初のうち Carrell Grigsby さんはそれをあまり気に留めていなかった。12年前、Austin に住むこのプロの写真家は周期的に現れる猛烈な痒みの発作に悩み始めた。そのほとんどは腕と足に突然起こり2~3時間で消失した。
 自分がカビと花粉にアレルギーがあることを Grigsby さんは知っていた。しかしそれらのアレルゲンに関係する発作とは、今回の症状は異なっていた:皮膚は正常に見えたし、掻いてもその痒みは軽減しなかった。感覚まで異常だった。「小さな蟻が皮膚の下を這っているような感じでした」と Grigsby さんは思い起こす。

Commonsymptomsuncommoncause

Carrell Grigsby さんの保険会社は、狭帯域の紫外線で皮膚を治療するため3日に1度自宅で使用する装置を提供した。

 2005年には、ほとんど毎週土曜日に発作的症状に苦しむようになっており、結婚式を撮影する準備をしている間に自宅で起こることもあれば、撮影の最中に起こることもあった。自分の仕事がストレスになっているのではないかと Grigsby さんは悩んだりしたがどうしてなのだろうと不思議に思っていた:彼女は結婚式を撮影するのが楽しかったし、気に病むことはなかったからである。
 その痒みがあまりにひどいために車に飛び乗って近くの緊急室まで出かけたことが何度かあったと Grigsby さんは言う。当直の医師が病気を発見してくれるのではないかと期待したのである。しかし、待合室に座っている間に、症状は消え失せていた。無意味に感じて、Grigsby さんは医師に診てもらう前にその場を去るのだが、心因性ととられかねない症状を説明しなくてすみ、むしろほっとするのだった。
 最後にERに行ってから何ヶ月も経った後、その強烈でチクチクするような瘙痒感の発作が想像もできないような原因であったことを Grigsby さんは知ることになるのである。

 Grigsby さんは現在64才になるが、当初、その症状は石鹸やスキン・ローションに対する強い反応ではないかと考えていた。彼女は銘柄を何度も代え、その後かかりつけのアレルギー医の予約をとった。彼は症状を誘発させる目的で皮内テストを行ったが、その瘙痒症状を再現することはできなかった。症状は彼女のカビ・アレルギーの増悪が考えられると彼は彼女に告げた。
 その医師は様々な抗ヒスタミン薬を処方し、彼女の自宅のカビの増殖を遅らせるため、湿度が高くなりそうな場所では大きな送風機とライトを使うよう指示した。
 それらの方策はいずれも効果がなく、症状はより頻回となっていった。
 Grigsby さんは新しいタオルを買った。彼女は寝室のクローゼットにカビの胞子が潜んでいるのではないかと恐れて近づかないようにした。自宅にある別の浴室を使ったりもした。有効な手立てがないことから、彼女は自分の症状がストレスに関係しているのではないかと考え始めていた。
 2006年、Grigsby さんはかかりつけの内科医に相談したが、彼は3回診察した後、皮膚科医の Jay Viemes 氏に彼女を紹介した。
 10月のある金曜日の午後、最初の診察時、Viemes 医師は Grigsby さんにいくつか質問を浴びせたが、そのほとんどは彼女の発作のタイミングと、考えられる誘因のタイミングとに焦点が当てられていた。
 それから、冷たいシャワーだけ浴びて、水温で違いがあるかどうかを月曜日に電話で報告するよう助言した。
 「研修中、私たちは瘙痒が患者の訴えの重要な要素であることを学びます」と、Viernes 氏は言う。原因不明の瘙痒には非常に多くの原因があると彼は指摘する。大部分のケースは害のないもので、無治療でも自然に治るが、瘙痒が、癌や血液異常など重大な疾患の症状となっている場合もある。
 Viernes 氏によると、彼の最初の印象は、Grigsby さんが cholinergic urticaria(コリン性蕁麻疹)ではないかというものだった。これは熱によって誘発される蕁麻疹の一型であるが、蕁麻疹に特徴的な古典的な赤色斑が彼女には見られなかった。二つ目には、さらにめずらしい診断名が彼の頭に浮かんだが、ひょっとしたらそちらの方かもしれないと考えその週末に調べてみることにした。
 月曜日、冷たい水の方がかえって瘙痒感を悪化させたと Grigsby さんは報告し、彼の最初の仮説は除外された。

Answer in the shower  シャワーに隠された答え

 「あなたの病気がわかりました」と Viernes 氏は彼女に言った。Grigsby さんは aquagenic pruritus(水原性瘙痒症:すいげんせいそうようしょう)と呼ばれる疾患の古典的症状を呈していたのである。これは水によって引き起こされる消耗性の皮膚疾患であり、彼女が水を飲んだときではなく、水が彼女の肌に接触したときに起こる。
 「私は症例を見たことはありませんでした。これはきわめてまれな疾患でしたので調べて対処法を知る必要がありました」と、Viernes 氏は思い起こす。1990年代前半にレジデントの研修中にこの疾患について学んだことはあったという。
 National Instituites of Health の Office of Rare Dieseases(希少疾患対策室)によると、aquagenic pruritus には不明な点が多く、誤診されやすい疾患で、腕や足に集中する非常に強い、しばしばチクチクするような瘙痒感を生ずる。顔面・頭部・手掌・足蹠あるいは粘膜には通常症状は見られないがその理由は不明である。
 「自分が精神的におかしくなっているのではないかと思う患者も多く、医師が彼らの訴えを信じない場合もあります」と Viernes 氏は言う。「これらの患者は時に衛生的な問題を起こし、ひどいうつ状態に陥ることもあります」患者のほとんどは中高年の男性で、家族性に認められるようである。
 多くの人で発作はあらゆる温度の水と接触して数分以内に始まり、10分から2時間続く。皮膚には疾病の徴候は見られない。
 この疾患の原因は不明だが、神経末端から筋肉へ信号を伝達する化学物質であるアセチルコリンの放出に関連しているのではないかと考えている研究者がいる。本疾病を診断するには、説明しがたい瘙痒をきたす他の原因を除外する必要がある。
 自身の不可解な発作のタイミングを説明してくれるこの診断名にGrigsby さんは唖然としたと言う。結婚式の準備をしているときに起こっていた発作は、仕事の前に必ず浴びていたシャワーのためだったのである。そして、しばしば写真撮影中に起こっていた発作は彼女のトレードマーク的な撮影によって説明できた:Grisby さんは桟橋の上に座らせた家族を撮影するために人気の湖の中にほぼ膝の上まで浸かって立っていたのである。
 「これがすべて心の中の問題ではなかったことで私は気分的にかなり楽になりました」と、彼女は言う。
 Viernes 氏は Grigsby さんに aquagenic pruritus の患者たちのオンライン支援団体のウェブサイトを教えた。このサイトは重要な情報源となり、また自身の慰めにもなったと、彼女は言う。彼女はただちにそのサイトで勧められている改善策を試してみて、瘙痒が軽減されることがわかった:それは熱いシャワーを浴びたあと、患部にヘアー・ドライヤーを用いるというものである。
 「そうしたところ10年ぶりに、シャワーの後でも正常な感覚の皮膚を保つことができました」と、彼女は思い出す。加えて Viernes 氏は唐辛子中の活性成分である capsaicin(カプサイシン)で作られた局所に塗布するクリームを処方した。カプサイシンは aquagenic pruritus の患者の一部で有効であることが研究で明らかにされている。しかしこれは Grigsby さんでは皮膚が火照りすぎて使えなかった。
 熱心なゴルファーである Grisby さんは、日焼けをすると、症状が弱まることに気がついた。2009年、彼女は通っているヘルスクラブの日焼け用ベッドで試したあと、Viernes 氏の診療所で週に3回の光線療法を受け始めた。
 光線療法は、乾癬や湿疹などの他の皮膚疾患で有効であることが知られており、Viernes 氏は aquagenic pruritus に対する治療においても成功例が示された研究を見つけていた。光線療法で用いられる狭帯域紫外線は、従来の日焼けベッドの光に比べると皮膚癌のリスクが低いと Viernes 氏は言う。6ヶ月後、彼女の瘙痒発作はほぼ消失した。
 しかし週に3回診療所に行くことは彼女の予測のつかない仕事のスケジュールのため困難を伴った。そのため2010年、Viernes 氏は彼女の健康保険会社に家庭用光線療法装置の支払いを依頼した。
 数ヶ月のやりとりの末、同保険会社は5,700ドルの装置を承認し、Grisby さんの寝室に設置された。彼女は必要な時にそれを使うことができる。3日に1度、好きな時間に腕と足と胴体に4分間の治療を行うのである。
 熱いシャワーとヘアー・ドライヤー療法を組み合わせたこれらの治療によって、彼女はおおむね瘙痒から解放された生活を送れるようになっている。さらに Grigsby さんは症状と付き合う方法も学んではいるが、そもそもなんで自分がこの病気になったのかについてはとまどっている。
 「それこそが本当の大きな謎なのです」と、彼女は言う。

つくづく詳細な問診が重要であることを痛感させられる。
とはいえ水原性瘙痒症の存在を知らなければ手も足も出ないが…。
記事中にあるコリン性蕁麻疹は、
入浴、運動、緊張などの発汗刺激により
交感神経節後線維終末から分泌されるアセチルコリンが
関与しているといわれる。
こちらは熱いシャワーで症状が誘発される。
一方、水原性瘙痒症は低温の水でも症状が発現する。
水に接触するだけで痒くなってしまうとは、
何ともやっかいな病気である。

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ドラキュラ、脳を救う

2011-05-13 13:26:58 | 健康・病気

現在、脳梗塞急性期で最も有効な治療薬は
t-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)。
ただし、この治療には時間の制約があり、
発症3時間以内に治療を開始する必要がある。
この時間を越えて治療を行うと、
高率に出血を起こす可能性が高いためだ。
また t-PA 自体にも神経毒性があると考えられている。
これに対して
発症9時間まで安全に治療ができると期待され、
それ自体も神経毒性を持たない血栓溶解薬が
開発中である。
その薬とは、デスモテプラーゼ。
日本でも昨年から臨床試験が行われている。
このデスモテプラーゼ、もともと
吸血コウモリの唾液中に含まれる酵素である。

5月9日付 Time.com

Vampire Bat Saliva Could Lead to Stroke Treatment 吸血コウモリの唾液が脳梗塞治療につながる

Vampirebat

By Meredith Melnick
 吸血コウモリは彼らの標的からできるだけ血液を得るために良く知られた裏ワザを持っている。それはそれらの唾液中に含まれるデスモテプラーゼ(DSPA)と呼ばれる酵素で、それによって標的の血液を固まりにくくし、サラサラ流れるようにする効果がある。私たちすべてにとってよいニュースは、脳梗塞を生じた脳の血栓を溶解させるのにもこのDSPAが使える可能性があるということだ。
 毎年米国民を襲う79万5千人の脳卒中のうち約87%は虚血性脳卒中(脳梗塞)であることが知られている。これは脳内の血管を閉塞する血栓によって生じ、十分な血流と酸素の運搬が阻害され、脳組織が死滅する。結果的に、麻痺、認知障害、あるいは言語障害などの後遺症を生ずる。(血管の破綻から出血を生ずる別のタイプの脳卒中は出血性脳卒中と呼ばれ、こちらははるかに高い死亡率を伴う)
 虚血性脳卒中に関して言うと、時間がきわめて重要である。組織プラスミノーゲン・アクチベータ(tPA)と呼ばれるタイプの血栓溶解薬は脳梗塞発症から3時間以内に投与しなければならない。その時間を過ぎると有害事象(脳損傷のリスク)がその有用性を上回る。多くの脳卒中の患者は十分迅速に治療を受けられないため、tPA はほんの一握りの患者でしか用いられていない。
 そんな状況下、吸血コウモリの唾液中の DSPA が登場してきた。米国心臓協会誌であるStroke 誌への報告では、DSPAの効果と tPA の組み換え型の効果とを比較したところ、DSPA が同じように有効であっただけでなく、治療までに時間が経っている患者にも有効である可能性があったという。

Scientific American の記事
これまでの報告で、DSPA は、フィブリン(血栓の枠組みを作る不溶性たんぱく)にさらされると、現在 FDA (米国食品医薬品局)が承認している血栓溶解薬 rt-PA より活性が高いことが示されている。脳細胞へのDSPA の効果を調べるために、オーストラリアの Monash University の Robert L Medcalf らはマウスの脳に DSPA と rt-PA の両者を注入した。DSPA はフィブリンを標的としたが、脳細胞障害を促進することが知られている二つの脳の受容体には作用しなかったことがわかった。そのため、DSPA は脳梗塞発症から9時間まで副作用なく投与できる可能性がこの研究者らによって示された。

 DSPA は2003年に初めて発見されたが、今、医師らはようやくそれからの薬剤を開発する段階に入ったところである(それはこう呼ばれる―Draculin 『ドラキュリン』!マジである)。2006年に Ohio State University Medical Center で行われたこの薬剤の最初の人体での臨床研究によって、安全であり、被験者に十分な耐容性が示された。同センターで現在行われている新たな全国的試験によって、この薬剤が脳梗塞患者で何らかの臨床的有益性を示すかどうかが究明されることになる。
 「Time is brain(時は脳なり)」と、この研究を代表する Ohio State University の Michel Torbey 医師は声明で述べている。「私たちは、脳梗塞発症後、患者がどんな時間に訪れてきても、彼らに治療の選択肢を与えたいと考えています。残念ながら、彼らが訪れるまでにかかった時間が長いほど有用な選択肢は少なくなってしまいます。なぜなら脳の中で障害がすでに起こってしまっているからです」

吸血コウモリが
獲物の血を飲みやすく、また消化しやすくするために、
その唾液中に血が固まらないようにする成分が
含まれていると考えられる。
数年前から脳梗塞の治療薬としての開発が期待されて
いたのだが、ようやく日の目を見ることになるのだろうか?

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復讐するは脳にあり

2011-05-06 16:55:52 | 国際・政治

5月1日、ウサマ・ビン・ラ―ディンが
『ジャックポット』と呼ばれる米海軍特殊部隊の作戦により
イスラマバードで殺害された。
ビン・ラ―ディン殺害が是か非か?が議論となっているが、
これまで『アルカイダ』によるテロで
犠牲になった人たちの家族は
さぞ胸がすく思いをしたことだろう。
そして全く関係ないのに
同じように感じた人もいるかもしれない
人間は、勧善懲悪の魂を越えたところで
悪いやつらを懲らしめることによって
快感が得られるように進化して?いるのだろうか。

5月3日付 Time.com

Your Brain on bin Laden: Why Vengeance Is So Sweet ビン・ラ―ディンに関してあなたの脳は:なぜ復讐がそれほど心地良いのか?
By Maia Szalavitz

Binradin

 Schadenfreude(シャーデンフロイデ:他人の不幸を喜ぶ気持ち)は悪質な快感である。しかし、その犠牲者が相応の報いを受けたウサマ・ビン・ラーディンのようなかたきであるなら、はるかにもたらされる罪悪感は少なくなる。しかしそれで万事OKなのだろうか?
 以前ここで述べたように、人間が復讐を好むことには十分な進化的理由が存在する。奇妙なことだが、利他的精神や協調など私たちに備わっている最高の資質は、復讐――すなわち、協力しない、あるいは積極的に危害を加える集団のメンバーを見つけ出して罰する一つの手段――の存在なくしては恐らく生き残ってこなかったかもしれない。
 ニューヨーク市路上をゆっくり歩く人から9/11の同時多発テロの背後にあるテロリスト集団のリーダーに至るまですべての規則破りを罰する行動は、研究者たちから『altruistic punishment:利他的懲罰』と命名されてきた。処罰をする人がそれを実行するリスクを自分自身で引き受けるところが『altruistic:利他的』であり、その恩恵は総じて社会に向かうのである。
 もちろんビン・ラ―ディンを殺害したネイビー・シールズ(米海軍特殊部隊)は国の任務で行動したのであって、自警団として行ったのではない。しかし、まさに自警主義の存在そのものはたとえ個人的に多大な犠牲を払ってでも誰かに思い知らせようとする欲求に向けて語りかけてくる。9/11の直後、ビン・ラ―ディンを自身で殺す機会が得られるなら喜んで金を出すだろうと言って反応したアメリカ人が少なからずいた。そして2001年のそのテロの後、多くの男女が軍隊に加わったが、彼らは自分たちの国を守るために自身の命を犠牲にすることになるかも知れないことを十分にわかっていた。
 脳の画像研究では利他的懲罰に携わるとき――たとえば、ゲームであなたに公正でなかった人が現金を受け取れないことを確認するためにお金を払うようなとき――脳の快楽中枢が興奮することが示されている。
 それではなぜ私たちは違法者の懲罰を報酬と感じるようにできているのだろうか?研究者たちは、協調的行動を背景に利他的懲罰の進化を理解しようとしてきた。『囚人のジレンマ』と呼ばれる理論上の状況によってこの問題について多くの手がかりが得られることが明らかにされている。このシナリオでは二人の犯罪者が逮捕される。もし二人とも密告を拒否すると、警察が重罪を支持する証拠を持っていないことからそれぞれ懲役6ヶ月しか課せられない。しかし、相手が重罪にかかわっていると密告した人物は釈放され、相手方は10年の懲役となる。二人とも同時に告白した場合、彼らはそれぞれ懲役5年となる。(この状況に出てくる判決の長さが変わると異なる数字の結果が得られるが、全体的な原理は同じである)。
 最近 University College London で行われたそんな研究の一つで、密告者が痛みを伴う電気ショックを受けているのを人が目撃した場合――その研究の参加者たち自身が罰を与えたのではなかったが――彼らの脳の快楽領域が活性化していた(ただしそれが認められたのは男性だけだった)。
 しかし、全体的に社会について考えるとき、泥棒の間で自己の利益と道徳心のいずれがよりよい戦略となるのかを決定しようしてこのゲームを繰り返し行う場合、もっと興味深いものとなる。Jonah Lehrer 氏はそのことについて最近の Wired のブログ投稿で次のように書いている。
ゲームが連続数千回も続くと想定された場合、最も効果的な基本戦略は『tit for tat:しっぺ返し』と呼ばれるアプローチであることが分かっている。しっぺ返しの法則はきわめて単純である。挑発されないかぎり囚人は協調する(つまり密告しない)。しかし、一度、挑発されると彼らは復讐を求めようとする。旧約聖書スタイルである。これによって背信行為の勢いがそがれ、不正行為が相応の結果をもたらすことを人々が確かに知ることができる。そしてこのような理由から、脳は、少なくとも若い男性における脳は、悪い人間の苦しみに対してそれほど多くの喜びを持つのである。目には目を、が気分爽快なのである。
 進化の用語で言うなら、これは、協調的な生物が生き残り、自分勝手な生物は滅びるということだ。ただし、協調的な生物が自分勝手を罰する何らかの方法を持っている場合に限るのだが。
 しかし、『寛容的しっぺ返し』という、『しっぺ返し』よりさらに有効な戦略があることもわかっている。この寛容的なタイプも同じように非協調に対して反応するのだが、もし他者が再び協調し始めたら、同じように反応する。この戦略は、背信行為に常に罰を与えることによるのではなく、『他者にチャンスを与える』的考え方に従っている。
 寛容的しっぺ返しは単刀直入バージョンに比べると人間の行動にはより適しているのかもしれない。ありがたいことに私たちの紛争の大部分はハットフィールド家とマッコイ家の復讐の連鎖に陥ったりはしない。
 私たちがビン・ラ―ディンの運命を考える時、正義感からあふれる気持ちを、慈悲の心で和らげる必要があることを忘れてはならない。ビン・ラ―ディンはいかなる思いやりも受けるに値しない人物かもしれないが、人間性の一部がそれを求めているのも事実である。

わかりにくい文章だが、
言いたいことはわかる気がする。
さしずめ利他的処罰の典型である
『必殺シリーズ』が高視聴率を稼ぐのも
それを見ることで視聴者の脳内に快楽物質が
増えるため、と言えるのだろうか?

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