goo blog サービス終了のお知らせ 

MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

少年の繰り返す嘔吐と腹痛

2014-03-25 21:08:08 | 健康・病気

3月のメディカル・ミステリーです。

3月18日付 Washington Post 電子版

What was making her son so sick? A doctor is frustrated by the diagnostic process. 何が彼女の息子をそれほど悪くさせていたのか?診断の過程に苛立つ一人の医師

Whatwasmakinghersonsosick

Zachary Fox 君はインフルエンザにかかったあとひどい腹部症状が始まり、その後増悪した。

By Sandra G. Boodman,
 2013 年1月、Northern Virginia 病院の廊下を看護師が駆けてきて、「ビンゴ!答えにたどりついたわ!」と知らせてくれたとき、Suzanne Groah(スザンヌ・グロア)さんは希望を抱いたことを思い出す。それまでの6週間、Groah さんの息子 Zachary Fox(ザシャリー・フォックス)君(当時9才)は原因不明の耐えがたい腹痛に苦しんでいた。そして今、検査で、彼の病気が胆嚢機能不全であることがわかったのである。
 脊髄損傷を専門とする医師で Georgetown University の准教授の Groah さんは、Zach(ザック)君が一日に50回も嘔吐し、食後に痛みで身をよじらせていたとき、増大する不安と無力感を持って見守っていた。彼は検査に次ぐ検査に耐え、医師たちは、虫垂炎、クローン病、あるいは深刻な細菌感染症であるクロストリジウム・ディフィシレなど20あまりの疾病を除外した。
 Groah さんは Zach 君の胆嚢が問題の原因であるとして楽観的であろうとしていた。その2、3日前、原因として潰瘍を特定できたと医師らは考えていたが薬物療法は何ら違いをもたらさなかった。そして、その後 Zach 君の胆嚢が摘出されたあとも同じだった。
 結局、正しい診断にたどり着くまでには、痛みを伴う処置やいくつかの病院への受診などでさらに2ヶ月を要することになる。このケースを詳しく知る小児胃腸科医はそれを「30年間見てきた中で最も難しい症例の一つ」と言った。そして今その難局を乗り越えることができたものの、Groah さんと彼女の夫 Steve Fox さんは新たな一つの難しい決断に迫られている。
 数ヶ月に及ぶ息子の厳しい試練の間、彼のそばに居た Groah さんには、この経験によって心の傷が残った。「私が医師であること、そしてシステムがどのように機能するか知っていること~ただしずっと機能するわけではないのですが~で飛躍的に迅速に今回のことを切り抜けることができました」と彼女は言う。「しかしそれによって多くの医師たちとの関係が傷つきました。彼らの中には私の言うことに耳を傾けなかった人もいたように思います。なぜなら、私があまりに多くを知っているおかしな母親と受け取られていたからです」ひどく落胆したためしばらくの間「私は医療に戻ることができないのではないかと本気で思っていました」と Groah さんは言う。

The flu and its aftermath  インフルエンザとその影響

 2012年12月1日の朝、Zach 君は嘔吐したがその後良くなったので予定されていたテニスの試合に出かけた。彼の母親によると、バージニア州における年齢別の優勝者だった彼はそれまで“一度も病気をしたことのない非常に元気な子供”だったという。
 その夜、彼は高熱を出し、それはその後も数日続いた;彼の小児科医はインフルエンザと診断した。その後激しい発作性の咳嗽が起こり、その後嘔吐が見られた:気管支炎と考えた医師はステロイドを処方した。咳は弱まることなく続いたため医師は百日咳を疑った。抗生物質の内服を始めたが、百日咳の検査は陰性だった。
 12月中旬、夕食でパンを一口食べたあと、Zach 君は突然腹部の右側に強い痛みを訴えた。彼は一時間横になっていたがその痛みは増悪した。虫垂炎と考えた両親は彼を緊急室に連れて行った。
 入院2日後、虫垂炎をはじめ彼の腹痛を説明できるものは何も認められなかった。彼の診断は“インフルエンザ後の胃腸症”とされたが、これはインフルエンザにより一過性に消化管が障害され生ずる疾患である。改善には数週、最大6ヶ月かかると言われたことを母親は覚えている。
 しかし、Zach 君が一日中頻繁に嘔吐し、激しい痛みを訴え続け、体重が減る一方だったことから Groah さんはだんだん心配になった。クリスマスイブの日、彼の小児科医は一時間かけて 12月26日の小児胃腸科医による緊急診察の予約を調整した。Zach 君は食道・胃・十二指腸内視鏡(EGD)を行うためにある病院に入院した。この検査は食道、胃および十二指腸の内側を調べる検査である。しかし何も異常が見つからなかったためその小児胃腸科医は、彼が学校から逃避しようとしているのではないかと考えた;3日後、Zach 君は退院し自宅に戻ったが、嘔吐と痛みは続いた。
 そこで Groah さんは Scott Sirlin(スコット・ジルリン)氏の診察を予約した。彼は Loudoun County(ラウドン郡)の小児胃腸科医で、以前近親者の一人を治療していたため彼女が信頼を寄せていた人物である。
 2013年1月上旬の最初の受診のとき Zach 君には腹部の圧痛があり、嘔吐を繰り返していたが、重症のようには見えなかった。
 「私の役目は、それまでにはっきりと除外されていない疾病を除外することだと感じていました」と Sirlin 氏は言う。彼は、患者が繰り返し吐き戻す症候群である rumination(反芻)を疑った。一つの理由として Zach 君の嘔吐が睡眠を妨げていなかったからである。ストレスによって引き起こされる反芻は他の疾患と共存することがあることから Sirlin 氏はさらに詳細に調べる必要があると感じていた。おそらく、嘔吐は狭窄した食道によるものではないかと彼は考えた。
 Zach 君は一連の検査のため Northern Virginia 病院に2度目の入院をした。Sirlin 氏が子供ではまれな十二指腸潰瘍を見つけたとき、「答えがわかったと考えました」という。しかし潰瘍の治療にもかかわらず Zach 君の嘔吐は悪化した。
 そのため Sirlin 氏は Zach 君の胆嚢に焦点を絞った。彼は HIDA スキャンを依頼した。これは消化液経路内の胆汁の流れを追跡するために放射性物質を用いる画像検査である。それにより胆嚢が胆汁を排出できていないことが示された。Zach 君の駆出率はゼロだった。正常範囲は35~70%であることからこれは想定外の驚くべき数値だった(MrK 註:恐らく冒頭のシーン)。
 「胆嚢を摘出すれば彼がよくなることが期待されました」と Sirlin 氏は言う。しかし、Zach 君は、胆嚢摘出後も改善が見られない約30%の患者の一人だった。「失望しました。我々は皆、劇的な改善を期待していたのです」

A hospital transfer  転院

 その頃までに小児精神科医に紹介されていた。Zach 君と両親に話をしたあとその精神科医は母親を脇に連れ出し精神的原因は認められなかったと話したと Groah さんは言う。「これは zebraです(MrK 註:想定外の病気のこと。蹄の音を聞いたときまず馬を想起するが、シマウマ[zebra]とは思いつかないことから)」稀な疾患を意味する医学的俗語を用いてその精神科医がそう言ったことを Groah さんは思い起こす。「最も大きなメディカルセンターのどこかに彼を連れて行きなさい」Zach には特殊な医療が必要であることには Sirlin 氏も同意見だった;1月19日、彼はワシントン地区外にある小児病院に移された。
 脊髄損傷研究の責任者として勤務していた MedStar’s National Rehabilitation Network を休職していた Groah さんは、Zach 君のケースについて十分に時間をかけて考え、心のこもった医療を施してくれることを小児科の専門科たちに期待していたと言う。しかし、彼女によると、Zach 君に対する医療はバラバラでしばしば性急なものだったという;Zach 君を無視するように見えた医師もいた。原因が肝胆道系(膵臓、肝臓、および胆嚢とつながっていて胆汁の流れをコントロールしている管)にある可能性を彼女が示唆したとき、Zach 君の担当医らは素っ気なく、「それはきわめて稀です」と答えたという。
 「私たちは全くの危機的状態にありました」と彼女は思い起こす。
 Zach 君は10ポンド(約4.5kg)以上体重が減っていたため、検査を進める間も連続的に栄養が供給されるよう医師らは栄養チューブを埋め込んだ。肝臓、膵臓、胆嚢、および胆道系を見るための特殊なMRI検査である MRCP で胆管に軽度の拡張が認められたが、それが臨床的に重要であるという確信は医師たちには得られなかった。
 1月31日に Zach 君は退院した;医師らは彼を消化器疾患の治療を専門にしている中西部の小児病院に紹介した。Groah さんが電話したところ、3月下旬にベッドが空くと言われた。
 栄養チューブが入っていたが Zach 君は食事をできるだけ摂るよう指示されていた。2月17日、自宅でベーグルを2、3口かじったあと、背中に放散する痛みで身体をよじらせた。両親は彼を ER に連れて行った;検査で、それまで正常だった肝臓と膵臓の酵素が上昇していた。しかし痛みが治まったため彼は自宅に帰された;数日のうちにそれらの酵素の数値は正常に戻った。
 5日後に同じ出来事が起こったとき、Groah さんはこう言った。「それは icing on the cake(MrK 註:ケーキの上にある飾り=余分なもの)です。私たちは問題を彼の身体のごく一部に絞り込んでしまっていたのです」:早い時期に彼女が調べていた胆道のことをそう表現した。
 徐々に Zach 君が sphincter of Oddi dysfunction(オッディ括約筋機能不全)という稀な病気である可能性が高くなっていたように思われた。オッディ括約筋は胆管と膵管の出口に位置する筋肉の弁のようなものである;それは消化に必要な胆汁や膵液の流れを調節する。オッディ括約筋が適正に機能しない場合、食物は停滞を起こし、強い腹痛や嘔吐を引き起こす。一つの証拠となる手がかり:それは一過性の酵素の上昇である。
 Groah さんは国内の消化器の専門医たちと連絡を取った。彼女は、患者が自分の息子であることを明かさないで Zach 君の症例を提示した。親子である事実は相手との関係に影響を及ぼす可能性があると感じたからである。そして、ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography、内視鏡的逆行性胆管膵管造影)を行うのが望ましいかどうかを訪ねた。この手技は、膵胆管や括約筋が狭窄や閉塞していることで適正に開かないときに用いられる;医師らは特殊な器具を管に通して開存する。ただ膵炎など重大な副作用の可能性があることから、この手技が小児に行われることはめったにない。Groah さんはこの手技を行う Boston Children’s Hospital の専門医を見つけた;しかし Zach 君のカルテを検討したあと彼はその検査を勧めなかった。

Not one problem, but two  疾患は一つではなく二つ

 しかし意見を異にする専門医もいた。Sirlin 氏と Groah さんは別々に MedStar Georgetown University Hospital の消化器科医に連絡を取った。彼は Zach 君には ERCP が必要であること、そしてそれを行うことに同意した。3月4日に行われたこの治療の際、医師らは、胆管の拡張が実際にはまれな cholecdochal cyst(総胆管嚢腫)だったことを発見した。この疾病は生まれつき存在すると考えられており、150,000人におよそ一人の割合で見られる;医師らはそれを観察する方針とした。しかし未治療の場合、この嚢腫は中年期以降に肝硬変など重大な合併症を生じ得る。
 この治療の数日後、Zach 君は調子が良く、そり遊びに出かけることができた。一週間後、食べること、嘔吐すること、そして減じてはきていたが腹痛に対する彼の恐怖を克服するために行動療法士と精神分析医にかかることになった。3月下旬、彼の体重が67ポンド(約30.4kg)になった時、栄養チューブが抜去された。5月1日に復学し、2週後に Sirlin 氏が彼を診察したときにはもはや嘔吐も痛みも見られなかった。
 7月には Groah さんと彼女の夫は新たなジレンマに直面していた:嚢腫に対してどうすべきかという問題である。それを切除することは胆管と膵管の再建を要し回復に数週間かかるような大きな手術となる。それまでに十分耐え抜いてきていた Zach 君の調子は良くなっており、テニスをし、4年生になるのを楽しみにしていたのである。
 さらに検索と相談を行った結果、彼らは前に進むことに決めた。Zach 君には注意深い観察が行われ、手術を受ける方針となったが、その期日はまだ決まっていない。
 さて、それでは集中的におこった異常な消化器症状の原因は何だったのだろうか?それぞれの病気が相互に関係していたのだろうか?医師らには全くわかっていないと Stirlin 氏は言う。「彼がインフルエンザに罹るまでは全く安定していて、それから全てが解き放たれたかのように思われます。真相を語るのはきわめて困難です」
 彼が付け加えて言う。「Graoh さんは私たちが一歩一歩の前進するのに大きな役割を果たしました」
 一方 Groah さんは、Zach 君の症状を精神的なものと片付けることなく原因の探索を進んで手伝ってくれた Sirlin 氏や他の医師たちの援助と支持のおかげと感謝している。
 「最も長く続いている心の傷は、私の同業者たちが私の言うことに耳を傾けてくれなかったこと、私のことを信じてくれなかったこと、そして、厳しく困難な課題について時間をかけて考えてくれなかったことによってつけられました」と彼女は言う。「他の医師が、症状は『すべて患者の頭の中にある』と言うのを聞くと心の非常に奥深いところで反応してしまうのです。それは永遠に残ってしまうようなものであると私は思います」

胆道系の病気で精神的疾患による症状と
間違われやすい胆道ジスキネジーについては
昨年3月のメディカル・ミステリーで取り上げた。

Photo

胆道系解剖図(http://www.ususus.sakura.ne.jp/053bileduct.htmlより)

一方、胆汁・膵液の排泄部である十二指腸乳頭部に存在する
括約筋の機能障害は
オッディ括約筋機能不全(Sphincter of Oddi Dysfunction, SOD)と
総称されているようである。
乳頭部狭窄や機能異常があると胆汁、膵液の流出障害が起こり
種々の胆膵疾患が引き起こされる。
血液検査で胆道系酵素や膵酵素の上昇が認められる。
SODにおける乳頭部狭窄の診断には
内視鏡的乳頭括約筋内圧測定が有用である。
胆管内、膵管内の圧が高値の場合、
乳頭部狭窄の存在が示唆される。
狭窄が確認されれば
内視鏡的乳頭切開術(Endoscopic Sphincterotomy, EST)
が行われる。
本疾患は画像診断や血液検査では異常が認められないことが多く
腹痛の原因がわからないまま精神的なものと
診断されている患者も多く存在すると考えられる。
ましてや小児の場合は正確な診断が一層困難であると
推察される。
各検査、画像診断でも痛みの原因が見つからない
反復性の腹痛が見られるケース、
胆嚢摘出をしても痛みが続くケース、あるいは
原因不明の胆道系酵素や膵酵素の上昇を繰り返すケースなどでは
本疾患の可能性を考慮すべきと思われる。
なお記事中に出てきた総胆管嚢腫では
膵胆管合流異常を伴うことが多く、
互いの消化液が逆流を起こしやすいため
化膿性胆管炎、肝硬変、胆道穿孔、肝内結石、急性膵炎、
慢性膵炎などを併発し、
中年以降では高い確率で胆管癌、胆嚢癌を引き起こすことがある。
この疾患に対して治療が強く勧められるのは
そうした理由に基づくものである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脆弱な身体で生きること

2014-03-19 20:41:49 | 健康・病気

教科書にも載っている疾患であり、
その印象的な症状については十分知っているはず。
しかし実際にその患者に遭遇することになるとは考えが及ばず
診断に至らない、そんな病気が存在する。
その一つに
エーラスダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome, EDS)がある。

3月10日付 Washington Post 電子版

When flexible becomes too flexible 柔らかさの度が過ぎるとき

Ehlersdanlossyndrome

ゆるい身体を持つ人生に向き合う:オレゴン州 Grant’s Pass に住む27歳の女性 Kelly Koep さんは、コラーゲンを合成する身体機能が障害される Ehlers-Danlos(エーラス・ダンロス)症候群と呼ばれる遺伝性疾患を患っている。この病気では超柔軟な関節や伸びる皮膚が見られる。重症型ではそれが生命を脅かすことになる。

By Jeff Leen,
 Mildred Burke(ミルドレッド・バーク)は世界最強の頸を持っていた。
 1930年代のプロレスラーの王者で初めて100万ドルを稼いだ女性レスラー Burke は5フィート2インチ(158.5cm)しか身長はなかったが彼女の太い頸は周径14インチ(35.5cm)あった。群衆を楽しませるために彼女はリングの中央で仰向けに横になり、頭部と頸だけを使ってマットから身体を持ち上げていた。これは“bridge(ブリッジ)”として知られているものだ。彼女は一度に80回、頸のブリッジを行ったことで“Ripley’s Believe It or Not(ウソのようなホントの話を求めて世界中を旅したロバート・L・リプリーの本)”で取り上げられた。
 ところが Mildred Burke の曾孫娘は世界で最も脆弱な頸の持ち主である。
 オレゴン州 Grant’s Pass の Kelly Koep さん(27)は Ehlers-Danlos syndrome(EDS:エーラス・ダンロス症候群)という、コラーゲンの合成が障害される遺伝性の疾患である。以前はきわめて稀と考えられていた EDS は20世紀の初めに確認され、軽症から重症までの6型がある。
 エビデンスによると、しばしば関節が非常に柔らかい状態となる最も一般的なタイプは100人に一人に見られるという。約 5,000 人に1人はより重症のケースであり、SFに出てくる悪夢のような状況となる。すなわち体内の靭帯が骨をつなぎとめることができないのである。
 Koep さんの場合、最も重症のケースである。長年にわたって彼女は、肘関節、膝関節、肩関節、そして顎関節については4回、脱臼を繰り返した。「昔から私は、奇妙な軽業師のようなことができる子供でした」と彼女は言う。「つまり、私は背中を二つ折りにすることができ、肩甲骨をお尻に載せることができるのです」
 最近になって、彼女の脊椎の不安定性が増したため、彼女は頸椎カラーの装着と車椅子の使用を余儀なくされた。彼女はトイレに行くために一日2回だけ起き上がった。彼女の不安定な脊椎が頸の動脈を圧迫し、脳梗塞を起こす危険性が懸念された。
 「中から爆発してしまいそうなほどの圧で頭がはち切れそうな感じでした」と彼女は言う。
 昨年のクリスマスイブに、彼女はメリーランド州 Lanham にある Doctors Community Hospital を受診し、Chevy Chase の Metropolitan Neurosurgery Group の Frazer Henderson 氏によって 3時間半の手術を受けた。
 手術から2日後、病院の廊下を彼女は一年余ぶりに200フィート以上歩くことができた。
 「あの手術のあとすぐにいい感じになりました」と彼女は言う。「3年間、他に答はないものと考えていました。私はまだ20代で、30才にもなっていません。それは非常に憂鬱なことでした。そして今、多少好転しているように思います。生活の一部を取り戻しつつあります」

More than growing pains  痛みが増すだけにとどまらず

 早い段階で Koep さんの両親は、彼女が異常なことに気付いていた。
2、3才のころ、彼女はベッドから落ちて肘を脱臼した。さらに親戚に連れられていたとき再びそこを脱臼した。普通には思えなかった。彼女の母親 Wendy Koep さんも元プロレスラーだった。
 「2度目に起こったとき、病院は小児虐待で母を責めました」Koep さんは思い起こす。「彼らは彼女を病院にとどめておき、彼女のことを Child Services(児童福祉機関)に電話で連絡したのです。彼らは母を信用できなかったのです。結局彼らは私の主治医と連絡をとりました」
 その後も依然として関節はゆるかったが、さらに痛みも増していた。彼女の臀部や下肢は歩行時に支障を来たした。それからは足関節の捻挫、脱臼、亜脱臼の連続だった。彼女は常時学校で杖を使った。一方、彼女は曾祖母と同じように身体は強靱だった。小柄だががっちりした同じような体型だった。身体は男子たちより強かったにもかかわらず、脆弱な関節のためにスポーツをすることができなかった。
 5年生では膝の装具、6年生では足関節の装具、7年生では腰の装具を要した。彼女は呼吸困難もあったが運動性喘息であると言われた。視力障害も出現した。彼女は授業に集中できなくなった。16才のとき学校を中退し家を飛び出した。しかし、結局彼女は家に戻り G.E.D(General Education Development Test:一般教育終了検定)を受け、瞑想によってうつを撃退する術を身につけた。「自分がそれを克服しなければ私の人生は良くはならないのだということがわかりました」と彼女は言う。
 2005年、19才のとき、彼女はEDS という疾病の関節可動性亢進タイプなのではないかとある整形外科医に告げられた。しかしそれは治療不能であったことから、手術は勧められなかった。
 彼女はウェブで EDS を調べたが多くを見つけられなかった。ゆるい関節は昔からあったようだが、EDS は20世紀の初めにようやく命名されていた。この病名は、初めてそれを記載した2人の医師、デンマークの Edvard Ehlers とフランスの Henri-Alexandre Danlos にちなんでつけられた。EDS の診断基準が確立されたのは1998年になってのことである。
 2006年、Keop さんと母親は Austin にある National EDS Foundation(米国の EDS の患者会)のカンファランスに出席した。「話されていたことすべてはまさに私にぴったりのようでした」と Koep さんは思い起こす。
 彼女は精一杯努力して生きていくことを決意した。彼女は仰向けに寝るように注意し、筋肉を強化する訓練を行った。彼女は美容学校に行き、卒業後はラスベガスでボーイフレンドと新しい生活を始めた。当地では MGM Grand(ラスベガスにあるカジノ・ホテル)のスパで働いた。
 しかし病気は彼女について回った。「私にとってサロンで働いたりドライヤーを保持することは困難でした」と彼女は言う。そのため彼女は美容術のインストラクターになった。
 しかし、ある日彼女は軽率にもジェットコースターに乗ってしまった。
 その後「私はまっすぐ歩くことができなくなりました」と彼女は言う。「痛みが強く、まっすぐに見ることができませんでした。あのジェットコースターは私の生活を奪っていたも同然でした」
 ラスベガスのある医師は多発性硬化症であると考えた。その時点まで、EDS によって関節だけが侵されていると彼女は思っていた。しかしそのときこう考えた「EDS が脊椎を侵すことはないのだろうか?」
 脳脊髄疾患の専門家である別の医師は彼女に、それは間違いなくあると告げた。「私の脊椎の靭帯がゆるいため、頭部を保持できない、そのため脊髄の圧迫を起こしかけていると彼は言いました」彼は頸椎カラーを処方した。「生涯この頸椎カラーを装着し、障害に対処しなければならない可能性があると彼は言いました」
 彼女はオレゴン州に戻り、母親と生活し始めたが、彼女の病気は明らかに悪化していた。彼女は振戦に悩まされた。「私には大変多くの神経症状が出てきたので日常生活を送ることさえできなくなりました。ひどく息が詰まるようになり2、3度ほとんど死にかけたことがありました。そんなところまで来ていたのです」
 EDS について初めて調べたときから5年が経過していた。
 「私はインターネットに戻り、グーグルで調べまくるようになりました」と彼女は言う。「今回は様々なサイトで成果がありました。フェイスブックはまさしく特異な手術について語る EDS 患者の巨大なネットワークとなっていました。彼らの多くは私が脊椎について抱えているのと同じ問題を持っていました。皆さんが調べていた主な外科医が Henderson 医師だったのです。そのようにして私は彼のことを初めて知ったのです。フェイスブックのグループからでした」

‘A lack of knowledge’  “知識の欠如”

 Fraser Henderson 氏は University of Virginia で学士号と医学博士号を受けていた。1983年10月、ベイルートの海兵隊兵舎爆破の重症の生存者が運び込まれた時には、海軍大尉で地中海の船上外科医だった。そのときの功績で海軍称賛勲章を受けた。
 彼は Bethesda にある National Naval Medical Center の外科部長や砂漠の盾・砂漠の嵐作戦の旅団付き神経外科医を歴任し、Georgetown University Medical Center の神経外科教授となる前はロンドンで神経外科のフェローを務めていた。
 過去10年間で500人以上の EDS の患者を診てきたと彼はいう。彼によるとその95%が女性で、その多くの人たちは非常に聡明で、自身の疾患についてとても精通しているのだという。
 しかし、彼の経験にもかかわらず、彼が遭遇する疾病による障害の重症さにはしばしば驚かされるという。
 「私は文字通り逃げ出したくなるような多くの症例を見てきました」と彼は言う。「あまりに重症であったため誰も手を出そうとしなかった患者もいます。彼らの多くは大学のプログラムを受診しているが断られているのです。これらの最重症のケースを治療できるかどうかについて自分自身大変心配になったものです」
 Henderson 氏は本疾患について患者への教育を進めている小さな医師グループの一員である。この活動に携わる仲間の一人に Greater Baltimore Medical Center の遺伝学者 Clair Francomano 氏がいる。彼女は EDS を“真の希少病”と呼んでおり、どれくらいの数の人が罹患しているかについての確固たるデータがないことを指摘する。
 「この疾患の多くの症状について医学界における知識の欠如があります」と彼女は言う。
 症候があまりに多様であることから誤診がよく起こる。コラーゲンは体内の多くの異なるシステムに存在する。たとえばそれは関節、脊椎、心臓、眼球、あるいは皮膚などである。Henderson 氏は30に及ぶ症状を持った患者を見たことがある。EDS はこれまで考えられてきた以上に多いと彼は考えており、多くの患者はこの疾患を持って生きていることを知らずにいるという。
 「14~5年以上前には実際にこの疾患についての情報は何もありませんでした。今でも医学部では教えられていないのです」と Henderson 氏は言う。「我々も、この疾患はきわめてまれでおそらく一例も遭遇することはないと教えられました」
 しかしインターネットは事態を良い方向に向かわせることになる。
 「かなり多くの患者がそれを確認することによって自分の診断名を見つけています」と Francomano 氏は言う。「彼らは自身の症状をグーグルに打ち込み、Ehlers-Danlos National Foundation や Henderson 医師や私や他の医師たちによるビデオにたどりつき、私たちを見つけてくれるのです」
 Henderson 氏は、手術は完璧な解決策ではなく、理学療法が不成功に終わった Koep さんのような極端な症例における最後の手段であるべきだと言う。
 「一人ずつ問題に取り組むことでこれらの患者の大部分をほどほどの生活に戻すことができています」と彼は言う。「多くは結婚し、学校に行き、良い仕事を得ています。多くの患者は正規雇用には戻れませんが彼らの生活はかなり生きやすいものとなります」
 Koep さんのケースで用いられた手術は神経外科のレパートリーの標準的なものであると彼は言う。彼は、彼女の頭部の圧を軽減し、チタン製のプレートとスクリューを用いて頭蓋骨、第1頸椎、第2頸椎を固定した。
 「Koep さんのケースで難しいことは、EDS においては骨も脆弱となっている傾向があり、そのため脊椎を安定させるためのスクリューの固定が困難であるという事実です」と彼は言う。
 EDS は多系統疾患であるため、手術は、より大きな問題の一面のみに対処していることになると Henderson 氏は言う。「手術では特定の状況に対して治療し問題を緩和させることができますが、他の問題がなくなったことを意味しません」多くの患者には一つ以上の内科的、あるいは外科的治療が求められる。
 Henderson 氏は最近、手術を受けて2年を迎えた EDS の患者22例の研究を終えた。彼の知見によると、14例で能力が改善、5例で変化なく、3例ではこの疾病の他の側面のために術前より増悪していた。彼らが再び手術を受けるかどうか第3者により問われると全員が受けると答えている。

Much better than before  以前よりはるかに良い

 手術の8週間後になっても、Koep さんははるかに改善したと感じていた。彼女は日常的に椅子から立ち上がり、歩きまわることができ、一日の大部分の時間、頸椎カラーなしで過ごせた。
 「驚くべきことです」と彼女は言う。「頭の中の圧を全く感じません。歩くこともできます」
 ただし脚を引きずってである。彼女の右の股関節は常時緩く、手術のあと臀部が関節から飛び出しており理学療法が必要となっている。さらに彼女には下位脊椎の病変に関連する膀胱・直腸障害があるためさらなる手術が必要となる可能性がある。
 「一つの問題が解決したので別の問題は立ち消えた感じです」と彼女は言う。
 しかし彼女にはまだいくつかの神経学的症状があった。たとえば手と腕のうずく感じがある。また 3月下旬には Henderson 氏のもとに追跡調査の来院のために戻ってくる予定だ。
 しかし術後の彼女の生活は術前の状態に比べてはるかに良いと彼女は言う。
 彼女以外の人たちにとっても手術は人生を変えるものとなっている。Mackenzie Mathis Spencer さん(23)は、彼女の過剰な柔軟性、頭痛、およびふらつきは大した問題ではないとか、ひょっとしたら多発性硬化症や線維筋痛症かも、などと何年も言われ続けたあげくようやく Henderson 氏を知った。サウスカロライナ州 Spartanburg で育った彼女はチアリーダーや熱心なダンサーをしていた。しかしそれから両腕が弱くなり、ほとんど鉛筆も持てなくなって、18才の誕生日の5日前にはほとんど歩くことができなくなった。
 誕生日の次の日、神経内科医は母親にこう言った。「いいですか、Mackenzie は仮病を使っています。もし彼女がそれほどひどい苦痛にあったなら笑顔ではいられません」
 彼女の母親はウェブを探し、Spartanburg の友人たちに話した。友人の友人が EDS について母親に話し、ようやく Henderson 氏にたどりつくことができた。
 彼は率直な人間だった。
 「あなたには大変重大な神経症状があります」と彼は彼女に言った。「何を行えばいいのかはわかりません」それから彼は腕を彼女の肩に回して、今日まで彼女が大切に心にしまっている言葉を告げた。「次に何をしたらいいのかはわかりません。でもあなたがあなたの人生を取り戻すために私にできることのすべてをするつもりです」
 2009年6月、彼は彼女の腰部の手術を行った。2週間後、彼は、彼女に認められた脳幹の変形を修復し、頭蓋底から頸部の上位3椎体までを固定した。
 一ヶ月後、彼女は再び踊ることができた。その2ヶ月後には2年ぶりとなる公演を行った。
 ちょうど3年後となる昨年、彼女は University of South Carolina を平均点3.88で卒業し、ワシントンで医療コンサルタントとしての仕事を得た。同月、彼女は結婚した。
 「それは全く期待していなかったことです」と彼女は言う。「自分の人生が取り戻せるとはまったく思っていませんでした」

EDS(エーラスダンロス症候群)については
難病情報センターのサイトを参照いただきたい。

エーラスダンロス症候群は
人間の皮膚や組織を形成するコラーゲンないし
コラーゲン成熟過程に関与する酵素の遺伝子変異により発症する。
結合組織成分の異常が生じ、
皮膚の異常な伸展性・脆弱性、血管脆弱性に伴う易出血性、
および靱帯や関節の異常な可動性の増大が見られる。
その原因と症状から、6病型(古典型・関節可動性亢進型・
血管型・後側彎型・多関節弛緩型・皮膚脆弱型)に分類されていたが
現在は少なくとも10類型があり、さらに新型が存在することも
報告されている。
なお、同じ型であっても症状や、その程度・発症形式が異なるなど、
非常に個人差が大きいのが特徴である。
遺伝形式は病型によって異なるが、
常染色体優性遺伝ないし常染色体劣性遺伝のほか
遺伝形式の不明な病型もある。
全病型を合わせた推定発症率は5,000人に一人とされており、
全病型合わせた患者は国内約2万人と推計される。
古典型では、皮膚の脆弱性(容易に裂ける、萎縮性瘢痕)、
関節の脆弱性(柔軟、脱臼しやすい)、
血管の脆弱性(内出血しやすい)が症状として見られる。
関節可動性亢進型では、
関節の過伸展性(脱臼・亜脱臼)が見られる。
血管型は、薄く透けて見える皮膚、易出血性、
特徴的な顔貌(薄い口唇や人中、小さい顎、細い鼻、大きな眼など)、
さらには動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする。
『新型』では、皮膚、関節、血管あらゆる臓器の脆弱性を伴う。
合併症として
心臓弁の逸脱・逆流、上行大動脈の拡張が見られる場合がある。
関節可動性亢進型においては、
反復性脱臼、若年発症変形性関節症などの関節症状に加え、
慢性難治性疼痛、機能性腸疾患、自律神経異常などが
見られることがある。
血管型においては、動脈解離・動脈瘤による破裂、
頸動脈海綿状静脈洞瘻、消化管穿孔、子宮破裂、気胸といった
重篤な合併症を生じることがある。
罹患女性の妊娠例では分娩前後の動脈破裂または子宮破裂により、
最大12%の死亡リスクがあるという。
本症候群に対する根治的治療はない。
古典型における皮膚、関節のトラブルに対しては、
激しい運動を控えることやサポーターを装着するなどの予防が
有用である。
皮膚裂傷に対しては、皮膚脆弱性のため慎重な縫合を要する。
関節可動性亢進型においては、
関節を保護するリハビリテーションや補装具の使用、
また疼痛緩和のための鎮痛薬の投与が行われる。
血管型においては、
定期的な動脈病変のスクリーニングが重要で、
慎重に評価を行って、治療はできる限り保存的に行う。
必要時には血管内治療を考慮する。
皮膚を含めたほぼすべての身体組織が脆弱なため
手術には慎重な対応が必要だが、
Koep さんのように脊椎の不安定性が重篤となり
外科的治療以外の策が尽きた場合には、
Henderson 氏のようなエキスパートに頼らざるを得ないのが
現状のようである。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2014年4月新ドラマ

2014-03-08 19:45:25 | テレビ番組

まずは2014年1月クールのドラマを総括してみたい。
刑事物、医療物が大部分を占めていた今クール、
案の定、メリハリのない毎日を過ごさせていただいた。
『明日、ママがいない』に対するクレーム問題が話題となったが
結局さほどの影響はなく、ドラマ自体もたいしたことはなかった。
例によって今クール全ドラマを少なくとも初回は視聴たものの
結局継続視聴できたのは、
『福家警部補の挨拶』
『僕のいた時間』
『緊急取調室』
『わたしの嫌いな探偵』、の4つのみ。
不作は予想されていたので大して失望もしなかった。

Photo

3月7日までの視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]に基づき
上位作品から順に勝手な寸評を加えてみたい。
(括弧内は平均視聴率、大河ドラマを除く)

『相棒(12)』(17.13%)
相変わらず視聴率は好調で今クールトップと獲ったが、新年早々のスペシャルを見てがっかり。で本編は視聴せず。もはや相棒が『相棒』でなくなっていた。撮影現場でもこの二人の不仲説が噂されているようで、ここまで相棒間の年齢が離れるとさすがにもう『相棒』は無理?
『S ~最後の警官』(13.99%)
初回と2話目を見たが、そこが限界。初回こそ18.9%と好調な滑り出しに思えたが以後急速に低下。向井理演じる主人公・神御蔵一號が炸裂し過ぎ。警察ドラマにはある程度の抑えとリアリティーが必要だろう。
『明日ママがいない』(12.93%)
番組内容への抗議で話題になったものの日テレが強硬に継続するが視聴率は上がりも下がりもしなかった。2話まで見て断念。シリアスなドラマかと思えば中途半端にコメディ・シーンもあり、結局何を伝えたいのか理解できない。演技力のあるはずの子役たちの演技が逆に鼻について不快。
『緊急取調室』(12.76%)
一応続けて視聴した。取調室で犯人を追及する天海ねえさんはピッタリはまっていたと思う。しかし、いかんせん他のメンバーがおっさんだらけで若い女優は皆無、花がない。シリーズ化するには地味過ぎ。
『失恋ショコラティエ』(12.23%)
2話途中で断念。月9 &嵐メンバーでこの低視聴率!個人的にはストーリーからして無理。松潤演じる主人公・小動爽太にどうしても感情移入できなかった。松潤には視聴者が主人公を応援したくなるような演技を期待したい。さらに言えば原さとみの魅力が生かし切れていなかった。
『医龍4~Team Medical Dragon』(12.01%)
1話で断念。新鮮味ゼロ。朝田龍太郎のゴッドハンドぶりはもうよくわかったから、回りの人たちにいちいちそのすごさを説明させるのはやめてほしい。このシリーズ、もうホントに終わりでいいでしょう。
『戦力外捜査官』(11.56%)
1話で断念。TAKAHIRO の演技力を心配したが、思ったより安定しており、MAKIDAI レベルよりはるかに上だった。しかし内容的には全く面白くなく、武井咲の魅力も薄れるばかり。よく2桁獲れたなと思うが、土曜夜という時間帯のおかげかも?
『チーム・バチスタ4~螺鈿迷宮』(11.34%)
1話で断念。いつもどんなドラマでも同じ顔つきで登場する伊藤淳史、大げさな演技の仲村トオル。個人的にはこのコンビに全く魅力を感じない。これに柳葉敏郎が加わると、もはや見続けるのは苦痛でしかない。
『福家警部補の挨拶』(9.80%)
視聴継続した。倒叙ミステリーということだが、檀れいの『福家』は、『コロンボ』や『古畑』には遠く及ばない。一生懸命キャラを作ろうとしているのはわかるが無理がある。また犯人を落とす決め手が視聴者を唸らせるものとなっていない。シリーズ化は難しそうである。
『僕のいた時間』(9.79%)
視聴率は伸びなかったが個人的には今クール一押しのドラマ。これまでさほど好きな俳優ではなかったが今回改めて三浦春馬の演技力に感心した。難病ものでは細部にこだわる視聴者がいるかもしれないが、大筋さえ通っているなら、それを基にしっかりと人間を描くことでいいドラマになるのだと思う。
『わたしの嫌いな探偵』(6.83%)
トリックは稚拙でミステリーとしては全くつまらなかったが期待するところがそこでなければ金曜夜にそこそこ楽しめたのではないか。剛力彩芽のコメディ台詞は見ていて辛いものがあった(半ばあきれた)が、玉木宏、渡辺いっけいらがよくカバーしていたと思う。何とか見続けることができた。
『Dr.DMAT』(6.69%)
1話で断念。『一瞬の迷いが人命救助の可否を分ける究極の現場』とはよう言うた。災害現場であれだけもたついて迷って DMAT とは、見ている方がイライラする。視聴率は 5.0%まで下がったがなんとか打ち切りだけは回避した。
『夜のせんせい』(6.61%)
1話で断念。最低 5.1%まで下がるなど予想通りの低視聴率。最近のTBSは一体何を考えているのだろう。もはや観月ありさに説教されたいと思っている視聴者などいないことに気付くべきである。

というわけで2014年1月クールはどれも低調なままに
終わろうとしている。
4月からの新番組に期待したい。

フジ月9 4/14~ 『極悪がんぼ』 尾野真千子、椎名桔平、三浦翔平、仲里依紗、小林薫、竹内力、板尾創路、三浦友和、宇梶剛士
原作は作・田島隆、画・東風孝広のコミック『極悪がんぼ』。尾野真千子がフジテレビ連ドラ単独初主演。原作は広島が舞台となっており主人公は神崎守という男性になっているが、ドラマでは架空の町・金暮市を舞台に女主人公・神崎薫(かんざきかおる)が裏社会の一筋縄ではいかない他人の揉め事や争い事など最悪なトラブルを解決していく。タイトルの“がんぼ”は広島の古い方言で『いたずらっこ』『やんちゃ』『悪い奴』といった意味。薫は幼い頃、お好み焼き店を営む母親が不渡りを出したことで一気に貧乏になる。中学卒業後は貧乏人生から脱出するため職場を転々とし、節約に節約を重ね、やっと貯金出来たお金が100万円。 その矢先、人助けの気持ちから同僚に100万円を貸したことで多額の借金を背負わされることとなり、薫は再び人生のどん底に落ちる。 そんな時、薫は“小清水経営コンサルタント”のメンバーと知り合い、ひょんなことから、その世界に足を踏み入れることになる。 裏切りや出し抜き合いなど、ずる賢い人々の中で懸命にもがき、持ち前の“負けん気根性”でどん底から這い上がろうと努力する。共演陣には、元警察庁の官僚で小清水経営コンサルタントのナンバー2である冷静沈着な策士・冬月啓(ふゆつきひらく)に椎名桔平、薫の元同僚で何かと薫に絡んでくるニートの茸本和磨(たけもとかずま)に三浦翔平、政財界を裏から支えるフィクサーで小清水経営コンサルタントの所長・小清水元(こしみずげん)に小林薫、カネにがめつい小清水経営コンサルタントのベテラン所員・金子千秋(かねこちあき)に三浦友和、スナック『まやかし』のママで薫や金子に依頼人を紹介するという副業を持つ真矢樫キリコ(まやかしきりこ)に仲里依紗といった面々。その他、同コンサルタントの所員として板尾創路、竹内力らも出演。我々の日常に潜む盲点が暴かれ指摘されていくドラマ。義理と人情と愛が交錯しながら、笑いと涙と人情にあふれる“裏社会”エンタテインメント。これまでの月9のイメージが壊されていくドラマ。

フジ火9 4/15~『ビター・ブラッド』 佐藤健、池沢美緒、渡部篤郎、吹越満、田中哲司、皆川猿時、KEIJI(EXILE)、高橋克実
原作は雫井侑介の小説『ビター・ブラッド』。新人刑事と、彼が少年時代に別離した実父である刑事とがコンビを組んで事件の解決をめざす刑事ドラマ。佐藤健演じる新米刑事・佐原夏輝は困った人を放っておけない誠実さを持ち、気持ちが入りすぎて涙を流してしまうこともあるほどの優しい性格の持ち主。銀座警察署刑事一課に配属となった夏輝は、皮肉にも 13才のときに別離して以来会ったこともなかった父・島尾明村(渡部篤郎)とコンビを組むことになる。夏輝は自分とは正反対なこのキザでオシャレでプレイボーイ風(ジャケットプレイが得意とか)で変わりもののベテラン刑事に最初は反発しながらも次第に刑事としてのあるべき姿を学んでいくという展開。周囲からは変人に見られてしまう明村だが、実際は事件解決への情熱は人一倍強く、夏輝と別々に暮らすようになったのも、家庭より仕事を優先するという明村と妻の価値観の衝突から離婚に至ったという経緯があった。以来一度も会っていなかった息子といかにして関係修復を果たすのか?そのやりとりにはコメディ要素もあるそうである。親子でバディを組むという時点ですでに視聴意欲がかなりそがれてしまうのだが、果たしてこのコンビで視聴率が獲れるのだろうか?

フジ(関西テレビ)火10 4/8~ 『ブラック・プレジデント』 沢村一樹、黒木メイサ、国仲涼子、門脇麦、永瀬匡、高田翔、高月彩良、澤部佑(ハライチ)、青木さやか、永井大、白川由美
最近『ブラック企業』という言葉をやたら耳にするが、そんな企業を舞台に繰り広げられるヒューマンドラマ。急成長を遂げているアパレル企業の創業社長・三田村幸雄(沢村一樹)は会社の利益を第一に社員を酷使。ワンマン社長の彼は、社員個々が努力することは当然の義務であり、そのための過酷な労働は当たり前と考えており、自社がブラック企業だとの自覚はない。45才になった三田村は、会社経営について基礎から勉強し直そうと大学に入ることになる。その大学で新米講師・秋山杏子(黒木メイサ)と出会う。知性的な杏子に惹かれる一方、環境も考え方も全く異なる彼女とはたびたび反発しあう。また『ゆとり世代』と呼ばれる大学生たちに対しては、自分の会社では使えない輩ばかりだとバカにするものの、ある時、三田村はひょんな事から彼らと交流を持つようになり、人間同士の付き合いをし始めることで、やがて逆に刺激を受け、学ぶ事も多いことに気付かされる。毎回、様々な事件が起き、尊大だった三田村も、そして周りの人たちも徐々に意識が変わっていく。一方、社内では三田村を追い落とそうとする勢力が強まり、社内での勢力争いが始まる。そして三田村は自社がブラック企業だったということを知る。三田村の会社で働く有能な秘書を国仲涼子、専務を永井大、三田村の母親を白川由美、妹を青木さやかが演じる。また杏子の助手に澤部佑、大学生らに門脇麦、永瀬匤(たすく)、高田翔、高月彩良らがキャスティングされている。刑事ものでも医療ものでもない久々の人間ドラマでひょっとしたら当たるかも?

TBS火10(新設枠) 4/15~ 『なるようになるさ。2』 舘ひろし、浅野温子、志田未来、安田章大(関ジャニ∞)、紺野まひる、渡辺美佐子、南沢奈央、伊野尾慧(Hey!Say!JUMP)、泉ピン子
2013年7月クール金曜10時枠で放送された橋田壽賀子先生脚本による連続ドラマのシーズン2。TBS金10枠はここのところ視聴率低迷が続いているのだが、さすが橋田先生、この枠で平均視聴率12.6%(関東地区・ビデオリサーチ)、しかも全話2桁。今回は火10枠に移って第2弾を、となったようである。自宅を改装したカフェレストランを舞台にしたホームドラマで、橋田先生お得意の(『渡鬼』の岡倉家、野田家のように)他人同士が一つ屋根の下で暮らす人間模様が描かれる。舘ひろしと浅野温子が夫婦役を演じ、『自宅レストラン』を舞台に他人同士が織り成す人間模様をコメディタッチで描き、現代の家族のあり方を問うホームドラマとして人気を博した。主婦層にとって『渡鬼』なきあとの貴重なお気軽ドラマと言えそうだ。シーズン1では三人の息子たちが結婚、独立した後に、自宅を改造したレストランを始める主婦・綾(浅野温子)とそれを支える夫・大悟(舘ひろし)を中心に、住み込みで働く従業員たちの人生模様を織り込みながら物語が進められた。シーズン2では、まず初回スペシャルにて、新たに人生をスタートさせた内田陽子(志田未来)、大竹昇(安田章大・関ジャニ∞)、千葉恵理(紺野まひる)ら元従業員のその後と、新しく加わることになる従業員たちが抱える困難や課題に立ち向かっていく姿が描かれる。新しい従業員役として渡辺美佐子、南沢奈央、伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)らが登場。一方、老後を考える熟年夫婦が、独立した3人の息子たちとどう向き合っていくかにも焦点が当てられる。ちなみにタイトルの『なるようになるさ。』タイトル内の句点には橋田先生のこだわりがあるに違いない(意味は不明だが…)。『脚本は時代が書かせてくれる』と豪語される先生だが、ご高齢の先生から見た現代の日本人や日本社会の姿、それに対する鋭い風刺は素直に見れば楽しみなドラマと言えるのかもしれない。

テレ朝水9 4/16~ 『TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部』 小澤征悦、田辺誠一、塚本高史、神尾佑、渡辺いっけい、西田敏行
小澤征悦(ゆきよし)民放連続ドラマ初主演となる刑事ドラマ。小澤が演じるのは、熱い正義感を胸に秘めながらもクールに捜査の指揮を執る怜悧な管理官・佐久晋吾(さくしんご)。管理官とは殺人や誘拐など重大事件が発生したときに設置される捜査本部の指揮を執る役職。警視庁捜査一課にわずか10人ほどしかいないという。捜査本部には警視庁、所轄、隣接署から40~100人規模の捜査員が集められるが、彼らを統率し確固たる捜査方針を打ち出す能力が求められる。主人公の佐久は、ノンキャリアながら異例の若さで管理官に昇進。淡々と職務を遂行するが、その一方で中間管理職的な立場に悩み、葛藤を抱える。捜査員の些細な報告から違和感を覚えたり、被疑者のわずかな言動から嘘を見抜いていく。佐久の司令塔としての活躍が描かれる。共演には、佐久にライバル心を抱く捜査一課13係係長で警視総監の甥である島野誠に田辺誠一、佐久管理官付運転手兼刑事で、何故か刑事部長・谷中との間に不穏な繋がりのある屋敷大地に塚本高史、捜査一課13係のベテラン刑事で佐久の先輩でもある小菅光晴に渡辺いっけい、そして、表向きには佐久のよき理解者で事件解決に向けアドバイスもするが、実は警視総監の座を狙う野心家の刑事部長・谷中寿也に西田敏行など贅沢なキャスティング。『相棒』並の視聴率が獲れるかが見どころ。

日テレ水10 4/16~ 『花咲舞が黙ってない』 杏、上川隆也、生瀬勝久
原作は池井戸潤の小説『不祥事』『銀行総務特命』。『半沢直樹』で大当たりした“銀行もの”に日テレが追随。これまた銀行内での勧善懲悪的ドラマで『女性版・半沢直樹』の活躍が描かれる。NHK 朝ドラ“ごちそうさん”で大好評を博した杏が演じる主人公は地位も権力もない一女性銀行員・花咲舞。しかし、思ったことをはっきり言う性格で、その正義感の強さから上司に対しても間違っていることは「間違っている」と言い放つ。そんな舞が『臨店』という業務に就く。これは事件や不祥事を起こした支店に行き解決に導くのが任務である。舞は、不正に対して見て見ぬふりできず、虐げられている弱い立場の人たちのために相手が誰であろうとも構わず立ち向かっていこうとする。この舞とコンビを組むのが出世コースから外れてしまったベテラン行員・相馬健。この凸凹コンビが、現金紛失、情報漏えい、融資トラブルなど銀行内で起こる様々な事件や不祥事を、銀行内で最大派閥を持つ執行役員・真藤毅と対立しながらも解決していくという展開。脚本は『ごくせん』『1リットルの涙』の江頭美智留。

フジ水 10 4/9~『SMOKING GUN~決定的証拠~』 香取慎吾(SMAP)、西内まりや、中山優馬、安藤玉恵、濱田ここね、鈴木保奈美、倉科カナ、イッセー尾形、谷原章介
原作は2012年より『グランドジャンプ』に掲載されている、横幕智裕(よこまくともひろ)・作、竹谷州史(たけやしゅうじ)・画なるコミック『Smoking Gun 民間科捜研調査員・流田縁(ながれだえにし)』。“Smoking Gun”とはタイトルにもあるように『決定的な動かぬ証拠』の意。警察が取り合わない身の回りの些細な事件を扱う『民間科学捜査研究所』の活躍を描くサイエンス&ヒューマン・ミステリー。『“疑惑”の念に苛まれた方々。身の“潔白”を証明したい皆様。知られざる“原因”を究明したい諸氏諸賢。弊社では“真実”の科学的証拠をお売りしています』。世間を賑わすような大事件ではないが当事者からして見れば人生を左右しかねない重大な案件が依頼者より持ち込まれる民間科捜研。そしてそこの調査員たちには『直接依頼人や関係者の不安や痛みを背負う』覚悟が求められる。彼らは巧みな科学技術で鑑定と調査を行いながら、一方で相応の『熱意』と『思いやり』を持って、独特の思考と発想力を活かしながら依頼に向き合う。主人公は千代田科学捜査研究所の調査員・流田縁で香取慎吾が演じる。元科捜研のエースとして活躍していた縁は過去に傷を持つ。偏屈で、愛想も悪い彼は、もじゃもじゃ頭がトレードマーク、 ドーナツが大好物という独特のキャラの持ち主。超ぐうたら、超ズボラで整理整頓が大の苦手、デスクは散らかり放題。しかし科捜研技官としての腕はピカイチで、DNA鑑定、画像分析、筆跡鑑定、指紋照合など科学技術を駆使し、保険金問題や痴漢の潔白証明、ストーカー被害など、さまざまな難事件に挑み、決定的証拠をつかんでいく。ヒロインの石巻桜子役には西内まりや。科捜研にいながら科学の技術を持っていない桜子は視聴者と同じ目線で民間科捜研の実態を知っていくという役どころ。千代田科学捜査研究所の所長・千代田真紀には鈴木保奈美。強引だがしっかり筋が通ったキップのよさを持った女性。さらに縁と対立する柏木は原作では女性となっているが、ドラマでは男性の柏木夏生として登場させるが、これを谷原章介が演じる。ここ数年、視聴率の獲れない香取慎吾だが、この風変りなキャラクターで人気挽回となるか?

TBS木9 4/10~ 『MOZU Season1~百舌(もず)の叫ぶ夜』 西島秀俊、香川照之、真木よう子、生瀬勝久、吉田鋼太郎、伊藤淳史、有村架純、池松壮亮、長谷川博己、石田ゆり子、小日向文世
原作は逢坂剛のハードボイルド小説『百舌の叫ぶ夜』。2012年のドラマ『ダブルフェイス』に続くTBSとWOWOWの共同制作ドラマの第2弾。ご覧の通りの超豪華キャストだが本作は2本立てとなっており Season 1 の『百舌の叫ぶ夜』が4月からのこのTBS木9で、Season 2 の『幻の翼』がWOWOW 夏の連続ドラマWで放映予定と、WOWOWを契約していない人にとってはハードルの高いドラマとなる。最愛の妻を爆弾事件で失った公安のエース・倉木(西島秀俊)、愚直なたたき上げの刑事・大杉(香川照之)、事件の謎を解く鍵を握る公安警察官・美希(真木よう子)らが、捜査の過程で、殺し屋『百舌』の存在の謎、公安の秘密作戦にまつわる悲劇、国家を揺るがす陰謀など様々な壁に立ち向かう。でもやはり、地上波ドラマは地上波だけで完結していただきたいものである。

テレ朝木9 4/10~ 『BORDER』 小栗旬、青木崇高、波瑠、野間口徹、浜野謙太、遠藤憲一、古田新太、滝藤賢一
死者と対話する能力を身につけた主人公の刑事が正義と法の境界など様々な局面で命と向き合おうとする新機軸の刑事ドラマ。直木賞作家・金城一紀氏の原案&脚本。生死の境をさまよったことをきっかけに、『死者と対話することができる』という特殊能力を身に着けた主人公の刑事が、無念の死を遂げた人々の声に耳を傾け、生と死、正義と法、情と非情の『BORDER(境界線)』で揺れ動きながら事件に立ち向かっていく姿を描く。主人公の刑事・石川安吾を小栗旬が演じる。物語は、様々な事情で予期せぬ最期を迎えた死者たちが、石川にメッセージを託すことで、思いも寄らない方向へと突き進んでいく。そして、死者の声を聞いた石川は、時に刑事として許されない領域にまで踏み込み、ギリギリの葛藤を繰り広げる。超自然的な要素を取り入れた一話完結型の刑事ドラマだが、死者の声が聞こえるのなら捜査は要らない、のではないだろうか?

フジ木10 4/17~ 『続・最後から二番目の恋』 中井貴一、小泉今日子、坂口憲二、内田有紀、飯島直子
岡田惠和による完全オリジナル脚本で 2012年1月クール同枠で放映された連続ドラマの続編。“大人(中年)の恋愛ドラマ”ということだったが、前作は不完全燃焼で中途半端に終わった感じだった(タイトルにある『最後から二番目』の意味もよくわからなかった)。とはいえこのドラマでキョンキョンは見事に復活を遂げた。小泉今日子演じる48才の吉野千明と中井貴一演じる52才の長倉和平は会えば口論を繰り返す相変わらずの関係。和平の妹・典子(飯島直子)、弟・真平(坂口憲二)、妹万理子(内田有紀)らも変わりなく登場ということのようだ。古都・鎌倉を舞台に、彼ら中年男女のすったもんだが描かれる。若い人たちは見ないだろうと思っていた前作の視聴率は、全話で10%越え、平均12.4%(関東地区・ビデオリサーチ)と意外に健闘している。ただ続編も前回と同じ様な展開だと視聴者は離れてしまうのではないかと危惧される。

TBS金10 4/11~ 『アリスの棘』 上野樹里、オダギリジョー、栗山千明、中村梅雀
女主人公が、大学病院を舞台に父親を死に追いやりミスを隠蔽した医師達に復讐するというオリジナルサスペンスドラマ。『冷酷な復讐鬼』であるダーク・ヒロイン・水野明日美を上野樹里が演じる。明日美が14才のときに手術ミスで父親が死去。復讐の鬼と化した明日美はミスが隠蔽された大学病院に新人医師と就職、父の死に関わった一人一人に復讐を果たす。患者に寄り添おうとしない大学病院の傲慢な医師達に切れ味鋭い頭脳で立ち向かい、容赦なくぶった斬る。『半沢直樹』病院版が狙い?シリアスなドラマなようだが心配は主演の上野樹里。『のだめ』や『江』風なセリフ回しだったら一気に醒めて終わってしまいそう、である。

テレ朝金11:15(金曜ナイトドラマ) 4/18~ 『死神くん』 大野智(嵐)ほか
原作は1983年から1990年までフレッシュジャンプ、月刊少年ジャンプで連載されていた、えんどコイチのコミック『死神くん』。これまでアニメ化もされていない。主人公は“死神くん”こと死神413号という死神で嵐の大野智が演じる。彼の役目は死亡予定者に死を宣告し、魂を霊界に送ること。黒いスーツに蝶ネクタイの姿で死を迎える人の前に現われ名刺を差し出し『おめでとうございます!お迎えにあがりました』と告げるのだが、一方で自殺しようとする人間を説得したり、想定外の死(誤死)を阻止するのも仕事の一つ。しかしこの413号、死神業では新米のためしばしば人間寄りの判断をしてしまい、冥界のルールを破ってしまい上司に叱責されてしまう。ドラマは一話完結で、回毎に登場する対象人物に対する413号の奮闘が描かれる。死神でありながらも“生きることの尊さ”を訴えたり、昇天させたり、あるいは現世に戻したり…。一方、厳しくうるさい上司もいて413号には中堅サラリーマン的悲哀も漂う。大野クンにとってははまり役かもしれない。コメディ要素を取り入れながらも、死の宣告を受けた人々が残された時間を輝かしいものにするため精一杯生きようとする姿と、それを温かく見守る死神くんの姿がハートフルに描かれる。なお監督は『リング』『L change the World』『クロユリ団地』などで知られる中田秀夫。

日テレ土9 4/12~ 『弱くても勝てます~青志監督とへっぽこ高校球児の野望』 二宮和也(嵐)、福士蒼汰、有村架純、中島裕翔(Hey! Say! JUMP)、山崎賢人、本郷奏多、間宮祥太朗、桜田通、鈴木勝大、柳俊太郎、平岡拓真、薬師丸ひろ子
原作は高橋秀美の『弱くても勝てます: 開成高校野球部のセオリー』。日本のトップクラスの進学校・開成高校の監督や選手たちへのインタビューをもとにして書かれたノンフィクション。ドラマでは、日本有数の進学高校にやってきた青年教師・田茂青志(たもあおし)が同校の超軟弱野球部の生徒たちと勝利をめざして奮闘する姿が描かれる。東大で生物の研究を続けてきた田茂(二宮和也)は自身の母校である進学校に勤務することになり、そこの超へっぽこ野球部の監督に就任する。部員は5人、創部以来勝利したことはない。グラウンドでの練習は週一回、3時間だけ。キャッチボールすらままならない選手たちだったが、このチームになんとか勝利させたいと田茂は『異常なセオリーで異常なことをして異常な勝ち方をする』をモットーに奇抜な策を弄して勝利を目指す。野球部員・赤松公康役に福士蒼太、野球部マネージャー・樽見柚子役に有村佳純、柚子の母・楓役に薬師丸ひろ子と『あまちゃん』メンバーが揃う。野球部員の面々には、中島裕翔(Hey! Say! JUMP)、山崎賢人、本郷奏多、間宮祥太朗、桜田通、鈴木勝大、栁俊太郎、平岡拓真ら、若手注目株の俳優陣が揃う。

フジ土11 4/19~ 『ファースト・クラス』沢尻エリカ、中丸雄一(KAT-TUN)、佐々木希、菜々緒、三浦理恵子、板谷由夏
沢尻エリカが 2006 年7月期 TBS ドラマ『タイヨウのうた』以来8年ぶりとなる地上波連ドラ出演。ファッション業界で働くことを夢見ながら、下町の衣料材料店で日々地道にボタンや生地を売っていた沢尻エリカ演じる主人公、吉成ちなみ(よしなりちなみ)は、あるとき自分には縁のない世界だと思っていたファッション雑誌の編集部で働くこととなる。大きな期待を胸に新たな世界の扉を開けたが、実際のそこは日々女たちがお互いを捕食しあう恐ろしき伏魔殿だった。雑用をやらされるだけの底辺から、雑誌や広告を自由自在に操るトップレベルまで、格差の激しい業界。そして、日々ランキングが変わる女の世界“マウンティング”=“人間の格付け”地獄。この厳しいピラミッドの中で生き抜く唯一の方法は、“ファースト・クラス”の地位を得ること。そんな非情な“女の世界”で、ちなみは仕事でも恋でも、そして経済的にも、どんな地位を築いていけるのか?  彼女を取り巻く天敵には、ファッション業界のカリスマで、強烈な性格の編集長、大沢留美(板谷由夏)をはじめ、ティーンに絶大な人気を誇るトップモデルMIINA(佐々木希)、帰国子女のエディター川島レミ絵(菜々緒)、大沢と同期で一見ふんわりとした印象だが実はしたたかな副編集長・八巻小夏(三浦理恵子)らがいる。一方、ちなみの唯一の味方で、後に恋愛関係へと発展するアシスタントフォトグラファー・西原樹を KAT-TUN の中丸雄一、業界ナンバーワン・モテ男のスタイリスト磯貝拓海を平山浩行が演じる。 最新の社会事象とも言える女性同士の“マウンティング”を主軸に、壮絶な格差業界に立ち向かう底辺女子が、頂点の“ファースト・クラス”を目指して成り上がろうとする現代版・裏シンデレラストーリー。復帰後、かつての輝きが見られない沢尻エリカが今後の連ドラ常連となれるか、正念場となる主演ドラマである。

NHK日8 継続中 大河ドラマ 『軍師官兵衛』 岡田准一(V6)、中谷美紀、桐谷美玲、松坂桃李、南沢奈央、吉本実憂、濱田岳、田中哲司、速水もこみち、田中圭、吹越満、高岡早紀、金子ノブアキ、内田有紀、高橋一生、塚本高史、永井大、谷原章介、春風亭小朝、片岡鶴太郎、竜雷太、塩見三省、竹中直人、江口洋介、黒木瞳、柴田恭兵
始まって2ヶ月あまりだが、率直に言って面白くない。各話ごとの盛り上がりに欠け 45分間が異様に長く感じられる。岡田准一はそのルックスも雰囲気も申し分ないものを持っているのだが、いかんせん滑舌が悪く台詞が視聴者の心に響かない。脚本もいまいち。さらに、織田信長の江口洋介、明智光秀の春風亭小朝、豊臣秀吉の竹中直人、官兵衛の父親・黒田職隆の柴田恭平など、主要な配役がすべてミスキャストと思われる。視聴率も低迷しており3月2日までの平均が 16.6%(関東地区・ビデオリサーチ)。かなり先まで撮影は進んでいると思われるが、このままでは視聴継続がつらくなってきそうである。

TBS 日9 4/27~ 『ルーズヴェルト・ゲーム』 唐沢寿明、檀れい、石丸幹二、六角精児、手塚とおる、児嶋一哉、山本亨、高橋和也、和田正人、マキタスポーツ、峰竜太、立川談春、江口洋介、山﨑努
原作は池井戸潤の小説『ルーズヴェルト・ゲーム』。中堅精密機器会社の存亡とその会社が所有する名門社会人野球部の廃部を賭けた攻防戦を描くエンターテインメント。タイトルの『ルーズヴェルト・ゲーム』は米・ルーズヴェルト大統領の言葉『野球で一番面白いゲームスコアは8対7だ!』に由来しており逆転に次ぐ逆転を見る攻防戦のことをいう。舞台は年商500億円ほどの中堅精密機器メーカー・青島製作所。主人公はこの会社の社長を務める細川充で唐沢寿明が演じる。この会社、不況の波と同業他社との激しい競合で存亡の危機に陥っていた。細川は中途採用で同社に入社していたが、創業者からその手腕を買われ異例の抜擢で社長に就任していた。しかし生え抜きの役員たちからの風当たりは強かった。社長就任後間もなく金融危機に端を発した不況に突入すると青島製作所もその煽りで業績が低迷する。細川は会社存亡の危機から“奇跡の逆転劇”を画策しようとする。社長はじめ新製品開発部の奮闘ぶり、そしてリストラ対象の野球部員が新監督のもとで立て直しを図る姿が描かれる。共演陣には、社内における細川の数少ない味方の一人である秘書・仲本有紗に壇れい、青島製作所の廃部が危ぶまれる社会人野球部の存続に奮闘する同社の総務部長兼野球部長・三上文夫に石丸幹二、青島製作所を潰すことに執念を燃やす同業ライバル会社・イツワ電器の社長・坂東昌彦に落語家の立川談春らが配される。また、青島製作所の役員で、同社の全てを知り尽くしており次期社長の有力候補だった笹井小太郎専務を江口洋介が、細川を抜擢した創業者で現会長の青島毅役として山﨑勉が出演する。『半沢直樹』ほどの人気が得られるか?乞うご期待!

刑事もの、医療ものが多かった前クールに比べると
今クールは多少バラエティに富んでいるようだ。
それにしても池井戸作品を2局で放映するとは、
この業界、一体どういうふうに企画・制作を進めているのか、
はなはだ疑問に思ってしまうのである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする