MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

戦争と片頭痛

2011-11-18 13:55:52 | 健康・病気

アメリカではかつて湾岸戦争からの帰還兵の多くに
頭痛や集中力・記憶力低下などの精神症状が
多く見られた。
その原因としてイラクの生物化学兵器や
劣化ウラン弾、神経ガス解毒剤、軍用農薬などが
考えられたが、直接的な原因の解明には至っていない。
一方、2003年からのイラク戦争に派遣された
米兵の多くに頭痛が認められているという。

11月8日付 Washington Post 電子版

Migraine and headaches prompt new research focused on military personnel 片頭痛や頭痛の増加が軍関係者に焦点を合わせた新しい研究の推進につながっている

Militarymigraine
片頭痛で彼の軍での職務が制限されてきたと、米特殊作戦陸軍の David Hunt 氏は言う。

By Christian Torres
 米特殊作戦陸軍の David Hunt 氏は肉体的・精神的に大きな損傷を被ることなくイラク中部での任務を終えた。しかし、アメリカに帰国してから2年後、彼は医療的退役に直面している。
 37才の Hunt 氏の説明によると、慢性の片頭痛のために陸軍において実質的に彼の居場所はないという。2006年の勤務時間外における自動車事故以来ずっと彼はこの病気に苦しんでいる。
 彼は、イラクだけでなく、アリゾナ・メキシコ国境に配属されている間も、嘔気、嘔吐あるいは光に対する過敏性などの症状と戦ってきた。彼が思い出すのは、アリゾナで一人で警備に当たっていた時、特にひどい片頭痛発作に襲われたことである。強烈な日差しから避難できる場所を探しながら嘔吐した。「出来る限りの対応をし、なんとか起き上がって見張りをしていました」と、彼は言う。
 Hunt 氏のように苦しんでいるのは一人ではない。過去10年間、片頭痛や頭痛は米陸軍にとって深刻な問題となっている。2001年から2007年の間で軍のすべての部門において片頭痛の診断が増加していると、2008年に国防総省から報告されている。別の最近の調査では、2004年から2009年までに頭痛関連の疾患のためイラクやアフガニスタンから引き上げてきた約1,000人の兵士のうち、3分の2は原隊復帰できなかったことが明らかにされている。「頭痛は軍の作戦で展開される補給要員不足の主要な原因となっている」と同研究は結論づけている。
 専門家によると戦闘地域で勤務することのストレスや肉体的負荷は頭痛の引き金となり得るという。また、脳震盪や頭部外傷が配属後消耗性の頭痛や片頭痛を起こす可能性を増大させることが研究者らによって明らかにされている。
 認識が高まることによって、外傷後のストレス障害などの問題の中で、頭痛や片頭痛は軍の衛生上の懸念事項の一つに位置づけられ、国防総省はその研究に対して数百万ドルを拠出している。科学者らは現在、軍の職員だけでなく一般市民にも有効な新たな治療や療法の評価を行っているところである。一般に男性の6%、女性の18%が年に1回以上の片頭痛を経験していると見られている。
 外地での任務期間の後、男性、女性を問わずそれまで症状のなかった人でも片頭痛に苦しめられるようになる可能性がはるかに高くなっている。イラクやアフガニスタンの軍事行動に参加した米国人120万人以上を対象とした2009年の研究では、片頭痛の診断を受けた人は外地での任務の後40%増加したことが明らかにされている。
 脳震盪、不安、うつなどを経験した兵士においては配属後の診断の頻度がとりわけ高かった。脳震盪のあった男性の10%、女性の20%でその後に片頭痛の診断を初めて受けていた。
 また戦闘地域にいる間に不安やうつを経験した男性の6%以上、女性の16%以上がその後片頭痛を起こしていた。

Continuing issues  継続する問題

 不安やうつは配属後の問題として続くものであり、しばしば、心的外傷後ストレス障害と同じように片頭痛の症状に関連する。これらの問題によってクォリティ・オブ・ライフが劇的に損なわれる。ワシントン州 Tacoma にある Madigan Army Medical Center の医師 Jay Erickson 中佐によると、片頭痛を持つ兵士の3人に1人は配属後のこの疾病によって、汎用されている Migraine Disability Assessment 検査で中等度から重度の障害があると評価されているという。
 一般集団にも当てはまることだが、片頭痛が出現する頻度にはばらつきが多いと Erickson 氏は言う。彼は神経学的症状を持つ多くの兵士を治療している。「3~6ヶ月毎に1回しか片頭痛がないものもいれば、ほぼ毎日のように片頭痛が起こるものもいます」と彼は言う。「平均的には、月に3~5回の片頭痛が見られます」
 その頻度は一般人で見られるものと類似しており、痛みの強さや発作の持続時間も同様である。しかし、頭部外傷があったことがわかっている兵士の間では根本的な相違点が存在する。脳震盪を受けた兵士では「はるかに発作の頻度が高いのです」と、Erickson 氏は言う。
 Bethesda にある Uniformed Services University の頭痛研究者 Ann Scher 氏は、イラクやアフガニスタンからコロラドにある Fort Carson に帰還した400人の兵士について詳細な追跡を行っている。脳震盪を含む軽度の外傷性脳損傷(traumatic brain injury、TBI)を受けた人の30%が片頭痛を経験していることが早期のデータで示された。片頭痛疑い例や片頭痛様頭痛を加えると、その率は54%まで上昇する。
 さらに、軽度のTBIを経験した兵士は片頭痛の発作で中断される軽度の持続的頭痛を感じる傾向にあることを Scher 氏は認めている。視力視野障害などの片頭痛の症状である前兆が長く続くことがたびたびであるような人もいる。

Treatment and research 治療と研究

 外傷後の頭痛や片頭痛のある患者の治療は戦闘地域に配属されていない患者に対するものと同じである:血流を抑制する非ステロイド系抗炎症薬、神経受容体に作用する比較的新しいタイプの薬であるトリプタン、そして症状を予防したり、緩和したりさせる様々なタイプの認知療法などがある。
 この十年間、様々な種類の頭痛や片頭痛に対する真に新しい薬剤や治療法はほとんど市場に出てきていないが、研究ルートは近年勢いづいている。
 軍からの関心によって「片頭痛研究に弾みがついています」と、アリゾナ州 Scottsdale にある Mayo Clinic の頭痛研究員の David Dodkck 氏は言う。2007年以降、外傷後頭痛・片頭痛治療に特化した国防省のプロジェクトは議会からの240万ドルの資金を受けている。
 さらに Alliance for Headache Disorders Advocacy の会長で研究者の Robert Shapiro 氏によると、さらにNational Institutes of Health から片頭痛・頭痛に対する研究費が年間約1,900万ドル出ているという。
 「私は国防総省がイニシアチブを取り始めたことを評価しています」と Shapiro 氏は言い、軍の関心は「確かなこの神経症状の認識を変えること」と、新しい治療の必要性を優先度の高いものとすることにあると付け加えた。
 国防総省のプロジェクト一つに Erickson 氏によるものがあり、彼は外傷後の慢性頭痛の兵士で3つの薬剤とプラセボを比較する無作為臨床試験を行っている。
 「我々が試験を行っている3つの薬剤は、(古典的な)片頭痛や頭痛の治療に一般に用いられているもので、これらが脳振盪後の頭痛の治療に有効となる可能性がかなりあると思っています」
 別のプロジェクトでは、St. Louis にある Washington University の Yu-Qing Cao 氏が、炎症を促進するたんぱくの一種、サイトカインの関与を研究してきた。Cao 氏の仮説によれば、もしサイトカインが片頭痛の原因となっている、あるいは片頭痛を持続させているとしたら、とりわけ慢性患者において痛みを軽減させるのに抗サイトカイン療法を用いることができる可能性があるという。すでにマウスでは前向きな結果が得られていると Cao 氏は言う。
 100万ドル以上の最大の助成を受けている新しい政府のプロジェクトは、UCLA の Headache Research and Treatment Program の責任者である Andrew Charles 氏と、San Francisco にある University of California のheadache Center の所長 Peter Goadsby によって行われている。二人は片頭痛における神経化学的シグナルの役割を調べており、シグナル経路に影響を与える一般に用いられている3つの薬剤を評価する。ただし、それらは現在片頭痛に対して用いられていない。Charles 氏によると、この研究はまだ早期の段階にあると言い、研究のための資金提供元を探すことは“困難であり”、この種の投資が行われることによって(頭痛や片頭痛という)重要問題が軍の男女にとってどういうものとなっているのかを軍がきちんと認識し始めるようになると付け加えた。
 軍の研究は軍関係者を助けるだけに留まらない可能性を持っている。外傷後の片頭痛と古典的片頭痛の違いはいまだ完全に理解されていないが、一方に対して成功した治療は両者に有効であるかもしれない。さらに、新しい治療は片頭痛だけでなく低用量で他の頭痛にも有効である可能性があると Charles 氏は言う。

Varying effectiveness 個人差の大きい治療効果

 しかしながら治療の有効性にはばらつきが大きい。たとえば特殊作戦陸軍の Hunt 氏は、効果のあった薬が判明する前にいくつかの薬剤を用いる必要があった。プロプラノロル、この薬は、彼に3ヶ月間ほとんど片頭痛がない状況をもたらしている。
 しかし、いまだに彼には悩み続けている。「私の職務はそれによって妨げられました」と、彼は自身の片頭痛について言う。Hunt 氏は投薬によってなんとかアリゾナとイラクでの任務を維持することはできたが、片頭痛は他の人の注意を引くほど彼の能力に影響を及ぼし、彼が帰国したとき、医療的理由により部隊からはずされた。
 以来、ワシントン州 Fort Lewis において、兵士たちが医療的問題に対して治療を受け人生の次のステップに向けて計画を立てるための暫定的な部隊で時を過ごしてきた。彼は医療的退役に進むことを決意している。戦闘関連の専門分野は自分のような疾患を持つ兵士を採用しないだろう、そしておそらく管理部門やそれに類する部署で働かなければならないだろう、と彼は言う。
 片頭痛は「通常の頭痛の10倍です。射撃や移動や伝達の間、それに対処することは実につらいのです」と、Hunt 氏は言う。
 

戦闘や自爆テロで犠牲になった兵士はもちろんだが、
頭部外傷や戦闘のストレスで深刻な片頭痛から
抜け出せない兵士たち…
世界各地におけるアメリカ軍の軍事作戦は
こういった人たちの犠牲の上に
行われているのだということを
あらためて認識させられるのである。

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薬の切れ目が命の切れ目

2011-11-13 00:03:41 | 健康・病気

Orphan drug(オーファン・ドラッグ=孤児薬)とは
希少疾病用医薬品のこと。
希少疾病のため患者数が少なく、
それに対する薬剤を開発、販売しても
メーカーは採算が取れない。
このためどの企業からも見放されてしまうと
その疾病の患者は取り残されてしまう。
そこからこういった薬剤はオーファン・ドラッグと
呼ばれるようになった。
薬事法では対象となる患者が5万人未満の
薬剤と決められている。
政府はこういった薬剤の開発に対して、
審査、税制、薬価設定などで優遇措置を講じ、
開発を奨励している。
しかし米国における優遇措置ははるかに大きく、
オーファン・ドラッグの多くは海外で開発され
日本に持ち込まれ承認を受けているのが現状である。
今回の記事に取り上げられたのは
Fabry disease(ファブリー病)という遺伝病。
本疾患の患者は米国でも1,200人ほど。
オーファン・ドラッグには恵まれているはずの米国で
むしろ同国内の患者は苦しめられているという。

10月28日付 ABCNews.com

Fabry Disease Patients Hope for FDA Approval of Drug Replagal Fabry 病の患者はリプレガルという薬の FDA による承認を望んでいる

Fabrydisease
Jerry Walter 氏(58才)は、命を救う高価な orphan drug(希少疾病薬)で命をつないでいるが、今、彼らはこの2年間の薬品不足により健康が損なわれている。

By SUSAN DONALDSON JAMES
 命を救う薬剤が米国で不足していたことから症状が悪化していた数百人の Fabry 病患者は、かつて海外でしか入手できなかった薬剤が近いうちに利用できるかもしれないことに期待を寄せている。
 生物医薬品製造会社 Shire は、米国の患者が入手できるよう食品医薬品局(FDA)の承認を受けるため、その薬剤 Replagal(リプレガル)の手続きを急ぐ方針であると発表した。
 この薬剤はこの十年間で46ヶ国で市販されているが、今、米国ではこの疾患の患者のうち140人が FDAに認められた治験用臨床試験で Replagal を投与されている。
 腎臓への甚大な障害や脳卒中や早期死亡を引き起こす稀な遺伝子病である Fabry 病の患者は米国に約1,200人いる。この薬剤は、欠損した酵素を補うものである。
 これまではこれらの患者は別の薬剤 Fabrazyme(ファブラザイム)を投与されていたが、2009年以降、その製薬メーカーである Genzyme 社は生産を維持できなくなっていた。
 現在は非常勤の米陸軍大佐で National Fabry Disease Foundation の創設者であるノースカロライナ出身の Jerry Walter 氏は今朝 Shire 社から初めての連絡を受けた。Fabrazyme 欠品のため彼は月2回の薬剤の注射を2回分ほど十分量施行できず、現在半分の投与量となっている。
 その結果、彼には腎機能の悪化と不整脈の増加が見られ始めている。
 「Fabry 病の集団にとってこれは大きなニュースです」と Walter 氏(58才)は言う。「これによって私たちと同じ病気を持つ人たちに治療の選択肢が与えらえ、長期にわたって薬品が不足している現状を終わらせる重要なステップとなります」
 Shire Human Genetic Therapies 社社長の Sylvie Gregoire 氏は、6ヶ月以内に患者はこの新しい薬剤を手に入れられるようになるだろうと語っている。彼女は今朝 Walter 氏に電話をかけた。
 「私たちは希少疾病のビジネスにあって彼らを個人的に知っています」と彼女は言う。「人にこのビジネスで働こうという気にさせるこのような患者さんの前では私たちの企業の肩書きを常に外しています。患者さんは次の投薬がいつになるかを正確に知らないまま苦しんでおられるのです」
 Fabry Foundation は、手紙を書いたり、希少疾病用医薬品の開発部局と連絡をとったりするなど、Shire 社にFDA の承認を申請させるのに重要な役割を果たした。
 また数十人の患者は、薬剤の入手が困難となったために身体的障害を受けたとして Genzyme 社を相手取って賠償訴訟を起こしていた。さらに、彼らはFDAに対して米国外での同薬剤の販売を禁止するよう申し立てた。
 「このニュースは予想外のことであり、喜ばしい驚きでした」と彼らの弁護士である Pittsburgh の C. Allen Black 氏は言う。彼は以前、この薬剤の不足を“回避できた米国医療における最悪の悲劇の一つ”と呼んでいる。
 「この話は米国民すべてにとって強い脅威です」と Black 氏は付け加える。「世の中には多くの独占があります。インスリンの生産や化学療法を襲っていた可能性もあります」
 今日のニュースを受けて彼はABC News.com に「Replagal が市場に出ることに皆本当に喜んでいます」と語っている。
 Fabry 病はα-ガラクトシダーゼ-A という酵素の欠損で発症する。この酵素は体内の脂質や脂肪様物質の代謝に必要である。National Institutes of Neurological Disorders and Stroke によると、症状として慢性の胃腸症状や心血管症状、手足の疼痛、腎不全、皮膚や眼に合併症が認められるという。
 ヒトの酵素を補うため、Fabrazyme は動物の細胞を用い、Replagal はヒトの細胞を用いている。しかし両者とも安全で有効な薬剤と考えられている。
 2003年以降、年間20万ドルの費用がかかる Fabrazyme のおかげで Walter 氏をはじめ、この疾患を持つ人たちは生き延びることができてきた。
 Fabrazyme や Replagal は現在海外では販売されている。
 Genzyme 社の問題は2009年6月に始まった。当時、マサチューセッツ州 Allston にある この生物学的薬剤を製造する唯一の工場がウイルス汚染のために FDA によって閉鎖を迫られた。
 同社は1億7,500万ドルの罰金を科せられ修正のための同意命令が発布された。フランスの製薬会社 Sanofi-Aventis 社が4月に同社を買収した。

Genzyme Shortage of Fabrazyme Hurt Patients Genzyme 社の Fabrazyme の不足で患者は窮地に追いこまれた

 Genzyme 社はその薬剤備蓄に誤算があったことを認めた。それによって患者への Fabrazyme の供給が削減されることになったが、その不足は最終的に解消されるだろうと同社は述べていた。
 同社は患者への投薬を半量に減らすことを余儀なくされたが、8月上旬、全面的に出荷を停止した。その時点で、Genzyme 社の企業広報担当副社長 Bo Piela 氏はこう述べている。「我々の最優先事項は製造した同薬剤の完全な供給を復旧することです。それを達成するためにあらゆる手を尽くしているところであり、新たな製造プラントの承認に向けて着実に手続きを進めています。それが可能となれば製品の供給を著しく増加することができるでしょう」
 同社はマサチューセッツ州 Framingham に別の製造プラントを建設中であり、それが承認されれば
「十分需要に応ずることができるでしょう」と、彼は語った。
 「しかし、生産許可には時間を要します」と、彼は付け加えた。
 Replagal と Fabrazyme は同時期に市場に登場したが、FDA は Genzyme 社の薬を優先した。しかしそれはすでに失効している。一方、Shire 社はその薬をヨーロッパの市場に向けた。
 「私たちは Raplagal で10年の経験を積み上げています」と、Shire 社の Gregoire 氏は言う。「この薬品で十分な経験を持っているのです。米国の Fabry 病の患者集団は2年半の間苦しめられているのが現実です」
 Shire 社は緊急使用として承認に先立って認可されたプロトコールの下、米国の同疾患の患者の約20%に当たる140人に対する無料の治療を申し出た。
 「私たちはすでに迅速な指定を受けています」と Gregoire 氏は言う。「この薬品が認可されれば新しい患者はそれを手に入れることができるでしょう。そのための標準的な期間は6ヶ月ですが、当局はさらに短い時間でそれを行うことが可能でしょう。
 親族の18人が Fabry 病である Walter 氏にとって、このニュースは胸躍るものとなっている。彼は既に、同疾患の成人男性の平均的死亡年齢である50才を越えている。
 「より大きな目で見れば、私たちには選択肢が必要であり、薬品が不足が発生するリスクがあるため一つの薬剤だけを当てにすることはできません」と Walter 氏は言う。彼の健康はこれまで良かったり悪かったりだった。
 「私たちには生命を脅かす遺伝子異常があるのです。この薬剤は有効ですが、治癒するというわけではないのです」と彼は言う。

Fabry 病(ファブリー病)はX染色体劣性遺伝で
男性に発症する稀な遺伝病。
白人では4万人~10万人に1人に見られるが、
日本における頻度は不明である。
体内の細胞のライソゾームに存在する
加水分解酵素の一つでα-galactosidaseA(α-GAL)という
酵素活性の著明な低下により、同酵素の基質である
スフィンゴ糖脂質(GL-3、グロボトリアオシルセラミド)が
ライソゾームに蓄積し発症する。
典型的 Fabry 病患者では幼小時から四肢末端痛、
赤紫色の皮膚小丘疹の被角血管腫、低汗症・無汗症、
角膜混濁などが見られ、その後、脳の多発性小梗塞、
腎不全、心不全・不整脈を発症し40~50才代で死に至る。
α-galactosidaseAの活性を改善させる根本的治療は
存在せず、遺伝子組み換え技術を用いて作製された
α-galactosidaseA 酵素たんぱくを2週間に1回点滴で
投与する。早期治療により臓器障害や症状増悪の抑制が
可能である。
本邦では2004年4月よりα-galactosidaseA 製剤である
アガルシダーゼベータ(Fabrazyme、ファブラザイム)、
2006年10月よりReplagal(リプレガル)、の両者が
Fabry 病に対する治療薬として保険適用となっており、
日本では同病の患者は恵まれていると言えそうだ。

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CEO の決断

2011-11-09 16:30:00 | 健康・病気

世界最大の財力、最高のかかりつけ医を持ちながら
元アップル社CEOのスティーヴ・ジョブズ氏は、
悪性膵臓腫瘍でこの世を去った。
すでに伝えられているように彼の腫瘍は
通常の膵臓癌より悪性度の低い、
神経内分泌腫瘍だった。
このタイプの腫瘍では、
発見即手術という方針で統一されていないのが
現状であるという。
彼は診断時には手術を拒否、
数ヶ月間は代替療法を選択していたという。
早く手術を行っていれば
果たして彼はもっと生きることができたのだろうか?

10月31日付 New York Times 電子版

A Tumor Is No Clearer in Hindsight 結果論で見ても明解にはならない腫瘍
By DENISE GRADY

Stevejobs2

ミュンヘンのアップル・ストアには Steve Jobs 氏の顔が付箋紙で作られた。

Steve Jobs 氏は自分の健康のことでは愚かな決断をしてしまった自惚れ屋だったのだろうか?
 CTスキャン等の検査で彼の膵臓に癌性の腫瘍が見つかった2003年に彼が行ったことの概略からはそのように見えるかもしれない。医師らは彼に腫瘍の摘出術を受けるよう勧めたが、Jobs 氏はそれを先延ばしにし、代わりに完全菜食ダイエット、ジュース、ハーブ、鍼治療、さらにその他の代替療法を試みた。
 9ヶ月後、腫瘍は増大していた。Walter Isaacson 氏によって書かれた新しい伝記によると、その時点でようやく彼は手術に同意したが、その術中、癌が肝臓に転移していることが医師によって確認されたという。癌は最終的に彼を死に至らしめた。
 この一連のできごとから、もし Jobs 氏がすぐに手術を受けてさえいれば、転移する前に早期に癌を摘出することができ、彼を救えていたのではないかと推察する、事後の正しい判断に基づく新しい記事やブログが登場することになる。
 しかし、この世おいて、ああしていればどうなっていただろうかを知るすべはない。それは、政治においても、野球においても恋愛や株式市場においてもである。ましてや疾病や健康においてはなおさらである。手術を避けたい、あるいは遅らせたいという Jobs 氏の願いはかけ離れたものではなかった。彼の腫瘍のタイプや発見された経緯を考えると、待つという彼の決断は考えられているほど無分別ではなかったのかもしれない。
 彼の妻 Laurene Powell Jobs さんはインタビュー、ならびに Jobs 氏の担当医に話を聞く許可の要求を拒否した。しかし、彼女は担当医の一人、Dean Ornish 医師に簡単なコメントを認めた。同医師は心疾患の治療や予防に食餌や生活スタイルの変化を提唱する人物としても有名である。
 Ornish 医師によると、はじめて診断がついたとき、Jobs 氏に手術を受けるよう助言したという。しかし、Eメールで彼は次のように付け加えた。
 “Steve はきわめて思慮深い人物だった。重大な手術を受けるか受けないか、そして受けるとすればそれをいつ受けるかの決定に際して、最高の医師からなる彼の医師団だけでなく世界中の多くの医師や科学者に意見を求めることに2、3ヶ月をかけた。そして今回の結果が彼の決断だった。このタイプの手術は大がかりなものであり、簡単に受け入れられるものではない。それを自分が受けたいと決断したとき彼は手術を受けたのだ。こういった取り組みにあたって、彼ほど思慮深く知的な人物はいないだろう。微小転移の可能性もあったことから、早期に手術を受ければ違っていたかどうかは誰にもわからない”
 微小転移は、体内で腫瘍の転移や播種が始まった時、様々な臓器に形成される小さな癌である。理論的に最初に診断された時点で Jobs 氏の腫瘍がすでに目に見えない転移を肝臓に起こしていた可能性を Ornish 医師のコメントはほのめかしている。もしそうであれば、もっと早く手術していても違いはなかっただろう。
 ロサンゼルスにある Cedars-Sinai Medical Center のカルチノイド・神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor)プログラムの共同責任者 Edward M. Wolin 医師は、Jobs 氏と同じタイプの癌患者では、「初めて画像検査で発見されたときには、その約60%ですでに肝臓に転移している」と言う。
 別の専門医 Steven K. Libutti 氏は、今回の伝記を読んだ上で、Jobs 氏の腫瘍は発見時までに転移していたようであり、恐らく手術の遅れが悪影響を及ぼししたことにならないだろうと言う。Libutti 医師はニューヨークにある Montefiore Einstein Center for Cancer Care の所長であり、そこの神経内分泌腫瘍プログラムの責任者である。
(Wolin 医師、Libutti 医師とも Jobs 氏を治療しておらず、彼の病気の詳細を承知していない)
 腫瘍は稀なタイプだった。(俳優の Patrick Swayze 氏を死に至らしめた)通常のタイプはその高い死亡率と急速な進行で悪名高い。5年で5%の患者しか生存しない。
 しかし Jobs 氏は異なる病気だった:神経内分泌腫瘍であり、これはインスリンなどのホルモンを産生する細胞から癌が発生したことを意味する。神経内分泌腫瘍は米国で年間に発症する膵臓がん44,000例の約3%を占めるに過ぎない。
 神経内分泌腫瘍は通常のタイプの膵臓がんよりはるかに致死的ではない。治癒例もある。患者の5年生存率はかなり高く50から60%であり、多くは10年以上生存すると、Libutti 氏は言う。
 Jobs 氏の場合、腫瘍はほとんど偶然に発見された。彼が何か別の目的でCTスキャンを行った時に発見されたのである。CTスキャンの使用頻度が上がり、画像の鮮明度が向上していることは、腫瘍が小さく症状を出していない腫瘍が、膵臓をはじめとする様々な臓器で偶然に発見されやすいことを意味する。こういった腫瘍の増大に対して何をすべきか、そしてただ経過を見ることが果たして安全なのかどうかは、「この領域が今取り組んでいる問題なのです」と、Libutti 氏は言う。
 2cm以上の神経内分泌腫瘍に対しては大部分の医師が切除を推奨するが、大きさだけが確実な判断基準となっているわけではないと Libutti 医師は言う。小さい腫瘍でもたちが悪く、大きい腫瘍でも悪性でない場合がある。生検は腫瘍の危険性がどの程度かの手がかりとなり得る。(Jobs 氏の腫瘍の大きさについての情報は発表されていない)
 「我々にとって、より優れたCTスキャンと偶発的な発見に伴う真の難題は、もし膵臓に1cmの小さい腫瘍が発見されたら、それらはすべて直ちに切除すべきなのか、それともそのまま観察しても良いのかということです」と、Libutti 医師は言う。「今ただちに、確実に励みとなり精神的に満足の得られる答えを用意できる人はいないと思います」
 Wolin医師は、膵臓のいかなる神経内分泌腫瘍も診断から2、3ヶ月以内に切除することを推奨すると言う。「もし早期に発見されたのであれば、そうすべき時期であるということです」と、彼は言う。「その理由はまさに、その予後が実際に良好で小さいからといってそれに触るできではないということにはならないからです」
 もし、不確実性があり、手術が広範囲に及ぶものとなるのであれば待機することを選ぶ医師もいると、Libutti 医師は言う。膵臓には頭部と尾部があり、頭部の腫瘍はより難しい手術を要する。Jobs 氏は結局、標準的に膵頭部を巻き込んだタイプの手術を受けた。
 腫瘍が背部痛などの症状に対する画像検査で偶発的に発見されたような場合、検査をしなければこの腫瘍は見つかってなかっただろうし、それは決して症状を出さなかっただろうと主張して手術に反対する患者がしばしば見られると、Libutti 医師は言う。
 「それは呪術的思考というわけではないのです」と彼は言う。「ある意味、それは共通の感覚なのです。『そうです、それは間違いなくあなたを死に至らしめますし、もし我々がそれを切除すればあなたは死ぬことはないでしょう』と私たちには言えないのです」
 しかし、もし腫瘍が大きければ、切除するよう患者の説得を試みるだろう。
 「『切除しましょう、少なくとも私たちはできるすべてのことを行ってきました』…こんな自己満足な言い方をする医師もいます」と、Libutti 医師は言う。「一方でこういう医師も存在します。『理由もないのにそれを切除するのはどうでしょう?たとえ合併症がまれであるとしても確かに合併症は起こるのです』そういうわけで私のような人間は髪の毛が薄くなってしまうのです」

一流の医師の意見を聞きまくったことが
かえって彼の決断を鈍らせる結果となったのか?
本当に信頼できる医師に託すことも
必要なのかも知れない。
とはいえ、最終的な決断は本人がすべきであり、
2009年3月には肝臓移植を、さらには
最先端の分子標的治療まで受けたジョブズ氏であるが、
これこそが彼自身が選んだ道だったというのであれば
彼に大きな後悔はなかったに違いないと思うのだ。

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『がんもどき』は無視できない?

2011-11-03 11:47:11 | 健康・病気

寒くなってきたからといって、
おでんの『がんもどき』の話ではない。
現在日本では前立腺がんを早期に見つけるための
血中PSA(前立腺特異抗原)検査の有効性について、
厚生労働省と日本泌尿器科学会との間で
意見が分かれている。
厚生労働省の研究班は、同検査の有効性を示す根拠が
不十分であるとしてスクリーニング検査として
推奨しないとの立場である。
米国でも先月、米政府の作業部会が
健康な男性が同検査を受けることを推奨しないとする
報告書案を発表している。
同じような動きは、乳がん、子宮頸がん、卵巣がん
などでも見られている。
癌は早期発見がすべて、との従来からの考え方は
今や通用しなくなっているのであろうか?

10月29日付 New York Times 電子版

Considering When It Might Be Best Not to Know About Cancer がんについて知らないことが最善であることもある、そういうケースも考慮する
By GINA KOLATA
 癌のスクリーニング検査が、この恐ろしい病気の犠牲になることから自分たちを守るための間違いなく望ましい、最善で、そして恐らく唯一の手段として推奨されるようになってから、今ようやく明白な転換が進行中である。

Mammogram
マンモグラフィーなどのスクリーニング検査を減らすべきであると提唱する研究は必ずしも一般に受け入れられていない。

 現在、専門家集団は前立腺がん、乳がん、さらには子宮頸がんのスクリーニング検査を減らすことを提言しており、スクリーニング検査は有益性だけでなく有害性も伴うということを強調してきた。
 2年前、エビデンスを評価し、スクリーニング検査のガイドラインを発表した影響力のある組織 United States Preventive Services Task Force(米国予防医学作業部会)は40才代の女性はマンモグラムの恩恵を受けることはないようであり、50才から74才の女性も毎年ではなく2年毎にその検査を受けるよう考慮すべきであるとした。
 また今年、前立腺がんの PSA スクリーニング検査は生存率の改善につながらず、多大な害をもたらすと同部会は発表した。さらに大部分の女性は子宮頸がんのための Pap(細胞診)検査を毎年ではなく3年毎とすべきであると結論づけた。
 何が変わったのか?
 その答えの多くを占めるのは、より多くの情報が得られるようになったことだ。新たな臨床試験が行われるとともに、様々な種類の医学データの解析が進んでいる。スクリーニング検査のリスクやコストについてこれまでより一層厳格な調査が研究者によって行われた。
 最近の前立腺がんの二つの臨床試験によって、多くの命が、あるいはいくらかの命が救われているかどうかについて疑いが投げ掛けられることとなった。そして、スクリーニング検査は、何もしなければがんは害をもたらさなかったであろう男性に対して生活に支障が及ぶような治療にしばしばつながってしまう結果をもたらしてしまうと主張した。
 新しいマンモグラフィーの解析によると、マンモグラフィーは毎年13万8千人の女性にがんを発見するが、それらの女性のうち12万~13万4千人はすでに致死的ながんであったり、進行が遅いので治療の必要のないがんであったかのいずれかだった。
 過去十年以上にわたって、普及したスクリーニング検査により早期発見が有用となったケースもある一方で、ほとんどのがんにおいてそのような症例が少数存在するということが繰り返し示されてきた一連の膨大なエビデンスは無視できない、とがんの専門家は指摘する。
 「スクリーニング検診は常に諸刃の剣なのです」と、American Cancer Society の主席医官である Otis Brawley 医師は言う。「こういったスクリーニング検査の推進には一層慎重であることが求められます」
 しかしこのような考え方は多くの人たちにとって受け入れがたい。がんで死んでゆく患者を診ている泌尿器科医、放射線科医、腫瘍専門医などの専門家はスクリーニング検査を減らす考え方にはしばしば抵抗を見せる。新しいガイドラインに同意するであろう一般開業医は、一体なぜ毎年のマンモグラムや PSA 検査を行うのを見直そうとするのかを説明するのに患者との長い会話に巻き込まれることに対して懸念を示している。
 スクリーニング検査を行わず患者が致死的ながんを発症した場合の訴訟を恐れる医師もいる。もし検査で命を救うことができるのであれば、スクリーニング検査の害を被るリスクはあっても受けてみたいと言う患者も多い。
 そしてさらに Brawley 医師が発するようなコメントから他の疑問が持ち上がってくる。これらすべてのことは今、コストの問題でなく真の懸念から生じているのだろうか?そして、とにかく、これらすべては単に学術的な議論なのだろうか?というのも、実際の患者に直面してほとんどの医師はいまだに頻回のスクリーニング検査を勧めており患者も同意しているからである。
 がんの専門家によると、ある程度、上記の事柄すべてが答えになっているという。しかし、風潮には変化があるように見える。これまで研究者はスクリーニング検査の害についての話題を持ち出すことすらためらっていたのである。
 「それは第3軌条(触れたくない事柄)だったのです」と Dartmouth Medical School のH. Gilbert Welch 医師は言う。「常軌を逸しているように見えることを恐るがあまり考えていることを正確に発言することをためらっていました」スクリーニングの有益性を研究するために資金を得るのは簡単だったが、有害性を対象とした研究は“あまりに文化からかけ離れていた”と、彼は付け加える。
 しかし今は違うと彼は言う。
 そしてそのような変化とともにスクリーニング検査に対する新たな見方が生じた。
 「もはや、単に、がんを見つけることができますか?ではないのです」と Brawley 医師は言う。「今はがんを見つけることができますか、そしてがんを見つけることで死亡率の減少につながりますか、なのです」
 そして、新たに費用面を重視する動きもある。
 たとえば、The New England Journal of Medicine の最新号には前立腺がんの二人の専門家による論文がある。一人の前立腺がんによる死亡を予防するためのスクリーニング検査に520万ドルが充てられる必要があると結論している最近の研究があることが記載されている。そして著者である University of South Carolina School of Medicine の Allan S. Brett 医師とUniversity of Arizona の Richard J. Ablin 氏は、この数字は包括的なものではないと付け加えている。明らかに真のコストはそれよりさらに大きいのである。
 「現在の PSA に基づいたスクリーニング検査のパラダイムは競合する医療の優先事項と肩を並べることはできないと考えている」と彼らは書いている。
 University of North Carolina のスクリーニング検査の研究者である Russell P. Harris 医師は、「スクリーニング検査のコストは転換点(tipping point)に向かわせる要因の一つです」と言う。
 しかし、医師を含めた多くの人々は変わりつつあるメッセージに混乱していると、医学の専門家は言うが、そのことは理解できることである。
 「人は数十年に及ぶ考え方を直ちに変えることはしません」と、University of Minnesota の専門部会のメンバーである Timothy J. Wilt 医師は言う。
 ある意味、医師や患者は一種のがんのタイム・ワープにはまっている。この疾患は1845年にドイツの医師 Rudolf Virchow によって記載されている。彼は剖検で摘出された腫瘍を見て、がんは体内で広がって死に至らしめる制御不能な増殖を示すものであると述べた。しかし、彼は死に至らしめたがんしか見ていなかった。彼はその他のものを決して見ていなかったのである。
 「今私たちはその考えから離れようとしているのです」とBrawley 医師は言う。近年、大部分でないにしても多くのがんが緩徐進行性であることが研究者によって見いだされている。それらはきわめてゆっくりと増殖し、すっかり増殖を止めることもある。中には退縮するものもあり、それらは治療の必要がない。つまりそれらには害がないのである。
 「私たちは1845年のがんの定義から21世紀のがんの定義に向かっているところなのです」と Brawley 氏は言う。さらに同氏によると、より多くの人たちがスクリーニング検査の限界とその危険性について理解し始めてきているという。
 しかし、医療、病院、さらには権利擁護団体による強力なスクリーニング検査の推進や、スクリーニング検査の利点とリスクについての長年の誤解に直面し、その転換は遅いままであった。
 人々はスクリーニングについての「前向きの要素すべてを受け入れてきました」と、Brawley 医師は言う。「そして皆さんは、母親の膝に抱かれていたころから、がんに対抗する手段はそれを早期に発見し、それを切除することであると教えられてきたのです」
 それでも彼は楽観的である。
 「人々は、スクリーニング検査について、それを容認することに対して今より少しだけ厳格であるべきだということを実際に理解し始めるようになっていると思います」と、Brawley 医師は言う。「そこにはいくらか動きがあるように感じています」

検診というのはむずかしいものである。
それによって何人にがんが発見され、
治療で救われたか?ではなく、
検診を行わなかった場合と比較して、
そのがんによる死亡率が果たして改善されたか?
が問題となるのである。
個人個人としては、
早期にがんを発見してもらうことは
その人にとってメリットに違いないように思うのだが、
治療しなくてもいいはずだった病変に対して
治療が行われ、副作用が出たり場合によっては
死亡する可能性もあるということだ。
マス・スクリーニングには莫大なコストがかかるのは
避けられないことであり、
その有用性については厳格なエビデンスからなる基盤が
重要である、という点に異論はなさそうだ。

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