MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

忍び寄る病魔

2011-03-30 21:26:18 | 健康・病気

震災による混乱はまだまだ続いているが、
恒例の Medical Mysteries をお届けする。

3月28日付 Washington Post 電子版

Breathless, but not from asthma 息切れ、でも喘息ではなかった

By Sandra G. Boodman

 その呼吸器の専門医は自身の疑念を払拭するような質問を Kimberlee Ford さんに浴びせながら揺るぎないまなざしで彼女を見据えていた。仕事や学校を休む言い訳を探しているのでは?うつ状態ではないか?違法な薬を使っていないか?
 Walter Reed Army Medical Center で働く看護学生の Ford さんは唖然とし、それぞれの質問に対してきっぱりと否定した。彼女に喘息があることを以前告げていたこの呼吸器内科医はそっけない判断を下して診察を終えた。「これはすべてあなたの気持ちの問題であり、精神科医を受診するべきです」、彼がそう言ったのを現在32才になる Ford さんは思い出している。
 そのころになると彼の判断が正しいのかどうか半信半疑に思っていた。その前の月、最も顕著なのは息切れだったが、彼女の様々な奇妙な症状はひどく悪化しており、重大な何かが起こっているのではないかという気持ちに襲われていた。しかし、この呼吸器内科医も、また、この8ヶ月間に十数回近く受診していたかかりつけ医も、それまで処方を受けていた喘息以外には何ら異常を見つけられなかった。そしてその薬も効果はなかった。
 しかし、喘息が、Ford さんが持っていなかった病気だったのは確かだった。彼女の母親は喘息持ちで、Ford さんにこう話していた。「最も悪いときの私の喘息は、あなたの発作とは全然違うわ」
 2009年7月のこの呼吸器の専門医の予約診察から1ヶ月も経たないうちに、一連の劇的なできごとが起こり彼女の息切れの原因が明らかとなったのである。そしてその診断はその後の彼女の人生を変えることになった。
 最初の症状は2008年の感謝祭のころに出現した。そのころ Ford さんは常に倦怠感を感じるようになっていた。彼女はフルタイム勤務し、ワシントンDCにある Trinity University の看護学校にも通っていたが、彼女の倦怠感は尋常ではなかった。しばしば彼女の足は重く、まるでレンガが足にくっついているように感じることがあった。
 週に4、5回通っていたCurves でのトレーニングの間、Ford さんはしばしば途中で休まなければならないことがあった。「中にはそのことに気づいてこう尋ねてくる人がいました。『ちゃんと寝ているの?』と」
 2009年1月、Ford さんはかかりつけの内科医を受診、簡単な検査を受けた。彼女は「悪いところはないようです。あまりに多くのことを速いペースでやりすぎているいるのでしょう」と言って彼女を安心させた。
 しかし、その後一ヶ月のうちに新たな症状が出現した。Ford さんはめまい発作と息切れを感じるようになった。倦怠感と同様、これらは間欠的に出現した。彼女はかかりつけ医を再度受診し、精密検査と心電図を受けたが異常は見つからなかった。
 3月までに、倦怠感、息切れ、およびめまいは増悪していた。彼女の同僚たちの多くは非同情的だった。「彼らは私が怠けていると思っていて」、運動するように言ってきた。しかしそれは不可能に思われた。彼女にはもはやトレーニングするスタミナはなかったのでジムの会員資格をあきらめていたのである。
 また時に彼女は異常な脱力感に襲われた。一度、患者がズボンをはくのを手伝っていたとき、突然自分が汗びっしょりになっているのに気づいた。その男性は約100ポンドしかなかったにもかかわらず、「トラックを動かそうとしているような感じでした」
 彼女はかかりつけ医を再度受診することにした。「そのころには大変不安な気持ちになっていました」と彼女は言う。というのも、どこかが悪いのは確実のように思われたからである:腹部は腫脹し、時には両足も腫れていた。5回目の受診のあと、この内科医は彼女を呼吸器の専門医に紹介した。
 4月、この呼吸器内科医を初めて受診したとき、彼女は最近の奇妙なエピソードについて彼に話した:勤務日までずっと36時間眠っていたというのである。彼女は胸が重く感じることも彼に話したと言う。いくつかの検査が行われたあと、この呼吸器の専門医は、運動誘発性の喘息であると彼女に伝え、二種類の吸入薬を処方した。しかしそれらによって彼女の容態はさらに悪化した。

Mountains, not steps 階段ではなく山

 6月、困ったかかりつけの内科医は彼女のパートナー2人を呼び寄せ、一緒に Ford さんの検査を行った。Ford さんはこの6ヶ月の間に約25ポンド体重が増えていた。そのころまでに、彼女はアパートを引き払い、両親と同居していた。というのも、彼女はアパートの4階までの階段をあがることができなくなっていたからだ。「その階段を見ると、山を見ているように感じていたのです」と彼女は言う。彼女はなんとか仕事に出かけていたが、休まなければ廊下を歩くことができなかった。
 しかしこの3人の医師らは何も見つけることができず、恐らく肥満と運動誘発性喘息が彼女の症状の原因となっているだろうと Ford さんに告げた。7月、彼女は先の呼吸器内科医のもとを訪れたが、精神科医を受診するように言われた(冒頭の場面)。
 それから3週間も経たないうちに、Ford さんは仕事中しばらく意識を失い、強い胸痛で目を覚ました。何とか自宅まで運転して帰ったが、そこで両親のソファーに崩れ落ちたことをあとで知った。そのあと思い出せたのは Fort Washington Medical Center の緊急室で目を覚ましたことであり、救急車でそこに運び込まれていたのである。
 医師らは胸痛に対してモルヒネを投与、彼女は再び意識を失い、呼吸不全となったため気管内挿管された。彼女はさらに大きな施設である Washington Hospital Center に転送されたが、記録によると、『ほとんど反応のない状態』で運び込まれたという。
 集中治療室で3日後に意識を回復したとき、医師らが「回復しないのではないかと思いました」と彼女に告げたのを思い出す。さらに、いくつかの検査で判明したことを彼女に話した:彼女は重症の肺高血圧症を患っていたという。喘息ではなかったのである。
 「そんな病名は聞いたことがなく、『わかりました、それでは降圧薬を下さい』」そう言ったことを彼女は思い出す。普通の高血圧と違って肺動脈の過度な圧上昇を特徴とする肺高血圧症は難治な稀な疾患であり、正常に比べて右側の心臓に負担をかけ、体内の酸素の運搬を妨げてしまうと、医師らはやさしく説明した。
 Ford さんのケースに見られるように、それが明確な原因なく発症した場合、idiopathic(特発性あるいは原発性)と呼ばれる。アメリカ心臓病協会によると、米国ではそのような患者が年間 500 から1,000例診断されているが、そのほとんどが20才から40才までの女性であるという。
 Washington Hospital Center で Ford さんを治療したチームの一員で呼吸器内科医の Octavius Polk 氏によると、医師たちは彼女の異常な心電図と右心カテーテル検査に基づいてその診断を下したという。カテーテル検査で肺動脈の圧が極端に上昇していることが明らかになった。
 「それは実にたちの悪い病気」であるが、きわめて稀なために若い成人ですぐ診断のつくような疾患ではないと、Polk 氏は言う。Ford さんのケースは20年間に彼がみた4例目の特発性肺高血圧症であるという。特徴的な症状である息切れは、喘息をはじめとする多くのより重篤でない疾患の症状としても見られると、彼は指摘する。
“ 「私たちの元に運ばれるまでに、彼女はかなり進行し、顕著となっていました」と、彼は言う。利尿薬など様々な薬物を用いて彼女の治療が始められ、体重が30ポンド減ったと Ford さんは言う。その30ポンドは過剰な脂肪ではなく貯留した水分だったのである。
 肺高血圧症は、多くは鎌状赤血球貧血、うっ血性心不全、あるいは特定の薬剤など、基礎疾患によってひき起こされる。最も有名なのは、フェンフェン(fen-phen)と呼ばれるダイエット複合薬であり、肺高血圧症やまれな弁膜障害との関連があるとして1997年に市場から引き揚げられている。
 肺高血圧症は進行性であるため、救命のためには肺移植が必要となることがある。治療を行わなければ肺高血圧症の平均余命は約3年であり、Ford さんのような最も重症型の患者ではしばしば肺移植が必要となる。一方、新しい薬物や治療法で生存期間が延長している患者もいる。
 Ford さんの最初の呼吸器専門医が、診断を確定できた―さもなくば疑うことのができた―であろう検査を行うことなく彼女が喘息であるとなぜ断定したのか、また、彼女が精神的な問題を抱えていると告げたのはなぜなのかわからないと Polk 氏は言う。彼によれば、より早期の診断が最終的な転帰を変えることはなかったかもしれないが、経口薬の内服だけで疾患がコントロールできていた可能性があるという。Ford さんに必要となっている、静注ポンプを介して強力で高価な新しい薬物を持続的に注入するカテーテルを埋め込む手術は回避できていた可能性もある。致命的となる感染症などのリスクがあるため、この装置には持続的で厳密な管理が求められる。
 Ford さんは新しい生活を築くために懸命に努力してきたが、彼女にとってこの診断は衝撃的だった。中でも最悪の精神的打撃は決して子供を生むことができないと知ったことだったと、彼女は言う。仕事をし、学校に行くことも不可能だった。数年間自活し、18ヶ月の公認看護師としてのキャリアを送ったが、その後は食料品店の店長の仕事を最近退職した両親に完全に依存することになってしまった。
 現在疾病手当を受け、連邦政府からかなりの保険金も受け取ったが、Ford さんは金銭的には苦労している。彼女に投与されている薬の一つは月に2,000ドルかかるのだ。8月にはメディケイドを受けることになっているが、それは彼女の疾病手当が数ヶ月のうちに打ち切られるからである。彼女はまた Inova Fairfax Hospital で移植のための精密検査を受けているが、できれば手術は避けたいと思っている。
 不運な日々を過ごしたものの、彼女を心配してくれる両親や兄弟に、さらには教会の支援にも感謝していると Ford さんは言う。Walter Reed の彼女のかつての同僚は彼女に電話やEメールを寄越してくれ、時々花を送ってくれると彼女は言う。彼女は週3回の呼吸器リハビリテーションに出かけ、また年に4回の会合を開いているCapital Breathers と呼ばれる患者の支援団体の代表を努めている。
 彼女のかかりつけ医は、その後の経過を知ったとき、『ひどく取り乱した』と Ford さんは思い起こすが、その医師は長い会話の中で肺高血圧症については聞いたことがことがなかったと Ford さんに語ったと言う。病気が精神疾患的であると Ford さんに告げた呼吸器内科医は一度も彼女に連絡を寄こしていないと彼女は言うが、そこの看護師には自分の入院と診断名を伝えた。
 「初めのころは、なぜこの病気が私に起こったのかをずっと知りたいと思っていました」と、Ford さんは言うが、今はその疑問について考えることがなくなったと付け加えた。「復職や復学を果たしている肺高血圧症の患者を知っていますし、私もそうなることを希望しています。私も幸運な患者の一人であると彼らは私に言います。私はまだここにこうして生きているわけですから」

実に厳しい病気である。
難病情報センターによれば、
平成21年より『原発性肺高血圧症』から
『肺動脈性肺高血圧症』に病名変更されている。
右の心臓から肺に向かう肺動脈の圧が上昇する
予後不良の疾患で、
比較的若年者(20~40才にピーク)に多く発症し、
女性に多い。
人口100万人あたり1~2人の頻度ときわめて稀である。
原因は全く不明であり、
遺伝的要因が考えられる例もあるがごく一部である。
肺血管内皮の肥厚あるいは肺血管攣縮が何らかの形で
関与していると考えられているが、
それがなぜ生ずるかはわかっていない。
自己免疫異常の関与も示唆されている。
症状としては
運動時の息切れ・動悸、失神発作などがみられ
進行すると右心不全の症状やチアノーゼが認められる。
本疾患はほとんどの症例で進行性であるが、
これを阻止する根本的な治療法はいまだ確立されていない。
進行を抑える治療法として
有効な血管拡張剤が用いられるようになり
治療成績が向上した。
プロスタサイクリン誘導体ベラプロスト、
ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害作用のある
勃起不全治療薬シルデナフィル(商品名:レバチオ)、
エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン・マシテンタン・
アンブリセンタンなどで次第に予後が改善されつつある。
記事中にあるのは難治例に対して用いられる
プロスタグランディンI2(PGI2)注射薬(フローラン)と
思われるが、
この持続静注療法によりQOL(生活の質)の改善と
生存期間の延長が得られている。
その他、一酸化窒素(NO)吸入療法、PGI2吸入療法など
患者への負担の少ない治療法も行われる。
しかし、保存的治療に改善しない進行例では、
現在のところ
肺移植以外には救命できないのが現状である。
生存期間の中央値は診断確定から3年弱であり、
多くの症例は右心不全や突然死で死亡する。
Ford さんのように正しい診断が得られないまま
症状が進行し、ようやく発見される例も多いと考えられ、
医師の間に本疾患の周知が望まれるところである。

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『未知』に備えてこなかったツケ

2011-03-29 00:04:18 | 科学

福島第1原子力発電所の緊急事態は
収束に向かうどころか、
さらに放射能漏れの危険が増しており
混迷の度合いが益々深まった状況だ。
現代の科学の全知を結集しても抑えきれないとは
やはり原子力はパンドラの箱なのかもしれない。
日本政府や東京電力は未だに
今回の地震・津波を『未曾有の』自然災害、
『想定外の』事態と繰り返し、
現状に陥ったことが不可抗力であると
国民に理解してもらいたいようである。
しかし、海外には、そのような言い訳は
一切通用しないと見るべきである。
以下の記事を読むと、今回の一連の事故が
人災であることは間違いないようだ。

3月26日付 New York Times 電子版

Japanese Rules for Nuclear Plants Relied on Old Science 古い科学に依存する日本の核施設の基準

By Norimitsu Onishi and James Glanz
 世界に tsunami(津波)という単語をもたらした国、日本において、核施設はほとんどがこの水の壁の潜在的な破壊力を軽視していた。消防士たちがいまだ懸命に鎮静化を試みている福島第1発電所をはじめとするいくつかの施設が日本の海岸線に点在し始めて数十年になる2006年まで政府のガイドラインにこの単語は登場すらしてこなかった。

Fukushima1

日本の地震のあと津波が爆発や火災を起こした福島第1原子力発電所の2号機の制御室に土曜日には電力が戻った

Fukushima12

福島第1原子力発電所の3号機から立ち上る煙

 頻繁に津波を起こし得る構造プレートの衝突に囲まれている島国で、3月11日福島発電所を襲った約46フィート(約14メートル)に達した今回の津波に比べてその防備が悲しいほど貧弱であったのは、そういった警戒感の欠如で説明できるかもしれない。台風からは護るが津波は想定されていなかった離岸防潮堤は防御の第一線として早々に屈してしまった。この発電所が建設されたときの防潮堤の約3倍の高さまで波は増高していたのである。
 日本の歴史上間違いなく最大で、海底を激震させ巨大津波を引き起こしたマグニチュード 9.0 の地震を技術者たちは想定できなかったと、日本政府や電力会社は繰り返し述べている。たとえそうであっても、既に入手したデータによると、環太平洋地域のほとんどあらゆる場所におけるマグニチュード7.5程度の地震でも今回の福島の防潮堤を十分越えるほどの大きさの津波を生じていた可能性があると、地震学者や津波の専門家は指摘している。
 2002年に諮問委員会によって拘束力のない勧告が行われたことを受け、この発電所の所有者で日本最大の電気事業者である東京電力は、福島第1に予測される最大津波を17.7(5.4 m)から18.7フィート(5.7 m)の間にまで引き上げたが、これは13フィート(約4 m)の防潮堤よりかなり高い。しかし、同社は、おそらく高い水位から守るために、海岸近くの電気ポンプの高さを8インチ(約20cm)上げることだけで対応していたようであると、監督機関は言う。
 「私たちは前例に基づいて初めて動くことができるのですが、その前例がなかったのです」と、1990年代後半に福島第1の所長を務めていた元東京電力原子力技師の Tsuneo Futami 氏は言う。「私が同発電所の代表を務めていたとき、津波についての思いが私の頭をよぎることはありませんでした」
 東京電力から日本の専門機関、原子力産業協会に提供されたデータによると、津波ほど重要な因子とはならなかったが、今回の地震が福島の地を揺らした強さもまた同発電所に採用された基準を超えるものであったという。今わかっていることによれば、今回の津波が現在の核危機を引き起こしたのは、子炉冷却システムに電力を供給するのに必要な補助発電機が浸水したことによると考えられている。
 日本はその卓越した技術的専門知識で知られている。しかし、数十年間、日本の官僚主義と一部の工業技術体制は原子力発電所を守るための古い科学的指針に固執しており、これまでの地震や津波の記録に過度に依存するあまり、1970年代以降の地震学や危機評価における進歩を生かそうとしてこなかった。
 一部の専門家には、福島における津波の驚異に対する過小評価から、日本の北西海岸にある東京電力の柏崎原子力発電所を襲った2007年7月の地震(そこでは津波はなかった)が腹立たしく思い起こされている。柏崎の地は、発電所の設計上想定された最大震度の2.5倍揺れたのである。
 「柏崎事故のあと、あの時点で数年の準備期間があったわけですが、今回福島で同じ事態に遭遇することになってしまったのです」と、カリフォルニアで活動している地震危機評価の専門家 Peter Yaney 氏は言う。彼は Nuclear Regulatory Commission(原子力規制委員会)とエネルギー省の代表として福島を調査しているところである。
 福島が設計されたとき、地震学と、原子力発電所の土木建築工学との接合がいまだ未熟だったと、日本政府の委員会の一員だった原子力発電所の耐震の専門家 Hiroyuki Aoyama 氏(78才)は言う。技術者たちは多くの当て推量を行い、原子力発電所内部の構造は、一般の建物の3倍の耐震性を持つべきであるという基準を採用していた。
 「3倍という数字の決定には何の根拠もありませんでした」と、東京大学の土木建築工学名誉教授である Aoyama 氏は言う。右手の親指と人差し指でピストルの格好をしながら、「腰からピストルを抜いてしまっていた(特に考えることなく行動していたの意味)のです」と付け加えた。「目標が曖昧だったのです」

Evolution of Designs  設計の進化

 日本の技術者たちが40年以上前に最初の原子力発電所の設計にとりかかったとき、将来のエネルギーへの投資物件をどのようにして守るかについての手がかりとして、過去を頼りにした。数世紀におよぶ公文書には津波がどのように海辺の村を水浸しにしたかについての情報が含まれており、これによって技術者らは津波の高さを推測した。
 それによって、記録上最も高かった津波より高く防潮堤が築かれた。日本で4番目に古い核施設である福島第1では、東京電力の関係者は、参考値として当時の津波の高さを採用した。それは、1960年にチリで起こったマグニチュード9.5の地震によってもたらされた10.5フィート(3.2 m)の高さである。日本の原子力監督機関である原子力安全保安院の耐震の専門家 Marsaru Kobayashi 氏によると、同発電所が建設された13フィート(約4 m)の高さの断崖は天然の防潮堤として機能するだろうとされたという。
 18フィート(5.5 m)の高さを持つ沖合いに設けられた防波堤は同社の津波対策の一環として建設されたものであると、東京電力の広報担当者 Jun Oshima 氏は言う。しかし、(主として船舶を避難させる目的の)この防波堤は台風には対抗できるが、津波には効果がないと監督当局は指摘していたと、Kobayashi 氏は言う。
 数十年間、津波に対する備えは、日本の電力会社や原子力監督機関にとって優先事項にはなっていなかった。つい2週間前まで原子力発電所を襲うような津波が存在していなかったという事実によって彼らは安心していたと、専門家たちは指摘する。津波をシミュレーションすることが津波の危険性を評価する新しい手段をとなっていたが、原子力発電所の運営担当者たちは、老朽化した施設にほとんど手を加えることはなく、原子力監督機関も彼らに要求しなかった。
 技術者たちは地震についても同じアプローチをとった。福島発電所の設計に関して、1600年からの公文書によれば、現在の福島県の沖合いの最大の地震でもマグニチュード 7.0~8.0であったと記録されていたと、Kobayashi 氏は言う。
 「私たちはそれを専門家任せにしました」と、この発電所の建設を監督した元東京電力副社長の Masatoshi Toyoda 氏は言う。そして、「どれだけ多くの墓石が倒れたかといったような情報を求めて古い文書を調べていたのです」と付け加えた。
 結局、政府委員会の専門家たちがより厳しい建築基準を強く求め始め、1981年までに、ガイドラインでは地震への言及はなされるようになっていたが、津波には触れられていなかった。1995年の壊滅的な神戸の地震のあと、その圧力が急速に高まっていったと、1990年代後半の日本の原子力安全委員会の副議長だった Kenji Sumita 氏は言う。
 十数ヶ所の原発の建設を完成させることを中心に考えてきた電力会社は、より厳しい基準を採用することに難色を示し、原子力安全委員会におけるこの問題についての会合に代表を送ろうとしなかったと、Sumita 氏は言う。
 「他のグループは直ちに人を出していました」と、Sumita 氏は学術関連や建設業界の専門家たちを指してそう述べた。「電力会社はフットワークが悪く参加しなかったのです」
 一方、地震の科学や危機評価は世界中で進歩していった。米国原子力規制委員会がそれら新しい手法を十分に採用していないことで厳しく批判されてきたが、同機関は、発電所ごとに新しい見直しを行い、それらの多くを採用したと、原子力発電所の設計と地震の危険性を専門にしている Simpson Gumpertz & Heger 社の構造工学技術者 Greg S Hardy 氏は言う。
 文化的、歴史的、あるいは単に財政的など、どんな理由かわからないが、原子力発電所で働いている日本の技術者たちは、記録に基づいて最大の地震と彼らが信じるものを想定し続けてきた。
 しかし、そういった手法は、これまで発覚していなかった欠陥や、まれではあるがとてつもなく巨大な地震のような重大な不確実性を考慮に入れてなかったことになる。米国電力研究所が出資する研究の一環として2007年の地震後に柏崎を訪れた Hardy 氏はそう語っている。
 「日本は遅れととってしまったのです」と、Hardy 氏は言う。「これが最大の地震だったと宣言してしまった時点で、新しいデータとして入ってくるものを再評価することが難しくなってしまいました」
 この分野で、『蓋然論的』あるいは未知のものを考慮に入れることと対極にある、『決定論的』と表現されるこのアプローチが日本ではどうしたわけか続いてきたと Noboru Nakao 氏は言う。彼は40年間日立の原子力技術者を勤め、沸騰水型原子炉のオペレーターのトレーニング・センターの所長を務めたコンサルタントである。
 「日本の安全規則は全般に決定論的です。なぜなら、蓋然論的手法は大変困難だからです」と、Nkao 氏は言い、「しかし米国にははるかに多くの危機評価法があります」と付け加えた。
 津波の科学もまた進歩している。その大きさについての測定ははるかに向上しており、起こるたびごとに統計データが大量に蓄積され、コンピューター計算によって様々な大きさの地震によってどのような種類の津波が生ずるかを予測できるようになっている。United States Geological Survey(米国地質調査所)の Eric Geist 氏、および University of Southern California の土木工学教授 Costas Synolakis 氏による第一線の津波専門家による2編の別々の研究論文によると、マグニチュード 7.5 程度の低さの地震でも、福島原発を護っている13フィートの防潮堤を十分越える津波を生じうることが示されている。
 Synolakis 氏は津波の危険性に対する日本の過小評価を、『大災害につながった愚かな誤りの連鎖』と呼び、関連するデータがこの領域の誰にも見過ごされてしまうことは実質的にありえないことであると述べている。

Underestimating Risks 危険性を過小評価する

 津波への明確な言及は2006年に制定された日本の原子力発電所の新たな基準に初めて登場した。
 「2006年のガイドラインでは地震に付随する現象として津波について言及しており、電力会社に対してそれを考慮するよう求めています」と、構造工学の専門家である Aoyama 氏は言う。
 そのリスクは2002年にいくらか注目を集めている。当時政府の諮問団体である日本土木学会は原子力オペレーターに向け津波のガイドラインを発表したのである。
 教授や東京電力など電力会社からの代表をはじめとする同学会の研究グループは、断層や各地の地形についての新しい研究や過去の津波のデータを詳細に調べ、同ガイドラインを作成したと、同研究グループのあるメンバーは述べている。彼は微妙な立場にあることから今回匿名で語っている。
 同メンバーによるとこの研究グループは最近それらの基準に対して改定を議論していたところだったという。今回の津波のちょうど一週間前に開催された同グループの最後の会合では、議事録によると、原子力発電所に対する津波による損害を予測するために3次元シミュレーションの有用性が研究者たちによって議論されていたという。「私たちは過去のデータだけでなくそれ以外のものも考慮しました」と、同メンバーは言う。「私たちは想定を試みました。私たちの目的は不確定なことを減らすことだったのです」
 恐らく、日本以外の科学者たちによるもっとも厳しい見方は、たとえ記録された津波という狭いレンズを通して見ていたとしても、福島の津波に対する防護対策が容易に乗り越えられてしまう可能性が認識されているべきだったというものだ。科学研究や当時の報道によると、1993年、マグニチュード7.8 の地震は日本の西側の海岸に30フィートを越える高さの津波を生じ、広く徹底的な破壊を繰り広げた。
 Yanev 氏が書いた報告によると、大きな被害を受けた奥尻島では、「津波によって最も被害の大きかった人口集中地域の大部分は15フィートにもおよぶ対津波壁で囲まれていた」という。そこでは福島の防潮堤よりさらに1~2フィート高く作られていた。
 しかし、18年後に起こるだろうことの前例となったこの奥尻の壁は総じて津波の効果を和らげていたとしても、結局それ以上の波には無効であったと、地震の危険評価の専門家である Yanev 氏は言う。
 そして、遠い過去であっても、新しい警告として役割を果たしてくれていたかもしれない新しい情報をもたらしていたのである。
 福島第1が稼働して20年経ったとき、古い記録を詳細に調べていた研究者たちは Jogan と呼ばれる地震(貞観地震)が同発電所のすぐ北の地域で内陸約1マイルまで達した津波が実際に起こっていたものと推測した。その津波は西暦869年に襲っていたのである。

東京電力による『計画停電』は
さらなる混乱を招いている。
原子力発電がなくなったら
これだけ大変なのですよ、と
国民に知らしめようとの意図すら
感じてしまう。
原子力がそれほど必要だったのであれば
とことん慎重な対応をとっておくべきだったのでは
ないだろうか?(遅きに失してしまっているが…)

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『チェルノブイリ』を活かせるのか?

2011-03-22 22:25:32 | 科学

政府は21日、
暫定規制値を越える放射性物質が
検出されたとの理由から、
福島、茨城、栃木、群馬各県のホウレン草とカキナ、
および福島県産の原乳の出荷を制限するよう指示した。
というわけで、これまでいいイメージのホウレン草が
今回悪者にされてしまった。
ホウレン草は地面に大きく葉を広げて生育するため
空中の放射性物質が付着しやすいということらしい。
それなら他にも影響を受けやすい葉物野菜が
ありそうにも思うのだが…
さらに今後の風評被害も心配である。
また牛乳に関しては、放射性物質に汚染された牧草を
牛が食べたことによるのだということだが、
そうなると乳牛に限らず牛の健康も心配になってくる。
今回の飲食物の暫定規制値は、
どの程度放射線性物質が臓器に取り込まれると
健康に影響を及ぼすかを厳密に計算して決められた
政府の原子力安全委員会の摂取制限の指標値に
基づくものであるという。
しかし、実は、摂取した食品中の放射性物質が
人にどういった影響を及ぼすかの厳密なデータは
専門家もいまだ持ち合わせていないというのが
現状らしい。

3月21日付 CNN.com

Effect of radiation on humans still harbors mysteries 人体への放射線の影響にはいまだ不明な点がある
By Thom Patterson

Chernobyl

チェルノブイリや広島・長崎の原爆からしか放射線の影響についての確定的な情報が得られていない。

 ホウレン草や牛乳に検出された放射能をめぐっての日本の懸念については、人体に及ぼすその影響についてほとんど知られていないことを考慮すると、疑問の浮上も禁じ得ない。
 いくつかの実験が動物で行われているものの、汚染された食物を摂取することが即時的および長期的に人体にどのような影響を及ぼすかについての情報はこれまでほとんど得られていない。
 その主な理由は研究対象が少ないことであり、1945年の日本の長崎・広島の原爆と、1986年、当時ソ連の一部だったウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の事故で被曝した人たちに限定されている。
 しかし今、日本は答えを求めているところである。それはすべて、福島第一原子力発電所の6基の原子炉に混乱をもたらし、量不明な放射線活性を持つ水蒸気の放出につながった3月11日の巨大地震とそれに続く津波の波及効果によるものだ。
 3月20日、日本政府当局は、放射線活性を持つセシウム137とヨード131の放射性同位元素が検出された原乳とホウレン草の出荷を制限した。ホウレン草と牛乳に加え、原発近くの水道水からきわめて微量の放射性ヨードが検出された。
 ヒューストンにある MD Anderson Cancer Center の腫瘍学教授 James Cox 博士は、それら産物に検出された放射線は人体に対して即時的な危険は“存在せず”、長期的な危険も“きわめて低い”と考えていると言う。
 しかし、「食物として摂取される放射線量は実際のところほとんど把握されていない」という現状を彼は認めている。
 第2次世界大戦後日本で研究が行われているが、今日の専門家たちは、原爆投下後、放射能で汚染された食物の摂取が人にどのように影響を及ぼしたかについて明確な結論を出すのに慎重である。
 しかしチェルノブイリの事故は、放射線が実際に存在していた事実はもちろん、かつてのソビエト連邦の破壊した原子力発電所の内部および周辺の人たちに対して、通常放射能汚染された人に処方されるヨード製剤が総じて有用ではなかったという事実などから、この種の研究において現実の実験室となっていた。
 その事例は現在の危機的事態と関連性がある。というのも、日本におけるホウレン草と原乳のサンプルで検出されたヨウ素131同位元素は、チェルノブイリの場合と同様、原子炉の副産物だからである。
 ヨウ素131は放射性であることから通常のヨウ素とは異なる。しかしヨウ素131の特性は他のタイプと同じと考えられ、甲状腺は容易にヨウ素を取り込むことから、人の甲状腺に集積することになると、長崎・広島の被爆者に対する放射線の影響を専門に研究している Cox 氏は言う。
 甲状腺は食物代謝や体温調節などの働きを持つきわめて重要なホルモンを産生する。ヨウ素131を集積させないために、医師は通常、ヨウ素製剤(訳註:ヨウ化カリウム)を処方する。これが甲状腺を飽和させ、入り込む余地をなくしてヨウ素131を身体から排出させる。
 Cox 氏によると、多くの子供たちを含め住民たちはチェルノブイリが放出したヨウ素131で汚染された牛乳を飲んだ。そして、放射線が他の種類の食物も同様に汚染したことは明らかであるが、この牛乳の消費が癌発症の一因となっていたものと専門家は考えている。
 ヨウ素製剤の入手困難は今それほど問題となっていない。それらの薬剤にはアレルギー性の皮膚反応や腎障害などの有害な副作用の可能性はあるが、福島第一原子力発電所近くの住民が予防的にこれらの薬剤を内服しておくのは悪い考えではないかもしれないと Cox 氏は言う。
 「慎重に検討すべきことかもしれません、特に福島周辺の子供たちに対しては」と、彼は言う。
 放射性同位元素が半分減衰するのに要する時間、すなわち半減期はヨウ素では8日間であるが、それは、8日間で放射能レベルの半分が消失することを意味する。一方、セシウム137の半減期は約30年間であり、はるかに長い期間持続する。しかし、食物として人に摂取された場合、同位元素の中でもとりわけセシウム137の影響については知られていない。
 (食物や水などを介さない)直接的放射線被曝がきわめて有害であることは専門家たちによく知られている。大線量の空気中浮遊曝露は数日程度の早期に死をもたらす。米国疾病対策予防センター(CDC)によれば、低線量の被曝は晩発性に癌が発生するリスクを高める結果につながるかもしれないという。
 CDC によると、一般に、放射線被曝による健康被害は皮膚の発赤から発癌、死亡に至るまで幅があるという。障害は、放射線の種類、身体の放射線吸収量、放射線被曝の仕方、被曝時間の長さなどに依存する。
 放射能汚染食物の摂取については、一般の人たちに比べて、そういった物を飲食した人では発癌率が高いことが研究で示されていると Cox 氏は言う。しかし、明確な結論を出すことは困難である。というのも、たとえばチェルノブイリ近郊で汚染された牛乳を飲んだ可能性のある人たちは、別の手段で同様に放射線に被曝したかもしれないからである。
 放射能汚染食物の摂取が、その祖先へと受け継がれる可能性のある遺伝的変異を生ずるという証拠もほとんどない。
 遺伝的危険性が存在するかもしれないという想定は常にあるが、人では示されてはいないのです」と、Cox 氏は言う。

基準値を越える食品を数日間食べたとしても
今も将来も健康に影響はない、と政府は説明する。
また一年間食べ続けても
CT一回分より低い被曝量なので心配ない、とか。
しかし食品による内部被曝で気になるのは、
やはり低線量の長期被曝による発癌や遺伝子異常。
ただし、これに関しては本文中にもあるように
科学的に明確に証明されているわけではない。
だからといって、証明されていないから心配ない、
というわけにもいかず、
却って余計に不安を煽ってしまう結果に
つながってしまうのかも…。

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福島原発のたどる道

2011-03-16 00:00:59 | ニュース

このたびの東日本大震災で犠牲になられた方々に
深い哀悼の意を表します。

さて、
福島第1原子力発電所の危機的状態に対し
政府や東京電力の対応は
後手、後手に回っており
地域住民はもちろん、日本国中、世界各国を
大きな不安の渦に巻き込んでいる。
海外のメディアの論調は
日本の適切な対応に期待する一方、
完全には信用していない風でもある。
福島原発事故は本当に収束できるのか?
大丈夫だと、誰かはっきりと言ってほしい。

3月13日付 New York Times 電子版

Radioactive Releases in Japan Could Last Months, Experts Say 日本における放射能の放出は数ヶ月続く可能性、専門家が指摘

Fukushimadaiichinuclearpowerstation

月曜日の福島第1原子力発電所の爆発は写真右側の3号機の建屋の屋根を吹き飛ばした。左側の1号機の建屋は日曜日の爆発で損傷を受けている。

By David E Sanger & Matthew L Wald
 ワシントン発:日本の原子力施設の危機の規模が表面化するにつれ、日本と米国の専門家たちは、制御不能となったプラントからの放射能を有する水蒸気の放出が数週間から数ヶ月も続く可能性が示唆されるなど増え続ける一連の問題に日本が今、直面していると指摘する。
 制御不能に陥った2ヶ所の原子炉に対する海水の緊急注入とその結果生ずる水蒸気の放出は、それよりはるかに重大な問題(すなわち福島第1原子力発電所における2つの原子炉における炉心の完全なメルトダウン)を回避する目的で行われる最終手段である。月曜日、爆発によって2番目の原子炉の屋根が吹き飛び、関係者によると原子炉は損傷されていないものの、さらなる放射能漏れが起きている可能性が高いという。
 これまでのところ、日本の当局は2つの原子炉の炉心の溶融は『部分的』であると推定しており、原子炉外部で測定された放射能の量は日本が安全と考えているレベルの2倍ではあるが比較的低い値であるという。
 しかし米国防省当局は、日曜日、当該発電所から60マイルのところを飛行中のヘリコプターが、現在解析中ながら少量の放射性微粒子を捕捉したことを報告している。しかし、それらにはセシウム137とヨウ素121が含まれていると見られ環境汚染が拡大していることが示唆される。
 第二次世界大戦末期に異なる種類の核の恐怖の記憶が国民の心や国政に重くのしかかっているこの国では、プラントから長期にわたって放射能を持った物質の放出が続くことの影響はどんなに強調しても強調しすぎることはない。
 日本の原子炉のオペレーターには今、制御不能に陥った原子炉の燃料に対する緊急的冷却過程の一環として放射能を持った水蒸気を周期的に放出する以外ほとんど選択肢は残されていないが、それは核分裂が止まってからも一年あるいはそれ以上続く可能性がある。原子炉のオペレーターは常に原子炉を海水で満たそうとしなければならず、その結果、大気中に放射能を持った水蒸気を放出し続けなければならなくなると、第一発電所の設計に詳しい何人かの専門家たちは言う。
 そのことは、避難を行っている数万人の人々が相当の期間自宅に戻れないだけでなく、風向きの変化によっては放射能物質が海上にではなく日本の都市に向かって流されてしまう可能性があることを示唆するものである。
 原子炉の正常の冷却を回復するには電力を回復することが必要であるが、電力は地震と津波によって分断されている。さらにそれを行うためには原子力発電所の技術者たちに放射能で高度に汚染されている領域での作業が求められる可能性がある。
 さらなる水蒸気の放出は、太平洋に向けて汚染物質が拡大し続けることも意味する。日曜日の夜、ホワイトハウスは懸念を抑えようと、Nuclear Regulatory Commission によって行われたモデリングでは『ハワイ、アラスカ、その他のアメリカ領土、およびアメリカ西海岸はいかなる有害な放射能レベルを被ることはない』ものと結論付けた。
 しかし週末、東京とワシントンの間で一連の集中的なやりとりがあり、日本への最初となるアメリカの核専門家が到着した後、過去3日間にわたって悪い方向に向かっていることがより明確に把握されはじめていると当局者は言う。そして、ある上級職員はこう述べている。「最善のシナリオをたどったとしても、この事態が近い将来終息することはないでしょう」
 根本的問題は原子炉内の “off(停止)” の定義である。核の連鎖反応が止まり、原子炉が停止しても、まだ燃料は持続する放射活性、すなわち原子内部の粒子やガンマ線の放出などによって稼動中の約6%に当たる熱を産生している。
 通常、原子炉がとりあえず止められたとき、電動ポンプが容器から熱交換器へと加熱した水を抜き取り、熱を下げるために河川や海からの冷たい水が取り込まれる。
 しかし、今回の日本の原子炉では、電力が失われたため、そのシステムが作動しなかった。その代わりに、オペレーターらは容器内に海水を注入し、沸騰によって燃料を冷やそうとしている。しかし、この沸騰によって、圧があまりに上昇し、さらに水が注入できなくなるため、容器内のガスを大気中に抜き(vent)さらに水を送り込む必要が生ずる。この作業は “ feed and bleed(入れては出す)” と言われる。
 燃料に損傷がなければ、放出する水蒸気にはわずかな量の放射性物質が含まれるのみで、特に問題はない。しかし、燃料が損傷されていた場合、その水蒸気は汚染されていることになる。
 さらに考えられる懸念として、日本の原子炉の中には再利用されるプルトニウムを含む mox(mixed oxide=混合酸化物)と呼ばれる混合燃料で稼動しているものがあるということが挙げられる(フランスやドイツの一部の原子炉も同じ)。
 ニュージャージー州 Toms River の近くにある Exelon の Oyster Creek プラントの原子炉オペレーターで後に管理者となった Christopher D Wilson 氏は「通常なら、とにかく施設内でのディーゼル発電機や移動可能な発電機から電力供給を復旧させるでしょう」と言う。彼によれば、移動可能な発電機が福島原子力発電所に持ち込まれているという。
 福島原子力発電所は Oyster Creek と時期を同じくして General Electric 社により設計されており、この二つの発電所は類似している。問題はその配電網が、津波によって浸水した地下の部屋にある電気的スイッチング装置によって行われていることであると彼は言い、さらに「たとえ施設内に発電機を持っていたとしても、地下室から水を排除する必要があります」と述べている。
 このタイプの原子炉で働いた長い経験を持ち、現在は政府機関で働いている別の原子力技師は語気を強める。「完全にベンティング(venting)を中止するためには、いくつかの設備を再び稼動させる必要があります」と、彼は言う。彼は匿名を希望しているが、それは彼の機関が彼が話すことを許可していないからである。
 中心となる問題は津波の後に始まった一連の不具合から生じている。津波は福島原子力発電所を囲む護岸を容易に乗り越えた。低平地に置かれていたディーゼル発電機を水没させたが、これは、護岸が防御できるであろうという誤った信用によったことは明らかである。地震からおよそ1時間の金曜日の午後3時41分前後に、この地域は巨大な波に襲われており、発電機が停止した。東京電力によると、この発電所はバッテリーで作動する緊急冷却システムに切り替わったが、それらはすぐに枯渇した。
 週末に報告を受けた企業幹部や米国の専門家らによると、同原子力発電所内には次のような強い懸念があったという。プラントの一つの内部にある “cooling pond(冷却水槽)” の中に置かれている使用済み核燃料が露出され、有害と考えられる高線量のガンマ線を放出し始めていたというものである。その後、原子炉内部の水位が低下し始めている。評価は様々であるが、日曜日、当局者や原子力の専門家の中には炉心の核燃料と制御棒の上部4~9フィートが空中に露出したようであると述べた。これは、ただちに溶融を起こしかねず、さらに最終的には完全なメルトダウンにつながりかねない状況である。
 午後8時、ちょうど米国民が地震のニュースで目が覚めたちょうどそのころ、政府は緊急事態を宣言し、重大な問題はないというそれまでの安心な見方を否定した。しかし、枝野幸男内閣官房長官は、それまで放射能漏れはなかったことを強調した。
 しかしそれは起こっていたのである:原子炉内の作業員は、冷却水のレベルが低下しているのを見ていたのだ。彼らはどれほど大幅に起こっているかわかっていなかった。「水位を測定する計器が正確な測定値を示していないようです」と、アメリカの関係者は述べている。
 土曜日の朝までに作業員が知っていたことは、近くの福島第2原子力発電所の冷却システムもまた同じような多くの原因により機能しなくなってきていたことである。また福島第1原子力発電所の1号機の圧力の上昇が急速だったので、水蒸気を放出させることで圧を下げなければならないことも技師たちは承知していた。
 午後4時の直前、第1発電所の近くのカメラ・クルーらは1号機での爆発と考えられる像を撮影したが、水素の蓄積によって引き起こされたと考えられる。それは劇的なテレビ映像であったが、爆風によって負傷した作業員以外にとっては特に危険なものではなかった。
 東京電力から国際原子力機関への報告によれば、その爆発は建屋におけるもので、主要な原子炉容器には損傷はなかったという。(建屋の壁は、原子炉容器を損傷するような圧力が加わらないよう設計されたとおりに吹き飛んでいる)
 しかし、劇的な爆発は、炉心が冷却されてない場合原子炉容器の内部に起こるであろうことの警告徴候でもある。炉心への損傷を抑制する対応策として、東京電力は核反応を抑えるホウ素を混ぜた海水の注入を提案し、土曜日の午後10時20分にそれを開始したと国際原子力機関は発表している。
 それは最終手段だった。腐食作用のある海水は40年経過している原子炉を本質的に廃用物としてしまう。つまり、炉心を海水で満たすという決定はこの施設を放棄する決定に等しかった。しかし、その作業すら簡単ではなかった。
 水を注入するため、日本ではどうやら、通例の方法とはかけ離れた使い古された消火設備のようなものが用いられてきたらしい。しかし、容器内の圧力がきわめて高くなっているため格納容器の内部に海水を注入するのは困難となっている。
 ある米国の関係者は、この処置を「膨らんだ風船の中に水を注入しようとする操作」になぞらえ、日曜日の段階で「どれくらいの水が注入できているのか、あるいは炉心を水で覆うことができているのかはわかっていませんでした」と述べた。
 原子炉内の計器が地震や津波で損傷されている可能性があり、どれくらいの水が炉心にあるのかすら知ることが不可能となっているため、事態は深刻化している。
 さらにこの注入作業に関わっている作業員は放射能にさらされているとみられる。日本の報告によると、何人かの作業員は放射能中毒で治療を受けているという。彼らの被曝がどの程度深刻かについては明らかでない。

実に恐ろしい話である。
しかし一方で
MIT research scientist の Josef Oehmen 氏による
大きな問題はないとの見解もある。
一体、本当の所はどうなのであろうか?

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2011年4月新ドラマ

2011-03-07 22:34:22 | テレビ番組

ようやく春の訪れである。
今年の冬が厳しい寒さだっただけに喜びもひとしお。
さて、2011年1月クールの番組を振り返ってみたい。
3月第1週までの視聴率を参考にすると、
予想通り、ダントツで『相棒』が一人勝ち。
唯一の視聴率20%越えである。
それに続くのは、個人的には今一つに感じたのだが、
ゲゲゲ効果で『CONTROL~犯罪心理捜査~』が
健闘の14%台。
そのほか、
草彅剛が本当にいい人に見えてしまった『冬のサクラ』、
冬のホラーってどうよと思った『美しい隣人』がまずまずだった。

14_2

MrK 的には『デカワンコ』が最高だった。
コメディセンスは素晴らしく多部未華子はもちろん、
その他共演陣の好演が光った。
土曜日21時という視聴率の取りにくい時間帯で
12%越えは立派である。

今回も月9は大いに伸び悩んだが、
ダメ男を演じた三浦春馬は
それなりによく頑張っていたと思う。
ただこのドラマの中では
武井咲が光り過ぎていて(劇中でも名前が『ひかり』)、
主演の戸田恵梨香がひどく貧相に、
かつ、くすんで見えたのはワタクシだけ?
助演が主演を食うとはまさにこのことか…。
一方、負け組であるが、
大がかりで気合が十分だった割には
ストーリーが存外ちゃちだった『外交官・黒田康作』が大コケ。
10%台すれすれである。
メキシコ大使館からの抗議問題もあり、まさに泣き面に蜂?
この調子では今夏公開予定となっている映画の方も
心配になってしまう。
それと予想通り東芝日曜劇場に完敗となった
江口洋介主演の『スクール』は8%台。
進藤先生がそのまま小学校に着任したって感じだった。
両ドラマの主役はともに
往年のトレンディードラマのヒーローたちだが、
さすがにご両人とも熟年となった今、
かなりのパワーダウンを感じてしまう。
残念だったのは北川景子主演の
『LADY~最後の犯罪プロファイル』 。
個人的には楽しめたし、
『CONTROL…』より良かったと思うのだが、
ユースケ・サンタマリアがいけなかったのか(笑)。
ともあれ今クールは突出した作品はなかったものの
そこそこ好作品が多かったようには思う。

というわけでいよいよ新年度に突入。
4月クールのドラマを一通りチェックしてみることにしよう。
まだ確定的でない番組もあり随時書き換えとなる可能性があるが
皆様のご視聴の参考にしていただきたい。

フジ月9 4/?~ 『幸せになろうよ』 香取慎吾(SMAP)、黒木メイサ、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、綾部祐二(ピース)、仲里依紗、藤木直人、小林薫、高畑淳子、原田美枝子
今クールの月9は結婚相談所が舞台となるラブバトル・ストーリー。多くのカップルを誕生させてきた実績を持つ相談所のアドバイザーを香取慎吾が演ずる。結婚を希望する、美女、美男の2人のクライアントがその相談所を訪れる。主人公は黒木メイサと藤木直人が演ずるこの2人を結びつけようとするのだが…。結婚の条件を完璧に備えているように見える二人には実は隠された秘密があった。悪戦苦闘する主人公だが、ついにクライアントとの間に禁断の恋が芽生え始めるのだった。主役の香取慎吾、「みんなが幸せになれるよう、『ラブ注入っ!』」(笑)だそうで…。ここ2、3年低迷の続く月9、いまさら SMAP でもないだろう思うのだがどうだろう。

テレ東月10 4/?~ 『鈴木先生』 長谷川博己、臼田あさ美、土屋太鳳、山口智充、田畑智子、富田靖子、でんでん、山中聡、赤堀雅秋
やたらセリフが多く、読むのにも気合が必要な漫画アクション連載学園コミック『鈴木先生』(武冨健治)のドラマ化。主演は長谷川博己。2010年のNHKドラマ『セカンドバージン』で鈴木京香演ずる主人公と不倫関係となる年下の男を演じ注目。原作では鈴木先生の意味不明の独善的説教が炸裂する。中学校を舞台に、性、生徒会活動、文化祭などにまつわる諸問題に異様な真剣さで立ち向かう熱血先生や生徒たちの葛藤が描かれる。かなり異色の原作をどうドラマ化するのかが見ものである。

フジ火9 4/?~ 『名前をなくした女神』 杏、倉科カナ、尾野真千子、りょう、木村佳乃、つるの剛士、平山浩行、高橋一生、KEIJI(EXILE)、萩原聖人 
杏がついに連ドラ初主演。今回は5才の息子の母親、秋山侑子役。引っ越しを機に、りょう、木村佳乃、尾野真千子、倉科カナ演ずる4人の『ママ友』たちと出会ったことから子供の『お受験』戦争に巻き込まれてゆく。これら『ママ友』たちは年齢も生活も様々、それぞれ悩みを抱えて生きている。侑子にも苦難が待ち受けるが自分の力で『ママ友地獄』をくぐり抜けようとする姿が描かれる。『女性の女性による女性のための衝撃の社会派ドラマ』とか。侑子の夫役につるの剛士。もう少し明るいテーマでいってほしいものだが、杏の母親役が違和感なく見られるかどうか。

フジ(関西テレビ)火10 4/?~ 『グッバイライフ~ありがとう、パパ。さようなら~』 反町隆史、栄倉奈々、井川遥、加部亜門、伊原剛志、鹿賀丈史 
チョ・チャンイン原作の韓国ベストセラー『グッドライフ』をドラマ化。韓国での原題は『カシコギ』。『カシコギ』は日本名でトゲウオという淡水魚。この魚は、メスは産卵後稚魚を放置、オスが育て上げ、稚魚が成長するとそれを見届けるように死んでゆくという習性がある。白血病の息子に必死に向き合い、懸命に看病する『カシコギ』な父親役を反町隆史、その妻役を井川遥。小児科医役を栄倉奈々、伊原剛志が演じる。タイトル通りやはり最後は息子は死んでゆくのだろうか?となると涙、涙の展開が予想されそうである。

テレ朝水9 4/6~  『遺留捜査』 上川隆也、貫地谷しほり、佐野史郎、大杉漣
テレ朝お得意の科学捜査ものだが、今回新たなシリーズで登場。主人公の警視庁刑事部捜査一課第一強行犯捜査化学捜査係主査警部補の糸村聡(上川隆也)は通常の遺留品だけでなく、被害者の残した『被害品』を頼りに、地道に被害者の置かれていた環境や人間関係をたどり、犯人に近づこうとする。捜査一課刑事殺人捜査第1係のかけ出し刑事織田みゆき(貫地谷しほり)はそんな糸村の捜査手法に違和感や反発を感じながらも徐々に気持ちが動かされてゆく。上川がどのように主人公のキャラを演ずるかがカギ。

日テレ水10 4/13~ 『リバウンド』 相武紗季、速水もこみち、栗山千明、勝地涼、西山茉希、半海一晃、伊藤かずえ、石塚英彦(ホンジャマカ)、若村麻由美
2008年『絶対彼氏~完全無欠の恋人ロボット~』の相武・もこみちコンビが再び共演のダイエット・ラブコメディドラマ。タイトルの『リバウンド』はダイエット失敗の意味だけでなく、強い女性の生き方を表現するものだとか。大失恋した主人公・信子(相武紗季)は決死のダイエットに成功。その甲斐あってあこがれのファッション誌の会社に入社できたものの、この会社では肥ることは厳禁。そんな時、出会ったイケメン・パティシエ太一(速水もこみち)の作るケーキに誘惑される信子。果たしてリバウンドに打ち勝つことができるのか?『ホタルのヒカリ2』以降の日テレの水曜ドラマ、ちょっと軽すぎの作品が続く。

TBS木9 前クールより継続 『渡る世間は鬼ばかり(10)』 泉ピン子、宇津井健 他
眞(えなりかずき)を中心に据えた恋愛劇にどうしても違和感を感じてしまう。眞のことを好きだと言いながら、そんな気持ちを微塵も感じさせない貴子(清水由紀)は壮太(長谷川純)とできてしまわないのか(とっととくっついてほしい)?どう見てもあやしいこの二人の関係に、大吉(宇津井健)、タキ(野村昭子)、長子(藤田朋子)らが全く気付いていないふうなのも不自然。視聴率は1月からの平均視聴率 13.33%とやや持ち直し気味だが、回によっては全く盛り上がらない内容のこともあり、残りあと半年となり20年間の有終の美を飾れるのだろうか?やはり眞と加津(宇野なおみ)の結婚で締めくくるのが、多少の気持ち悪さは残ってもお年寄りには喜ばしい展開ではなかろうか(しつこいよ)。

テレ朝木9 4/?~ 『ハガネの女2』 吉瀬美智子、要潤、設楽統(バナナマン)、清水ミチコ、大橋のぞみ、有村架純、横山めぐみ、片岡愛之助、斎藤工、松本利夫(MATSU from EXILE)、高橋克実
原作コミックは深谷かほるによる「ハガネの女」。吉瀬美智子演ずる小学校教師・芳賀稲子、通称ハガネが、問題の多いクラスに立ち向かう。初回シーズンは2010年5月から7月まで金曜ナイトドラマ枠で放映(このため当ブログでは触れず)、視聴率は10.3%と同枠にしては健闘した。それを受けて今回はシーズン2 として木曜ドラマ枠に抜擢。吉瀬にとってはゴールデン帯連続ドラマとしては初主演。初回シーズンを見ていないので何とも言えないが、吉瀬では役不足の感が否めない気がする。

フジ木10 4/?~ 『BOSS2 』 天海祐希ほか
2009年4‐6月クールで平均視聴率17.0%と人気だった一風変わった刑事ドラマ『BOSS』が2年ぶりに復活。フジも困った時の刑事物頼みか。天海姉さんとしては『Around 40』の緒方聡子か、『BOSS』の大澤絵里子か、というぐらい、なかなかのはまり役(以後の『不毛地帯』『GOLD』などではパッとしない)。天海演じる大澤絵里子は FBI 帰りで警視庁捜査一課特別犯罪対策室の室長。この対策室は、能力はあるのだが、それぞれ何がしか欠点を持つ “問題児たち” の寄せ集め部署となっていた。前シーズンのラストシーンで日本を去ろうとしていた絵里子のケータイが鳴り、大事件解決のため再び呼び戻されることになる。初回シーズンでは映像の構成がオシャレだったし、ストーリも面白く、それなりに結構楽しめるかも。

テレ朝金9 4/? ~『?』
いまだに発表なく、テレ朝この枠からドラマ撤退か?

TBS金10 4/?~ 『生まれる』 北真希、大倉忠義(関ジャニ∞)、中島健人(ジャニーズJr.)、大杉漣、酒井若菜、戸田恵子、田中美佐子
51歳の母親が妊娠!この衝撃的な出来事に4人の子供たちが動揺。超高齢出産の母親・林田愛子を田中美佐子、4姉弟の長女・林田愛美に堀北真希、その弟役を大倉忠義(関ジャニ∞)、中島健人(ジャニーズJr)。父親役を三宅裕司、愛子を担当する産婦人科医に大杉漣といった布陣。母親の遅すぎる妊娠、出産という異常事態に直面し、さらには兄弟の様々な問題を抱えながら主人公・愛美が葛藤を乗り越え、『命の尊さ』『人との絆』について考え直してゆくヒューマンドラマとか。金曜の夜に見たいドラマとは思えないのだが、果たして視聴率はどうだろうか?

テレ朝金11:15(金曜ドラマナイト) 4/?~ 『犬を飼うということ~スカイと我が家の180日~』 錦戸亮(NEWS)、水川あさみ、武田航平
ゴールデン帯ではないが、ワンコドラマということで紹介。 壊れかけた家庭に拾われてきた子犬によって家族が奇跡的に再生していくというホームドラマ。錦戸亮がなんと父親役。中堅機械メーカーの人事担当だが、不本意な仕事の内容にストレスを感じている本郷勇次を演ずる。その妻・幸子に水川あさみ。これら夫婦と二人の子供たちとの4人家族だが、夫婦間の心は離れ、出来の悪い息子は遊び回るなど本郷家は崩壊寸前。そんな時、下の娘・眞子が一匹の子犬(ポメラニアン)を拾ってくる。つけた名前が『スカイツリー』(笑)。このスカイツリーの存在がこの壊れかけた家族を救うことになる。家族で泣ける感動のドラマとか。錦戸、水川の親っぷりをとくと拝見したいものである。

日テレ土9 4/23~  『高校生レストラン』 松岡昌宏(TOKIO)、神木隆之介ほか
原作は村林新吾著『高校生レストラン、本日も満席』。実在する高校生レストラン『まごの店』がモデルとなっている。一流の料理人である新米の臨時採用教師と将来に不安を抱える高校生たちが調理実習施設で料理を通じて成長してゆく姿が描かれる。地域の高校生がその土地の食材を利用したメニューを考案し調理する新しい形の地産地消運動を実践。話題としては面白いかもしれないが、これをドラマにどう生かすことができるのか疑問が残る学園ドラマ。

NHK日8 継続中 大河ドラマ 『江 ~姫たちの戦国~』 上野樹里、宮沢りえ、水川あさみ、瀬戸康史、向井理、ミムラ、染谷将太、阪本奨悟、斎藤工、鈴木保奈美、岸谷五朗、鈴木砂羽、北村有起哉、袴田吉彦、萩原聖人、和泉元彌、時任三郎、豊川悦司、柴俊夫、大地康雄、市村正親、大竹しのぶ、石坂浩二、奈良岡朋子、北大路欣也
史実からの極端な逸脱、脚本のつまらなさ、演出のまずさなど、これまでの大河で最悪の出来との悪評がネット上に飛び交っている。戦国時代とはとうてい思えない現代感覚のセリフの数々、全くユーモアセンスの感じられない秀吉・岸谷五朗のKYで大げさな演技、まるでホームドラマそのもののような水川あさみの動作やセリフ回し。とにかく最悪である。年末まで見続けるには相当な忍耐が要りそうである。

TBS日9 4/?~  『JIN~仁~2』 大沢たかお、綾瀬はるか、小出恵介、桐谷健太、田口浩正、戸田菜穂、伊澤柾樹、武田鉄矢、中村敦夫、高岡早紀、六平直政、麻生祐未、小日向文世、内野聖陽
原作は村上もとかのコミック『JIN~仁~』。2009年10月‐12月クールのこの帯で放映され、平均視聴率19.0%を獲得した人気SFドラマ第2シーズン。現代の脳神経外科医南方仁が幕末にタイムスリップし、現代の医療知識を当時の医療へ応用しようと奮闘する SF 医療時代劇?第一期ではいくつかの謎が解明されないまま終了。今回は第二期とされているが、TBSによれば今シリーズが完結編になるそうである。第一期で主人公の南方が、いわゆるスーパードクターではないごく普通の医師として描かれており、好感が持てた。第一期の謎がどのように解明されるのかが楽しみである。今回も高視聴率が期待される。

フジ日9 4/?~ 『マルモのおきて』 阿部サダヲ、◎芦田愛菜、鈴木福 
今回はフジからもワンコが重要な役を演ずるドラマがスタート。とにかく犬がしゃべるそうである。文具メーカーのお客様相談室に勤務する独身男、高木護役の阿部サダヲと、彼が引き取ることになった亡き親友の双子の子供の一人を演ずる芦田愛菜とのダブル主演。芦田は連ドラ初主演ということだが、彼女『Mother』ではほとんど主役同然だった。血のつながらない大人と子供たちで始まった共同生活にミニチュアシュナウザーのムックが加わる。ひょんなことから双子たちが拾ってきたムックは、なんと人間の言葉が話せるのだった。どのようにしゃべるのかは見てのお楽しみだが、ソフトバンクCMのホワイトのようだったらちょっとがっかりかも?とにかく、この話す犬の存在によって家族の絆が深まってゆくというファンタジック・ホームドラマ。『江~姫たちの戦国~』『トイレの神様』ではちょっとがっかりだった芦田愛菜が今度こそ本領発揮となるかどうか、楽しみである。

各局とも堅実な視聴率確保が最優先課題となっているようだ。
思いきった冒険はなく、実績のあるドラマの続編が多い。
『BOSS2』と『JIN~仁~2』はそこそこ視聴率がとれそうである。
目新しい分野のドラマもあるが、それぞれインパクトは今一つで、
どれもお金がかかってなさそうである(笑)。
ペットブームを反映してかワンコを取り入れたドラマが注目される。
ただ、純粋な恋愛ドラマが一作としてないのは淋しい限りである。
個人的にはドラマチックサンデーに頑張ってもらいたいが
やっぱりダメだろうな~。

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