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MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

死にたいほどの痒み

2019-06-26 15:23:42 | 健康・病気

6月のメディカル・ミステリーです。

 

6月22日付 Washington Post 電子版

 

 

‘I was just clawing at myself.’ A retired nurse who couldn’t stop scratching feared she was facing an organ transplant.

「私はただ掻きむしっていた」 掻くのを止められなかった元看護師は自分が臓器移植に直面することを恐れていた。

 

 

By Sandra G. Boodman,

 Leslie Lavender(レスリー・ラベンダー)さんは、2017年4月に行われた次女の結婚式に着る服が花嫁の母親としては普通でないことはわかっていた。しかし、黒いパンツと長袖のトップスは、抗ヒスタミン薬や食事の変更や特殊なクリームで効果がない絶え間ない痒みによって引き起こされた皮膚の傷跡を隠す最善の対策だった。

 「私はただ掻きむしっていました」当時60才だった Lavender さんはそう思い起こす。彼女はメーン州Portland(ポートランド)から110マイル北にある Stockton Springs(ストックトン・スプリングス)という小さな町に住んでいる。

 この元上級看護師は1年以上かけて様々な専門医を受診したが、どの医師も Lavender さんの人生を台無しにしていたその病気を不可解に思った。

 2018 年6月、ボストン地域の一人の専門医への受診がポイントとなった。彼は Lavender さんの頑固な痒みと、約10年前に起こったある出来事との間に、捕らえがたい関係を見出した。

 「『あなたの力になれます』と彼が言ったとき信じられませんでした」と Lavender さんは思い出す。

 

Gallbladder attack 胆嚢の発作

 

 2010年1月、パナマ運河をめぐるクルーズの最後の夜、Lavender さんはひどい胆嚢の発作を経験した。彼女は以前にも何度か発作に襲われていたが、今回の発作ははるかに悪かった。鋭い腹部の痛みで彼女は数時間身をよじらせた。

 「私は、結局は胆嚢を失うことになってしまう女性の家系なのです」と彼女は、自身の母親や祖母のことを挙げながらそう語る。

 彼女と、産婦人科医をしている夫の Michael(マイケル)が当時住んでいた北ケンタッキーの故郷でLavender さんが超音波検査を受けたところ、胆嚢を塞ぐピーナッツ大の胆石が見つかった。梨の形をしたこの臓器は肝臓の下に位置し、脂肪の消化を助ける胆汁が貯蔵されている。

 ほどなく Lavender さんは腹腔鏡下胆嚢摘出術を受けた。これは胆嚢を摘出する通常の手術である。この低侵襲手術では、一つの大きな切開ではなく複数の小さな切開部からこの臓器が摘出される。腹腔鏡手術では、従来の開腹術に比べ痛みの軽減と早期の回復が保証される。

 現在、全ての胆嚢摘出手術の90%以上が腹腔鏡下に行われるが、この手技では外科医の術野が制限されるため、胆管の損傷がもたらされる可能性がある。これは迅速に治療されなければ致死的となる可能性のあるミスとなる。胆管損傷は腹腔鏡手術1,000件に1件起こると推計されているが、開腹術ではそれより頻度は低い。

 Lavenderさんの手術は特に問題ないように思われた。彼女は病院で一晩過ごしたあと退院した。

 しかし、一週間後、彼女に嘔吐が出現し激しい腹痛がみられた。

 「私は死ぬんだわ」彼女がそう話すと、医師はCTスキャンを行い、彼女の腹部に液が貯留していることが判明した。医師らは胆汁漏出を確認したため、彼女を入院させ、炎症の原因となる胆汁を洗浄し漏出部を修復した。

 2度目の退院から3日後、Lavender さんは一口の水も飲めなくなって病院を受診した。医師らは彼女を再入院させ一時的にドレーンを留置する手技が行われたがこれは 6週後には取り外された。

 3度目の手術の後、Lavender さんには duct of Luschka(ルシュカ管)として知られる accessory bile duct(副胆管)と呼ばれるめずらしい解剖学的異常があったと外科医は彼女に説明した。

 それからの2、3ヶ月は不安定だった。Lavender さんは、抗生物質の使用に起因する clostridium difficile bacteria(クロストリジウム・ディフィシル菌)による消耗性の感染症を発症した。しかしその後彼女はゆっくりと回復し、その年の終わりには夫とともに1,100マイル北にあるメーン州の海岸に転居した。

 

Not entirely normal 完全に正常ではない

 

 Lavender さんによると、手術後数年間はひどい痛みの再発は一度もなかったという。しかし彼女は完全に体調が良かったわけではなかった。

 「大体は正常な生活を送っており食事に気を付けていました」と彼女は言う。制酸薬や他の薬は有効ではないようだったのでそれらの内服は中止した。

 定期健診では、alkaline phosphatase(ALP:アルカリフォスファターゼ)の高値が続いていることをメーン州の内科医から指摘された。ALP 値の上昇では、肝臓あるいは骨の異常が示唆される。

 「私はそれについて疑問に感じましたが、誰もそのことを格別心配していないようでした」と Lavender さんは思い起こす。医師らはその高値については重要ではないと考えていたと彼女は言う。

 問題の痒みは2017年3月に始まった。Lavender さんが長女のもとを訪れて Omaha(オマハ)にいたときのことだった。

 「とてもじゃないが尋常ではありませんでした」と彼女は言う。「可能性のあるリストを調べました:湿疹?蕁麻疹?アレルギー?何か食べた?」それを説明するものは何もないようだった。

 そしてそれを和らげるものもほとんどないように思われた。

 「私は大変でした」と彼女は思い起こす。彼女がひどく掻きむしっていたので腕と足には赤いミミズ腫れが縦横無尽に交差し、時に感染を起こしていた。

 Lavender さんの内科医は彼女を皮膚科医に紹介した。その医師は、多発性骨髄腫や他の癌のほか、強い痒みを引き起こすいくつかの自己免疫疾患などを除外するために様々な検体検査を行った。

 その皮膚科医は彼女にステロイド軟膏を与え高用量のステロイドの内服薬を処方した。それらにより痒みは抑えられた。しかし、軟膏で Lavender さんの皮膚は薄くなり裂けるようになった。さらにステロイドの内服薬を止めると痒みがぶり返した。

 2018年1月に受診した2人目の皮膚科医は、彼女の疾病は皮膚科的なものではないと思うと言った。彼は血液内科医に紹介した。そこでCT検査や様々な血液検査が行われた。ALPの上昇を認める以外はすべて正常だった。

 その血液内科医は彼女を Portland の胃腸科医に紹介した。肝硬変や肝臓癌を除外したあと、彼は sclerosing cholangitis(硬化性胆管炎)を疑うと Lavender さんに告げた。この疾患は胆管の炎症、あるいは瘢痕化によって引き起こされる肝疾患である。

 Michael Lavender さんは、その胃腸科医から、彼の妻は肝不全に向かっている可能性があり4、5年のうちに移植が必要になるかもしれないと告げられたことを覚えている。

 その可能性を見据えて、彼は Lavender さんを、ボストン郊外のマサチューセッツ州 Burlington(バーリントン) にある Lahey Hospital & Medical Center(ラヘイ・ホスピタル・メディカルセンター)の肝臓移植の専門家 Roger L. Jenkins(ロジャー・L・ジェンキンス)氏に紹介した。

 肝臓移植の先駆者である Jenkins 氏は、米国で最も活発な肝臓移植プログラムの一つを運営する Laheyの外科名誉教授である。

 

A crucial look backward 過去を振り返ることが重要

 

 2018年6月に Lahey を受診するころには Lavender さんはすっかり活力を失っていた。

 彼女は、根本にある原因も、有効な治療も解明されず、痒みとともに生きるのが徐々に困難になってきていた。そして彼女の中で、移植が必要になるかもしれないという思いが大勢を占めるようになっていた。

 「私は Michael にこう言いました。『愛してるわ、でも私は肝臓移植を受けない』と」そう彼女は思い起こす。

 彼女の受診に備えて Jenkins 氏はケンタッキーとメーンから彼女のカルテを手に入れていた。

 「本当にすべきことは過去に立ち返ることです」と彼は言う。

 Jenkins 氏によると、答えは明確であり、それは Lavender さんの胆嚢の手術の時に起こったことに遡ることのように思われたという。

 当時の外科医が Lavender さんの右の肝管を、副胆管と間違え、誤って結紮してしまっていたとみられた。(肝管は肝臓からの胆汁を排出する)。何年もにわたってその後行われた画像や検査では、左右の肝管が描出されているものと繰り返し見誤られていたのである。実際には、それらは2本の左の肝管の枝だった。Lavenders さんの肝臓が痒みの原因だったのだ。

 「奇跡的だ」肝臓の右葉が予想されるほど萎縮していなかったことについて Jenkins 氏はそう指摘する。「これはきわめて異例ですが、全くあり得ないことではありません」と彼は言う。

 このミスがこれほど長く察知されずにいた一つの理由に、Lavender さんの解剖が非特異的に正常とは異なっていたということが考えられる。

 「腹腔鏡下胆嚢摘出術による損傷の大部分はその時点で認識されます」と Jenkins 氏は言う。

 Lavender さんを診察した数年前に Jenkins 氏は似たような胆嚢損傷の若い女性を治療していた。

 Jenkins 氏は、痒みを止めるために Lavender さんの肝臓の右葉を切除することを推奨した;左葉が増大して失った部分を代償するはずだからである。他の選択肢としては、大がかりな再建手術があるが Jenkins 氏によるとそれは有効ではない可能性があったという。

 Lavender さんは痒みによって“苦しみ悶えていて”もしこの症状が改善されないならば「生きていたくない」と言っていると、この外科医は診療録に記載していた。

 Lavender さんは当惑したが、感激も覚えた。

 「彼はしっかりとわかっていたのです」Jenkins 氏についてそう彼女は言う。「神が私を正しい場所に導いてくださったのだと感じました」

 9日後、3時間半の手術は順調に行われた。

 痒みが完全に消失するまで数週間を要したが、Jenkins 氏が術後に起こる可能性があると彼女に通告していた強い倦怠感は消失するまで約5ヶ月かかった。彼女の肝臓の左葉は期待通り増大していることが検査で確認されている。

 「今はとてもいい調子です」と彼女は言う。

 Lavender さんは、医師たちが彼女の ALP の異常値にもっと注意を払ってくれていれば良かったのにと思っている。その数値は何年もの間に徐々に上昇してきていたのである。

 「それを警告サイン(the canary in the coal mine)だと見なす人はいませんでした」と彼女は言う。

 彼女の経験は、低侵襲手術が必ずしも合併症を伴わないものではないこと、また危険性が全くないわけではないということの注意喚起になると彼女は言う。

 「失敗するわけがないなんて思ってはいけません」と彼女は言う。

 

 

 

一般に胆汁の流れは以下の通りである(図を参照のこと)。

 

 Medical Note より

 

肝臓で生成された胆汁は左右の肝管から排出される。

左右の肝管が合流し総肝管となり、

胆嚢からの流出路である胆嚢管と合流する。

そして総胆管となり膵頭部で膵管と合流し

十二指腸に開口する。

結石、腫瘍、炎症などによって胆汁の流れが阻まれることを

胆汁うっ滞(cholestasis)というが、

肝管、総肝管、総胆管で閉塞が生ずると胆汁うっ滞を生じ、

黄疸、濃い色の尿、薄い色の便、全身の痒みが出現する。

通常黄疸が認められれば胆汁うっ滞を考えるが、

本例では異常所見が

胆道系の酵素 ALP(アルカリフォスファターゼ)の

上昇のみだったため痒みの診断が遅れたものと思われる。

胆汁うっ滞により胆汁の成分が皮膚に蓄積することで

痒みを生じると考えられているが、

痒みの真の原因は未だに明らかにされていない。

 

胆嚢摘出術における胆管損傷の合併症の頻度は、

腹腔鏡下手術で 0.6%、開腹手術で 0.4%とされている。

低侵襲だからすべてがベターというわけではないことを

知っておくべきである。

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2019年7月新ドラマ

2019-06-12 14:57:38 | テレビ番組

令和最初のクールとなった2019年4月ドラマも

いよいよクライマックス。

 

お子ちゃま風 “玲子ちゃん” も、それなりにグッド?(フジテレビ『ストロベリーナイト・サーガ』より)

 

 

どのドラマも相変わらずパッとしなかったが

一応各ドラマをざっと振り返ってみることにする。

 

6月9日放送分までの

平均視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]上位から

4月クールドラマについてコメントする

【( )内数字は平均視聴率】。

 

 

 

①テレ朝木9 『緊急取調室3』(13.22%)

被疑者の取り調べを行うチーム『緊急事案対応取り調べ班』、通称キントリの『取調室』におけるキントリ・メンバーたちの被疑者との緊迫したかけひき、心理戦が展開された。今回、故・大杉漣が演じていた中田が退職したとの設定で、代わりに中田の縁で配属になったメンバー・塚地武雄が出演。塚地の棒演技を心配していたが、今クールも安定した視聴率をゲットできた。出演者はみな中年のオッサン、オバハンばかりだが、このシリーズ、これからも当分続きそうである。

 

 

②フジ月9 『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(11.82%)

放射線科“ラジエーションハウス”で患者の病気の原因を見つけ出す“縁の下のヒーロー”放射線技師の活躍が描かれた。窪田正孝演じる主人公の五十嵐唯織は実は医師でありながらそれを隠して放射線技師として働いている。医師であることを伏せていながら、技師の職域を逸脱した行動をするため問題となってしまう。これが毎話繰り返されるため、さすがに疲れてくる。乳癌疑いの患者の超音波検査が3ヶ月待ちとかいいながら、放射線技師はずいぶん暇そうにしているのが不思議。突っ込みどころは満載だが、11%を上回る高視聴率は立派。

 

 

③テレ朝水9 『特捜9(2)』(11.27%)

 イノッチをはじめとする特捜9のメンバーはやはりかなり地味。華がない。そして毎回取り扱う事件も変わり映えしない。中身も乏しい。それでもこれほどの視聴率が獲れるとはさすがテレ朝。マンネリならぬこういった安定感が重要なのかも。

 

 

④TBS 日9 『集団左遷!!』(10.01%)

訳あり支店長に抜擢された中年サラリーマンの葛藤を描いた奮闘劇。『半沢直樹』系を期待していた人たちにはがっかりだったドラマ。同じように銀行が舞台となっているのだが、金融業界に全く無知な我々からみても全くリアリティが感じられない。主人公は『がんばりましょう』を繰り返すだけなのだが最終的に良い結果が生まれる。カタルシスはゼロ。福山の新境地開拓は残念ながら不成功に終わったと言えそう。視聴者は敏感で、この枠としては物足りない視聴率。

 

 

⑤TBS 火10 『わたし、定時で帰ります。』(9.29%)

残業ゼロをめざす女性が、立ちはだかる訳ありブラック上司や曲者揃いの同僚らの間で奮闘しながら様々なトラブルを解決していくワーキングドラマ。主人公・32歳の独身OLの東山結衣(吉高由里子)は、かなり忙しそうな WEB 制作会社で過去のトラウマを抱えながらも卓越した?集中力で仕事を終わらせ『必ず定時で帰る』というモットーをいとも易々と実践している。そもそもそれができるのであれば苦労はないのだが…。現実離れしているとはいえ、ブラック上司に振り回されるギスギスした職場の中でホンワカした吉高の雰囲気はどこか癒やされてしまうかも。

 

 

⑥TBS金10 『インハンド』(9.06%)

ロボットハンドの義手を持つ変人天才科学者・紐倉哲(山下智久)が助手の高家春馬(濱田岳)と美人官僚の牧野巴(菜々緒)とタッグを組んで難事件を解決していくサイエンス・ミステリー。実在する感染症や難病をストーリーにうまく組み込みながら難事件を科学的な方法で解決していく。最初のうち、専門用語をボソボソとしゃべる山ピーのセリフが聞き取れず難渋したが、回を重ねるごとに慣れてきて中盤以降はそこそこ楽しめるドラマとなった。しかし義手の紐倉が右手を失った顛末が描かれた事実上のクライマックスが前半にあり、以後視聴率は徐々にしぼんでしまう結果となった。盛り上がりは中盤以降にというドラマの構成の鉄則を誤ったのは残念。

 

 

⑦日テレ土10 『俺のスカート、どこ行った?』(8.66%)

ゲイで女装家の高校教師がダイバーシティを尊重する学園で生徒と向き合っていくドラマ。果たしてその必要性があったのか疑問だが、古田新太の女装は事前の予想通り、ヒジョーに気持ち悪かった。が、視聴を続ければ慣れてくるのが不思議。ところどころ、突拍子もない対応がみられるものの古田演じる主人公の教師・原田のぶおがいわゆるスーパー教師ではないところは良かった。生徒たちと対話を重ねることで彼らに自分の考えを伝えることができる点には共感を覚えた。ただ、タイトル中の "俺” は矛盾してない?

 

 

⑧日テレ水10 『白衣の戦士!』(8.61%)

中条あやみ演じる新米ナースと水川あさみ演じる34歳ベテランナースがタッグを組み、仕事に恋に奔走するドタバタ病棟ドラマ。まず主人公の立花はるかだが、元ヤンにする必要があったのか?ほとんど元ヤンらしい雰囲気はなく、豹柄の私服と、忘れたころに『シメてやる!』が出てくる程度。バリバリのヤンキーかと思ったが拍子抜け。ところどころ昭和風コントでスベってしまう。例えば面と向かって話していて突然後ろを向いて変顔しながらつぶやくパターン。あまりにも不自然だが、どこか懐かしい?誰かも書いていたが、中条あやみの変顔が東出昌大そっくりでワロた。単に恋愛すったもんだを病院に持ってきただけで医療要素はほとんどなし。それでも視聴率8%台を獲れたのは不思議。

 

 

⑨日テレ 日10:30 (2クール連続放送) 『あなたの番です』(6.91%)

あるマンションおよびその周辺に相次ぐ謎の連続殺人の真相を追う本格ミステリー。もう1クール継続のため詳細は後段に譲るが、この低視聴率は厳しい現実である。

 

 

⑩テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 『家政夫のミタゾノ(3)』(6.65%)

201610月クールのパート1、2018年4月クールのパート2に続く第3弾。松岡昌宏演じる女装した大柄な家政夫・三田園薫が、派遣された家庭・家族の内情を覗き見し、家の汚れだけでなく、そこに巣食う“根深い汚れ”までもスッキリと落としていく物語。今回は、松岡昌宏、伊野尾慧、川栄李奈の3人のコンピだったが、伊野尾の存在は不自然だったし不要だった。パートを重ねるごとに松岡が“おっさん化”しており気味悪さが増しているが、ドラマの内容的には一定の質を維持できていたようだ。最終回も『またお会いしましょう』と言っていたようにまだまだ続きそうである。

 

 

⑪フジ木10 『ストロベリーナイト・サーガ』(6.64%)

誉田哲也の小説『姫川玲子シリーズ』を新規キャストで6年ぶりリメイク。捜査一課の若き女性警部補・姫川玲子(二階堂ふみ)が年上部下・菊田和男(亀梨和也)らのサポートを受けながら難事件を解決する。竹内結子・西島秀俊版とのギャップが大きすぎるとの批判があり視聴率は低迷した。前作のイメージを引きずる視聴者には不満があるかもしれないが、個人的には演技力のある二階堂ふみ版姫川の方がお気に入りかも。ただ姫川以外のキャスティングについては、もう少し練り直してほしかった。

 

 

⑫フジ(関西テレビ)火9 『パーフェクトワールド』(6.28%)

健常女性と、事故で下半身不随になった同級生の男性との再交流を描いた純愛ストーリー。松坂桃李演じる鮎川樹と、山本美月演じる川奈つぐみは、気持ちのすれ違いから一度は別れてしまうのだが、お互いに忘れることができない。それでいながら、つぐみは幼なじみの是枝洋貴(瀬戸康史)との結婚話を進めていくというひどい話。一番の疑問は樹の世話をするヘルパー・長沢葵(中村ゆり)との関係。専属のヘルパーのようだが、一体どのような契約になっているのか?ベタなストーリー展開より、そっちの方が気になってしまった。

 

 

 

今回も全体に低調なクールだった。

そんな中、『ラジエーションハウス…』の健闘が光った。

しかし、結局のところ依然として

テレ朝警察ドラマが上位を占める状況が続く情けない状況。

何とかしてほしい。

 

さて、ここからは次クール夏ドラマ、

2019年7月からの新ドラマをチェックしてみたい。

 

 

 

フジ月9 7/8 ~ 『監察医 朝顔』 上野樹里(主演)、時任三郎、風間俊介、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES/ジャニーズJr.)、戸次重幸、坂ノ上茜、平岩紙、三宅弘城、板尾創路、柄本明、他

上野樹里が2006年10月期の『のだめカンタービレ』以来13年ぶりとなる月9主演。新米法医学者&ベテラン刑事父娘がタッグを組み、遺体の死因究明してゆく法医学ドラマ。原作は香川まさひと・木村直巳の漫画『監察医 朝顔』。上野演じる主人公の万木朝顔(まきあさがお)は新米法医学者。遺体の“生きた証”を見つけ出すため、時に自身の仕事の範疇を超えてまで懸命に、そして真摯に遺体に向き合おうとする。そんな朝顔に、父としてだけでなく仕事相手としても寄り添うのが時任三郎演じるベテラン刑事・万木平(まきたいら)。朝顔と平は辛い過去を抱えていた。朝顔の母は、2011年3月11日に発生した東日本大震災による行方不明者の一人だった。存在自体が“生きた証”である母の遺体が震災で奪われてしまった中、朝顔は誰かの“生きた証”を見つけ出す法医学者の仕事に打ち込み、時間があれば遺体を探しに東北へ向かう。 本ドラマでは、毎回、さまざまな事件に立ち向かう一方で、全話を通して、母親を失った喪失感から少しずつ前へ進んでいく父娘の姿も描かれる。朝顔は神奈川県にある興雲大学法医学教室に所属する新米法医学者。新米とはいえ優秀な技量と豊富な知識を持つ。亡くなった人の死因を明らかにすることで、その人の“生きた証”を見つけようと懸命に遺体と向き合おうとする。そんな朝顔をサポートするのが、父の万木平。偶然、朝顔が勤める興雲大学法医学教室が管轄する警察署捜査係に異動することになったベテラン刑事の平は1%でも手がかりになる可能性があるならば、どんな些細なことまでも調べ上げ、聞き込みを行って朝顔の死因究明を手助けする。原作では阪神淡路大震災で母を失ったとなっているが本ドラマでは東日本大震災で行方不明になっているという設定に変更されている。そのほかの登場人物には、朝顔の恋人で、平が異動してくる警察署の強行犯係に配属となった新米刑事・桑原真也に風間俊介、朝顔が勤める興雲大学法医学教室の主任教授・夏目茶子に山口智子、アルバイトとして法医学助手を務める医学部生・安岡光子に志田未来ら。

法医学が舞台で石原さとみ主演の『アンナチュラル』と同じシチュエーションだが、失った母親への想いという縦糸で差別化が図られるか。そしてそれを越えられるか、が見どころ。

 

 

フジ(関西テレビ)火9 7/16 ~ 『TWO WEEKS』 三浦春馬、芳根京子、比嘉愛未、三浦貴大、高嶋政伸、黒木瞳、稲垣来泉、他

同名韓国ドラマのリメイク作品。殺人犯として追われる男が、白血病の娘のドナーとなるべく逃亡を続けるヒューマンサスペンス。三浦春馬演じる主人公・結城大地は殺人未遂の前科があり、現在は人生に希望を持たず毎日をただ刹那的に過ごしていた。そんな彼の前に、かつて心の底から愛していながら“ある出来事”により一方的に別れを告げた女性・青柳すみれ(比嘉愛未)が現れる。そして彼女から、結城の娘を産んでいたこと、そしてその“はな”という名の8歳になる娘が白血病であることを告げられる。病院で出会った娘にいとおしさを覚える結城だが、幸運にもドナーとして適合したことから、再び自分に生きる意味を見出す。しかしその矢先、結城は何者かにはめられ殺人事件の犯人として逮捕されてしまう。このままでは2週間後に行われる骨髄移植手術が行えないと考えた結城は、決死の逃亡に身を投じる。結城を中心に、検察、警察、政治家、闇の組織など、複雑に人間関係が絡み合う中で、結城はタイムリミットに向けて懸命な逃亡劇を演じることになる。一方、8年前の“ある出来事”もまた物語が展開される中で明らかにされる。逃亡劇というサスペンスと、娘の命を救いたいという結城の強い父性愛が同時に描かれていくらしい。そのほかの登場人物には、8年前の殺人未遂事件がきっかけで父親を亡くし、自験の黒幕に復讐するため独自に捜査を進めていく新米検事・月島楓に芳根京子、すみれの婚約者ですみれとはなを支える優秀な刑事・有馬海忠に三浦貴大、8年前の“ある出来事”に関わっているとみられる実業家で柴崎コーポレーションの社長・柴崎要に高嶋政伸、前職の弁護士時代から楓の家族と知り合いで楓を支え続ける国会議員・久我早穂子に黒木瞳らが配役されている。いかにも韓流ドラマらしい内容で、感動の押しつけにならないことに期待する。

 

 

TBS 火10 7/9 ~ 『Heaven?~ご苦楽レストラン~』 石原さとみ、福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、岸部一徳、段田安則、他

石原さとみ主演で描くレストランコメディ。変わり者オーナーと個性派シェフらが巻き起こすドタバタ・ハートフルコメディ。原作は佐々木倫子の漫画『Heaven?ご苦楽レストラン』。石原さとみが演じる主人公・黒須仮名子(くろすかなこ)は新たに開店することになるフレンチレストラン・“ロワン・ディシー(意味は『この世の果て』)”のオーナー。独特のバイタリティーと魅力を兼ね備え、たまに核心を突くことを言うが、店を繁盛させる気など毛頭なく『心ゆくまままにお酒と食事を楽しみたい』という自分の欲求を叶えるためだけに店を開いたという“超変わり者”。一方、店で働くシェフドラン(上級ウェイター)・伊賀観(いがかん)を福士蒼汰が演じる。よそのフレンチレストランで働いていた伊賀は、真面目で融通が利かず、営業スマイルもできない堅物のせいで、仲間からも客からもまったく評価されていなかった。しかし仮名子はそんな彼を高く評価、自分のフレンチレストランに伊賀をスカウトする。伊賀は個性豊かな他の従業員たちの調整役を務めることになる。そして伊賀に憧れる天然キャラで元美容師見習いのコミドラン(補助的ウェイター)・川合太一に志尊淳。明るくいつも笑顔だが物覚えが悪くなかなか戦力にならない。さらに、牛丼屋の店長を5年務めた経歴を持つ店長・堤計太郎(つつみけいたろう)に勝村政信。およそ店長らしからぬ肝の小ささでトラブルが起きるたびにパニックになる。在籍した店が次々に潰れる不運な天才シェフ・小澤幸應(おざわゆきお)に段田安則。心配性で弱気になると味が薄くなるが、コック見習いたちからは尊敬されている。資格取得が趣味で元銀行役員のソムリエ・山縣重臣(やまがたしげおみ)に岸部一徳。年寄りであることを利用して人を丸め込み楽をしようとする老獪かつお茶目な性格。これら個性あふれる従業員たちが、仮名子に翻弄され様々なトラブルに巻き込まれていくが、次第にそれぞれが『その人ならでは』の役割を担うようになりオーナーのために一致団結して懸命に問題を解決しようと奮闘する。もう若くない?石原さとみが、相変わらずのはっちゃけた演技を見せるのか?大丈夫?

 

 

テレ朝水9 7/10 ~ 『刑事7人(5)』 東山紀之、北大路欣也、倉科カナ、塚本高史、吉田鋼太郎、田辺誠一、白洲迅、他

2015年7月から始まった東山紀之演じる天樹悠を中心とした個性的な刑事たち7人が難事件に挑む姿を描く『刑事7人』の、2018年7月クールに続く第5シリーズ。2019年夏、複雑化、高度化する超凶悪犯罪と難解な未解決事件に特化する警視庁独自の部署『専従捜査班』が正式に発足。刑事・天樹悠が警視庁刑事部刑事総務課刑事資料係と専従捜査班刑事を兼務する。彼が前回と同じく“人間犯罪ビッグデータ”として活躍する。専従捜査班は、組織の論理にとらわれず独自の判断で自由に捜査を行い、時には司法取引させも武器にするのが特徴。専従捜査班は天樹のほかに、班長・片桐正敏(吉田鋼太郎)、海老沢芳樹(田辺誠一)水田環(倉科カナ)、青山新(塚本高史)、野々村拓海(白洲迅)らのメンバーで構成される。そしてプラスワンは、北大路欣也演じる法医学の権威・堂本俊太郎。これまでのシリーズで主人公の天樹の肩書きや組織構成がコロコロ変わっているため理解しにくい(主人公のキャラも変わっているように見える)が、そんなことはどうでもいいようである。とはいえ、第1シリーズこそ視聴率は9.6%と2桁には届かなかったものの、その後の3シリーズは、10.3%、11.3%、11.8%と右肩上がりと安定した人気を得ており、第5シリーズも期待できそうだ。

 

 

日テレ水10 7/10 ~ 『偽装不倫』 杏(主演)、宮沢氷魚、仲間由紀恵、瀬戸利樹、MEGUMI、田中道子、夏子、伊沢弘、朝加真由美、他

『東京タラレバ娘』の作者・東村アキコの新作マンガ『偽装不倫』をドラマ化。見栄から既婚と嘘ついた独身アラサー女子が、偽装“不倫”の深みにハマっていく。杏演じるのは 32歳、独身、実家暮らし、彼氏なしの『おひとり様女子』・濱鐘子(はましょうこ)。契約社員として働きながら婚活するも成果の出ない鐘子は一人旅に出かけた飛行機の中で年下のイケメン・伴野丈(宮沢氷魚)と出会う。思いがけず旅先で食事をすることになった二人だったが、鐘子は自分が既婚者であると嘘をついてしまう。すると、その男は彼女に言う。『この旅行の間だけでいいから僕と不倫しましょう』。たった一つの嘘によって手に入れた期間限定の恋、そして今まで感じたことのなかった幸せな時間。「彼にとってこれは“不倫”という遊び。“純愛”じゃないんだ」、そう自分に言い聞かせる彼女だったが、どんどん深みにはまっていってしまう。この幸せは果たして本物の幸せと言えるのか?幸せになりたい、だけど傷つきたくなくて臆病になってしまう。そんな女性の心の葛藤が描かれる。その他のキャストとして、天真爛漫な年下男と不倫をしている鐘子の姉・吉沢葉子を仲間由紀恵、葉子の理想的な夫でエリート商社マンの吉沢賢治を谷原章介、葉子の不倫相手でプロボクサーながら甘え上手で人懐っこい八神風太を瀬戸利樹、らが演じる。杏の本格的ドラマ復帰第一作となりそうだが、独身おひとり様役とはちょっと無理があるのでは?

 

 

テレ朝木9 7/11 ~ 『サイン~法医学者 柚木貴志の事件~』 大森南朋、松雪泰子、仲村トオル、飯豊まりえ、高杉真宙、他

遺体の声なき声に耳を傾け続ける法医学者たちが不都合な事実を隠ぺいする権力社会に立ち向かう。原作は 2011年に放送されて人気を博した韓国ドラマ『サイン』。主人公の法医学者・柚木貴志(ゆずきたかし)を大森南朋が演じる。柚木は、死因究明を進めるために約25年前に設立された『日本法医学研究院』に所属する解剖医。口が悪く偏屈な無頼派だが奥底には温かい心を持っており解剖の腕は超一流。そんな柚木に虐げられながらも真摯に法医学と向き合う同院の新人解剖医・中園景に飯豊まりえ。柚木の元恋人で野心家の警視庁捜査一課の管理官・和泉千聖(いずみちさと)に松雪泰子、女たらしの一匹狼だが仕事のできる警視庁捜査一課警部補・高橋紀理人に高杉真宙。そして、国立大学の法医学教授・伊達明義(だてあきよし)に仲村トオル。伊達は権力側に寄り添う危険な男で、保身のためなら解剖結果の改竄も厭わない。自分たちの都合で“真実”を隠蔽しようと暗躍する巨大権力に立ち向かう無骨な天才法医学者らの姿が描かれる。法医学ドラマは月9と2本となるが、大コケのない無難な路線と思われる。

 

 

フジ木10 7/11 ~ 『ルパンの娘』 深田恭子、瀬戸康史、小沢真珠、栗原類、どんぐり、麿赤兒、渡部篤郎、他

原作は横関大の小説『ルパンの娘』。泥棒一家の娘と警察一家の息子との恋愛描いたラブコメディ。家業と恋との間で揺れ動く大怪盗を深田恭子が演じる。深田演じる主人公の三雲華(みくもはな)は図書館司書として働いているが、実は泥棒一家 “Lの一族”(Lは大泥棒・ルパンの頭文字)の娘で、家族の誰よりも盗みの才能を持っていた。しかし家業を継ぐことを拒み普通に生きることを望んでいた。華には恋人の桜庭和馬(さくらばかずま)(瀬戸康史)がいたが、彼は警察一家の息子で、泥棒逮捕を専門にしている警視庁捜査三課の刑事だった。“Lの一族”は悪党しか狙わないことをモットーとしていたが、盗みの計画の先には、当然のごとく泥棒逮捕を仕事とする和馬がいつも関わっており、彼は時に悪党たちに襲われるなど窮地に陥ることもあった。華は、葛藤を覚えながらも大好きな和馬を救うため、ついつい一家の泥棒の手助けをしてしまうのだった。一方、警察一家の息子である和馬は、恋人の華が警察の人間ではないという理由だけで両親から結婚を反対される。桜庭家は一族から捜査一課の刑事を輩出することを長年の悲願としていたため、和馬は捜査三課で手柄を挙げ、捜査一課への異動が叶えば華との結婚を許してもらえるよう画策する。このため、和馬は全力を挙げて泥棒一家“Lの一族”の逮捕をめざすこととなる。華の母親・三雲悦子に小沢真珠、華の兄でハッカーの三雲渉に栗原類、華の祖母で鍵師の三雲マツにどんぐり、華の祖父・三雲巌に麿赤兒、華の父親で美術品専門の泥棒・三雲尊に渡部篤郎らがキャスティングされている。実にバカバカしいドラマだが、深キョンが演じるとこれが荒唐無稽ではなくなってしまうから不思議。いずれにしても高視聴率は期待できそうにない。

 

 

TBS金10 7/19 ~ 『凪のお暇(なぎのおいとま)』 黒木華、高橋一生、他

気弱OLの人生リセット物語。仕事も恋も全て捨てた28歳OLが、会社も人間関係も全て断ち、郊外の六畳一間で人生を見つめ直していく日常ハートフルドラマ。原作は月刊誌『Elegance イブ』で連載中のコナリミサトの漫画『凪のお暇』。黒木華演じる主人公の大島凪(おおしまなぎ)は都内にある家電メーカーで働く、サラサラストレートヘアの28歳。いつも人の顔色を伺いながら『わかる!』を連発し周囲に合わせることで日々何事もなく過ごすことを目標にしている“真面目で気が弱く優しい”良い人代表の女性。しかし、場の空気を読みすぎて他人に合わせて無理をした結果、過呼吸で倒れてしまう。さらにある日、付き合っていた彼氏・我聞慎二(高橋一生)からの一言がきっかけで心が折れてしまう。「私の人生、これでいいのだろうか…」と自分を見つめ直し、人生のリセットを決意。会社を辞め、住んでいたマンションも解約し、付き合っていた彼氏もろとも、関わっていたすべての人たちとの連絡も絶ち、人生の再生を図る。そして都心から郊外の何もない六畳一間のボロアパートに引っ越した凪は、コンプレックスの天然パーマを隠すため毎朝1時間かけてアイロンをかけていたサラサラストレートヘアもやめて、ありのままに生きることを決意する。仕事もこれまでのつながりも予定もない、誰にも縛られない楽しい自由な生活、のはずだったが、やはり人の目を気にしてしまう凪は空気を読んでしまいそうになる…。凪を追いかけてきた慎二やアパートの隣人・ゴン、そして新しく出会った人たちに囲まれながら、凪の人生リセットのストーリーが始まる。主人公が一体、どうやって生計を立てていくのか、そこが一番気になってしまうドラマ。

 

 

テレ朝金 11:15(金曜ナイトドラマ) 7/26 ~ 『セミオトコ』 山田涼介(Hey!Say!JUMP)、他

アラサー女性に命を救ってもらったセミが人間になり、恩返しとして7日間一緒にいることになるという、岡田惠和によるオリジナル脚本ドラマ。山田涼介演じるセミが、ようやく羽化し地中から出ようとしたとき、頭上から落下してきたさえないアラサー女子・由香の下敷きになりそうになる。由香の機転により、ぺしゃんこの難は逃れたものの、セミは彼女の寂しそうな雰囲気が気になってしまう。『この人を笑顔にしてあげたい』と強く願ううちにセミは人間の姿になってしまう。由香の前に人間として現れたセミは、命を救ってもらったお礼を伝え『恩返しに何でもしますから7日間一緒にいましょう』と持ちかけ、二人の7日間限定の生活がスタートする。あまりにバカバカしい内容のようだが、あなたは視てみたいと思うだろうか?

 

 

日テレ土10 7/13 ~ 『ボイス 110緊急指令室』 唐沢寿明、真木よう子、増田貴久(NEWS)、木村祐一、他

韓国ドラマ『ボイス〜112の奇跡〜』の日本版リメイク。敏腕刑事&声紋分析官がタッグを組み難事件に挑むタイムリミット・サスペンス。唐沢寿明演じる主人公・樋口彰吾は港東署 ECU 緊急出動班・班長。かつては敏腕の刑事だった。性格は情熱的で、時には感情に任せて動いてしまうが、情に厚く後輩たちからも信頼される昔気質な男だった。3年前、正体不明の暴漢により妻を撲殺される。妻は殺害される前、樋口に助けを求める電話をかけていたが、仕事中だった樋口はそれに気づかなかった。一番愛していた人を守れなかった悲しみは樋口の心に重い十字架となって残り、酒を飲んでは妻の幻影に涙する日々が続いていた。そんな時、緊急指令室の中に新たに創設された ECU(Emergency Call Unit)のメンバーとして樋口が召集された。しかしそこの室長が、3年前に妻が亡くなった際、通報電話を受けた橘ひかり(真木よう子)だと知った樋口はチームに入ることを頑なに拒む。妻からの助けを求めた電話に緊急指令室は機能せず、逆に犯人に妻の位置を分からせてしまうという失態を犯していたからだ。さらにひかりは逮捕された容疑者・相良卓也の裁判で、『事件のときに聞こえた声が相良とは違う』と証言していた。当初はひかりの持つ能力を信じることができず反発する樋口だったが、声紋分析官としてのひかりの実力を知り信頼が徐々に生まれていく。ひかりは幼少時、事故で目を怪我したため、同時に微かな音を聞き分けることができる絶対聴感能力を持っていた。警察大学を首席で卒業した後、緊急指令室で働いていたが、ある日、通報電話の向こうで樋口の妻が正体不明の暴漢に無残に殺されてしまう事件に遭遇する。さらにその後、警官で現場付近を巡回していたひかりの父親も同じ男に撲殺される。助けを求めている人が、自分と電話でつながった先にいるのに何もできなかったという失意と悔しさに苛まれるひかりはボイスプロファイルの専門家となる。緊急指令室には、電話による通報から『3分で現場到着、5分で現場確認、10分で検挙』という被害者の生死を分ける“クライシスタイム”が存在する。ECUはその“クライシスタイム”内に人々を救うために新たに発足したユニットだった。勘と行動力で突き進む凄腕刑事とボイスプロファイラー(声紋分析官)が協力して助けを求める人々を救う『タイムリミットサスペンス』、そして主人公たちの愛する家族を殺害した『真犯人』を突き止めようとする復讐劇が描かれる。かつて樋口が所属していた強行犯係時代から樋口を慕っている港東署ECU緊急出動班の捜査員・石川透を増田貴久、かつて同期の樋口とコンビを組み数々の事件を解決した港東署強行犯係係長の沖原隆志を木村祐一が演じる。

 

 

NHK日8 継続 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』 中村勘九郎、阿部サダヲ、ビートたけし、森山未來、神木隆之介、役所広司、綾瀬はるか、他

大河ドラマ史上最低視聴率を連発。毎回、特に感動的なできごとはなく退屈な展開が続く。後半も似たようなものだろう。大河ドラマだと思わず期待しないで視ることが肝要か。

 

 

TBS 日9 7/7 ~ 『ノーサイド・ゲーム』 大泉洋、上川隆也、松たか子、(八代目)中村芝翫、他

原作は池井戸潤の新作小説『ノーサイド・ゲーム』。社会人ラグビーチームのゼネラルマネジャーになった中年サラリーマンの奮闘劇。大泉洋演じる主人公は、大手自動車メーカー『トキワ自動車』の中堅サラリーマン・君嶋隼人。君嶋は出世レースの先頭に立ち幹部候補とまで言われていたが、上司が主導する企業買収に異を唱えた結果、府中工場に総務部長として左遷させられる。やるせない思いで赴任先の工場に赴いたところ、トキワ自動車ラグビーチーム『アストロズ』のゼネラルマネージャーを兼務するよう命じられる。かつては強豪チームだったアストロズだが、いまは成績不振にあえいでいた。こうして知識も経験もない君嶋にチーム再建という重荷が課せられた。低迷するラグビー部と出世の道を絶たれた君嶋の、再起をかけた戦いが始まる。主人公と仲間たちが会社内に立ち塞がる大きな壁に挑み、苦しみながら逆境を跳ね返していく様が描かれる。君嶋の最大の理解者だが夫を尻に敷く妻・君嶋真希に松たか子、君嶋が左遷させられる原因となった企業買収先であるカザマ商事の3代目社長・風間有也に中村芝翫、君嶋を府中工場に飛ばした君嶋の天敵・トキワ自動車常務取締役営業本部長の滝川桂一郎に上川隆也らがキャスティングされている。これまでの池井戸作品と同様、サクセスストーリー的な展開と予想される。新鮮味はなさそうだ。

 

 

日テレ 日10:30 継続 『あなたの番です』 原田知世、田中圭、西野七瀬、木村多江、生瀬勝久、浅香航大、袴田吉彦、奈緒、安藤政信、真飛聖、他

厳しい視聴率のまま後半に突入である。登場人物が多く、構成が複雑なため、マンションの住民紹介のサイトを片手に視聴しなければ理解困難である。ましてや一回見逃しや途中視聴などが許容できない展開のため視聴率の回復は望めそうにない。身の回りで殺人が続くきわめて深刻な状況にもかかわらずコメディタッチの演出がところどころに散見されるなど支離滅裂な展開。かなり残念なドラマになった。この状態でもう1クール継続とは制作サイドも大変だろう。

 

 

 

というわけで、一通りチェックしてみたものの、

次クールもたいした作品はなさそうである。

どれが、とは言わないが、

頭を空っぽにして能天気ドラマを楽しむか、

それとも法医学ドラマで時間を潰すか…

そんなレベルである。

 

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不釣り合いに激しい腕の痛み

2019-06-02 19:51:52 | 健康・病気

月が変わりましたが5月のメディカル・ミステリーです。

 

5月25日付 Washington Post 電子版

 

 

‘When I tell people what happened, they freak out’: A sore arm results in 4 surgeries and 8 days in a hospital.

「自分の身に起こったことを話すと誰もが震え上がります」:腕の痛みで4回の手術、8日間の入院となる。

 

 

By Sandra G. Boodman,

 ワシントンの緊急室に向かう Uber(ウーバー:米国の配車サービス)に乗り込んだとき、Michael Zelin(マイケル・ゼリン)さんは、医師に彼の腕の痛みを診てもらって鎮痛薬を処方してもらえば数時間のうちに家に戻れるだろうと考えていたことを覚えている。

 不動産会社の役員を務めている 39歳の男性はこの深夜の ER への受診が必要なものなのか確信がなかった。「私はこう考えていました。『明日、仕事があるし、3人の小さな子供たちもいる』と」そう彼は言う。

 その前の週末に Zelin さんは、彼の子供2人を乗せた重い二人乗りベピーカーを押して自宅近くの5km のレース場を回っていた。その一日後、彼はサウスカロライナのリゾート地に向かい、2日間で36ホールのゴルフをプレイした。

 彼は無理をしたため右の前腕の筋肉を痛めたのだと考えた。しかし、ワシントンの手の外科医で友人の Noah Raizman(ノア・ライズマン)氏は、その痛みが何かより深刻な病気の兆候であってはいけないので、ER を受診するよう彼に助言した。

 結局 8日間で4回の手術を受けた後、Zelinさんは自宅に戻ったが、彼は腕だけでなく、命までも失っていた可能性のあるきわめて稀な一連の経過からの幸運な生存者となったのである。

 「私はすべてのことについてあまり振り返らないようにしています」2018年5月のこのできごとについて Zelin さんは言う。「それでも、自分の身に起こったことを人に話すと、誰もが震え上がるのです」

 

腕の痛みで緊急室を受診する前、子供たちと写る Michael Zelin さんとその妻 Lauren Zelin さん。

 

Muscle pain 筋肉の痛み

 

 地球環境団体のメディア広報部長をしている Lauren Zelin(ローレン・ゼリン)さんは、当時 5歳、3歳、1 歳の3人の子供たちが寝付いたあと、仕事の遅れを取り戻すべく Northwest Washington にある自宅の一階にいた。午後10時ちょっと過ぎに、彼女の携帯電話のメッセージ音が鳴った:夫が寝室のある二階に来るよう彼女にメールで頼んだのである。

 Michael さんはジムに立ち寄ったあといつものように7時に自宅に戻っていた。彼は夕食を食べ、子供たちをお風呂に入れたあと床に就いていた。

 メールを送るとは普通ではなかった。「どこかが悪いのだと思いました。そうでなければ彼は下りてくるでしょうから」と Lauren さんは言う。

 Michael さんは前腕に痛みがあるため眠ることができないと彼女に話した。痛みはその日の早い時間に始まっていたが悪化していたのである。Lauren さんは彼に市販の鎮痛薬を飲ませ、消炎の軟膏を渡した。しかしどちらも効果がなかったため、彼女は助言を求めて長年の友人にメールを送った。

 妻も外科医である Raizman さんは夜間のメールには慣れていた。「いつも私たちのどちらかはオンコールなので」と彼は言う。

 「それは恐らくひどい肉離れではないかというのが私の最初の印象でした」と Raizman さんは思い起こす。「あるいは、酷使からちょっとしたラブド(rhabdo)を起こしたのかも」ラブドとは横紋筋融解症 (rhabdomyolysis)の俗称である。これは筋肉の破壊を起こす稀ながら医学的に注意を要する重要な病状である。この病状には、外傷、酷使、あるいは、まれながら、コレステロールを低下させる薬など特定の薬剤の使用によるなど、多くの原因がある。

 Raizman さんと Lauren さんはさらに一時間あまりメールを交換した。Michael さんの痛みは増強しており、Raizman さんによると、彼は Lauren さんに「この状況を言い表すのに『急速に進行している』という言葉を使うかい?」と尋ねたところ、彼女は「はい」と答えたという。

 彼女が、前回の帝王切開のときの麻薬のオキシコドンを持っていたら夫に渡せたのに、と冗談を言ったとき、それに対する Raizman さんの助言は明確なものだった:もしその痛みが麻薬を必要とするほどひどいなら、「あなたは目を離してはいけない」と彼は言った。

 そのため Michael さんは、Raizman さんが職員を務める Sibley Memorial Hospital(シブレイ記念病院)に向かった。Lauren さんは彼に付き添うべきだと考え、近くに住んでいる彼女の母親に子供たちと一緒にいてくれるように話をつけ一時間後に病院に到着した。

 「彼らは必要なすべての検査を始めてくれました」と Michael さんは思い起こす。「それから病状が進み、痛みは実際に悪化していったのです」

 

'I can't do this' ‘これは無理’

 

 検査では横紋筋融解症の徴候はみられなかった。一方、Michael さんの白血球数は正常であり、感染とは異なる所見と思われた。炎症マーカーの一つは高値だったが、もう一つの値は正常だった。とりあえずの診断名は腱炎となったが、これはしばしば酷使によって起こる腱の炎症である。しかし腱炎は通常、それほど劇的に、あるいは急速に増悪しない。そしてさらに Michael さんの前腕は徐々に腫れを増していた。

 午前3時ころに行われた MRI 検査は“拷問”だったと Michael さんは思い起こす。「痛みがひどかったので、とにかく自分がしたかったことは腕を曲げて身体のそばに置いてそれをかばうことでした」。しかし、適正な画像を得るためには腕をまっすぐにし動かずにいることが求められた。

 「私は汗をかき、泣き叫び、最後にこう言いました。『やめてくれ』と」技師にそう言ったことを彼は覚えている。「これまでの人生であれほどひどく痛かったことはありませんでした」

 それでもその検査で腱炎の診断が確定できたようだった。

 午前5時ちょっと前、Lauren さんは Raizman さんに電話をかけた。Michael さんは2倍量のモルヒネを投与されたが、痛みが和らぐことはなく彼の意識はもうろうとしたという。

 Raizman さんは服を着替え病院に向かった。Michael さんが急性コンパートメント症候群(acute compartment syndrome)の徴候を示しているのではないかという懸念が彼の中で高まっていたのだという。しばしば圧挫損傷によって引き起こされるこの病態は、筋肉内の圧が高まり、患肢への血流が障害されて起こるものである。

 急性コンパートメント症候群 は、圧を下げるために、多くは手術による迅速な治療を要する医学的緊急事態である。(慢性コンパートメント症候群は激しい運動に関連するもので、もっと緩徐に発症し、通常は緊急治療を要することはない)。

 

A medical emergency 医学的緊急事態

 

 「コンパートメント症候群では時間イコール筋肉です」 Raizman さんは言う。2014年、PBS(Public Broadcasting Service:全米ネットの公共放送網)の科学担当記者 Miles O’Brien(マイルス・オブライエン)氏は、フィリピンへの取材旅行中に重いカメラ装置が彼の前腕に倒れた後、急性コンパートメント症候群を発症した。O’Brien 氏はその外傷が深刻なものだとは思わず仕事を続けていた。一日かそこら経って彼が治療を求めたときには彼の腕は肘のすぐ上での切断を余儀なくされる状態だった。

 Raizman さんは ER に到着するとコンパートメント圧測定検査を行った。この検査では針が筋肉内に挿入される。その結果は否定的疑念を一掃するものだった:Michael さんの圧は 70mmHg で、急性コンパートメント症候群を示唆する数値の2倍以上だった。圧を下げ、腫脹を減じ、願わくば彼の腕を救うためには緊急の筋膜切開が必要だった。

 Raizman さんはこの友人たちをうろたえさせないように努めたが、一方で待ち受ける不確定なことに対する覚悟を彼らに持たせようとしたという。

 Michael さんは痛みが強すぎて緊急手術が必要であることは厭わないと言い、痛みを取り除くために必要なことは何でもしてくれるよう Raizman さんに言った。Lauren さんは不安を感じ“とてもドキドキ”したが、夫の激しい苦痛の原因が明らかにされたことに安堵していたという。

 しかし、そのとき誰にも分らなかったことは、手術だけではコンパート症候群よりさらに大きなリスクをもたらした根本的な問題を解決できないことだった。

 最初の手術は Michael さんの右手掌から右肘にかけて切開を加えるものだったが、これは順調に行った。Raizman さんによると、筋肉が正常に見えたことを確認でき大いに安心したという。いずれ閉鎖する必要がある創を観察しきれいにするために翌日に2度目の手術が予定された。

 しかし肝心かなめの問題がうやむやのままだった:そもそも最初の段階で何がコンパートメント症候群を起こしたのか?ということである。医師らは困惑し、この夫婦に、最近の外傷の可能性について質問を繰り返した。

 最初の手術から数時間後、Michael さんが集中治療室で回復状態にあったとき、発熱がみられ、さらに上昇し始めた。Lauren さんによると、彼の顔色や状態が悪そうに見えたのを心配した洞察鋭い看護師が医師らに連絡したのだという。その日のうちに感染症の専門医がコンサルタントとして参加した。

 その専門医は、Michael さんは感染症を発症しており、ブドウ球菌と連鎖球菌を治療するためにいくつかの抗菌薬を大量に投与する必要があると言った。

 その感染症専門医とのミーティングから数時間後、Lauren さんは、言い忘れていたことを伝えるために ICU の医師を探した。Michael さんの腕が痛み出す数日前に、彼女は A群連鎖球菌によって引き起こされる細菌感染症である連鎖球菌性咽頭炎(strep throat)と診断されていたという。そのことが関係している可能性はあるだろうか?

 その可能性はあると医師は言った。

 翌日、検査によってその関連がありそうだということが明らかになった。

 Michael さんは壊死性(えしせい)筋膜炎(necrotizing fasciitis)に罹患していた。これは一般に“人食いバクテリア(flesh-eating bacteria)”と呼ばれているものである。発症した患者の約30%が死亡するこの動きの速い感染症は、ほとんどの場合 A群連鎖球菌によって引き起こされるが、頻度は低いもののブドウ球菌によっても起こりうる。敗血症性ショックに至ることもあり、この場合さらに高い死亡率をもたらす。高用量の抗生物質の静注に加え、感染組織を除去するために多数回の手術が必要となることがある。

 検査により、Michael さんの感染症が連鎖球菌によって引き起こされたことが判明し、この夫婦の3人の子供たちも検査を受けた。全員が感染していたが、症状を呈していたものはいなかった。

 Raizman さんによると、医師らは、Michael さんがゴルフに精を出しすぎており、恐らくそれによって彼の前腕にわずかな筋の損傷がもたらされたものと理論づけているという。恐らく A群連鎖球菌は彼の鼻あるいは口のどこかに潜んでいて、その後前腕に移動して壊死性筋膜炎を引き起こしたとみられている。その感染が高度の腫脹をもたらし急性コンパートメント症候群に至ったのである。

 これはきわめて稀な状況であるが、過去に報告された例がある。2008年、オハイオ州の医師らが57年間で13例の研究を発表しているが、これには非外傷性の損傷後に連鎖球菌によって引き起こされた急性コンパートメント症候群を発症した複数の男性が含まれている。そのほとんどが病前は健康だったという。

 医師らは Michael さんが敗血症の徴候を示しているようにみえることを当初懸念した。しかし入院5日目までに彼は顕著に好転しており集中治療室から出ることになった。

 「私は一週間眠れませんでした」と Raizman さんは言う。「この状況に安心できるだけのものは何もありませんでした。どのようになっていくか全く確信ができなかったのです」

 4回目の手術で形成外科医によって創を閉じられてから Michael さんは自宅に戻った。彼が ER を受診して8日後のことだった。PICC ライン(peripherally inserted central catheter line)と呼ばれるカテーテルが彼の胸部に植え込まれ、今後6週間必要とされる抗生物質の静注内投与が行われた。

 

Replaying events 起こったことが頭に浮かぶ

 

 理学療法を行った2ヶ月後、Michael さんは、前腕と手がほぼ完全に使えるまで回復していた。

 しかし心理学的後遺症が消えるまではさらに長い時間を要した。

 「私は何度もそれが頭に浮かびました」と Lauren さんは言う。Raizman さんは後にその夫婦にこう話していた。4~6時間遅れていたら多分 Michael さんは腕を失っていただろうと。

 彼女は今でも起こる可能性があった事を強く意識している:もし Michael がリゾート地にいるときにこれが起こっていたらどうなっていたか?彼が ER に行くことなく翌朝まで待つことにしていたとしたら?もし、医学的シェルパの役割を果たしてくれて事を迅速に進めてくれることのできた外科医の友人がいなかったとしたら?もし、集中治療室の看護師が、何か深刻なことが起こりかけているという疑いに基づいて行動しなかったとしたら?

 彼女によると、この夫婦は感染症専門医に、それを予防するためにできたことは何だったのかと訪ねたという。果たして彼の答えは?何もない、だった。

 それでも、二人は自分たちの健康にさらに気を配るようになったと彼女は言う。そして、彼女は、Michael さんの経験によって、一連の稀なできごとの可能性を考慮する必要性を医師たちに強調することができればと思っている。

 Raizman さんもまた、“Lauren さんが私にメールしていなかったとしたら?”といったことなど、起こり得た事態について思いを巡らしてきたという。

 「今回は私たちは最高に運が良かったのです」と彼は付け加える。「これほど早期に壊死性筋膜炎のケースに出会ったことはなく、これほど損傷の少ないケースも見たことがありません。実際、まさにまぐれ当たりだったのです。手の外科医なら誰であっても、まさしく私の行ったことをしていたでしょう」

 損傷の程度に不釣り合いに思われる痛みや、急速に増悪する痛みがあれば直ちに応急手当のセンターではなく ER への受診が促されるべきであると Raizman さんは警告する。

 今回の Raizman さんの関与が“きわめて重要だった”と考えている Michael さんは彼より楽観的のようである。

 「今回のことが起こったことは非常に不運でした。しかし今回の結果はきわめて幸運でした」と彼は言う。

 

 

 

壊死性筋膜炎は浅層筋膜を細菌感染の主座として

急速に壊死が拡大する軟部組織感染症である。

切創、虫刺され、注射など軽微な外傷や熱傷などを契機に発症、

進行するとDIC(播種性血管内凝固症候群)や敗血症を発症し

予後不良となる。

A群・G群溶血性連鎖球菌、Staphylococcus属、

Aeromonas属などが起炎菌となるほか、

魚介類の経口摂取でVibrio vulnificusが起炎菌となる例も

報告されている。

A群溶血性連鎖球菌やVibrio vulnificusを

俗に“人食いバクテリア”ともいう。

ここでは劇症型溶血性連鎖球菌感染症について

説明する。

 

詳細は国立感染症研究所のサイトをご参照いただきたい。

 

劇症型溶血性連鎖球菌感染症は1987年に米国で最初に報告、

日本における最初の典型的な症例は1992年に報告されており、

毎年100~200人の患者が確認されている(2014年は273例)。

このうち約30%が死亡しており

きわめて致死率の高い感染症であるといえる。

主な病原体は

A群溶血性連鎖球菌(Streprococcus pyohenes)である。

A群溶血性連鎖球菌感染による一般的な疾患は咽頭炎であり、

その多くは小児が罹患する。

一方、劇症型溶血性レンサ球菌感染症は

子供から大人まであらゆる年齢層に発症するが、

特に30歳以上の大人に多いのがひとつの特徴となっている。

免疫不全などの重篤な基礎疾患を持っていない健康成人でも

突然発病する例がある。

 

初期症状としては四肢の疼痛、腫脹、 発熱、血圧低下などで、

発病以降の進行が非常に急激かつ劇的で、

発病後数十時間以内には軟部組織壊死、急性腎不全、

成人型呼吸窮迫症候群 (ARDS)、DIC、多臓器不全(MOF)を

引き起こし、ショック状態から死に至ることも多い。

Stevens らの報告(1992、1989)によると、

最も一般的な初期症状は疼痛であり、急激に始まり重篤である。

疼痛は通常四肢で見られる。

疼痛が始まる前に、発熱、悪寒、筋肉痛、下痢のような

インフルエン ザ様の症状が20%の患者にみられる。

全身症状としては、発熱が最も一般的である。

ただし、患者の10%はショックにより低体温を示す。

錯乱状態(confusion)が患者の55%でみられる。

局所的な腫脹、圧痛、疼痛、紅斑のような軟部組織感染の徴候は、

皮膚からの侵入口が存在する場合によくみられる。

痛みのあった箇所は次第に壊死に陥り変色し範囲が急速に

拡大する。

進行は非常に急激かつ劇的で壊死は一時間に数cm も

広がることがある。

やがて敗血症に陥り、血圧が低下、ショック状態となり、

急性腎不全など多臓器不全を起こして死に至る。 

 

治療は抗菌薬を早急に開始する。

抗菌薬としてはペニシリン系薬が第一選択薬である。

体の免疫力を高めるために免疫グロブリン製剤の投与が

行われることもある。

血圧維持には大量の輸液が必要となる。

壊死に陥った軟部組織は本菌の生息部位であり、壊死による

腎不全および代謝性アシドーシスの悪化を防止するため、

可及的広範囲に病巣を切除すること(debridement)が必要である。

時期を逸すると四肢末梢の血流障害、壊死の拡大により

四肢切断を余儀なくされることがある。

本症例のように組織圧が上昇し循環障害を来たす

急性コンパートメント症候群を呈した場合には

組織の減圧を図るべく減張切開が必要となることもある。

 

原因菌はそこらに普通にいる細菌である。

そんな普通の細菌がなぜ突然、凶暴化し激しい症状を

引き起こすのかについてはまだよくわかっていない。

つまりいつでもどこでも誰にでも発症し

死に至る可能性がある恐ろしい病気であるといえる。

まれではあるが増加の傾向にあるとか?

気を付けなければ…

とかいっても何に気を付けたらいいのかわからない?

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