MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

国家緊急事態!

2009-10-27 22:38:20 | 健康・病気

基礎疾患を有する接種最優先の人たちへの
ワクチンの配布が遅い。
さらに、医療者側が接種対象者に対して
どのような手順で接種を促すのかは現場に丸投げの状態。
ワクチンが既に一定量どこかに確保できているのであれば、
必要に応じてその都度、柔軟な対応で末端の医療施設まで
届くようにしてほしいものだ。
特に今年は季節性インフルエンザ・ワクチンが不足気味で
接種を受けられない人も多いと予測されるのでなおさらである。
そろそろ、日本も『緊急事態』と考えておいた方がいいのかも?

10月24日付 TIME.com より

H1N1 National Emergency: Time for Concern, Not Panic H1N1 国家緊急事態:パニックでなく懸念の時

H1n1emergency_2

 事態は実際より一層悪くなったように思えてしまう。先週の金曜日 (23日) の夜遅く、Barack Obama 大統領は、彼の署名によって H1N1 について国家緊急事態を宣言した。それによると Obama 氏の判断に至る経緯と次のような論拠が示された。すなわち、国内において急速な疾病の増加が医療資源に過剰な負担を与えるような状況や、米国の医療施設が緊急措置計画を実行できるようにするため連邦による特定の標準的要求事項の一時的な権利放棄が正当化されるような事態において、米国における2009年の H1N1 インフルエンザ・パンデミックは国家緊急事態の要件となるという。
 恐ろしい言葉である。しかし、ホワイトハウスの高官たちは、Obama 氏の宣言は、その形式にとらわれるのではなく、H1N1 ウイルスがより致死的で危険性の高いものに突然変わったということを示すものではないとの見解をただちに説明した。むしろ、国家緊急事態を宣言することによって、ホワイトハウスは、病院や地方レベルの官庁に、トリアージ施設を迅速に準備したり、どのような今後の患者の急増にも対処することを可能にするものである。H1N1 患者であふれ返る恐れのある病院は、治療のために別の場所に彼らを隔離することが許されるようになる。それによって疾病の拡大を遅らせることができる。今回の処置は、ハリケーンが上陸する前に緊急事態を宣言することに似ている所がある。これは迅速な対応を遅らせることになるかもしれない法的な縛りを排除しようとするものである。
 しかし、この緊急事態宣言が世界の終りの訪れを意味するのではないにしても、H1N1 は依然重大な脅威を持ち続けており、すべてのレベルにおいて、政府の対応は一様ではなかった。金曜日、H1N1 ウイルスは現在、46州で蔓延していると発表した。このインフルエンザの流行レベルは、通常では冬の後期までは見られないものである。このウイルスが拡大し始めて以来、数百万人の米国人が感染し、少なくとも20,000人が入院し、1,000人が死亡した。死者には100人近い子供が含まれている。「基本的に、インフルエンザ流行のピークが10月に見られることはきわめて異例です」と Centers for Disease control (CDC) の所長 Thomas Frieden 氏は言う。「その数はさらに増加し続けています」
 それらの増加を減ずる最善の方法は、新しいH1N1 ワクチンの迅速な製造と配布であろう。しかし、ワクチンの確保は、このウイルスが春に拡大し始めたときに保健当局が予想したよりはるかに困難であることが明らかとなった。製薬業者はワクチンの増産に失敗。CDCが10月末までに見込んでいた1億2,000万回分の確保は困難で、実際は3,000万回分に近い数字となりそうである。「ワクチンの製造は期待するほど予想通りには進みません」と Frieden 氏は言う。「予想していたところとはかけ離れたところに今いるのです」
 同時に、何よりもワクチンを必要としている人々―たとえば妊婦、6ヶ月から24才までの若年者、医療従事者ら―に実際に接種を行うことも容易には進んでいない。ワクチン不足に対する苦情が国中で湧き起こっており、追加のワクチンがいつ届くのかわからない状態だと、地方の公衆衛生部局は語っている。心配する親たちは、子供たちにワクチンを受けさせるにはどこへ行けばいいのかわからないと言う。それは果たして、かかりつけ医、学校、地方の病院?
さらにそうした苦情の大部分を誰が受けるべきなのかも明らかでない。実際にワクチンを調達し優先順位をつける任には連邦政府が当たっているが、実際にワクチンを配布するのを主導するのは州や地方の関係官庁となっている。それが混乱と不満のもととなっている。「私たちは新しいワクチンを流すための輸送管を得ていますが、その先は錆びついた蛇口だらけなのです」と、University of Minnesota のCenter for Infectious Disease Research and Policy のMichael T Osterholm所長は、最近の会議で語った。
 H1N1 ウイルスはすでに大勢の人々に感染しているが、幸いにも多くの科学者たちが最初に懸念したほど致死的ではない。ひどく感染が蔓延した地域でさえも、病院はパンク状態にはなっていない。国内のある地域では、ウイルスの活動が弱まりつつある。8月に生徒たちが学校に戻ったとき急激な感染増加を見た南東部の州では、今、減少傾向が見られている。しかし、パンデミックはしばしば複数の周期で感染が広がるため、冬に入り気温の下がった今年の終盤に第2波を見ることになるかもしれない。そして、過去のパンデミックで見られたように、その際の方がより重大となる可能性がある。「より悪い特性を持っているかもしれない何かに備えるという意味からすれば、今回の感染はその警鐘なのだと言えます」とUniversity of Michigan School of Public Health の疫学者 Arnold Monto 氏は言う。
 ワクチンの供給が限られ緊張が高まり、さらに国家緊急事態が宣言されたりで、現時点ではそのように見えないかもしれませんが、これまでのところ私たちは幸運だったのです。しかし、この先、この幸運は続かないかもしれないのです。

米国における今回の国家緊急事態宣言は
あくまでも予防的措置であるとのことだ。
これまでの緊急事態宣言は
1950年の朝鮮戦争、1979年のイラン米大使館員人質事件、
2001年の9・11事件、
あるいはハリケーンによる大災害時などに出されたとか。
やはりかなりやばいのか、と思ってしまう。
ワクチン接種に関しては米国でも混乱を極めているようだが、
ここ日本でも、
ワクチン供給の不透明さやそのスローぶりには
じれったさを感じてならない。
しかし、わが国において錆びついているのは、
蛇口ではなく輸送管全体であり、
その流れを調整する役目の方々には
もっとしっかり管理いただきたいものである。

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偽薬はどこに効くのか?

2009-10-25 19:03:47 | 健康・病気

人間の身体って不思議である。
何ら薬理効果のない薬(たとえば乳糖を固めただけの薬、
英米では “sugar pill”)を投与しても
症状の改善や、時には副作用さえ認められる。
そのような薬は偽薬(placebo、プラセボ、プラシーボ)と
呼ばれ、もたらされる効果はプラセボ効果と呼ばれる。
プラセボ効果のメカニズムはいまだ十分には
解明されていないが、
たとえば、
その偽薬が高価であるほど効果も大きかったというような
データもあり(一分さんのブログ)、
精神的な要因が深く関わっているのは間違いなさそうである。
期待感や安心感などから脳内麻薬が出ることで
効果を示すと考えられていたが、
この作用が脊髄レベルにまで及んでいることが
このたび明らかになった。
苦痛の緩和が中枢神経のすべてのレベルで
行われている可能性があるという話。

10月16日付 TimesOnline より

Placebo effect starts in the spine ― not just the mind プラセボ効果は脳だけでなく脊髄で始まる。

Placebo

 痛みの信号を追跡するのに人間の脳に対して最新型のMRIスキャンが用いられてきた。
 もしプラセボ効果=偽薬効果 (placebo effect) がすべて心の中にあるとお考えなら、考え直す必要がありそうだ。疼痛を緩和する薬理成分をなんら含有していない医薬品から恩恵を受ける人がなぜいるのかという謎を科学者たちは今、解明しつつある。
 疼痛信号が脳に到達するのを脊髄レベルでまず阻止するという作用がプラセボの働きの一部に認められることを研究結果は示唆している。
 患者が治療に効果を期待するとき、疼痛のコントロールに関与する脳の領域が活性化し、内因性エンドルフィンの放出を引き起こす。
 エンドルフィンは指令を次々と脊髄に送り、入ってくる疼痛信号を抑制し、その治療の直接的効果の有無にかかわらず患者は気分が楽になるというのである。
 脳内の一連の事象は、モルヒネなどのオピオイド薬(脳内麻薬)の作用機序を密接に反映しており、プラセボ効果が生理学に根差しているという見方をさらに押し進めている。
 そういった知見によって、多くのすでに確立された医学的治療においてもその効果の一部が、薬剤が快方に向かわせてくれるだろうという患者の期待感からもたらされるという論拠が強化されることとなる。
 抗うつ薬の最新の研究では、少なくともその有効性の75%はプラセボ効果によるものであることが示唆されている。さらに、一般開業医たち(GP)も、薬剤の直接的な効果が見られるようになるまで数週は要するところを、抗うつ薬を処方後わずか数日で症状が改善する患者がいることを経験している。
 科学雑誌『サイエンス』に今日発表された研究では、機能的MRI (funtional magnetic resonance imaging) 用いて15人の健康なボランティアの脊髄が観察された。スキャンは脊髄後角 (dorsal horn) と呼ばれる領域に狙いを定めた。この部位は脳内の痛みに関連した領域へ疼痛信号を上行性に伝達する脊髄内の領域である。
 スキャンの間、ボランティアたちは両手にレーザー光線による “チクチク刺すような痛み刺激” を受けた。ボランティアたちは、痛みを緩和するクリームを片方の手に、もう一方の手には対照となる(何の効果のない)クリームを塗ったことを告げられた。しかし実際には、ボランティアには知らされていないが、両手には同じ対照のクリームが塗布されていた。
 有効なクリームを塗られたと信じた人たちは、25%痛みが軽減したと訴え、痛みを処理する脊髄路の有意な活性低下を示したのである。
 これまで、前帯状回吻側部などの疼痛コントロールに関わる脳の領域で、プラセボが内因性オピオイドの放出を促すことが知られていた。しかし、内因性オピオイドが、投与した鎮痛薬と同じように脊髄において作用するのか、あるいはそれらが単に痛みに対する耐容性や解釈を変化させるだけのかは不明であった。
 「中枢神経系の最も早期の段階で、モルヒネなどの薬剤と同様の機序で、心理的因子が痛みに対して影響を及ぼしうることを私たちは示しました」と、この研究を指導した University Medical Centre Hamburg-Eppendorf の Falk Eippert 氏は言う。
 これまでは、脊髄そのものが細い上、脊髄が気道や拍動する動脈に囲まれていることから脊髄のMRI 像を得ることが困難で、この問題に取り組むことが困難であった。しかし、画像処理技術が進歩し、Hamburg チームによってこの領域の高解像度スキャンを行うことが可能となった。
 画像技術の進歩は今後の薬品の開発に重大な役割を持ちそうである。
 製薬会社は脊髄の疼痛経路をターゲットとした新しい麻酔薬の開発に取り組んでいる。身体のこの領域を画像化できることは、薬剤が目的通り作用しているかどうかを確かめる直接的な手段を与えてくれることになる。
 今回の知見は“プラセボ (sugar pill)” による治療法をめぐる論争をさらに煽ることになりそうだ。2005年の研究では、デンマークの一般開業医の48%が、年に少なくとも10回はプラセボを処方していることを認めている。子供向けの Obecalp pills など、様々なプラセボ治療薬もまたインターネットで入手可能である。
a

A spoonful of sugar
・子供に薬 Calpol には少量の鎮痛薬パラセタモールが含まれるが、一般には砂糖による治療とみなされている。
・心臓疾患から膝の関節炎に至るまでの病気に対して、プラセボ手術は真の手術と同程度に有効な可能性があることが科学者たちによって示されている。
・英国国民医療サービスでは、強力なプラセボ効果によりがん患者に精神的癒しがもたらされているという。
・プラセボは医療のみの問題ではない。たとえばカフェインなしのコーヒーを人に飲ませても、それにカフェインが入っていると告げておくと、それによって彼らは覚醒し、同じようにアルコールのプラセボでは酩酊状態を来たし得る。
・動物に対するプラセボ治療の研究ではペットが良くなったことが示されているが、実際に良くなったのは飼い主の不安に過ぎなかったかもしれない。

映画『メリー・ポピンズ』で
散らかした部屋を片付けようとしない子供たちに
嫌なことでも楽しみながらやればできるのよと
メリー・ポピンズが歌った歌、
『スプーン一杯のお砂糖で』。

Photo

♪スプーン一杯のお砂糖と一緒なら
お薬も飲みこめます♪
薬だと思って飲めば
“スプーン一杯のお砂糖” にも
効果が期待できるとしたら、
苦いお薬を無理して飲むこともないということか(違うだろ)。

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かくれ脳損傷

2009-10-19 22:08:55 | 健康・病気

頭部外傷後に、
はっきりと麻痺や言語障害が残ったわけではないが
受傷前より明らかに集中力や記憶力が低下し、
あるいは動作が緩慢となり、できていたことが
できなくなってしまった、というようなケースがある。
CTやMRIで明らかな脳損傷の所見が認められない場合、
たとえばそれが戦傷によるものであれば
心的外傷後ストレス障害と判断されるかもしれない。
また、それが交通外傷や労働災害による場合には、
うつ病や、損害賠償や補償金のための詐病と
捉えられることもあるだろう。
自身が苦しんでいる症状が正しく認められないことは
受傷者にとっては相当の苦悩となる。
それゆえ、後遺症状が実際に脳損傷によるものであるとの
診断が与えられることは、受傷者にとっては、
衝撃ではなく、安堵と受け止められるようだ。
脳損傷による影響に対する診断技術を高め、
その診断に基づいてより効果的な回復訓練をめざす研究を
軍がリードしているという米国のお話である。

10月5日付 Los Angeles Times 電子版

Treating Traumatic Brain Injuries 外傷性脳損傷を治療する
by Melissa Healy

Braininjuries

 それは、骨折に対しては整復、出血に対しては止血、という風にはいかない。診断すら困難なことがある。しかし、軍関係者らは治療の向上に努めている。
 昨年、Larry Ewing 氏の人生は Victorville 市の建設現場で一変した。一方、Larry Carr 氏の人生は、2004年、イラクの路上で変わってしまった。戦友ではないが、この二人の男性は今、同じ目に見えない損傷―外傷性脳損傷― を共有しているのだ。
 彼らは疲れやすく、よく物忘れをし、何の前触れもなくバランスを崩し、集中力を失う。彼らは最愛の家族にようやく認識されるような人格の変化と必死で折り合いをつけようとしている。
 そして、脳損傷を持つ数百万人の一般市民や、イラクやアフガニスタンで爆風によって脳に衝撃を受けた数十万人の兵士たちと同じように、彼らがなにより望む、より正しい診断と治療が軍事医学によってもたらされるようになってきた。
 Carr 氏 (39才) は陸上警備隊の軍曹としてイラクに派遣され、第1歩兵師団に衛生兵として随行していたとき、道路わきの爆弾が彼の乗っていたハンビーのそばで炸裂した。がれきの山に埋められていた6発の155mmの砲弾の強力な爆風が開いていた車のサイド・ウィンドウの中へと吹きこんだ。爆風は彼を打ちのめし、30秒弱、気を失ったが、すぐに意識を取り戻した。衛生兵として訓練されていた Carr 氏はハンビーの射撃手に対して自分の頭に包帯を巻く手順を冷静に説明した。金属破片による頭の傷から出血していたのだ。
 Carr 氏は頭部から岩や金属の破片を取り除く手術を受けたが、幸い彼の頭蓋骨には骨折はなかった。イラクのバラド航空基地で行われたCTスキャンでは、彼の脳には損傷はないように見えた。
 しかし、故国に帰ると、すべてで良くない徴候が持ち上がった。Carr 氏は衰弱するほどの頭痛に毎日苦しみ、何の理由もなく、妻や子供たちに対して“鬼軍曹のように怒鳴るようになった”。彼はほぼ一日中眠り、数日間続けて食事を摂るのを忘れたりした。子供時代を思い出そうと努力するが、徒労に終わった。彼は忘れっぽく注意散漫だった。
 兵役には不適格であり、心的外傷後ストレス障害と考えられた Carr 氏は、軍を解雇されたある日、台所のテーブルに座り、末娘の4年生の算数の宿題を手伝っていた。彼は衛生兵訓練のクラスをトップで卒業していたので、この種の問題は容易なはずだった。しかし Carr 氏はそれを理解することができず、試みようとすればするほど、当惑が増すばかりだった。
 「これまでずっと私は自分のことをかなり優秀であると思っていました。そして、今は4年生の算数さえできなくなりました」と、Carr 氏は言う。「完全なバカになったと感じています。それが最もつらいことの一つです。この問題くらいなら十分に解ける頭脳を持っていたと思っているだけに…。今、私にはそんな頭はない」
 Victorville 市の艤装担当監督の Ewing 氏 (60) はトラクター・トレーラーを下すのを手伝っていたとき、トラックの積み荷が動いた。移動式のキャニスターが激突し彼は後ろ向きに飛ばされた。Ewing 氏は倒れ、トラックの内側の壁に頭部を打ちつけた。が、この事故後、彼は同僚と話ができ、妻の Pat さんからの電話に携帯で応じ、4日で退院した。
 Ewing 氏の脳のCTスキャンやMRIでは異常は認められず、脳波上も異常は見られなかった。
 しかし、今、Ewing 氏も脳の機能と自立性を失っている。
 彼の中心視野は側方へずれ、周辺視野がぼやけてしまっているため彼は距離感を誤り、物にぶつかってしまう。急な動きや身体の向きの変換で容易に平衡感覚を失いふらついてしまう。新しい情報を長い時間記憶にとどめておくことはほとんどできない。ストーブを切り忘れたり、道路に出る前に車が来るのを確認し忘れたりする。彼の読み書きの能力は概ね6年生のレベルであると、Pat Ewing さんは言う。
 しかし、最も悪いことは、“投げかけられたことすべてにうまく対処できる”人間だった彼の自信と社会的信用が失われたことだった。
 Pat さんによれば Larry Ewing 氏は銀行で列に並んで20分間立っていれば彼の後ろに立っている人物の経歴が掌握できるような男だったという。今は、会話を始めようともしないし、質問に対してはかろうじて聞き取れる抑揚のない調子で二言三言答えるだけである。突然会話を中断したかと思えば、友人や家族には延々とりとめもなく話し続けたりする。選択を迫られたり、混乱や騒音に直面すると、当惑し、閉じこもってしまう。パーティーの開催は一つの試みであるが、スーパーマーケットのシリアルの売り場を歩くことなど考えられない。
 「彼は監督をしていて、60人を管理していました」と Pat Ewing さんは言う。「彼は最近ドクターにこう言いました。『今は自分自身すら管理できません』と。自分はバカになったと時々言います。脳損傷を受けたのよ、と彼を諭し続ける毎日です」
 じきに回復するものだと、この二人の男性は信じていた。医師たちは基本的にはどこも悪いところはないとなだめるような元気づけの言葉でこの患者の訴えに対応した。友人たちは彼らが随分元気そうに見えると言い、いつ就職するのか、いつ復職するつもりかなどと尋ねた。
 一見治っているように見える夫を普通に生活できなくさせているものは何なのだろうかと彼らの妻たちも疑問に思った。「長い間、どこかが悪いということは彼女にはわかっていたが、それが何なのかはわからなかった」と、Larry Carr 氏は妻の Paula さんについて語った。「彼女は徐々にそのことに気付いてきています。それは彼女に理解できない何かなのです」と、彼は言う。
 アフガニスタンにいたこともある元陸軍予備兵の Carr 氏の精神科医が、ある日彼に、脳損傷の診断、予防、治療についての研究が軍で高まりを見せているが、その中のある新しい研究について話した。Carr 氏が該当していたとして治療を受けていたPSTD (心的外傷後ストレス障害) の症状の多くは外傷性脳損傷の症状に類似している、と Carr 氏の担当医である Bruce Capehart 博士は言う。テストをしてみようと、Capehart 氏はもちかけた。長時間にわたる一連の認知機能テストの結果、Carr 氏の脳が深刻な損傷を受けていたことが明らかとなったとき、同氏は強い安堵感を得た。「『ああ、これは事態をきちんと説明してくれる』という気持ちでした」と、彼は言う。
 兵士ではなかったが、Ewing 氏も同じように軍による新しい画像診断技術の研究から恩恵を受けた。略語で表わされる種々の検査―CTスキャン、MRI、EEG―これらすべてで脳の異常は認められなかったが、軍によって改良され、より広く用いられるようになった画像技術がようやく Ewing 氏の認知機能障害の原因を明らかにした。彼の脳の多くの領域で細胞の活動性が鈍化あるいは低下していたのである。
 「彼は何らかの損傷があることを示す結果に大いに喜びました」と、Pat Ewing さんは磁気共鳴スペクトロスコピー (magnetic resonance spectroscopy) に対する夫の反応について語っている。「自分に悪いところがあることがようやくわかりました。しかし、これまでの検査ではそれが見つからなかったのです。医師ですらそれがわからないのです」と Larry Ewing 氏は言い添えた。
 この二人の男性については長期の予後は不明である。しかし彼らの状態に正しい診断がなされたことから、彼らは長期的なリハビリテーション治療を開始している。軍の研究では、多くの治療法の中で脳損傷の患者が曲がりなりにも失った能力を回復させるのに最も有用なものが何であるかを探究し始めている。
 しかしながら、彼らとその家族は、援助の見通しが大いに異なる環境にある。Carr 氏の場合は、復員軍人援護局の援助のもと、長期ケアについてはかなり充実した状況にある。一方、職場での事故でけがをしたEwing 氏は、数ヶ月間で労働災害給付金を失うことになる。その後、彼がどうやっていけばよいかは明らかではない。
 Ewing 氏は、軍の数多くの研究やリハビリテーションにかける費用によってもたらされる脳損傷に対する認識が高まっていることを喜んでいる。さらに彼は、脳損傷の復員軍人が得ている多くの給付金や同情が、国中の地域社会で同じように闘っている一般市民にも配分され寄せられることを望んでいる。
 「私は彼らに同情します」とベトナム帰還兵である Ewing 氏は言う。「彼らは今受け取ることのできるもの以上に受け取る資格があると思います。もちろん私もですが」

膨大な軍事費のおかげで、
戦傷等による脳障害についての研究が進むとは
皮肉な話である。
現在、通常のCT、MRI、脳波で異常が認められなくても、
何らかの脳損傷が存在している例が少なからずあることが
報告されており、それらは、記事中にあるような
詳細な認知機能検査や、磁気共鳴スペクトロスコピーのほか、
MRIによる拡散テンソル画像やPETなどを駆使することで
初めて確認されることがある。
日本においては、交通事故や労働災害で
通常の検査のみが行われ、
脳損傷の多くが見逃されている可能性がある。
それらに対する医師の認識の低さ、
診断システムや認知リハビリテーションプログラムの
確立の遅れ、そしてなにより社会的な関心の薄さに
問題がありそうだ。
マニフェストからはずれる予算は根本から見直すといった
マニフェスト至上主義にとらわれるのではなく、
確実に存在する弱者や被害者にも目を向けた社会の構築に
力を注いでいただきたいと思うのである。

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検討だけなら許される?

2009-10-13 00:04:20 | 国際・政治

広島市の秋葉忠利市長と長崎市の田上富久市長は11日、
2020年の夏季五輪の招致検討委員会を近く設置すると
発表した(10月12日付中国新聞)。

Hiroshimanagasaki

このニュースは米紙にも紹介されている。

10月11日付 Washington Post 電子版 Reuters から

Hiroshima, Nagasaki eye joint 2020 Games bid
広島と長崎、2020年五輪共同招致を目指す

 核攻撃を受けたただ二つの都市、日本の広島市と長崎市が2020年の五輪開催の共同招致を検討している。
 300km以上離れた日本の両市は招致実現によって核廃絶の動きに弾みをつけたいとしている。
 2016年の五輪招致の東京の失敗があり、さらに世界に “よりよい将来への希望” を与え、核武装解除を求めて懸命に努力していることに対して、アメリカ合衆国大統領、Barack Obama 氏へノーベル平和賞が授賞されるという驚きのできごとの後、この同意が浮上した。
 「これはオバマ大統領や政府間の話し合いだけに任せておくべき問題ではありません」と田上富久長崎市長は日曜日の記者会見で訴えた。
 「我々一人一人がこの問題で果たす役割を持っており、オリンピックを招致開催することは被爆都市としての役割の一つとなり得るでしょう。招致の可能性を探ってゆきたいと思っています」
 広島、長崎、および他の支援都市による共同開催での2020年五輪招致の実現可能性を検証する委員会の設置について両市ですでに合意していると当局は発表した。
 広島市の秋葉忠利市長は両都市間の距離は招致への障壁とはならないだろうと述べた。
 「両市間は飛行機で行けば30分余りしかかかりません」と、彼は言う。「地理的には離れているかも知れませんが、移動時間で見ると、そんなに遠くはないのです」
 1964年にアジアで最初の都市としてオリンピックを開催した東京は2016年の五輪招致合戦でリオデジャネイロに敗れたばかりである。

以前より広島市の秋葉市長の口から
広島でオリンピックをとの「夢」が聞こえてはきていたものの、
今回の2020年夏季五輪招致へ向けての広島・長崎の姿勢は、
多くの人たちにとって突然の話として受け止められたことだろう。
オバマ大統領のノーベル平和賞受賞で、
オバマジョリティ推進にさらに拍車がかかったことから
両市の間で一気に話が進んだと思われる。
確かに世界のスポーツの祭典が、
唯一の被爆2都市で行われることの世界へ向けての
発信力は大きく、核廃絶への流れが急加速する可能性はある。
しかし、国威発揚の舞台と化し、
ど派手で商業主義に支配された現在の形でのオリンピックを
この両都市で開催することは100%(といっていいのか?)
不可能である。

1994年、広島市で行われた第12回アジア競技大会は、
広島市によれば成功裡に終わったそうだが、
はたして事実はどうなのだろうか?
被爆都市広島から、どれだけアジア諸国に核の脅威や悲惨さを
そして核廃絶の重要性を発信できていただろうか?
広島県民以外の国民で、その年、あの競技大会が
広島で行われたことを一体どれだけの人が覚えているだろうか?
(最初から知らない人もいるだろう)
また、あの大会での莫大な財政支出がいまだに広島市の
財政状況に負の影響を残していることも忘れてはならない。
巨額の支出をして大会のために準備された都市基盤の整備も
結局は不十分なままで終わっており、
諸処の設備がいまだに十分機能していないのが現状である。
オリンピック招致を思いつき、発表に踏み切る前に
やっておくことがあったはずである。
それはアジア競技大会を広島で開催したことの意義についての
検証である。
広島市民はあの大会が終了して以降、
その話題に接することはほとんどなかったのである。
オリンピックが今の姿では両市での開催の意味は薄い。
オリンピックがその原点に戻り、多くの利権を排除し
簡素な施設であっても各国の選手が競技に専心できることを
第一に考えること。
そして、観衆は競技に熱中するとともに、
世界平和を願い、核廃絶への強い想いを共有し、
それを世界に発信するという気持ちが自然に湧き起こる、
そんなオリンピックへの変貌を遂げるならば、
広島・長崎で開催される意義は大きいと言えるだろう。

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ワクチンへの躊躇

2009-10-05 21:08:37 | 健康・病気

いよいよ新型インフルエンザに対するワクチン接種が
今月19日の週から開始されることに決まった。
接種費用は2回接種で 6,150円(一回目 3,600円、二回目 2,550円)。
2回を同一施設で行う限りにおいてこの値段。
優先接種対象者は
① インフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者(救急隊員含む)
② 妊婦、基礎疾患を有する者
③ 1歳から小学校3年生に相当する年齢の小児
④ 1歳未満の小児の保護者、優先接種対象者のうち身体上の理由により
  予防接種が受けられない者の保護者等
となっている。
ワクチンは10月からの接種分は国産のもので開始、
輸入分は12月末以降となる見込み。
よって1月以降は国産、輸入分の両者が用いられる見込みだが、
どちらに当たるかは受けるものにはわからず、
指定もできないようだ。
ワクチンによる副反応については報告体制を厳重にし、
患者に対し国が救済を行う予定。

日本ではワクチンを忌避する傾向は少ないようだが、
海外では意外と根強いようだ。
そんな記事を2編。

10月1日付 TIME.com
 

Weighing the Risks of Mass Vaccinations 集団予防接種のリスクを斟酌する

By Eben Harrell/London

Massvaccination

イギリス、コベントリー市にある Blue Coat Church of England School の門に置かれた花。この学校の生徒が、HPV1 ワクチン Cervarix の接種を受けた後 死亡したからである。

 多くの14才の少女と同じように、Natalie Morton もまた子宮頚がんを多くの時間をかけて心配することはなかった。しかし、英国 Coventry にある Blue Coat Church of England school のクラスメート全員と一緒に、彼女は9月28日にその疾患予防を目的としたワクチンを受けた。そして数時間後、彼女は死亡した。
 メディアの騒動が巻き起こる中、地方の保健当局は直ちに、死亡した Morton に対する“十分で迅速な”調査を発表し、万一に備えワクチンの一時中止を命令した。一日もたたないうちに行われた仮の検視によって、Morton はこのワクチンで死亡したのではなさそうだということが判明し、代わりに“重篤な潜在的な医学的状態”が原因とされた。しかし、多くの西欧諸国が H1N1 インフルエンザに対する大規模な接種計画をまさに始めようとしている今、Morton の死はあらゆる予防接種キャンペーンの陰にある厳しい現実を明確に示している。すなわち、ワクチン接種者の一定少数は副作用被害を受ける可能性が常にあること、そして時にそれが致死的であるということである。
 「ワクチンが完全に安全であるという保証はありません」と、スコットランド、University of Aberdeen のウイルス学の名誉教授、Hugh Pennington 氏は言う。「臨床試験は数千人の規模で行われ、ワクチンによるありふれた軽度の反応―大部分は発熱や腕の痛み―を明らかにしてくれます。しかし、もしワクチンが百万人に一人に重篤な副作用を生ずるような場合、それについては検証の方法がないのです」
 Morton は GlaxoSmithKleine 社の Cervarix を受けた後に死亡した。このワクチンは大部分の子宮頚がんに関係している性感染症である human papilloma virus (HPV) から女性を保護する目的で作られた2つのワクチンの一つである(米国女性は Merck 社によって製造された HPV ワクチン Gardasil の接種を受ける)。Cervarix は昨年導入され、イギリスの子宮頚がんによる死亡を約75%減少させ、あるいは年間650人の死亡を減らせると見込まれている。これまでのところこのワクチンはイギリスでは140万人の女性に接種されており、Morten の死はこのワクチン接種との関連が推測される初めての症例である。しかし、ワクチン接種者にはそれほど重篤ではない副作用も見られている。イギリスの医療健康管理用品管理機関は2008年4月以降、副作用が疑われる例を2,000件以上報告しているが、疼痛、失神、あるいは嘔気など最もよく見られる報告は、この薬剤そのものによるというより注射行為の結果である可能性がある。
 こういった危険性を考慮すると、集団接種の開始決定にはむずかしい問題がある。Jacob Weisberg 氏の著書、“The Bush Tragedy” によると、George W Bush 大統領と Dick Cheney 副大統領は、2002年、米国全域にわたる天然痘のワクチン接種計画を施行するか否かについて意見が分かれたという。Cheney 氏は、これを実施することは的確なテロ対策の手段となると主張した。しかし、この計画は大勢の死亡につながる可能性があるとの理由で Bush 氏は Cheney 氏の意見を却下した。(統計学的解析では天然痘ワクチンでは百万人の接種者から一人ないし二人の割合で死者が出ることが示されている)。保健当局はそういった決定を必ずしも正しく行えるわけではない。1976年3月、米国政府は、パンデミックの懸念があった豚インフルエンザに対する大規模ワクチン計画を命令した。数週間のうちに、ワクチンによって生じたと考えられる麻痺性の神経疾患 Guillain-Barré 症候群を発症した人たちの報告が明らかとなった。これによって結局30人以上が死亡した。数多くの抗議を受けた連邦政府は12月、突然この計画を中止した。
 しかし、死亡とワクチンを決定的に結びつけることは困難であり、1976年の Guillain-Barré 症候群の死者のうち実際に何人がワクチンによって引き起こされたのかについては専門家の間でいまだに議論があると、Pennington 氏は指摘する。以上の理由から、ワクチン接種者に認められる副作用の問題は、健康な人たちにワクチン接種を納得させるというもともと困難な作業を一層難しいものにしてしまう可能性があることを保健当局は懸念している。理由がなんであれ、人は他の薬剤に比べ、ワクチンに対してはより強い懸念を持つ傾向にある。これが 18世紀後半、イギリスで天然痘の拡大を予防するために最初のワクチン接種が行われて以来の実情だ。そのワクチンはウシの成分を用いており(ワクチンという単語はラテン語の“vacca [牛] ”に由来している)、人々は、その注射によって自分たちがウシに変えられてしまうと恐れていた。
 「何度も引用される例はMMP(麻疹、おたふくかぜ、風疹)ワクチンと自閉症の関連に対する懸念です」と、Pennington 氏は言う。「米国ではこのワクチンの高い接種率が麻疹の撲滅につながりました。しかし、ヨーロッパでは子供たちにワクチンを受けさせるのを拒否した親が多く、このウイルスに蔓延・感染が続く余地を与えることになったのです」
 現在、全米国民に接種するに十分な H1N1 ワクチンはない状況で、ワクチン接種の最優先の対象者とすべき第一線の医療従事者が、安全面の懸念からこれを拒否することを当局は懸念している。そうなるとインフルエンザで入院する患者を治療する医療従事者の機能が損なわれる可能性がある。8月の The Emergency Health Threats Journal に掲載された報告によれば、H1N1 のアウトブレイクに先立ってカナダで行われた11の集団を対象とした研究で、新しいワクチンの危険性がメリットを上回ると信じた場合、医療従事者は自分や自分の子供たちへの接種を拒絶するだろうと考えていることが明らかにされた。先月the British Medical Journal のオンライン版に発表された別の研究では、香港の医療従事者で H1N1 インフルエンザワクチンを受ける意志があると答えたのは半数以下であったことが報告されている。

続いて
10月2日付 New York Times 電子版

Swine Flu Spread Prompts Move on Vaccine 豚インフルエンザの感染蔓延はワクチン接種への動きを加速

By Donald G McNeil

 木曜日(10月1日)、疾病対策予防センター (CDC) は、豚インフルエンザは今や米国全体に蔓延しているとの声明を出し、連邦保健当局は国家備蓄分から小児用のタミフルを放出し、新しい豚インフルエンザワクチンの各州からの注文受付を開始した。
 また、事例報告ならびに少なくとも一つの調査によると、多くの米国人がワクチンに対して神経質になっていることが明らかとなっていて、当局は、新しいワクチンが季節性インフルエンザ・ワクチンとほぼ同等であることを強調し、ワクチンについての通説が誤りであることを明らかにするためできる限りのことをしていると述べた。
 疾病対策予防センターの免疫・呼吸器疾患部の部長である Anne Schuchat 医師は「ほとんどすべての州で顕著なインフルエンザの流行がみられます」と述べ、「この時期としてはきわめて異例です」とつけ加えた。
 Schuchat 医師は妊婦について特別の懸念を表明した。8月下旬までに100例が集中治療室に入院し、4月の流行開始以降28例が死亡している。
 「これは実に由々しき数字です」と、彼女は言い、接種が可能となればできるだけ早期に豚インフルエンザのワクチン接種を患者に助言するよう産科医や助産師に促した。
 さらに木曜日には、サウスカロライナ州 Fort Jacksonで基本訓練中の23才の新兵が、豚インフルエンザによる陸軍で最初の死亡例となったことが確認された。軍によると、その新兵はフロリダ州 Deltona 出身の Christoopher M Hogg 技術兵で、9月1日に発病し、9月10日に肺炎で死亡した。Hogg 技術兵は最初、検査で豚インフルエンザ陰性だったが、剖検で明らかとなったという。
 毎年約50,000人の兵士が Fort Jackson で訓練を受ける(この基地は1918年、スペインかぜで大きな被害を受けており、Associated Press が引用した軍事歴史学者によれば新兵の5%が死亡したという)
 地方のニュース・メディアの報道によると、インフルエンザの患者は国内の多くの地域で増加を続けている。
 テキサス州 Austin の Dell Children’s Medical Center は駐車場に2張りのテントを建て緊急治療室受診者に対処しているという。またColorado Springs 近くの病院ではインフルエンザの患者が30%の急増を見た。
 小児例が増加しているため、保健社会福祉省は火曜日、国のパンデミック用備蓄から小児用のタミフル・シロップ30万人分を放出し、初回便はテキサスとコロラドに送られた。
 Schuchat 医師が言うには、それらの一部は使用期限を過ぎていたが、食品医薬品局が備蓄薬を検査し、まだ使用可能であると認定したという。
 豚インフルエンザの99%以上は軽症から中等症であるが、喘息、肥満、糖尿病、心疾患など比較的ありふれた疾患を有する数百万人では、妊婦や、ワクチン対象外の低年齢児と同様、他の群に比べてリスクが高い。 
 このインフルエンザによる小児死亡例の最終の疾病センターによる集計では8月8日現在で36人であった。それ以降、数州から小児の死亡例が報告されているが、その多くは学校が他より早く始まる南部において見られている。
 先週、同センターは、8月30日以降、インフルエンザの症状そのものや、インフルエンザに関連した肺炎で 936 人が死亡したと発表した。8月30日からは豚インフルエンザをラボで確認していない例を含めた死亡者の新たな集計が始まっている。これは季節性インフルエンザによる一年の死亡者数 36,000人に比べると少ないが、通常死亡することのない年齢層に集中しており、さらに通常のインフルエンザ・シーズンは11月になって再び始まることになる。
 多くのアメリカ国民が豚インフルエンザ・ワクチンの接種に気が進まないという同センターの懸念を裏付けるように、Consumer Reports は、調査した親の半数は豚インフルエンザを心配しているものの、子供に確実にワクチン接種を受けさせようとするものはわずかに35%だったという調査結果をこの水曜日に発表した。約半数は決めかねており、それらの多くは、同ワクチンが新しく試験が行われていないことを心配していると述べた。
 一つの懸念される点は、接種を決めかねていたり、反対している親の69%が、子供たちには自然免疫を身につけてもらいたいと述べていることだ、と Consumer Reports の医療部門の評価の責任者である John Santa 医師は言う。
 「それが“自然の”感染によるものであれ、ワクチンによるものであれ、間違いなく同じ抗体がつくられるのですが…」と、Santa 医師は言う。「もし子供が死亡してしまったら、“自然免疫”のためにとてつもなく高い代償を払ってしまったことになるのです」
 (この調査は9月2日から9月7日にかけて行われた1,502名の成人を対象に行われた電話調査でプラスマイナス3%のサンプリング誤差がある)
 このワクチンは新しいものではなく、臨床試験がなされていないということはない、と、Schuchat 医師は主張する。
 弱毒化したインフルエンザ・ウイルスという、例年の1億人分の季節性インフルエンザのワクチンと同じ“遺伝的根幹”に根差しており、同じ有精卵で作られ、同じ工程で精製される。そして、9月に行われた試験的接種では、はやり同様の副作用が認められたが、その多くは腕の局所の痛みと微熱であった。
 疾病センターの科学者たちは77例の豚インフルエンザ死亡例の肺の標本を調べ、その約3分の1はインフルエンザ単独で死亡したのではなく、インフルエンザが肺に炎症を起こした時に侵入した細菌で死亡したことを明らかにした。
 “良い知らせ”は、感染症のほとんどが肺炎連鎖球菌であり、それに対するワクチンが存在する通常の細菌であったことだと、Schuchat 医師は言う。このワクチンは通常、慢性心疾患や肺疾患のある65才以上の人にだけ接種されるが、接種が望ましいと考えられる米国人の5人に1人しかそれを受けていない。その範疇に入る人はもっと接種を受けるべきである、と彼女は言う。

自分は大丈夫、と思って気軽に受けてきたし
これからも受けるつもりだが…
不幸にして亡くなった方も、まさか自分が、と
思って接種を受けたことだろう。
それでも、やっぱり、ワクチンは受けるだろう。

国が事業として接種を始め、接種を推奨するからには、

副作用に対しても国がきちんと対応すべきであるのは

当然のことだと思うのだ。

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