MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

診断には時間をください

2013-09-18 23:24:44 | 健康・病気

今月のメディカルミステリーです。
どうやら眼科領域の疾患のようです。

9月10日付 Washington Post 電子版

Why couldn’t the baby see? この子はなぜ見えなかったのか?

Whycouldntthebabysee_2
Amy Epstein Gluck と息子の Sam。彼は視力を高めるために、眼鏡ではなくコンタクトレンズを着用する。

By Sandra G. Boodman,
 Amy Epstein Gluck さんは生後9ヶ月になる一番下の子供 Sam の視力が正常になるかもしれないと思われたときどれほど安堵したかを覚えている。
 それより数か月前、医師らは、ひょっとして遺伝性疾患あるいは脳腫瘍が原因で彼の目が不自由になっているのではないかと心配していた。しかし、実際にはそうではなく、その後の検査や Washington や Baltimore の小児専門医への受診により、一時的な発育遅延であることが示唆された。
 Epstein Gluck さんとその夫 Ira Gluck さんは、Sam の成長に大いに期待し、辛かった一年の終わりと、願わくは、息子の恐ろしい症状に終止符が打たれることを祝うために盛大なパーティーを開いた。
 しかしその2ヶ月後、2006年2月の Sam の最初の誕生日に、彼の治療を行っていた小児眼科医は、お祝いが時期尚早だったことを明確にする知らせをもたらした。
 「実にショックでした」Epstein Gluck さんは思い起こす。Johns Hopkins へ行く途中、この夫婦はもはや神経眼科医にかかる必要はなくなると考えて、Bethesda の自宅に近いところで専門医を見つけることを話し合っていた。しかし帰りの自宅までのドライブは重苦しいものとなった。「私は大変動揺していたので、医師との会話について語ることすらできませんでした」と彼女は言う。「私たちは終わったと思っていました」
 それだけでなく、彼らは、それから一年以上の後にようやく新たな診断につながることになった思いもよらない症状の出現に苦しむことになるのである。
 2005年3月、Sam が生後5週間くらいのころ、彼の眼球が周期的に揺れ動くのに母親が気付いた。彼の他に3才と5才の子供を持つ Epstein Gluck さんはかかりつけの小児科医に電話した。
 「けいれんではないかと思ったのですが、それ以外には彼に悪いところはないようでしたのであまり心配していませんでした」と彼女は思い起こす。Sam の目は焦点が合ってないようにも見えたが、「小さな赤ちゃんでは、とりわけてそんなことについてはあまり考えないでしょう」と彼女は言う。実際、乳児の視力が成熟していく過程において、生後1ヶ月以内では視線が合わないことは正常である。
 その小児科医が Sam を診察したとき、彼女は彼の目を“実に長い時間”をかけて診察し、自分の手を母親の腕に重ねたことを Epstein Gluck さんは思い起こす。この速い目の不随意運動は眼振(nystagmus)という症状で起こっているが、これはしばしば一過性であり、必ずしも心配なものではない。しかし時にかなり深刻な問題を示唆することがある。乳児では、眼振は脳内の機能の異常によって起こりうるが、しばしばその原因は不明である。

‘I don’t think he can see’ 『彼は見えてないようだ』

 しかしこの小児科医は、急速な眼球運動よりはるかに不吉な疾病を心配した。「彼は見えてないようです」彼女はそう Epstein Gluck さんに告げた。
 その小児科医はただちに小児眼科医に電話をかけ、数時間後には Sam は診察を受けていた。その専門医も同意見だった:Sam の目は解剖学的には正常のようだが、見えていないと。
 2つの診断名のうち一つが最も考えられそうだと彼女は言った:Sam は Leber congenital amaurosis(LCA,レーベル先天性黒内障)という眼振が症状となる稀な眼疾患かもしれないと。もし彼が Leber なら、彼は失明する可能性がある。2番目の可能性は delayed visual maturation(視覚成熟遅延)でこれには多くの原因がある。最も良性のシナリオでは、乳児の視力の成熟が単に遅いだけかもしれない。
 できることはほとんどない、そう彼女は付け加えた。Sam が失明するかどうかがわかるまでに一年かかるだろう、と。
 その眼科医は「とりあえず自宅に戻り、3週間のうちに再び来てくださいと言いました」と Epstein Gluck さんは思い出す。「私はこう思いました。『自宅に戻って3週間待てなんて何でそんなこと彼女は言えるのだろう?』」結局それには従わず、彼女はかかりつけの小児科医に電話すると、その小児科医は彼女のために Washington’s Children’s National Medical Center の眼科専門医の緊急予約をとってくれた。
 そこでは、より恐ろしい新たな可能性が浮上した:医師らは、Sam の視覚障害が脳腫瘍による視神経の圧迫によって起こっている可能性があると心配したのである。しかしMRI検査では何も見つからなかった。医師らはさらに網膜電図を行った。これは網膜の活動を測定するものだ。この検査で、網膜細胞に活動性がないことが示されたが、その所見は診断をはっきりさせるのにほとんど役に立たなかった:というのも、Sam と同じくらいの年の子供では、この検査は確定的なものとはならない傾向があるためである。
 弁護士である Epstein Gluck さんは、このChildren’s Center の医師もまた原因が Leber あるいは delayed visual maturation と考えていて、Sam のような症状を持つ子供をほとんど診たことがなかったということを知り、非常に不安になった。「もっと経験のある人に診てもらいたかったのです」と彼女は言う。
 彼女は知り合いのみんなに e-mail し別の専門医を探し、Baltimore にある Johns Hopkins’s Wilmer Eye Institute の小児神経眼科医 Michael Repka 氏に紹介してもらった。
 Repka 氏が初めて Sam を診察したとき彼は生後2ヶ月だった。「その年齢での診断上の問題点は、成長段階のことが多く存在していて、また網膜は成熟していないということです」と Repka 氏は言う。「Sam にはほとんど視覚反応が見られませんでした。彼は人の顔を追視せず、おもちゃも見ませんでした」と彼は思い起こす。「そしてもし明るい光を照らせば、普通の赤ちゃんは目を閉じるでしょう」と彼は言う。Sam は目を閉じなかったのである。
 Repka 氏は Gluck 夫妻に、Sam の眼球が動いているので Leberでもないし失明してもいないと思うと告げた。Delayed visual maturation の可能性はあるが、この診断は他の疾患が除外されて初めて下される。彼の専門的知識と真摯な態度に支えられたことで Epstein Gluck さんは、Sam の視力が改善するかどうかを見るために数ヶ月待期し、それから Repka 氏を再び受診するという方針に抵抗はなかったと言う。
 その一方で、彼女は Montgomery County’s Infants and Toddlers Program に電話をした。これは障害を持つ子供たちに対する早期介入サービスを提供するものだ。このプログラムは家庭内に療法士2人を派遣し、 Sam に働きかけるだけでなく、おもちゃやメディスン・ボールなどを使って彼の視覚的、身体的発達を促すものである。
 ゆっくりだが着実に、Sam が見えているということが明らかになった。彼はおもちゃを手に取ったり、顔をじっと見るようになり、明るい光には瞬きするようになった。
 生後8ヶ月のとき、彼は Repka 氏のもとに3度目となる受診をした。「彼の視力は顕著に改善していました」と Repka 氏は言う。「しかし正常ではなかったのです」彼の異常が単に delayed visual maturation かどうかは時間が教えてくれることになる。
 Epstein Gluck さんと夫は、Sam が見えるということに安心し“悲惨な結果を免れた”と考え、12月にお祝いの計画を立てた;Repka 氏との次の予約は2006年2月の Sam の1才の誕生日に予定されていた。

Unexpected news 思いもよらない知らせ

 「うーん、彼は近視ですね」Sam を診察し、中でも preferential looking time(選好注視時間)を測定した後、Repka 氏はそう言った。Preferential looking(選好注視)とは、子供が意外なものや目新しい絵や物体に対してより長く凝視する現象のことである。
 母親は尋ねた。どれくらいの近視ですか?「ひどい近視です」と Repka 氏は答えた。
 Repka 氏の説明によると Sam の視力はマイナス7で、これは高度近視と考えられるが、米国全人口の約2%に見られる病態だという。しかし彼の検査結果と病歴に基いて、Sam が眼振、重度の近視、および暗所での高度の視力障害などを引き起こす X-linked congenital stationary night blindness(CSNB, X連鎖性先天性停止性夜盲)ではないかと Repka 氏は考えたという。もしこの疾患が Sam の原因だとしたら、彼がもっと動くようになればより明らかになるだろう。
 Epstein Gluck さんは愕然とした。「お腹にパンチをくらった感じでした」と彼女は言う。
 CSNB は、光や色を感知する目の後ろ側の組織である網膜の細胞を障害する稀な遺伝子変異によって起こる。欠損遺伝子を受け継いだ女性はキャリアとなるが、男性と異なり通常なんら症状を示さない。Genetics Home Reference によると出生時に認められるこの疾病の頻度は不明だという。Epstein Gluck さんによると、彼女や夫の親族に彼以外の患者を知らないという。
 メガネ、あるいはコンタクトレンズで視力を矯正する以外に治療法はない。
 生後18ヶ月のとき、Sam は初めてメガネをつけた。小さな丸いハリーポッター眼鏡だ。その2日後彼は歩き始めた。
 しかし成長するにつれ、Sam の夜盲症は増悪し、CSNB の可能性が高くなった。2才半で初めて参加したハロウィーンの最中、彼の姉たちとお菓子ねだり(trick-or-treating)をしていたところ、彼は浅い溝に落ちたり、うっかり藪の中に入り込んだりした。
 ある真夜中、彼は目を覚まし恐怖の叫び声を上げた。Sam が見ることができるよう一晩中点灯し続けることにしていた彼の部屋の外の灯りを父親がうっかり消してしまっていたのである。
 2007年に行われた2度目となる網膜電図で、彼の視力はマイナス8.5となっていて近視は増悪していたものの網膜は元の状態のままであることがわかった。彼の現在の視力はマイナス11.25で、先月行われた検査でも彼の網膜は安定していることがわかった。現在8才になる Sam はコンタクトレンズを装着しているが、眼鏡よりもその方がより明瞭に見ることができる理由による、と Repka 氏は言う。
 現在も Sam の診察を継続している Repka 氏は、自身は慎重ながら楽観的なのだと言う。「恐れていたほど進行していません」と彼は言う。
 Sam の症状には調整が必要だが、彼は代償できており、自身の視力について気にしていない。夜に車から降りるときも、彼が十分見えるほど街灯は明るくはないのだが。
 最近、彼はノースカロライナ州での泊りがけキャンプで一ヶ月を過ごした。「私は彼に2つのヘッドランプをつけて行かせました」と母親は言う。そのキャンプで彼は帆走と水上スキーができるようになり、ほとんどの時間を楽しく過ごした。
“We feel tremendously lucky, even not knowing how things will go in the future,” said Epstein Gluck, who tries to avoid the what-ifs. “I’m just glad Dr. Repka doesn’t scare me with what the possibilities are.”
 「私たちはものすごく幸運に感じています。物事が将来どのように進むかはわかりませんが…」と Epstein Gluck さんは言う。彼女は仮定の話は避けようとする。Repka 医師が、どんな可能性があるかを語って私を怖がらせたりしないことにただただ感謝しています」

記事中のレーベル先天性黒内障(LCA)
X連鎖先天性停止性夜盲(CSNB)について補足しておく。

レーベル先天性黒内障は、
1869年にドイツの眼科医 Leberが初めて報告した。
ちなみに黒内障とは見た目には眼球に異常がないにもかかわらず、
眼が見えない状態を表す古い症候名である。
LCA は常染色体劣性の形式をとる遺伝性疾患と考えられており、
染色体上の変異した遺伝子の違いから11のタイプに分類されている。
出生8万~10万人に一人の頻度で発症するといわれている。
生後2~3ヶ月以内に認められる重度の両側性の視力障害、
振り子様眼振、瞳孔の反射の低下が特徴で、
小児期に失明に至ることもある。
その他の特徴として眼球陥凹、遠視の屈折障害、顔面発育不全が
認められる。
患児には、目を指で強く押したり、こすったり、叩いたり、
枕や机に目を押し付けたりする行為が見られることもある
そのほか、精神発育遅滞、小脳虫部の形成不全、突出した下顎、
てんかん、感音性難聴、腎臟・肝臓の機能障害などを
合併することがある。
遺伝子の異常による代謝障害によって、
網膜の細胞が萎縮・変性すると考えられている。
眼底検査で網膜の変性が確認されることもあるが
特に目立った異常が認められないことがあり、
確実な診断には網膜電図が必要となる。
現在、決定的な治療法は見つかっていない。
強い屈折異常(遠視、近視、乱視)が見られる場合には
眼鏡等で矯正し少しでも視力を伸ばすように努める。
近年、本疾患に対する遺伝子治療が試みられており、
今後の成果が待たれるところである。

先天性停止性夜盲(CSNB)とは
夜間や暗所での視力・視野が著しく低下する先天性夜盲のうち
発症しても生涯進行しないタイプの総称である。
この疾患群には小口(おぐち)病、眼底白点症、
狭義の先天性停止性夜盲症などが含まれる。
(なお、先天性進行性夜盲の代表的疾患が網膜色素変性症である)
狭義先天停止性夜盲症は、
網膜の中心部以外に広く分布している
杆体細胞の機能障害による夜盲で極めてまれな疾患。
通常、視野、色覚には異常が見られない。
生下時より夜盲があっても、
進行しないため自分で気が付くことはまれで、
5歳~10歳位で視力低下のために気付かれる。
眼底に異常が認められないため、
網膜電図検査によってのみ診断される。
遺伝形式はX連鎖劣性遺伝のため男児に多いが、
常染色体劣性遺伝を示すこともある。
現在のところ有効な治療法はなく、
暗順応を改善させる薬の内服や、
光刺激を防止する遮光眼鏡を使用するにとどまる。

いずれにしても、
赤ちゃんに対する眼科的検査はなかなか困難であり、
眼科的疾患の診断がそうそう容易でないことを
改めて知らされるのである。

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2013年10月新ドラマ

2013-09-08 18:23:51 | テレビ番組

まずは2013年7月クールのドラマを総括。
今クールの作品は個人的には大不作で、
多くのドラマの視聴を途中で断念してしまった。
視聴率的には明暗はっきり分かれたが
結果的に『半沢直樹』が大突出!
大当たりするドラマを前もって予測することは
やはりなかなか困難である。
一方、既存作の焼き直しを図ったドラマは
DOCTORS 2 以外は今回人気を落としており、
制作サイドの判断ミスと言えそうだ。

Photo

それでは
9月6日までの視聴率[関東地区・ビデオリサーチ社調べ]に基づき
上位作品から順に勝手な寸評を加えてみよう
(括弧内は平均視聴率、大河ドラマを除く)。

『半沢直樹』(25.67%)
ある程度の視聴率は獲れるとは思っていたがここまでの大ヒットになるとは…最近ほとんど見られなくなっていた企業内勧善懲悪ドラマ(昔のドラマでは結構あった)が視聴者に新鮮に感じられたのだと思う。また悪役陣のキャストが絶妙だったことや、一昔前風ナレーションも追い風となったようだ。だからといって次に同じようなドラマを制作すれば必ず当たるというわけではないだろう。

『DOCTORS 2~最強の名医』(18.14%)
主人公の相良先生は腕も立つし患者思いの素晴らしい先生ではあるのだが見ていてなぜか共感できないところがあった。主人公にさほどカリスマ感はなく医療の現場や手術シーンもいささか見飽きた感じがあるものの、これだけの視聴率が獲れたのは何をおいても高嶋政伸が怪演した森山先生のおかげといってもいいだろう。

『救命病棟24時(4)』(14.59%)
江口洋介不在の乏しい?人材でよく健闘した。特に目新しさも感じられず個人的には初回でアウト。

『Woman』(13.27%)
画面も内容も暗いドラマだが、満島ひかりと田中裕子の熱演で裏のショムニを圧倒。『Mother』『それでも、生きてゆく』『最高の離婚』に続く坂本裕二作品は、中高年の胸を熱くするようである。ただし、細心のキャスト選びが根底にあったからこその高評価であろう。

『警視庁捜査一課9係(8)』(13.19%)
テレ朝の刑事ものは常にこれくらいの視聴率が獲れる安全パイ。時間つぶしにはもってこいのドラマ・ネタ。さらにシリーズを重ねていくことだろう。イノッチもこれで何とか食いつないでいけそうだ。

『なるようになるさ。』(12.97%)
橋田先生には申し訳ないが初回から視ていない。

これ以下は負け組

『SUMMER NUDE』(12.61%)
月9で、山ピー主役で、その他豪華キャストで、この数字…さびしい限りである。猛暑の夏だったにもかかわらず海辺の恋物語も全く盛り上がらず。山ピーのボソボソのセリフが主人公のじれったさと相まってますます共感することができなかった。フジの思惑が大きくはずれた作品。

『斉藤さん2』(11.80%)
一作目ほどの爽快感は得られず、人気も今イチ。斉藤さんもやや元気ない感じだし、そもそも今の世の中斉藤さんのようだと生きてはいけない。逆に見ていて空しさが募るばかりでこの数字ということだろう。

『ショムニ2013』(11.47%)
やはり時代遅れのドラマだったというほかない。今や視聴者は超ミニ制服姿に釣られることはなくなった。江角マキコの高齢化も拍車をかけた。このシリーズも打ち止めがいいところだろう。

『Oh, My Dad!!』(9.07%)
かつてのスター俳優も今や斜陽の人。視聴率もとれず織田裕二は世界陸上でも元気がなかった。ドラマの発想自体がつまらないため、次回が楽しみな気持ちにならなかった。もう少し企画を練っていただきたい。

『スターマン~この星の恋~』(8.74%)
広末涼子は頑張っていたが、そもそも宇宙人が出てくる展開にひいてしまった。個人的には第3回まで頑張って視たが、『あまちゃん』の種市先輩と全く同じ表情で登場する福士蒼太のダメ演技ぶりに辟易、以後リタイア。

『ぴんとこな』(7.24%)
歌舞伎界を舞台にした画期的?ドラマだったが、視聴率は獲れず。最近露出は多くなってきてはいるが、まだまだ Kis-My-Ft2 の人気定着とは行かないか。TBS木9の苦闘は続く。

『警部補 矢部謙三2』(7.17%)
レイト枠で2桁の視聴率を獲った前回にはかなり及ばず。個人的には一回だけ視聴したが、トリックもしょぼく、コメディにしたいのかサスペンスにしたいのか中途半端なドラマで結局視聴継続には至らず。

それでは10月クール新番組を
一通りチェックしてみることにしよう。

フジ月9 10/14~ 『海の上の診療所』 松田翔太、武井咲 ほか
瀬戸内海に浮かぶ島に住む人たちの医療のために無医島を巡回する病院船に乗る医師や看護師たちの物語が巡回先の島々にまつわるエピソードとともに描かれる。といっても主人公は『Dr. コトー』とは似ても似つかぬトホホな医師。実在する病院並みの機能を備えた巡回船“済生丸”をモチーフにした病院船“海珍丸”にひょんなことから乗り込むことになったこの若手医師・瀬崎航太(松田翔太)は医師としては優秀だがミョーに女性に惚れっぽいという欠点がある。そんな航太は、島で恋したマドンナが抱える医療的問題を解決するために奔走し、さまざまな人々を巻き込んだドタバタ劇の果てにマドンナにはフラれてしまい、涙を流しながら次の島へと向かうパターンが一話ごとに繰り返される。とはいえ窮地にある患者に対してはスーパードクターぶりを発揮して手術や治療を成功させるという。これに対し、レギュラーのヒロインとなる航太のパートナーを務める看護師・戸崎眞子を武井咲が演じる。眞子は広島一帯を締めていたレディースだったとの噂もあり、筋の通らないことが大嫌いなチャキチャキした性格の女性。突然船に乗り込むことになった一見いい加減にしか見えない航太にイラつきを隠せない。風光明媚な瀬戸内海の映像を背景に、この二人の珍妙なやりとりや、お互いの心情の変化が描かれる。これまでの医療ドラマとは一線を画すヒューマン・ラブ・ストーリーとの触れ込みだが、現実味に欠ける内容が予想されることから、月9の人気回復につながるかはなはだ疑問。

フジ火9 10/15~ 『ミス・パイロット』 堀北真希、相武紗希、斎藤工、桜庭ななみ、菜々緒、間宮祥太郎、小柳友、藤井流星(関西ジャニーズJr.)、庄野崎謙、藤澤恵麻、石倉三郎、根岸季衣、岩城滉一
天真爛漫な蒲田の居酒屋の娘が就活に苦戦する中、思いがけず空を飛ぶ楽しさに魅せられ、本気で超難関のANAの大型旅客機の女性パイロットを目指す物語。堀北真希のフジテレビ連続ドラマ主演は2009年4月クールの『アタシんちの男子』以来約4年ぶり。現在ANAグループには約2,500人のパイロットがいるが、そのうち女性パイロットはわずかに20数名とのこと。そんな最難関を目指すのが堀北演じる主人公・手塚晴(てづかはる)。就活中の東京・蒲田の居酒屋の娘・晴は、天真爛漫、正直でウソのつけない性格が災いし、手当り次第に受けた会社はいずれも不採用。そんなときたまたまANAの募集要項を目にした晴は試験を受けることを決意。パイロットをめざすエリートや航空機マニアに圧倒されながらもなんとか合格、晴れてパイロット候補生となるが、そこに待っていたのは予想をはるかに超えた厳しい訓練だった。晴とともにパイロットを目指す候補生仲間、厳しい教官、パイロットの養成システムを束ねる総責任者など様々な人物と接しながら晴は大きな夢に向かって切磋琢磨し成長していく。最近航空業界のドラマが多く見受けられる気がするが、本ドラマはさしずめ『スチュワーデス物語』ならぬ『女性パイロット物語』?

フジ(関西テレビ)火10 10/8~ 『よろず占い処~陰陽屋へようこそ』 錦戸亮(関ジャニ∞)、知念侑李(Hey! Say! JUMP)、倉科カナ
元ホストのインチキ占い師が謎解きをするミステリー・コメディ。天野頌子(あまのしょうこ)原作の人気小説“陰陽屋シリーズ”のドラマ化。東京都北区・王子の商店街にある店・陰陽屋を舞台に錦戸亮演じる『占いはエンターテインメントだ』と言い切る霊能力ゼロのインチキ占い師・安倍祥明(あべのしょうめい)が陰陽師の衣装を身にまとい毒舌を交えながら人の悩みを解決する。安倍は超イケメンだが毒舌で面倒くさがり。金にならない仕事はしないが、発想と論理的思考には長けており持ち前のルックスと元ナンバーワン・ホストの口八丁手八丁の話術で客の依頼をスルリと解決してしまう。事件解決にこの安倍とコンビを組むのがアルバイトで雇われた店員の沢崎瞬太(知念侑李)。彼は一見普通の中学生だが、実はキツネ耳を持った妖狐(化け狐)の末裔だった。王子稲荷に見守られるのどかな住宅街の人情も織り交ぜながらほのぼのとした謎解きが始まる。感動はなさそうだが、軽く見流すにはいいかも。

テレ朝水9 10/16~ 『相棒(12)』 水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、六角精児 ほか
2002年にシーズン1が始まった人気の刑事ドラマも、はやシリーズ第12弾。杉下右京の相棒が甲斐亨(成宮實貴)に交代して2シーズン目。シーズン11も平均視聴率17.3%と依然高い人気。肩を張らずに見られるという点で依然衰えるところを知らないドラマである。

日テレ水10 10/2~ 『ダンダリン・労働基準監督官』 竹内結子、松坂桃李、風間俊介、水橋研二、トリンドル玲奈、大島蓉子、西田尚美、石野真子、大倉孝二、佐野史郎、北村一輝
原作は作・とんたにたかし(田島隆)、画・鈴木マサカズのコンビによるコミック『ダンダリン―○―(101)』(『モーニング』にて連載)。ダンダリンとは、単に竹内結子演じる主人公の名前・段田凛(三十路手前、独身)のこと。彼女は労働環境を監督する役所・労働基準監督署の労働基準監督官。労働者の保護を職務とする。『サービス残業』『名ばかり管理職』『パワハラ経営者』など昨今の様々な問題を抱えるブラック企業に立ち向かってゆく。といっても、まっすぐを貫き融通のきかないカリカリ女の彼女は、グータラ男・土手山郁夫(松坂桃李)とともに、タチの悪い社長に逮捕権を行使するなど監督官の権限を限界まで使い切りガツンガツン摘発してしまうイケイケお騒がせ労働Gメン。地味と思われがちな労働基準監督官の仕事ぶりだが、その活躍と七転八倒がコメディータッチに描かれる。

フジ水 10 10/9~『リーガルハイ2』 堺雅人、新垣結衣、岡田将生、生瀬勝久、小池栄子、田口淳之介(KAT-TUN)、矢野聖人、里見浩太朗 
2012年4月クールの『リーガル・ハイ』は平均視聴率12.5%(関東地区・ビデオリサーチ調べ)とさほど人気はなかったが、その後の堺雅人の活躍ぶりを受けて今回その第2期ドラマとして復活。前クールの火曜9時枠から今回は水曜10時枠に移動。今年4月にあったスペシャルドラマ『リーガル・ハイ』は視聴率13.5%を記録しており、この第2シリーズにはさらなる期待が寄せられているところである。性格は最悪な変人だが、駆け引きと策略を駆使して、裁判に勝つためには手段を選ばない主人公・古美門研介(堺雅人)のもとを去った女性弁護士・黛真知子(新垣結衣)が一年ぶりに古美門法律事務所を訪れる。自身の法律事務所を立ち上げた黛が準備している訴訟に共同で当たることを古美門にもちかけるためだった。これを断った古美門だったが驚くことに相手側の弁護士として法廷に現れた。苦戦を強いられる黛は、古美門のライバル三木長一郎(生瀬勝久)を味方につけるも最後の詰めで古美門に負けてしまう。古美門への借金返済の目処が立たなくなった黛は古美門法律事務所に戻ることとなり新たな弁護士ドラマが展開される。堺の『半沢』効果がフジにそのまま引き継がれるかどうか、見ものである。

TBS木9 10/24~ 『夫のカノジョ』 川口春奈、田辺誠一、鈴木福、鈴木砂羽 ほか
原作は2011年の垣谷美雨・書き下ろし小説『夫の彼女』。夫の小松原麦太郎(田辺誠一)の浮気を疑った妻・菱子(鈴木砂羽)がひょんなことから夫の『カノジョ』山岸星見(川口春奈)と身体が入れ替わってしまうファンタジー・ドラマ。信じていた夫が部下の女性と浮気をしているのではないかとの疑いを持つようになった菱子は、浮気相手の女性・星見に会いに行き、夫と別れるよう迫る。だが星見はそれを拒み2人は口論となる。そのときその側にいた薄汚い老婆が奇妙な呪文のようなものを唱えると菱子と星見の身体が入れ替わっていた。老婆は「互いの気持ちが芯まで分かったら元に戻る」と言い残し去ってゆく。なすすべのない2人は戻る方法が見つかるまでそれぞれの姿で生活していくことを決意する。しかし立場が替わったことでお互いの思いが理解できるようになる。一方、何も知らない夫は、これまでと違うそれぞれの反応に戸惑い新たな思いが芽生えていく…。これまでジャニーズ枠だったTBS木9、今回は現実にはありえない展開ながら真面目に男女の心情を描こうとする異色なドラマ。渡鬼以降低迷するこの枠だが、思い切った転換で失地挽回なるか?なお、麦太郎・菱子負債の息子、真人を鈴木福が演じる。

テレ朝木9 10/17~ 『ドクターX~外科医・大門未知子』 米倉涼子、藤木直人、内田有紀、遠藤憲一、満島真之介、笛木優子、水沢エレナ、猪野学、野間口徹、六角慎司、浅野和之、笹野高史、岸部一徳、三田佳子、西田敏行
『群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器だ。外科医・大門未知子。またの名をドクターX』って聞いてたのもついこの前だったような気がするが、あれから一年(前回は2012年10月クール)。前作では帝都医科大学付属病院・第3分院が舞台だったが、今回はいよいよ本院に主人公・大門未知子が乗り込むことになる。弱体化したとはいえ旧態然とした大学病院の白い巨塔で権力を振りかざすもの、その権力にひれ伏すもの。そんな歪んだ組織に、徒党を組まず孤高に突き進む未知子が立ち向かう。病院版『半沢直樹』的企業内勧善懲悪ドラマとして前回並み、もしくはそれ以上の高視聴率が獲れるかがみどころ。

フジ木10 10/10~ 『独身貴族』 草彅剛、北川景子、伊藤英明 ほか
フジテレビの連続ドラマ出演が2009年7月クールの『任侠ヘルパー』以来となる草彅剛が主演。『独身貴族』をテーマに繰り広げられる甘く切ない三角関係ラブコメディ。あえて結婚しようとしない花の独身貴族の男女が結婚観をめぐって壮絶なバトルを展開する。草彅演じる主人公は父の代から続く映画制作会社の社長を務めている。クリエイティブな能力に秀でた映画作りのプロフェッショナルで人にペースを乱されることを好まず、独身であることに満足する『独身貴族』。この主人公の実の弟を演じるのが伊藤英明。離婚調停中の妻から家を追い出されるが、持ち前のルックスで恋愛に忙しい『離婚勇者』。兄と同じ映画制作会社で働き、高い交渉能力と営業センスを活かして兄を支えている。そして北川景子が演じるヒロインは、映画の脚本を書くことを夢見ているが、恋愛も仕事もうまくいかず男の結婚観にも幻滅する『結婚難民』。これまでアルバイト生活で食いつなぎながら夢を必死で追いかけ続け結婚どころではなかったが、なかなか芽が出ず半ば夢を諦めかけていたところ。そんな3人が出逢い、それぞれの思いをぶつけ合いながらいつしか三角関係に…。大酒飲んで素っ裸になるなどこれまで確かに『独身貴族』を存分に謳歌してきた風の草彅だが、こと恋愛という話になるとホントにこの人でいいの?という気が…。伊藤英明と兄弟というのもどこか違和感がある。そんなふうに思うのはワタクシだけ?

TBS金10 10/11~ 『クロコーチ』 長瀬智也(TOKIO)、剛力彩芽、香椎由宇、利重剛、小市慢太郎、大地康雄、風間杜夫、渡部篤郎
原作は『週刊漫画ゴラク』で連載中の『クロコーチ』(原作:リチャード・ウー、作画:コウノコウジ)。警察を舞台にする物語だが、主人公は前代未聞の悪徳刑事・黒河内圭太、これを長瀬智也が演じる。政治家の弱みを握り大金を強請るなど、黒河内の所業は姑息にして大胆不敵。しかし警察の不祥事が取り沙汰される中、毒をもって毒を制しようとする黒河内は、不正な金とともに得た情報を手掛かりに未解決凶悪事件の解決を目指す。徐々に明らかにされていく警察の闇、そこには昭和の未解決事件・3億円強奪事件も関係していた。一方、黒河内の内偵を任される女性キャリア警部補・清家真代を剛力彩芽が演じる。彼女は優秀だが純真無垢、黒河内とは全く対照的な性格。原作ではこの人物は男性だがドラマ用に代えたようである。いずれにしても警察の裏組織に立ち向かう孤高のダークヒーロー・クロコーチの活躍が描かれる。ただ原作を読む限り、主人公は長瀬智也とは遠くかけ離れたイメージであり、(剛力含めた)キャスティングには強い違和感を感じずにはいられない(ま、いっか)。

テレ朝金11:15(金曜ナイトドラマ)10/11~ 『都市伝説の女 Part 2』 長澤まさみ、溝端淳平、竹中直人、平山浩行、大久保佳代子、高月彩良、秋月成美、小泉麻耶、風間亜季、宅間孝行、伊武雅刀
2012年4月クールにこの枠で放映された都市伝説オタクの女刑事による謎解きドラマの第2弾。パート1では長澤まさみの“脚線美”効果もあって平均視聴率 9.7%とレイトナイトドラマとしては健闘した。パート2は、パート1での活躍により異例の抜擢でFBIに出向、アメリカ・ニューヨークへと渡った音無月子(長澤まさみ)が日本に戻ってくるところから物語が始まる。警視庁内には『非科学事件捜査班(unscientific incident investigation unit, UIU)』なる新部署が立ち上げられ、そこで月子の能力が存分に生かされることになる。前作に続いて、月子の無茶な独自捜査に付き合わされてきた鑑識課員・勝浦洋人(溝端淳平)、UIU の“カタチだけの班長”に任命されることとなった月子の上司・丹内市生(竹中直人)、丹内の忠実な部下・柴山俊也(平山浩行)らが登場する。パート2で扱われる最初の都市伝説は『富士山』にまつわるもの。月子の突飛な推理と珍妙な捜査による難事件への挑戦が再び始まる。『都市伝説』とは都会における口承のことを言うのかと思っていたが、どうやら都市に限局するものではないようだ。

日テレ土9 10/12~ 『東京バンドワゴン~下町大家族物語』 亀梨和也(KAT-TUN)、多部未華子、平愛梨、金子ノブアキ、ミムラ、君野夢真、小澤ルナ、光石研、片桐はいり、ベンガル、玉置浩二、平泉成、加賀まりこ
原作は小路幸也の連作短編推理小説のシリーズ『東京バンドワゴン』。東京下町の老舗古本屋『東京バンドワゴン』を営む大家族・堀田家の4世代にわたる面々が、『文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決』という家訓に従って、様々な謎や事件を解決する物語。主人公は父親の愛人の子で元不良の青(あお)(亀梨和也)。父親は伝説のロッカー我南人(がなと)(玉置浩二)。母親はすでに他界。祖父は『東京バンドワゴン』3代目当主の勘一(平泉成)。祖母サチ(加賀まりこ)は良妻賢母で堀田家を支えてきたが一昨年死去、幽霊として登場する。シングルマザーの長女・藍子(ミムラ)、嫁の実家と断絶状態の長男・紺(金子ノブアキ)、その妻・亜美(平愛梨)。この長男、長女にはそれぞれ一人ずつ子供がいる。また、青と恋仲(原作では結婚する)で本が大好きな女子大生・槙野すずみを多部未華子が演じる。そのほか下町の人たちとして、我南人の友人で近くのマンションの管理人をしているケンちゃん(光石研)、居酒屋『はる』の女将・真奈美(片桐はいり)、勘一の幼馴染で近くの神社の神主・祐円(ベンガル)らが登場する。事件の謎解きだけでなく、堀田家を中心としたホームドラマの一面も楽しめる。なお本作品は『ダ・ヴィンチ』(メディアファクトリー・2009年12月号)の「読者なんでもランキング・リターンズ!」で、「映像化してほしい小説」の第1位に選ばれたということで、原作はなかなか面白そうである。

NHK日8 継続中~ 大河ドラマ 『八重の桜』 綾瀬はるか、西島秀俊、長谷川博己、剛力彩芽、黒木メイサ、松重豊、風吹ジュン、長谷川京子、工藤阿須加、綾野剛、稲森いずみ、玉山鉄二、池内博之、斎藤工、北村有起哉、貫地谷しほり、芦名星、市川実日子、白羽ゆり、秋吉久美子、小泉孝太郎、村上弘明、降谷建志(Dragon Ash)、生瀬勝久、市川染五郎、小堺一機、反町隆史、加藤雅也、吉川晃司、中村獅童、西田敏行、オダギリジョー、勝地涼、水原希子、谷村美月、小栗旬、及川光博、高嶋政宏、奥田瑛二、松方弘樹
時代が明治に入り、完全に中だるみ状態。八重の性格に可愛げが全くなく人間的に魅力を感じないため、この主人公に全く感情移入できないのがこのドラマをつまらなくしている最大の要因。京都での八重の会津弁がさらに視聴者の苛立ちを大きくする。オダギリの演技力も凡庸で魅力を感じない。45分間が異様に長く感じられる。このまま感動なく終盤に向かってしまうのか?残念である。

TBS日9 10/13~ 『安藤ロイド~A.I. knows LOVE?』 木村拓哉(SMAP)、柴咲コウ、大島優子、山本美月、本田翼、桐谷健太、山口紗弥加、遠藤憲一
キムタク主演っ!でこのタイトル…。すでに終わったという人もいるだろう。時空を越えた究極のSFラブストーリーとか。今回キムタクは、100年先の未来から大切な人を守るために現代に送りこまれたアンドロイド・安堂ロイドと、現代の大学教授で天才物理学者・沫嶋黎士(まつしまれいじ)の2役を演じる。黎士の婚約者で、ロイドが命をかけて守ろうとするヒロイン・安堂麻陽(あんどうあさひ)に柴咲コウ。この二人、10年前の日曜劇場高視聴率ドラマ『GOOD LUCK!!』でも共演している。このほか視聴率アップを狙ってかどうか知らないが、黎士の妹で、やはり物理学者の大学准教授・沫嶋七瀬役に大島優子を抜擢。物語は2003年のある日、物理学者の沫嶋黎士が何者かに殺害されるところから始まる。彼は時空構造の位相幾何学として考えられている構造の一つ、ワームホール研究の第一人者だった。これは時空のある一点から別の離れた一点へ直結する空間領域のことで時間のトンネルのような抜け道のことである。彼の婚約者・安堂麻陽は大手IT企業に勤める優秀なビジネスウーマンだったが、突然“最愛の人の死”という不幸に襲われ、さらに彼女自身も、理由の分からないまま正体不明の相手から命を狙われることになる。そんな彼女の前に、死んだ黎士と瓜二つの容姿をした男・ロイドが机の引き出しの中から現れる。ロイドは麻陽の命を守るため100年先の未来からやってきたアンドロイドだった。しかしロイドには『愛』も人間の心も理解することができない。最初はロイドに嫌悪感を示していた麻陽だったが、彼の悲しい運命を知り、徐々に心を寄せていくことに…。片や、ロイドも麻陽の護衛を続けるうちに感情が芽生えてくる。ドラマの展開とともに、黎士が殺された理由や、麻陽自身も狙われることになった理由、さらにはロイドが派遣された目的などが明らかにされることになる。100年の時空を越え“愛”をかけた戦いが始まる?!日曜劇場におけるひと昔前のキムタクの人気・活躍は素晴らしものがあったが、前作『南極大陸』あたりから顕著に翳りが見え始めており、今回、『半沢直樹』でせっかく獲得した日曜劇場の視聴者が離れていってしまわないことを、ただただ祈るばかりである。

毎年10月ドラマは個人的に最も期待するクールなのだが、
残念ながらコメディものがほとんどである。
『半沢直樹』や『Woman』などのシリアスドラマは一切ない。
前クール低調だったフジの挽回も期待できそうにない。
とりあえず内容に乏しそうなお気楽ドラマオンリーで
秋の夜長をなんとか過ごすほかなさそうである。

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米国がん生殖医療の現況

2013-09-01 18:48:48 | 健康・病気

若くしてがんを宣告された患者は子供を持てない?
そんな通説は今や過去の話となっている。

8月27日付 Washington Post 電子版

Oncofertility offers new options for young women with cancer who want to have kids

Oncofetility
がん生殖医療は、子供を持つことを望んでいるがんの若い女性に新たな選択肢を提供するIlana Brunner さんは両側の乳房切除の前と、さらに化学療法の前に卵子を凍結した。しかしいずれの措置も妊娠には至らなかった。その後彼女はさらに卵子を採取され夫の精子と受精、その結果双子の Lyla(左)と Aryeh の誕生につながった。

By Emily Wax,
 Michele Foust さんがこの春、ステージ2の乳がんであると診断されたとき、自身の治療に関する疑問の一覧を打ち出した。
 この26才の女性が持つ一番の懸念は、多くの若いがん患者を悩ませる未知の事柄だった:「もし生き続けることができたとき子供を持てるだろうか?」
 Foust さんの乳腺外科医には確信はなく、化学療法は毛根細胞など他の分裂の速い健康な細胞にダメージを与えるのと同じように健康な卵子を障害するのでチャンスが阻害される可能性が高いと思うと彼女に告げた。
 事実、Virginia Hospital Center の乳腺腫瘍内科医の Neelima Denduluri 氏は、「化学療法は生殖に対して確かなリスクとなります」と言う。「化学療法のレジメンによっては不妊や精子数の減少を起こす傾向がより強くみられ」、それは患者の80%に達することもあるが、正確な割合はがん治療のタイプや診断時の年齢に依存するという。
 こうした事情の一方で、医学は近年、がん患者、特に女性患者が治療前に生殖能力を温存しておくことを支援する方向で大きな進歩を遂げてきた。
 がんを持つ女性にとって最も一般的で有効な選択肢は、化学療法や放射線治療を受ける前に卵子あるいは胚芽を凍結することである。患者が妊娠する準備ができていると決意した時点で、子宮の内面の準備を整えるべくエストロゲンとプロゲステロンが投与される。胚芽は解凍され(卵子の場合はその後人工授精され)子宮内に移植される。特にがん患者での成功率はいまだ調査されていない。しかし、体外受精(IVF, in vitro fertilization)の成功率は35才未満の女性で約50%である。
(がんを持つ男性患者では、治療前の精子の凍結は女性に比しはるかに侵襲性が低く費用もかからない)
 さらに卵巣凍結のような実験的選択肢もある。その場合、卵巣の全組織あるいはその一部が切除され卵子が含まれる外層部分を後の使用の目的で細長い形で凍結される。患者の状態が良ければ、その卵巣は再移植することができる。この方法は通常12,000ドル程度費用がかかるが、Northwestern University 付属の Feinberg School of Medicene の産婦人科教授 Teresa Woodruff 氏によると、これは実験的なものであるため、しばしば研究施設が資金提供を行う。Woodruff 氏はそのような手法をがん生殖医療の一環としているが、これは腫瘍医学と生殖医療を橋渡しする新しい領域である。
 「がん治療に多大な進歩が見られることは大変ありがたいことです。しかし、その分、多くの生存者たちが不妊状態となっています」と Woodruff 氏は言う。「特にこの分野への関心の集中が真に求められていたのです」

Beginning the discussion  議論を始める

 American Cancer Society(米国がん協会)の推定では、今年、45才未満の米国民約140,230人ががんの診断を受ける見込みであるという。彼らの大多数が5年、あるいはそれ以上生存する可能性がある。
 しかし最近になってやっと生殖性が患者の治療プランに織り込まれるようになったと、Arlington に拠点を置いている診療機関 Dominion Fertility の生殖内分泌医 Mark Payson 氏は言う。乳がん患者支援グループに彼が話をすると、患者たちは“生殖に関する選択肢について自分たちに話してくれるのは主治医である腫瘍内科医たちのようやく半分に過ぎない”と語っているという。
 先月、イギリス University of Sheffield の研究者たちによる研究では、生殖能力を温存すべきとの選択肢について主治医からの話題提起のやり方に対して若い女性がん患者の40%しか満足していなかったことが明らかにされた。
 ほとんどの医師は一般に、生殖に関する選択肢よりも患者の命を救うことにより関心を持っていると Payson 氏は言う。
 Ilana Brunner さんの乳がんが2009年に見つかったとき、彼女はただちに、化学療法が始まる前にいくつかの胚芽を凍結するために不妊治療にとりかかろうとした。しかし、自分以外の人たちはそんな手順をとることを知らないのでないかと思われた。
 「私が化学療法を始めたとき、彼らは私にパソコンを用意し、がんと化学療法についてのビデオを見せました。しかしそのビデオは女性の生殖能力に関して何も触れていませんでした」とSilver Spring に住む弁護士の Brunner さん(40)は言うが、男性に関しては触れられていたという。「私は苦情を言いました。私にとってそれはまがいものに思えたのです」
 一方、Foust さんの場合は違っていた。最初の話し合いから数日後、彼女と夫は、彼女の治療の新しいプランを告げる緊急の電話を受けた。
 Virginia Hospital Center で彼女を担当する乳腺外科医は、Genetics & IVF Institute のがん患者のための生殖機能温存センターの生殖内分泌医 Stephen Lincoln 氏との電話会議を立ち上げていた。
 治療前に彼女の卵子あるいは胚芽の冷凍を試みることが可能だった。
 Genetics & IVF は Shady Grove Fertility Center や Dominion Fertility など他の有名な生殖センターとともに、増えてきている生殖に関する選択肢についてがん患者に話すよう腫瘍内科医やそのスタッフに奨励しようとする全国的取り組みにおいて重要な役割を果たしている。
 「生殖能力について話すことががん治療の一部になっていることを今では誰もが認識しています」と Lincoln 氏は言う。「もはやすぐに治療に突入することはありません」
 Denduluri 氏も同意見である。「以前は多くの人たちはいわゆる治療法の発見や患者の命を救うことに関心を寄せていましたが、今やその意識ははるかに高まっています」と彼女は言う。「今さらに微妙なバランスが必要な問題となっており、治療の開始時に生殖能力の問題を提起する重要性には一層厳しい目が向けられている感じがあります」

‘It was amazing’ “それは素晴らしい”

 5月下旬、 Foust さんは Annandale の彼女の自宅に近い Genetics & IVF の薬局に行き、採卵のために卵子を作り出すために卵巣を刺激するホルモンであるバイアルに入ったゴナドトロピンを家に持ち帰った。
 それからの2週間、毎日自己注射しなくてはならなかった。その後 Lincoln 氏と彼のチームは彼女の卵子を採取したが、この手技は軽い鎮静下で行われた。(この過程は一般に子供を作る能力を温存するために卵子を凍結しておきたい女性に用いられるのと同じである)
 乳がんのケースでは、エストロゲンを増加することで腫瘍の増大が加速する懸念があることから医師は低いレベルに保ちたいと考えている。Foust さんの医師は低用量のゴナドトロピンでエストロゲンのレベルを低く保つ一方で卵巣刺激を促進する薬剤を組み合わせた。
 「彼らが実際に安全に今回の措置を行ってくれたことは素晴らしいことでした。私が前から望んでいた子供を作るという能力が奪われるなんて普通の人は26才の時には決して考えないことでしょう」緊急室の看護師である Foust さんは言う。
 彼女は胚芽ではなく卵子を凍結することに決めたが、それは、彼女が使わないかもしれない胚芽を持つことを懸念したからである。化学療法が彼女の生殖能力に障害を及ぼす程度によって、彼女が自然に子供を持てる可能性もあったからである。
 「もし私が凍結した子供をどこかに持っていたとしたら、どうすべきかを考えることになります。それらを提供する?それらを科学に受け渡す?」と彼女は言う。
 ほんの数年前までなら、Foust さんはこういった問題について考えることはできなかっただろう。
 当時は卵子凍結の成功率ははるかに低く、American Society for Reproductive Medicine(米国生殖医学会議)からは実験的と見なされていた。そのようなレッテルは10月に撤廃されたが、それは vitrification(ガラス化凍結法)と呼ばれる新しい急速冷凍技術による成功率の向上による。
 「それは大きな前進でした」Shady Grove Fertility Center の生殖内分泌医 Frank Chang 氏は言う。
 採卵の目的で卵子を刺激するのに用いられるホルモンが、妊娠そのものと同じく、特定のがんを発生させるリスクを高める可能性があるという従来の考え方に否定的な腫瘍内科医の数が増えている。Denduluri 氏によると、現在、多くの医師は乳がん患者に用いられるホルモン剤 tamoxifen を3~5年投与した後は卵子凍結の措置および妊娠のいずれも安全とみている。
 さらに Denduluri 氏によると、妊娠後の再発率について大規模データが現在も集められているところだが、妊娠が安全かどうかを見極めるため各症例でがんの病歴についても調査されている。
 患者が tamoxifen の治療を開始して2~3年待つ限りにおいて乳がん診断後の妊娠が負の転帰をもたらさないことを示す小規模の研究もあると Denduluri 氏は言う。
 多くの患者にとって、がんの診断のさなかに不妊治療に取り組むことは精神的に(時に肉体的にも)負担となる。しかも高額である。
 治療は選択的なものと見なされるため、保険でカバーされることはまれである。生殖治療薬は、一回もしくはそれ以上で6,000ドルかかり、卵子の採取・凍結にはさらに5,500ドルかかる。胚芽の凍結には、その手技に6,500ドル、もしくはそれ以上の費用がかかる。

A costly process  金のかかる処置

 多くの生殖センターではがん患者が薬の資金を出してもらえるような支援を見つける手伝いをしている。Livestrong Foundation’s Fertile Hope のプログラムは2004年以降 4,000人近いがん生存者を支援してきたと生殖機能サービスの上級ナビゲーター Ashley Koenings 氏は言う。このプログラムは毎月約80人を支援している。
 Shady Grove は保険で薬剤をカバーできない患者に薬剤を提供する Walgreens(薬局チェーン)と連携している。また Shady Grove は患者の収入に応じて採卵の財政支援をする。
 しかし財政的支援があっても、精神的犠牲はしばしば深刻である。生殖的問題に取り組むことは誰にとってもローラーコースターに乗るようなものだが、がん患者やがん生存者にとってはそれ以上に耐えがたい負担に感じられる。
 「一度くらい私の身体が私に逆らうのではなく私のために働いてくれたら?」Brunner さんは自身の採卵の努力について話す。「その間、スーパーマーケットで妊娠女性を見ると私は涙にくれたものです」
 Brunner さんは2回ほど自身の卵子を凍結した。両側乳房切除の前と、化学療法の前である。「誰かがこう言いました。『あなたは本当にそれをしたいの?針で身体を突くつもりなの?』それに対して私は、『がんを抱えてしなければならないことに比べたらこんなこと何でもないことよ』と言いました」
 受胎キャリア(Brunner さんの代わりに妊娠を申し出た女性)での 2度の胚芽移植が不成功に終わったあと、化学療法の後に再度挑戦した。一回目には生殖能力のある卵子を得ることができ、さらに二回目も成功した。両者を夫の精子と体外受精させ、新たな一人の受胎キャリアに移植した。化学療法後に生殖能力を保持した卵子を採取でき彼女のような良好な結果が得られることはまれであると医師らは言う。現在彼女には生後9ヶ月の双子がいる。
 先日の Shady Grove Fertility の Family Day のとき、その双子は『愛…そして科学によって生まれた』と書かれたワンシー(赤ちゃんの足先まで包まれたワンピース)を着ていた。「たとえ彼ら二人ともが泣いて私が眠ることができないようなことがあっても、大変ありがたい気持ちでいます」と彼女は言う。
 一方、Foust さんは15個の卵子を凍結することができた。彼女が妊娠できる状態になれば卵子は解凍され、受精され、胚芽として子宮に移植されることになる。
 現在彼女は8回目の化学療法を受けている。自分の卵子が凍結されているという確信は彼女の心に安らぎをもたらしてくれる。
“I remember seeing a picture in my breast surgeon’s office that has a list of things that cancer cannot do,” she said. “And I wanted that to include that it couldn’t take a pregnancy away from us. Even if we never use the eggs or get pregnant on our own, it would be a blessing. I refer to my frozen eggs as my pocketful of sunshine.”
 「私は、乳腺外科医の診察室で、がんでは許可されないことのリストが書かれている一枚の図表を見たのを覚えています」と彼女は言う。「私たちから妊娠を取り上げることはないとそこに書かれていればいいのにと思いました。私たちが決して卵子を使えなかったり自身で妊娠できなかったとしても、それは神の恵みなのだと思います。私は自分の凍結された卵子を、ポケットいっぱいの太陽の光と呼んでいます」

卵子の凍結保存技術が進歩し、
健常人でも卵子の保存を希望する女性が増えている。
日本生殖医学会はこのたび、
卵子凍結が無秩序に広がることを制限するため、
40才以上の卵子採取と
45才以上での凍結卵子の使用を推奨しないとしたが
独身女性の卵子保存については
容認する指針をまとめた(8月24日付読売新聞)。
一方、日本産婦人科学会は、未受精卵子の保存を、
不妊治療を目的とした夫婦と
がんの治療を受ける女性にのみ認めている。

がんという苛酷な宣告と
子供を残したいという切実な願いの狭間で
若年がん患者にはむずかしい決断が求められる。
しかし医学の進歩により、かつては真っ暗だった未来に
いくつかの光明を見つけることができるようになったのは大きい。
今後は、若年がん患者にはあまねく
このような選択肢が提示され十分話し合われるようになることだろう。

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