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MrKのぼやき

煩悩を解脱した前期高齢者男のぼやき

医学の進歩 2012 トップ 10

2012-12-29 11:48:32 | 健康・病気

2012年も残すところあとわずかとなりました。
例によってこの一年の医学の進歩トップ10を
Time.com から紹介しておきましょう。

12月4日付 Time.com

10. Zit-Zapping Viruses ニキビを撃退するウイルス

Medbreakthrough10

 時には火をもって火と戦うのが最善であることがあり、思春期の人たちの悩みの種であるニキビに対して行われたアプローチがまさにそれである。これは皮膚の病変に関与する細菌(プロピオニアクネス)と戦わせるために比較的活性の低いウイルスを送り込むものである。これらのウイルス(ファージ)は既に皮膚内の深部にある毛孔に存在していて細菌の菌体に感染する能力をもともと持っており、細菌をウイルス製造工場に変え、それらに自己破壊を起こさせる。ウイルスの数を増加させることが重要なのだが、研究者らによれば、このウイルスを含んだ塗り薬で達成できるのだという。あるいは、単純にこのウイルスが産生する殺菌物質を含んだクリームを塗ることもできる。いずれにしても、10代の若者が待ちに待ったきれいな皮膚がもたらされることになるのである。

9. Man-Made Mouse Eggs マウスの人工卵子

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 幹細胞は、一見不可能に思われる生物学的偉業を成し遂げてきた:たとえば、糖尿病を治療すること、麻痺した患者を再び歩けるようにすること、心筋梗塞で損傷を受けた心筋組織を再生することなどである。しかし、その幹細胞でさえ、生命の最も基本的な要素である卵子や精子を損傷から再生することはあまりに大きな難題であるように思われた。しかしそうではない可能性がある。日本の(京都大学の)科学者たちはマウスからの2種類の幹細胞を用いた。数日齢の胎児からとられたものと、成体マウスの皮膚細胞からリプログラミングされたものである。そして、生存可能な卵細胞を作り、その後彼らは受精に成功し、幹細胞由来の卵細胞から生まれた史上初の子マウスを作成した。明らかに健康なマウスの子は幹細胞の再生能力の究極の試金石となっていて、人間の夫婦における不妊に対する新しい治療につながる可能性への突破口を意味するものである。

8. Decoding Childhood Tumors 小児がんを解読する

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 近年、小児癌の生存率の向上はめざましく80~90%となっているが、その後押しとなっているのは腫瘍の早期発見と、手術・化学療法・放射線治療などの確立された治療法による治療である。そんな中、主要な小児癌の遺伝子配列を決定しようとする3年間で6,500万ドルの取り組み Pediatric Cancer Genome Project が治療の新たなターゲットについての豊富な情報源となることに医師たちは期待を寄せている。癌の遺伝的な推進部を理解することによって、願わくは異なるタイプのがんで共通の経路を明らかにし、医師たちが、たとえばあるタイプの腫瘍に有効である治療を別のタイプの治療に取り入れることや、異常に増殖する細胞を抑える全く新しい薬を生み出すことを可能にする。

7. Speeding DNA-Based Diagnosis for Newborns 新生児に対する DNAに基づいた診断の迅速化

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 50時間。これは、今、新生児のゲノムを解析し解読するのにかかる時間である。この作業はこれまで数週間から数ヶ月かかっていた。そして、この2日間が最重症の子供にとって、生と死の境を分ける可能性がある。このより迅速なゲノム解析は、配列決定技術だけでなく、これまで知られている3,500の遺伝子欠損をそれらの小児疾病と結びつける革新的なソフトウェアの進歩による可能性があり、これによって医師たちが、新生児の命を救うことのできる正しい治療を迅速に決定することができる。毎年新生児集中治療ユニットに入院する新生児の約30%は遺伝疾患を受け継いでおり、彼らのゲノムの解析は数年のうちに彼らの治療を向上させる重要なパートになる可能性がある。早ければ早いほど良いのである。

6. Breaking Down Breast Cancer 乳癌を解析する

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 乳癌は確かに複雑な疾患である。多くの遺伝的、および生活習慣的因子が引き金となる。しかし、乳癌の最新の DNA の解析では、この疾患はこれまで考えられていたより若干単純であるかもしれないという事実に研究者らは衝撃を受けている。多くの癌のゲノムの配列を決定しようとしている政府の事業 The Cancer Genome Atlas で、510の乳癌の検体に 30,000以上の変異が発見されたが、これらは4つの主要なサブタイプに分類された。そのうちの一つは卵巣癌との密接な関係が示されており、卵巣癌に対する治療が乳癌患者にも有効である可能性が開かれるものだ。一方、別のタイプのものは、ハーセプチンのような薬剤に反応すると考えられている HER-2 受容体を持つ女性において、一部の人で他の人より良好な転帰が得られる理由を説明する助けとなっている。この知見は医師による乳癌の治療法に変化をもたらす可能性があり、本疾患を克服して生き残れるか、それとも犠牲となってしまうかの相違点となりうる。

5. Hope for Reversing Autism 自閉症脱却への期待

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 自閉症児の両親にとって明るいニュースに、本疾患の症状に関与する脳パターンを正常化するのに早期の行動療法が有用である可能性があるとの研究者らによる報告が挙げられる。幼児への集中的な社会的、言語的な取り組みを含む Early Start Denver Model program に参加した自閉症スペクトラム障害と診断されている小児で、彼らの脳が人の顔や物体を処理する仕方に変化が認められた。自閉症の幼児では一般に、女性の顔の写真を見るときより、おもちゃのような無生物のイメージを見るときの方がより強い脳の活動が認められた。しかし 2 年間の ESDM 療法のあと、それら自閉症児は反対の反応を示し、これらのパターンは正常に発達している子供たちに見られるそれに類似した状態に近づいていた。自閉症に関連した脳の変化の一部を阻止し、おそらくそれらを戻すことさえできる可能性があるという有望な徴候である。しかし、同プログラムの成功へのカギには、きっちりと訓練されたカウンセラーによって子供たちを毎週数時間の治療に積極的に引き込む早期の集中的な介入が含まれている。

4. Lab-Grown Body Parts 研究室で作られる身体器官

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プラスチックで組み立てられ、患者の幹細胞が蒔かれる準備段階にある人工の気管

気管は腎臓や肝臓とは異なる。通常臓器移植リストに挙げられる臓器には含まれない。しかし、幹細胞のおかげで、新しい気管が必要な患者は彼ら自身で育てることができる。Karolinska Institute の研究者たちは2つめとなる人工の気管を作り上げ、合成のマイクロファイバーと、自身の気管が癌で侵された患者の骨髄から取り出された幹細胞の液を用いて鼻・口と肺をつないだ。最初のケースでは、死亡した人から提供された気管がスペイン女性の幹細胞の骨格として用いられた。今回の最新の進歩においては、科学者たちは細胞を蒔くのにバイオ工学処理された骨格を用いた。このような技術は再生医学の将来を象徴するもので、そこでは、患者自身の皮膚細胞から作られたものを含むあらゆる種類の幹細胞が、取り替えたり修復したりする必要のあるあらゆるタイプの細胞や組織を作り出す基盤としての役割を果たしうる。

3. Do-It-All HIV Drug 最善を尽くす HIV 薬

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 2種類の抗ウイルス薬の合剤である Truvada はすでに HIV に対する強力な武器となっているが、今やこの薬は健康な人におけるこのウイルスに対する初めての薬剤ベースの予防法となった。画期的な臨床試験で、この薬剤を用いた感染していない人たちで HIV に感染するリスクを下げうることが示されたため、米国食品医薬品局は Truvada の承認範囲を HIV に感染するリスクの高い健康人を含めるよう拡大した。HIV 陽性患者の未感染配偶者だけでなく、高リスクのゲイ男性も42%から75%の範囲で陽性になる確率を下げた。この治療は、未防御でのセックスを助長するなど、よりリスクの高い行為につながる可能性があると批評家からの懸念があるが、公衆衛生の専門家たちは感染を最初の段階で予防するというAIDS に対抗する新しい手段として歓迎している。

2. What Are Bugs For? 微生物は何のため?

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 人の身体の最も一般的な構成要素は何か?細胞?いえ。遺伝子?いえ、全然違う。それは微生物である。細菌を含む微生物は私たちの中、表面、周囲に生きており、人の細胞の数を10倍上回る。そして研究者らは the Human Microbiome Project というプロジェクトの第1相を終えたところである。これは、それら微生物集団が一体何であり、何をしているかについてのこれまでで最も包括的な研究である。それら微生物のほとんどは我々の味方であり、たとえば、食べ物を消化したり、強い免疫系を構築するのを補助するために懸命に働いている。しかし、我々の体内に棲む微生物についてがさらに明らかになるにつれ、それらが、炎症や肥満を含む慢性疾患や慢性の病態の多くで重要な役割を果たしている可能性に対する科学者たちの認識が高まっている。歓迎されない侵入者であるものはさておき、これらの微生物が最終的にいくつかの最も難治性の健康障害を治療する味方となる可能性がある。

1. Junk No More もはやがらくたではない

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 役に立たない遺伝的がらくたとして無視されている遺伝子をコードしていない全体の98%のヒトゲノムにもつまるところ目的がある。以前は重要でないとされていた DNA のこれらの領域は、遺伝子がそれぞれのタンパクをいかに大量に産生するかというのと同じように、遺伝子がいつどのように機能するかを調整する真の遺伝的黒幕であり、代謝のスイッチであることが判明している。科学者たちによると、それらが存在しなければ何の意味ももたない乱雑な言葉の集まりのようになるという。科学者たちはすでに新たに発見された生物学的データバンクを活用しており、制御の新たな方法を追跡し、おそらく遺伝的スイッチの異常がある疾患を治療しようするところまできている。

ノーベル医学生理学賞受賞の山中伸弥先生の世紀の発見から
今後様々な医学の進歩が生まれてくることでしょう。
2013年が皆様、日本、全世界にとって良い年となりますように…

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レ・ミゼラブル

2012-12-25 11:57:48 | 映画

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12月21日から公開されている映画『レ・ミゼラブル』を観た。
原作はフランスの文豪 ヴィクトル・ユゴーにより
今から150年前の 1862年に書かれた大河小説である。
原題 Les Misérables は『悲惨な人々』という意味だが、
本邦では明治時代に『あゝ無情』と
訳された(このタイトルはどうも…)。
イギリスで制作された本映画は、
ミュージカルの形での長編の凝集が試みられているが、
それでも2時間38分の長尺な作品となっている。
MrKはミュージカル映画というのを知らずに観に行ってしまった。
冒頭からセリフは全部歌!
以後一言たりとも普通のセリフはなし…しばし呆然。
それでも字幕で歌詞を追えば、何とかストーリーには付いていけそう。
救いは、アフレコ・口パクではなく生録だったので、
表現が違和感なく伝わってくること。
しばらく我慢しているとようやく慣れ始め、少し眠くなりだしたころ、
前半のみどころであるファンティーヌ役のアン・ハサウェイによる
“I dreamed a dream(夢やぶれて)”の熱唱が始まる。
あの奇跡の歌姫・スーザン・ボイルさんが
一世を風靡した例の歌である。
アン・ハサウェイの歌は、あのおばさんのそれとは格段の差で、
ビンビン気持ちが伝わってくる。
と、この場面でシャキッと覚醒!
ジャン・バルジャンを演じたヒュー・ジャックマン、
バルジャンを追跡するジャベール警部を演じたラッセル・クロウ。
この両人、演技はもちろんだが、歌唱でもなかなか頑張っていた。
映画後半は共和派秘密結社の若者たちの暴動を中心に
ファンティーヌの娘・コゼットと結社のメンバー・マリユスの
恋が描かれる。
そして終盤、いよいよジャン・バルジャンの最期。
死先案内人として?アン・ハサウェイが再び登場。
ジャン・バルジャン、感動の昇天シーンである。
この作品、全体的に音楽と歌唱力のレベルが高かったが、
特に、マリユスに思いを寄せるエポニーヌ役のサマンサ・バークス、
そしてパリの浮浪児・ガヴローシュを演じた
子役・ダニエル・ハトルストーンの二人が傑出していたように思う。
ストーリーの展開については
原作が膨大なだけに、かなりはしょったところもあったが
セリフだけでは描き切れない部分を歌に盛り込む形で
時間の制約がある中で内容豊かに表現できていたようだ。
ラストは民衆の大合唱で感動的に幕を閉じる。
もともとミュージカルが苦手なMrKでも
うとうとすることもなく最後まで見ることができた。
こういう映画は映画館で観てこそ値打ちがありそうだ。
(もちろん日本語吹き替えでは全くの興ざめ…)
この年末年始、本作品を鑑賞されることを強くお勧めする。

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真実を知らずとも今を大切に生きること

2012-12-24 13:10:18 | 健康・病気

本年最後のメディカル・ミステリーです

12月18日付 Washington Post 電子版

Cerebral palsy proves not to be the cause of boy’s decline 脳性麻痺が少年の機能低下の原因ではなかったことが明らかに

By Sandra G. Boodman,
 Jack DeWitt の人生の最初の十年間、彼を診察したすべての医者の注意は例外なく彼の未熟児出生の後遺症に向けられていた。
 彼は 1999年12月に緊急帝王切開で生まれており、医師たちはあまねく、彼の発達障害が予定より6週間早く生まれたことによると考えていたと、彼の母親の Ruth DeWitt さんは言う。「常にそこに戻っていました」

Cerebralpalsyofaboy
Jack Dewitt は自宅で友人たちとのパーティーを主催して自身の13回目の誕生日を祝う予定にしている

 5才時 Jack の歩行がおかしくなり始めたとき、医師たちは早く生まれすぎた子供に起こる軽症の脳性麻痺のせいであるとした。「私たちはそれでいいと思っていました」と彼の母親は言う。なぜなら軽症の脳性麻痺なら「彼の寿命や人生の喜びに影響を及ぼすことはなかったからです」
 Jack の両親は彼に理解する能力があることにも安堵していた。彼は介助によって、様々なスキルを習得した。たとえば、ジャンプしたり、歩いたり、筆記体で書いたりすることなどである。
 しかし、10才になるまでに彼の歩行能力はひどく悪化し、主治医らによる診断の見直しによって全く異なる診断や予後評価が下される結果となったのである。
 「私たちはそれまで何年間も、彼に多少の問題はあっても正常で健康な子供であると思っていました」と彼の母親は思い起こす。本当の病気が見つかることは大きな衝撃であったし、その衝撃はその予測される将来を Jack が敏感に感じ取ることでさらに増大した。

Premature birth 未熟児出生

 ミシガン州 Ann Arbor 市の郊外、Howell に家族と住む Ruth DeWitt さんは、病院で子癇前症あるいは妊娠高血圧症の検査を受けていたとき、胎盤早期剥離の徴候である出血が始まった。この生命の危険がある疾病は、胎盤が女性の子宮から早期に剥がれて起こるものである。緊急手術となり、Jack は3ポンド9オンス(約1,616g)の体重で生まれ、University of Michigan Medical Center の新生児集中治療ユニットに移送された。彼は小さかったがたくましかったので、酸素は必要だったが呼吸器を要することはなく、15日後に自宅に帰った。
 「彼はずっと新生児のままのようでした」と母親は思い出す。5ヶ月後、彼は寝返りもうてず、生後4週の赤ちゃんの運動能力しかないとみられたため、彼は乳児発達プログラムに登録された。
 その後の3年間で彼の診断名は変化した:“小児期早期発育遅延”は“協調運動発達障害”に変わったのである。良かったのは彼の認知機能が保たれていたことであり、彼の運動能力は著しく進歩した。3回目の誕生日のちょっと前にジャンプの仕方を彼が覚えたときには両親は感激を覚えた。
 4才までに Jack は初期介入プログラムを卒業した。「幼稚園での彼は実に調子が良かったのです」と母親は思い起こす。彼の発育上の問題は収束したかに見えた。
 しかし一年後、空手教室で Jack はつま先立ちで歩くようになった。つま先歩行は脳性麻痺や自閉症の症状の可能性があるが、小児が大きくなれば見られなくなる動作にすぎないこともある。
 Jack はUniversity of Michigan の Liza Green 氏に紹介された。精神科医だがリハビリテーション医学を専門にしている医師でもある Green 氏は Jack のつま先歩行が過度に硬くなったふくらはぎの筋肉によって生じている可能性があると考えた。彼女はボトックスの注射と下肢の装具を勧め、その両方を彼は受けた。
 「彼はずっと良い状態で歩くようになりました」と Green 氏は思い起こす。
 しかしその後2年の間、彼の歩行に対する懸念が消えることはなかった。彼はバランスを保つのに苦労していたようであり、野球場で Jack の走りがぎくしゃくしているように見え、ほかの子供たちのように滑らかではなかったことに母親が気付いた。
 彼の未熟児出生が原因ではないかと理学療法士は考え、脳が感覚器からもたらされる情報を処理する能力を欠くことに起因する神経学的異常、すなわち感覚処理障害(sensory integration disorder)があるのではないかと疑った。「自分の身体が空間のどこにあるのか彼にはわからないようだったと彼らは言っていました」と DeWitt 氏は思い起こす。
 7才までに、彼の持ち前の根性と決断力をもってしても、以前のように前進することはできなくなっていた。「その当時、私たちはできることすべてをやっていました」が大きな変化は得られないようだったと、Dewitt さんは言う。
 Green 氏のもとを訪れているあいだ、DeWitt さんは彼が脳性麻痺なのかどうか彼女に尋ねた。
 Green 氏は、そのように思うが Jack の場合は軽症であることを彼女に伝えた。「彼の歩行困難と未熟児出生を考えると、軽症の脳性麻痺でつじつまが合うようでした」とこの医師は思い起こす。
 脳性麻痺がある人物を知っていたこの夫婦は悲しんだものの不安は感じていなかった。「彼がほとんどの活動やスポーツを楽しみ、きわめて長い充実した人生を送ることができると思っていました」と Ruth DeWitt さんは言う。

Alarming symptoms 気がかりな症状

 しかし Jack の9回目の誕生日が近づくにつれ、厄介な新しい症状が現れた。彼に頭痛が見られるようになり、時にはそれが片頭痛の様相を呈し、しばしば異常に疲弊するようにみえた。雪の中、近隣を歩くだけで彼はへとへとになっていた。さらに彼には側彎症という脊柱の軽度の彎曲が出現した。
 頭痛は特に心配だった。Jack の父方の祖父が悪性脳腫瘍で亡くなっていたことから、彼の両親はその頭痛が脳腫瘍の症状ではないかと考えた。彼は小児神経科医を受診し、MRI検査が行われたが異常は何も認められなかった。
 しかしその神経内科医は DeWitt さんにショックなことを告げた。Jack の不安定さを認めた彼女は歩行器を推奨し、さらに長い距離には車椅子を勧めたのである。「私の息子は歩いてここに入ってきたのに、どうして彼にそれらが必要なの?」そう思ったことを DeWitt さんは覚えている。
 2009年の夏までには、歩行時の筋肉の協調の欠落、すなわち運動失調(ataxia)を認めた精神科医の Green 氏は自身の脳性麻痺の診断を見直し始めていた。「『うーん、何かすべきことがあるのでは?』と考えたのです」と彼女は思い起こす。
 彼の歩行障害は進行性のようであり、そうなると脳性麻痺には当てはまらない。Jack がすでに小児神経内科医を受診していたこともあり、しかも可能性のある他の診断はいずれも衝撃的なものだが Green 氏の専門領域ではなかったので、彼女はあえてそれらを口にしないようにしていた。
 しかし2010年3月の Jack の予約診察が流れを変えた。彼の動きを観察し、歩行障害を見た Green 氏があからさまに懸念を示したことを DeWitt さんは思い出す。「彼女はその場にじっと座り彼を見た」あと、母親に例の小児神経内科医の診察をただちに受けるよう勧めたのである。
 Jack がその場にいたので、可能性があると彼女が考えた病名については言わなかったと Green 氏はのちに述べている。その代り、もし DeWitt さんがもしもっと話したいことがあるようなら、その神経内科医を受診したあとで自分に電話するよう励ました。
 DeWitt さんは家に帰ると、失調症の原因を調べ始め、Jack の症状を検索エンジンに打ち込んだ。彼女が見つけたものは心臓が止まるかと思うようなものだった。「私たちはそのリストをスクロールし、クリックしたものを読んでみました」と彼女は思い起こす。

The truth  真実

 Jack の症状は、その多くがヨーロッパの家系に見られる稀な遺伝性変性疾患であるフリードライヒ失調症(Friedreich’s ataxia:FA)と一致していた。それは Green 氏の念頭にあった診断名だったと後に彼女は述べている。
 19世紀半ばにドイツの医師によって初めて記載されたこの疾病は、しばしば小児期に発症し、歩行障害をはじめとする神経症状を引き起こす。協調と運動を制御する脳の領域とともに脊髄の神経が変性することによって発病する。FA は通常症状を示さないそれぞれの親から1つずつ、2つの欠損した FXN 遺伝子を、受け継ぐことで発症する。FA の患者の一部には心疾患や糖尿病を認める。認知機能は障害されない。1996年、国際研究チームが欠損遺伝子を同定し、科学者たちはそれに対する遺伝子検査を開発した。
 National Institute of Neurological Disorders and Stroke(国立神経疾患・脳卒中研究所)によると、患者の多くは5才から15才の間に発症するが、成人に達しても発症しない例もあり、また歩き始めのころに診断がつく場合もある。FAは米国民5万人に1人の割合でみられると推計され、平均寿命は約38年である。有効な治療法はないが、支持療法が患者の運動機能の喪失を遅らせるのに有用である。
 「私たちは不安と恐怖の間でバランスをとろうと努め、結論を急ぐべきではないと理解していました」と DeWitt さんは思い起こす。Green 氏に会った2週間後、小児神経内科医は FA の遺伝子検査を提出した。さらに Jack は新たな症状である動悸に見舞われていたので、小児心臓内科医を受診したところ、突然死を来すこともある心筋の肥厚する疾病、肥大型心筋症と診断された。
 遺伝子検査は、家族の最悪の懸念を裏付けることになった。Jack は FA の重症型であり、母親によると、「この疾病には回復も治療法もなく彼から能力も未来も奪うものです」という。診断から2年後の今、両親は Jack の生きているうちに何らかの治療法が現れることにいまだ期待している。DeWitt さんによると彼女や夫の家族には彼以外の患者を知らないという。Jack の弟も検査を受けたが、両親と同じキャリアだった。こういったキャリアは米国民の90人に1人に認められる。
 Green 氏は今、軽症の脳性麻痺のように見えた症状が実際には FA の早期症状だったと考えているという。
 しかし、DeWitt さんは自分たち家族が何年間も真実を知らなかったことに感謝しているという。「私たちがすでにやっているすべてのことを行ってきたこの年月は、FA に立ち向かうことの悲しみや人生を変えるような経験に置き換えられるものではありません」と彼女は言う。
 一つの心を痛めるできごとが数ヶ月前にあった。この家族が FA カンファランスに出席していたときのことである。「Jack が私にこう尋ねたのです。『それじゃ、お母さんは僕より長く生きるかもね?』」そう母親は思い起こして言う。現在40代半ばの彼の両親は、その答えが恐らくイエスであることを自分たちの12才の子供に告げなければならなかったのである。「(Jack のような)子供の場合、彼らが20才代になってから最終的に心配し始めたらいいことです」と彼女は言う。
 しかし DeWitts さんは将来を恐れることに時間を費やさないことに決めた。「Jack のために私たちにできることすべてを行うこと、その時その時を楽しむこと、そして後悔して過去を振り向かないことが必要であることをわかっています。そしてそれこそが私たちがしてきたことなのです」と DeWitt さんは言う。
 今月の終わりに自宅で友人たちとのパーティーを主催して自身の13回目の誕生日を祝うことになっている現在7年生(中学1年生)の Jack は、友人ができることを自分ができないことがもっとも辛いことだという。彼は常時車椅子に乗っていて、介助で学校に出席している。気分が落ち込むときには、ラップ・ミュージックを聴き、テレビゲームをし、彼の飼い犬と一緒に外に出たりする。
 「いつもいつも自分を哀れに思うことなんてできません。胸を張って進み続ける、ただそれだけでいいのです」と彼は言う。

フリードライヒ失調症は、脊髄小脳変性症の一疾患で、
1860年代にドイツの医師ニコラス・フリードライヒによって
はじめて記載された。
アジア系人種ではきわめて稀少な疾患であるが
米国では記事中にあるように約5万人に1人の割合で発症する。
男女差はなく、通常は5~15才で症状が発現するが、
早い場合には1才時、遅い場合には30才代で発症することもある。
常染色体劣性遺伝として遺伝するが、
突然変異によって発症する場合もある。
本症は、Frataxin(フラタキシン:神経系、心臓、膵臓などに
存在するたんぱく質)の遺伝子 FXN(第9染色体長腕にある)の
変異によって起こる。
この蛋白質には、鉄をミトコンドリアや周囲の細胞質から除去する
働きがあることが知られている。
本症ではこのたんぱく質が減少するため細胞質内に過剰な鉄が
蓄積し、ミトコンドリアの正常な機能が損なわれる。
この障害に敏感な神経細胞、筋細胞、膵細胞などが、
特異的に変性を起こしやすくなると考えられている。
なお本邦では
同遺伝子変異が証明されたフリードライヒ失調症の
症例はこれまでのところ報告されていない。

神経系では特に脊髄と小脳を中心に変性が認められる。
初発症状は歩行失調が多い。
失調症は筋肉の協調運動や運動の安定性が障害されることを
意味する。
初期症状としては、不随意につま先が屈曲したり、
足先が内側に曲がる内反などがある。
進行すると筋肉の萎縮や言語障害が出現する。
足底筋の萎縮により足の土ふまずがアーチ状にへこむ
凹足が特徴的である。
また患者のほとんどで脊椎側彎症が認められる。
心筋が障害されると胸痛、息切れ、動悸などが見られる。
さらに糖尿病を併発することがある。
運動失調の進行により歩行不能となり、
やがては車椅子の生活となる。
現在のところ、フリードライヒ運動失調症に対する
効果的な治療法は確立されていない。
患者の身体機能を維持・改善するリハビリテーションや
症状に対応する治療が行われる。
一刻も早く根治的な治療法が発見されることに期待したい。

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鼻から髄液がっ!

2012-12-09 14:36:20 | 健康・病気

そのむかし、
片岡鶴太郎だったか誰だったか、あるお笑い芸人が
ひどくびっくりしたとき、ギャグで
『鼻から髄液が出る…』とか言っていたような…。
しかし、実際に髄液(脳脊髄液)が
鼻から漏れるようなことが起こったら、
ことは冗談では済まされない、
命に係わる一大事なのである。

12月3日付 ABC News

Arizona Woman Nearly Dies as Brain Fluid Leaks Out Nose 鼻から脳脊髄液が漏れて危うく命を落とすところだったアリゾナの女性

Brainfluidleak

Aundrea Aragon さんはアレルギーだと思っていたが、実際には髄液が鼻から流れ出ていた。

By SUSAN DONALDSON JAMES
 もう4ヶ月以上、前屈みになるたびに味のない透明な液体が Aundrea Aragon さんの鼻から流れ出ていた。しかし、医師たちは単なるアレルギーだと言って彼女を安心させていた。
 「それは単なる滴りではなく、鼻から流れ落ちていたのです」アリゾナ州 Tucson の35才の母親である Aragon さんは言う。「私が下を向いたり、前屈みになったりすると、文字通りそれは私の左側の鼻から流れ落ちていました。全く止めることはできませんでした」
 たとえ医師らが彼女の懸念を“払拭”しても、“心の底”では何か深刻な問題ではないかと思っていたと Aragon さんは言う。
 実は…彼女の蝶形骨洞の後ろ側の2ヶ所の裂け目から脳脊髄液(髄液)が脳から漏れていたのである。それによって彼女は命を失う可能性もあった。
 「私はいまでもショックが尾を引いている感じです」と Aragon さんは言う。彼女は10月に University of Arizona Medical Center で手術を受けた。「私はたいへん運がよかったのです。髄膜炎になり昏睡に陥って死ぬ可能性もあったと言われました」
 Aragon さんの病気である脳脊髄液漏(髄液漏)はまれな疾患で、彼女を手術した耳鼻咽喉科部長の Alexander G. Chiu 医師によると10万人~20万人に1人の割合で発症するという。
 ほとんどの場合、高い頭蓋内圧を持つ肥満の患者に見られ、この場合副鼻腔が“ポンと開く”。時に、自動車事故や頭部外傷が亀裂の原因となることもある。
 「彼女の場合、よりめずらしい例でした」と Chiu 氏は言う。彼でも100例ほどしか治療していない。
 Chiu 氏によると、危険なのは髄液の喪失ではなく、むしろ感染であるという。
 「人は絶えず脳脊髄液を産生しています」と彼は言う。「身体の最も清潔な場所である脳と、最も汚い場所である鼻腔との間に連絡が存在すると致死的となる可能性があります」
 Chiu 氏と彼の同僚である脳神経外科の G. Michael Lemole 医師は、副鼻腔に到達して2ヶ所の副鼻腔の裂け目を修復するのに内視鏡的方法を用いた。彼らは鼻を経由して副鼻腔に入り、漏れが起こっている場所に皮膚を移植した。
 University of Arizona はこの手技をルーチンに行っている唯一のメディカル・センターであり、アリゾナ州において内視鏡頭蓋底手術の最大の症例数を持っている。
 他の多くの病院では、外科医らはこれら副鼻腔の亀裂を開頭術によって修復するが、その場合回復に痛みを伴い、大きな瘢痕が残り、さらには副次的な悪影響も起こり得る。
 Chiu 氏によると、そのような手技は“おっかない”という。
 「脳にヘラをかけ、後ろに引いて前頭葉を排除することで、それらが妨げにならないようにして、脳の腹側を修復するのです」と彼は言う。
 「一方、私たちは鼻から直接到達します。ちょうどキャブレターを修理するのに車の下から行くような感じです」と彼は言う。
 外科医らは漏れの正確な場所を見つけるために Aragon さんの脳脊髄液中に染料を注入した。「通常それは無色ですが、脳脊髄液はそれを緑色に変化させます」と彼は言う。
 内視鏡のルートは、視神経からも、嗅覚に関係する脳の領域からも離れているので安全である。
 Chiu 氏によると、内視鏡的に行えば、この手技の成功率は95~99%だが、開頭によって行えば成功率はわずかに60%なのだという。
 「瘢痕組織が移植片を覆ってくるため、それが生涯彼女を守ってくれます」と彼は言う。「再発は許されません。彼女は若いですから」
 それでも Aragon さんは年に数回の診察を受けなければならない。「彼女はもはや漏れることはありませんが、新たな漏れを起こさないことを確かめる必要があります」
 Aragon さんは、自分が死と隣り合わせにいたことに対していまだに恐怖を抱いているという。脳脊髄液の漏出が始まるほんの数週間前、彼女には副鼻腔炎があり、抗生物質でいくらか感染から護られていた可能性がある。

Diagnosis Was Brain Leak, Not Allergies 診断は髄液漏であり、アレルギーではなかった

 Aragon さんは9才から16才の3人の子供がいて大変忙しかった。しかもそのうち1人は自閉症だった。そのため彼女が単にアレルギーであると確信する多くの医師たちに疑問を感じなかった。
 髄液漏の“稀少な”可能性に言及した医師がいたが、結局それは却下され、彼女にはスプレー式点鼻薬が処方された。
 「しばらくの間、私は文字通りこの液体を飲んでいて、胸やけがしていました」と Aragon さんは言う。「この液体にむせて目が覚めることもありました。肺炎に罹ったのかと思いました」
 「私はペーパータオルを鼻に突っ込んで家の中を歩き、10分ごとにそれを入れ替えていました」と彼女は言う。
 数年間線維筋痛症に苦しんでいた Aragon さんによると、「四六時中苦痛を感じる状況には慣れていたのです」という。
 しかし、Aragon さんは自閉症の娘の世話を中心となって行っていたので、自分の健康を重要視する方だった。「何かが私に起これば、そのことをすぐに大切に考えるのです」
 スプレー式点鼻薬に効果が見られなかったとき、彼女は“非常に動揺し”緊急治療センターに行った。
 Aragon さんが尿の検体を差し出したとき、床の上の大量の液体を見つけたナースは驚いた。そして、医師が検査用に少量の液体を提出できるかどうか彼女に尋ねたとき、「その試験管の20倍以上を一杯にできますよ」と彼女は答えた。
 これには医師までもが驚いた。「無表情を保とうとしていた彼の顔をお見せしたいくらいです」と彼女は言う。
 その液体は研究室分析に送られ、Aragon さんは耳鼻咽喉科専門医に回された。あるたんぱく質によってそれが脳脊髄液であるかどうかが判明する。
 検査結果が陽性で返り、CTスキャンで副鼻腔に2本の線が認められたため、彼女は University of Arizona Medical Center に紹介された。
 2時間の手術は成功し、ほとんどの患者と同じようにあまり痛みを感じなかった。医師たちは彼女の鼻腔内からの組織と腹部の脂肪付きの皮膚の小片を用いて問題の亀裂を覆うように移植した。
 「医師たちは素晴らしかったし、私の宗教を大変尊重してくれました」と Aragon さんは言う。彼女はエホバの証人の信者であり、血液製剤の使用が許されなかったのである。「彼らは私を急がせることをせず、私の疑問のすべてに答えてくれましたし、すべてを説明してくれました。私の間抜けな質問にさえも…」
 「私はずいぶん気分が楽になりました。私は本当に、本当に幸運でした」と彼女は言う。

鼻からさらさらの液体の流出が繰り返し起こる場合、
その液体が鼻汁か髄液かを判別する必要がある。
(アレルギーでも大量に認められることがある)
判別には髄液に特異的に含まれる成分を測定する。
以前は尿糖を測定するテステープが用いられていたが
その特異度は低く偽陽性のことがある(つまり鼻汁でも
糖が高いことがある)。
記事中にあった“あるたんぱく質”とは
鼻汁には含まれないβ‐2 トランスフェリンのことである。
こちらはかなり特異度が高いとされている。
漏出部位の診断はCT、MRIのほか、
アイソトープを髄腔内に注入して鼻副鼻腔の
シンチグラフィーを行う方法や、蛍光色素髄腔内注入による
鼻副鼻腔内視鏡検査があるが、後者は安全性が
確立されていない。
髄液漏(鼻性髄液漏)は大きく、外傷性と非外傷性に
分類される。
非外傷性髄液漏は、1)頭蓋底腫瘍によるもの、
2)先天性、3)特発性に分類される。
Aragon さんの場合、3)の特発性と考えられるが、
これはきわめて稀である。
頭部外傷による外傷性髄液漏は
自然停止も期待されるため急性期は保存的に治療する。
一方、非外傷性の場合、髄膜炎を生ずる可能性が高いため
早期に修復術を考慮する必要がある。
脳と交通を持つ可能性がある鼻内構造には
鼻汁内の篩板(嗅裂)、
および前頭洞、篩骨洞、蝶形骨洞などの副鼻腔があるが、
現在、漏出部位が前頭洞以外の場合には、
内視鏡下鼻内整復術の良い適応となっている。
漏孔部を内視鏡下に観察し、漏孔の大きさに応じて、
脂肪組織、筋膜、皮膚、軟骨、人工硬膜、鼻粘膜などを用いて
閉鎖する。
さらに欠損が大きい場合には、
鼻腔内の栄養血管をつけた状態の粘膜(局所有茎粘膜弁)を
移植する。
本治療手技は従来行われてきた開頭による治療にくらべ
患者への侵襲は格段に小さく、すぐれた治療法である。
いずれにしても本疾患の場合、
早期の診断と漏出部位の同定が最も重要といえそうだ。

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2013年1月新ドラマ

2012-12-04 20:59:00 | テレビ番組

まずは2012年10月クールのドラマを総括。

『つまらんっ、今回のドラマはホントーにつまらんっ!』
今年10月に亡くなった大滝秀治のCMではないが、
今クールのドラマは本当につまらなかった。
全体に前クールよりは視聴率は上がったものの、
内容が伴っていなかった。
12月4日現在、いずれのドラマもまだ放映中ではあるが
一応視聴率の良かった順に勝手な寸評を加えてみたい
(括弧内は12月4日までの平均視聴率、大河ドラマを除く)。

Doctorx1

『ドクターX~外科医・大門未知子』(17.87%)
腕の立つフリーランスの医者が西部劇調のBGMにのって颯爽とあらわれる…。医学的なリアリティーには欠けるものの、見終わったあとの爽快感が高視聴率を呼んだと思われる。予想に反して米倉涼子の演技に嫌みがなく、違和感がなく見られた。

『PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~』(17.16%)
相も変わらぬキムタクの演技に辟易、個人的には初回で断念。とはいえ、腐っても鯛、この程度の内容でもこれだけの数字を残せるとは、さすがキムタク。

『相棒(11)』(16.60%)
一回も見ていないのでコメントできないが、相棒が変わってもまずまずの数字を残せているところはさすが。

『悪夢ちゃん』(11.92%)
個人的には今クール一番のドラマ。堂々とスッピン・アップにたえた北川景子に好感。スキャンダルまみれのGACKT は劣化が懸念されたが、彼独特の雰囲気は特に本ドラマでは貴重だった。続編も期待できるのでは?

『結婚しない』(11.65%)
菅野美穂の気合いは感じられ、2回ほどは我慢して見てみたが、ドラマはリアリティーに欠け、感情移入もできないまま、以後断念。

『MONSTERS』(11.63%)
事件のトリックが今ひとつな上に、コメディー的演技がさっぱりの両ジャニーズ・アイドルのおかげで実につまらないドラマとなった。『古畑任三郎』『相棒』あたりを多分に意識し、できればシリーズ化まで期待したのかもしれないが、この内容では無理。とにかく香取の作り笑顔がキモいこと、この上なかった(ぞぞ~っ!)。

『匿名探偵』(10.50%)
この時間枠で2桁獲得は立派である(ただしMrK は見ていない)。徹底したエロ路線で押し、エロスの女王・壇蜜まで引きずり出すとはご立派(当該回の視聴率は12.0%!)。

『TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~』(10.18%)
やはり管制の現場だけのエピソードではネタがもたず、空港のあちこちの部署を巻き込んでのドタバタ劇となった時点で視聴を断念。深キョンの英語はなかなか頑張っていたが、どんな場面でも表情を変えない彼女の演技は気になった(平清盛の時子役と同じ顔)。

『遅咲きのヒマワリ~ボクの人生、リニューアル~』(9.87%)
高知を舞台にした群像劇で、それなりにドロドロした恋愛関係も描かれ結構楽しめたが、俳優陣がそろってあか抜けし過ぎてていて、四万十ではなく都会の話ではないかと錯覚するほど。生田斗真、桐谷健太らはなかなか健闘していたのだが…。

『大奥~誕生〔有功・家光篇〕』(8.81%)
ゴールデン10時台の時代劇がダメなのか、男女逆転の大奥というストーリーが受け入れがたいのか、視聴率は期待されたほどにとれなかった。堺雅人も多部未華子もそこそこ頑張っていたのだが…。これで一気に映画版の集客アップをめざしていたTBSのもくろみは崩れてしまった。

『ゴーイングマイホーム』(8.81%)
カメラをほとんど動かさず、薄暗い映像の中で、たわいのない日常的会話をだらだらと繰り返す映画的制作手法。ストーリー展開も遅く、いくら丁寧に作られているとはいえ、これではテレビドラマとしては苦しかった。山口智子・宮﨑あおい効果はほとんどなかったといえそうだ(初回は13.0%とれたが、この2時間放映が失敗だったのでは)。

『東京全力少女』(8.03%)
3クール連続主演の武井咲だが、結果はことごとく惨敗。見るたびに魅力が薄れていくようだ。今回は明るい少女役にイメチェンしたようだが、この路線でもむずかしそう。ドラマの内容も乏しく、個人的には初回で断念。武井を今後どのように使うべきか、テレビ局も悩んでいるのでは?

『レジデント』(6.74%)
同じ医療ドラマの裏番組に完全に視聴者を獲られてしまったのか、打ち切りレベルに近い数字である。ただ、たとえ裏番組が低調だったとしても視聴率はとれなかっただろう。仲里依紗はなかなか魅力的ではあるが、あとのメンバーがあまりに地味すぎた。個人的には初回に小澤征悦が心臓マッサージをする喘ぎ声があまりに気持ち悪すぎて全く見る気を失った(笑)。

このところ全体的にドラマの質が低下しており
大いに懸念されるところであるが、2012年も終わり。
2013年スタートのドラマに期待したい。
今のところ情報が不十分なドラマもあるが
一通りチェックしてみたい。

フジ月9 1/14~ 『ビブリア古書堂の事件手帖』 剛力彩芽、AKIRA(EXILE)、高橋克実、田中圭、鈴木浩介、北川弘美、水野絵梨奈、トリンドル玲奈、内藤理沙
原作は三上延の小説『ビブリア古書堂の事件手帖』。昨年から今年にかけて本シリーズ3巻累計で310万部を突破した人気作(『ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~』『ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~』『ビブリア古書堂の事件手帖3~栞子さんと消えない絆~』)。『月9』初主演となる剛力彩芽が演じる主人公・篠川栞子は、鎌倉の古書店・ビブリア古書堂の店主。極度に人見知りで初対面の人間とは口もきけない彼女だが、古書に関しては並外れた知識を備えていた。そんな彼女が、客に持ち込まれた様々な古書にまつわる謎を解き明かしてゆくというヒューマンミステリードラマ。古書の秘密をもとに、時と場所を超えた人間同士の深い絆が描かれる。剛力彩芽が、原作の篠川栞子のイメージ(二十代後半の地味で薄幸な感じの美人。ストレートで長い黒髪、体型はスレンダーながら巨乳で透き通るような肌を持つ)とあまりにもかけはなれている(巨乳ならぬ虚乳?)ために、ネット上で“ビブリア”ファンからの批判が炸裂しているそうである。このところ視聴率さっぱりの武井咲より先に月9主演をゲットした剛力が名実ともに武井を追い越すことができるかが見どころ。

フジ火9 1/15~『ラストホープ』 相葉雅紀(嵐)、多部未華子、桜庭ななみ、田辺誠一、北村有起哉、小日向文世、高嶋政宏、平田満
相葉雅紀がフジテレビ連ドラ初主演で、初の医師役に挑戦。舞台は、最先端の医療現場・先進医療センター。相葉が演じる主人公・波多野卓巳は総合医。父親の営む波多野診療所で町医者をやっていた彼は、父親の勧めで帝都大学の先進医療センターに勤務することになる。この主人公・卓巳は、他人の苦痛を理解する共感力や想像力に優れていて、患者の気持ちを汲み取ることに卓越しているという。そんな卓巳には幼少のころの秘密が隠されていたが本人は気づいていない。個性豊かな様々な医師で構成されるこの先進医療センターは、治療法がなく見放された患者たちの“最後の砦”としての役割を持つ。スタッフの一人、救命医の橘歩美を演じるのは多部未華子。卓巳とは対照的にクールでドライな彼女は、言いたいことは歯に衣着せずずばずば発言する。田辺誠一演じる外科医・高木淳二は、外科医としての技術は優れているものの、自信過剰で女好き。医療を『ビジネス』と割り切り、卓巳の姿勢に否定的な眼科医・副島雅臣を北村有起哉が、再生医療を専門としあらゆる先端医療に通じたスペシャリストで研究者の古牧利明を小日向文世が、それぞれ演じる。そのほか、桜庭ななみが医療センターの看護師役、高嶋政宏が医療センター長役で出演する。おそらく相葉演じる卓巳先生はちょっと“とろい”けれどもとっても“ハートフル”で患者の声に耳を傾ける“いい”医者なのであろう。最近のドラマによくあるように、一方でメンバーたちの過去の秘密がストーリーの縦糸となって展開されてゆく。総じて陳腐な医療ドラマのようである。

フジ(関西テレビ)火10 1/8~ 『サキ』 仲間由紀恵、三浦翔平、高嶋政伸、萩原聖人、内田有紀、石黒英雄、庄野崎謙
2011年1月クールのドラマ『美しい隣人』で悪女ぶりを発揮した“サキ”が新たな設定でサスペンスを展開。主人公“サキ”は前回の“沙希”と同一人物ということだが、今回は総合病院で働く看護師で、ターゲットは彼女に関わる男性たち。“天使のような”笑顔、プロ並みの料理の腕前、所作の美しさや優しさを持つ彼女はまさに男たちにとって理想の女性だった。サキと出会う男たちは彼女の標的となり、翻弄され、やがて破滅してゆく。生き別れとなっているサキの弟で大手雑誌社の記者・新田隼人を三浦翔平が演じる。サキの働く病院の理事長・須藤繁之を演じるのは高嶋政伸。私生活での経験が演技に生かせるか。また人望の厚い人権派弁護士・野村康介を萩原聖人。さらに隼人の上司で、記者として女性としてサキに不信感を募らせていく濱田直美役に内田有紀を配する。『美しい隣人』でこわ~い女のイメージが定着した仲間由紀恵、それ以後、コメディを演じてもどこか気味の悪い女に見えてしまうのだが…。ま、今回ばかりは徹底的に悪女を演じていただけることだろう。

テレ朝水9 継続 『相棒(11)』 水谷豊、成宮寛貴(新相棒)、鈴木杏樹、六角精児 他
コメントなし

日テレ水10 1/16~ 『シェアハウスの恋人』 水川あさみ、大泉洋、中島裕翔(Hey!Say!JUMP)、川口春奈、君野夢真、もたいまさこ、谷原章介
水川あさみ演じる主人公の津山汐は30才の地味な会社員。恋人なし、親友なし、で会社では、オヤジな上司とキャピキャピでドライな派遣女子の板挟みになって気を遣いまくる毎日。そんな彼女が変化を求めるため、ひとつの住居を複数の人たちで共有するシェアハウスに住むことを決断する。そこで、2人の男性と出会い、そのうちの一人に惹かれることに。それは妻子持ちの40代男だった。そしてあろうことかこの男は、汐に惹かれていくことになるもう一方の38才の素朴な男性に恋をしてしまう。シェアハウスを舞台に不器用な男性たちとの奇妙な三角関係が展開されることになる。脚本は『ホタルノヒカリ』『つるかめ助産院~南の島から~』の水橋文美江。今はやりのシェアハウスを利用してあり得そうにない物語を作り上げるのは安易過ぎる気がする。またゴールデン初主演となる水川あさみにはちと荷が重いかも。

TBS木9 1/17~ 『あぽやん~走る国際空港』 伊藤淳史、桐谷美玲、貫地谷しほり、柳葉敏郎
原作は新野剛志著の小説『恋する空港~あぽやん』。『あぽやん』とは旅行業界の用語で、空港のカウンター裏で起こる、発券ミスや重複予約など様々なトラブルを解決し、客を笑顔で無事に送り出す旅行代理店のプロのこと。ちなみに『あぽ』は空港・エアポート(airport)の略、APO のこと。旅行会社の社員で本社から成田空港に異動を命じられた主人公・遠藤慶太を伊藤淳史が、また彼の直属の部下・森尾晴子を桐谷美玲が演じる。このコンビに加え、柳葉敏郎、貫地谷しほりらが脇を固める。新しい職場にとまどい、仕事のできない遠藤は、柳葉演じる頼りない上司、さらには癖のある同僚たちや女性だらけの部下たちに翻弄される。当初は敵対していたツンデレ部下の晴子だったが、様々なトラブルに懸命に対応する遠藤に惹かれるようになる。最初のうちは本社に戻るためだけに必死で働いていた遠藤だったが、お客様に対するもてなしの心の大切さを知り、同僚たちの情熱に徐々に感化されていく。フジの『TOKYOエアポート~東京空港管制保安部~』に続く空港業務を題材にしたドラマだが、3ヶ月間ネタがもつのか心配だ。キャストも地味。

テレ朝木9 1/17~ 『おトメさん』 黒木瞳、相武紗季、石田純一、郭智博、大地康雄、鈴木砂羽
一口で言うと、現代版嫁姑ドラマか。従来の嫁姑ドラマの定番だった“いじめる姑”VS“ひたすら耐える嫁”の構図は姿を消し、家族事情が大きく変わった現代においてその立場は逆転しているとか。『おトメさん』、とは嫁が姑のことを誹謗するときの呼び名である。今や嫁は姑に対して自由な発言と権利の主張を繰り返し、やりたい放題。このドラマでは、悪い嫁に追い込まれ孤立した姑が反撃に転じ、家族や自分自身を再生してゆく過程がコミカルかつサスペンスフルに描かれる。その“孤立無援となった姑”を黒木瞳が、また“姑をいびる怖い嫁”を相武紗季が演じる。水沢麻子(黒木瞳)は、水沢李香里(相武紗季)と同居することになるが、実は李香子は“明るく・できた嫁”という表の顔の裏側に怪しげな過去と悪企みを持つ凶悪な嫁だった。李香里の隠し事が次々と発覚し、疑心暗鬼の渦に巻き込まれ、「嫁が何らかの目的で家庭をメチャメチャにしようとしている…!」と確信した麻子は家庭の平和を取り戻すため凶悪な嫁と対決する。なおこの他のキャストは、妻子がありながら女性との火遊びが絶えない麻子の夫・水沢博行に石田純一が、麻子の息子役に郭智博が扮する。脚本は『GOOD LUCK!!』、『白い巨塔』、『14才の母』、『同窓会~ラブ・アゲイン症候群』などの作品を手がけた井上由美子。

フジ木10 1/10~ 『最高の離婚』 瑛太、尾野真千子、真木よう子、綾野剛、八千草薫
坂元裕二によるオリジナル脚本のラブ&ホームコメディ。30才代のむずかしい結婚事情をテーマに『夫婦とは何か』『家族とは何か』がコメディ・タッチに描かれる。元夫婦と夫婦の二組の男女が、結婚と離婚のはざまに横たわる問題を乗り越えてゆく。離婚する方のカップルを瑛太と尾野真千子、もう一方のカップルを綾野剛と真木よう子が演じるという豪華メンバー。瑛太演じる主人公・濱崎光生(30)は自動販売機の設置会社に勤める普通のサラリーマン。性格は神経質で人付き合いが下手な光生は、苦手な営業に異動となりストレスが多い。尾野真千子演じるその妻・結夏(30)は光生とは真反対の性格で、おおらか、おおざっぱな性格で光生の実家のクリーニング店を手伝っていた。互いへの愛を確信できないこの二人はやがて離婚することになる。一方、真木よう子が演じる上原灯里(30)は光生の学生時代の元カノで、一時同棲していたこともある。結婚したばかりの夫で、美大で助手を務めている上原諒(30)を綾野剛が演じるが、彼は新妻がいながら他の女性とも自由に付き合っていた。それぞれ色々な問題を抱えるこの2組のカップルを通して、“結婚”とは、“夫婦”とは、“家族”とは一体何なのかが問われる。月9以上にフジの力が入っているように思われるドラマだが、高齢者や若い人たちの支持を得られるかが課題。

TBS金10 1/18~ 『夜行観覧車』 鈴木京香、石田ゆり子、宮迫博之、安田章大(関ジャニ∞)、杉咲花、宮﨑香蓮、中川大志、田中哲司、夏木マリ、高橋克典
原作は湊かなえの同名小説。坂の上にある高級住宅街“ひばりヶ丘”を舞台に展開されるサスペンス。ひばりヶ丘に住む、遠藤家、高橋家、小島家、という3世帯の家族を中心にストーリーは進む。主人公の遠藤真弓(鈴木京香)は無理をして、小さいながらも念願だった一軒家をひばりが丘に建て、夢が叶ったはずだった。しかし、中学受験に失敗した娘・彩花が、毎日のように家庭内暴力を繰り返し、近所中にその怒声を響かせていた。一方、向かいの高橋家は、豪華な家に、病院を経営するエリート医師の夫・弘幸(田中哲司)と美人妻・淳子(石田ゆり子)、そして彩花が落ちた名門私立高校に通う長女・比奈子(宮﨑香蓮)と、スポーツ万能の次男(中川大志)が住んでいる。さらに、関西の医学部に通う長男・良幸(『関ジャニ』安田章大)もいる。恵まれた環境で何不自由なく、幸せそうに暮らしていたはずの高橋家。そんな幸せを絵に描いたような家庭だったが、ある日、弘幸が殺害される。犯人は被害者の身近な顔見知りの犯行だと考えた刑事・結城哲也(高橋克典)らは捜査を進めるが、そんな時、家にいたはずの次男が、事件の日を境に失踪する。警察も、高橋家の残された子供たちも、そして、高橋家の騒ぎに耳をそばだてていた遠藤家や、自治会婦人部の会長で隣家に住む小島さと子(夏木マリ)も、真犯人はその次男ではないかと考えはじめる…。真弓の夫・啓介役に宮迫博之が抜擢されていたが、胃癌の手術を受けることになったそうで、果たして出演できるのか。

テレ朝金11:15(金曜ナイトドラマ) 1/11~ 『信長のシェフ』 玉森裕太(Kis-My-Ft2)、及川光博、志田未来、ゴリ(ガレッジセール)、宇梶剛士、竹山隆範(カンニング)、きたろう、 正名僕蔵
原作は週刊漫画TIMES連載中のコミック『信長のシェフ』(作:西村ミツル、画:梶川卓郎)。現代のシェフが戦国時代にタイムトリップし織田信長おかかえの料理番として活躍する姿を描く。玉森裕太演じるフレンチシェフのケンが目を覚ますと戦国時代真っただ中だった。現代の記憶は失っていたものの、“現代”の料理テクニックはしっかり身につけていた。斬新な料理を次々に作り出すケンは京の都で一躍評判の料理人となる。その噂を聞きつけた織田信長はケンを料理番として召し抱え、無理難題を突きつける。『宣教師・フロイスの本心を確かめる料理』『足利義昭に朝倉討伐を認めさせるための料理』『北畠具教に和睦を受け入れさせる料理』などなど。フレンチを取り入れるとはいえ、当時の日本にはワインも醤油もソースもなく手に入れられるならなんでも創意工夫を凝らして料理を作り上げなければならなかった。さまざまな困難を乗り越え、信長に仕えるうちにそのカリスマ性に魅了されていく。その織田信長役を及川光博が演じる。ケンに思いを寄せる若き女刀鍛冶師・夏を志田未来、豊臣秀吉をゴリ、徳川家康をカンニング竹山がそれぞれ演じる。合戦シーンも予想されるが、ローコストの深夜ドラマでどのようにドラマを作り上げるのか見ものである。

日テレ土9 1/19~  『泣くな、はらちゃん』 長瀬智也(TOKIO)、麻生久美子、丸山隆平(関ジャニ∞)、忽那汐里、賀来賢人、菅田将暉、清水優、稲川実代子、小松和重、甲本雅裕、光石研、奥貫薫、白石加代子、薬師丸ひろ子
主人公は漫画『泣くな、はらちゃん』の主人公、紙の中の人物である。『はらちゃん』は安い居酒屋で酔っ払い、クダをまく男。毎日同じようなことの繰り返し。腹の立つことばかりだが、それをぶち壊す知恵も勇気もない。その漫画を描いているのは、かまぼこ工場で働く地味目な女性・越前さん。日記代わりに、日々の恨み辛みをこめてノートに漫画を描きつづっていた。そしてある日、奇跡が起こる。『はらちゃん』がふと気がつくと漫画の世界を飛び出し、『現実』の世界に現れたのだ。そこで『はらちゃん』は越前さんに恋をしてしまう。『現実』に存在しない『はらちゃん』が2次元と3次元を交差しながら奮闘する、熱くせつないラブストーリーである。私生活で恋の破局を迎えた長瀬智也だが、2年半ぶり主演となるこのドラマで新境地を切り開くことができるだろうか?脚本は『おひさま』『最後から二番目の恋』の岡田惠和。

NHK日8 1/6~ 大河ドラマ 『八重の桜』 綾瀬はるか、西島秀俊、長谷川博己、剛力彩芽、黒木メイサ、松重豊、風吹ジュン、長谷川京子、工藤阿須加、綾野剛、稲森いずみ、玉山鉄二、池内博之、斎藤工、北村有起哉、貫地谷しほり、芦名星、市川実日子、白羽ゆり、秋吉久美子、小泉孝太郎、村上弘明、降谷建志(Dragon Ash)、生瀬勝久、市川染五郎、小堺一機、反町隆史、加藤雅也、吉川晃司、中村獅童、西田敏行、オダギリジョー、勝地涼、水原希子、谷村美月、小栗旬、及川光博、高嶋政宏、奥田瑛二、松方弘樹
主人公は幕末に会津藩の女として戦った『幕末のジャンヌダルク』・新島八重。維新後は新島襄と結婚し“篤志看護婦”として日清・日露戦争に従軍、『日本のナイチンゲール』としても活躍した会津生まれの不屈な精神を持つ頑固女(1845~1932年)の物語である。時は明治元年(1868年9月)。板垣退助率いる新政府軍に抗戦し、最新のスペンサー銃を会津・鶴ヶ城から撃つ女がいた。23才の山本八重、後の新島八重である。会津藩の砲術指南の山本家に生まれた八重は裁縫よりも鉄砲に興味を示し、会津の人材育成の指針“什(じゅう)の掟”(子弟教育7カ条)『ならぬことはならぬもの』という教えのもと、強い会津の女として育てられた。八重が17歳のころ(1862年)、会津藩主・松平容保は徳川家より京都守護職に任命される。兄・覚馬ら会津軍は西郷隆盛率いる薩摩藩とともに禁門の変で長州軍を破る。その後、薩摩の寝返りや日和見主義の諸藩の動きの中にあっても会津藩は忠義を貫く。しかし、鳥羽・伏見の戦いに幕府軍は敗れ、会津は新政府軍から『逆賊』として扱われる。多くの仲間が次々と死んでいく中、鶴ヶ城での籠城戦で男装し、自ら銃を持ち夫・川崎尚之助とともに奮戦した八重だったが、白虎隊の無念の死や、夫との別れを経て、会津戦争の敗北を受け入れ、八重はそれまでの生きがいであった鉄砲を捨てる決断をする。逆賊と世間に罵られる中、八重をはじめ会津の人たちは新たな生き方を模索する。再び兄を頼り京都へ向かい、そこで勉学の道に目覚める。『鉄砲』から『知識』へ、手にする武器は変わっても『ならぬことはならぬもの』会津のプライドを貫こうとする八重は、京都でも存在感を増し、アメリカ帰りの青年・新島襄と結婚する。封建的風潮の残る中、男女の平等を目指す八重は、西洋帰りの夫を『ジョー』と呼び捨てにし、レディファーストを取り入れる。そんな奇妙でおかしな夫婦関係を世間が罵っても、八重はまるで気にしない。その生きざまを夫は『ハンサムウーマン』と称した。その後、日清、日露戦争が起こると、八重は仲間とともに篤志看護婦として名乗りをあげる。戦場に女が行くなど考えられなかった時代、八重たちは果敢に行動を起こす…。この2年不作の続いた大河が綾瀬はるかで盛り返せるか?まだ耳にはしていないが、『ならぬことはならぬもの』という綾瀬はるかのセリフ回しが聞こえてくるかのようである(既聴感)。

TBS日9 1/13~ 『とんび』 内野聖陽、常盤貴子、佐藤健、吹石一恵、加藤貴子、野村宏伸、麻生祐未、柄本明
原作は直木賞作家・重松清のベストセラー『とんび』。どうしようもない男が、どうしようもなく息子を愛したという究極の家族愛が描かれる。妻を失い、不器用ながらも男手ひとつで愛する息子を育てる父親役に内野聖陽。妻役に常盤貴子、息子役に佐藤健。主人公の市川安男・通称ヤス(内野聖陽)は学歴もなく、不器用で、カッとなればすぐに手が出る『バカ』だったが、『バカ』は『バカ』でも究極の『親バカ』だった。両親のいない中で育ったヤスは、”親”というものを知らなかったが、妻・美佐子(常盤貴子)と共に愛情を持って息子・旭(アキラ)の成長を見守る幸せな日々を過ごしていたが、アキラが3歳の時に、悲劇が突然襲い掛かる。不慮の事故で妻を失ってしまったのだ。後悔と悲しみにくれるヤスだったが、愛する息子を育てるために立ち直り、ない知恵を絞り、悩み、戸惑いながらも、仲間たちにも助けられ、アキラを真っ直ぐに育てていく。このアキラの16才からを佐藤健が演じる。これら親子をとりまく共演者には、吹石一恵・加藤貴子・野村宏伸・麻生祐未・柄本明らが揃う。内野と佐藤の熱い演技で胸が熱くなるようなシーンが展開されるのか?できれば日曜日以外の曜日に持ってきてほしかったドラマである。

フジ日9 1/13~ 『dinner』 江口洋介、倉科カナ、松重豊、野波麻帆、志賀廣太郎、柴本幸、池津祥子、八嶋智人、ユースケ・サンタマリア
有名イタリアンレストランで働く人間が抱える悩みや葛藤を描く群像劇。今回江口洋介が主演を務めるのは、超一流天才シェフでありながら、愛だの、伝統だのそんなものは料理を作る上では一切必要ないと考える究極の合理主義者・江崎究。そして、ヒロインとなる倉科カナが演じるのは、有名イタリアンレストラン「ロッカビアンカ」の支配人・辰巳沙織。まっすぐでひたむきな性格の持ち主で、世界的に有名な料理人でありオーナーシェフの一人娘。その他、このレストランで働く面々に、松重豊、野波麻帆、志賀廣太郎、柴本幸、池津祥子、八嶋智人、ユースケ・サンタマリアが配される。江崎究は、腕は確かだが、その人柄に問題を抱えている。料理オタクであり、料理に関しては妥協を知らないため、周りの人間はその事で迷惑を被る事も多々ある。料理人である彼にとって大切なことは『素材×調理方法=味』であり、それ以上でも以下でもないと確信している。そこには人間関係や愛情、伝統といった実体のないものは一切必要ないと江崎は考えていた。そんな彼がある有名イタリアンレストランの料理長として迎えられる。このイタリアンレストランを舞台に、そこに働く人たちが日々疑問を感じながら、悩みと葛藤しつつ、夢を追い続け、働く喜びや誇りを掲げながらも生きていく。このイントロダクションでは何を描きたいのかさっぱりだが、キャストも地味で、いずれにしろあまり視聴率は期待できそうにない。

以上が来クールのラインナップだが、この中では
瑛太主演の結婚・離婚ドラマが一番視聴率をとりそうか?
とはいえ、とにかく全体に地味なドラマが多い。
来年2013年も
テレビ業界には非常に厳しい一年となりそうである。

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