夏の太陽がこれでもかってくらい趣味部屋に熱線を降り注ぎ、私のビア樽のような身体から汗を噴き出させます。
「あじ~~よぉ~~~」
CD聴きながら本を読んでいるだけで熱中症になりそうです。
ひょっとしたら、職場にでも行って冷房を効かせ、一人ヘッドフォンをしながら本を読んでいる方が休日を満喫できるかもしれません。
「俺は、やっぱ、冬の方が好きだぁ~~~~~!」(笑)
少しでも『涼』になればと、今日は「現代語で読む江戸怪談傑作選」なる本を読みましたが、無駄な抵抗でした。
でも、先日ホラー映画の話でも言いましたけど、こうして文章で読んでみても、日本の怪談とは人間のドロドロした部分も絡み合って、西洋のそれとは根本が違う恐ろしさをジワジワと感じます。
でもどうして『幽霊』が怖いのか?
ある意味『幽霊』というものは被害妄想のたまもの?
過去に間違いなど起こしたことのないという聖人でもあれば別としても、「ほとんどの人間が何らかの後ろめたさを感じることが必ずある」ここに『幽霊』がつけ込む空きがあるのでしょう。そしてそれがあるからこそ怪談に恐怖するのでしょうね。
先日が映画、今日が文章と『幽霊』の話なんぞをしていると、次にくるのは『幽霊』の語りでありましょうか。
大好きな落語でも夏場は『怪談噺』がつきものであります。
「牡丹灯籠」「四谷怪談」「乳房榎」などなど、それぞれの噺、噺家にそれぞれの特徴があって楽しめます。
と言いつつ、私としては本格的な『怪談噺』より、笑える噺が好きなんですけどね。
法事も出してもらえずに、あの世へもいけない亭主、法事を出してくれとかみさんのところへ化けて出ると
「おまえさん、何で戻ってきたんだよぉ・・・・・香典なんて着物を買うのにつかっちまったから・・・・」
幽霊が自分のかみさんに「自分の法事代は自分で稼げ」と言われ、蕎麦屋を始める
という『幽霊そば屋』
「たとえおめぇが死んでも後妻なんざぁ、俺らぁぜってぇもらわねぇよ。もし約束を破ったら、遠慮するこたぁねぇや、祝言の日に化けて出てくりゃいいじゃねぇか」
と言っていた亭主が、舌の根も乾かぬうちに後妻を取る、それでも婚礼の晩には幽霊はあらわれず安心していると、前妻三年目の命日、突然幽霊が
「てめぇ、今ごろ何で出てきやがった」
幽霊が答えるに
「だって、納棺の時に剃られた丸坊主の頭が恥ずかしくてね、髪が伸びるのに三年もかかっちまったんだよぉ」
という『三年目』
二束三文で仕入れた幽霊が描かれた掛け軸を、かの円山応挙の作と売り込んだ骨董屋、まんまと商談が成立して、翌朝お届けをすることに。
「ありがてぇ話じゃねぇか、それもこれもこの軸の幽霊のおかげかもしれねぇなぁ」
とばかりに、その掛け軸に鰻と酒を供えると、
「こんばんわ、幽霊です」
と、軸の幽霊が化けて出てきます。ところがこれがえらいいい女。
「どこでも幽霊の絵は三日か四日は掛けて眺められても、後は女子供に怖がられてお蔵入り、鰻と酒を供えてもらったなんて事は一度もありゃしない。だからとっても嬉しくてね、こうして出てきちまったのさぁ」
骨董屋と美人幽霊は差しつ差されつ酒を酌み交わします。
やがて、酔った美人幽霊は軸の中へと帰って行くのですが、なにしろ酔っぱらっているものですから、手枕で向こう向いて眠り込んでしまいました。
翌朝にはお客さんに届けなければいけない軸に、
「おいおい、こりゃあまずいことになった、朝までに酔いが覚めてくれればいいが」
という『応挙の幽霊』
博打好きの左官、長兵衛がとりついたへっつい(むかし農家なんかにあったカマド)を巡る騒動は
「かねぇ出せぇ~~~かねぇ出せぇ~~~」
という『へっつい幽霊』
などなど
おもわずネット動画で『幽霊そば屋』と『へっつい幽霊』を楽しんじゃいました。(笑)
灼熱の読書に始まり、怪談噺を思い出し、落語を楽しむ
一日『幽霊』と戯れた休日も、まぁ有りでしょう、さてその〆は・・・・・
『幽霊』の待つ、いや違った、『応挙の幽霊』もビックリの美人ママが待っているバーへ、飲みに行ってきま~~す!!!(この一節は、絶対に怒られるな.....笑)
さて、今日の一枚は、トミー・フラナガンです。
べつにジャケットのモンクのイラストが幽霊っぽいから選んだわけじゃないですよ。
フラナガンのモンクへの想いが、じんわりと伝わってくる名盤だと思います。
そして、ジョージ・ムラーツのベースが、ほんと良いんです。
何て言ったらいいかなぁ、ベースはこうあるべきだということを完全に理解しているというか・・・
昨日「ローランド・ハナのピアノなのに」とガッカリしたという話をしましたが、それとは逆にハナとともに生演奏を聴いて感激したムラーツ(サド=メルで来日したときにね)がひときわ輝いている一枚だと思います。
そしてそして、フラナガン、ムラーツというと「ECLYPSO」がすぐに頭に浮びますよね。エルビン・ジョーンズのドラムが活きて、じつにあちらも良いアルバムですが、
「モンクへ捧げる」というアルバムテーマには、控えめなドラマー、アート・テイラーが適役ですし良くあっています。
私にとっては、じつに新しい一枚ということになりますが(笑)、好きなアルバムです。
THELONICA / TOMMY FLANAGAN
1982年11月30日録音
TOMMY FLANAGAN(p) GEORGE MRAZ(b) ART TAYLOR(ds)
1. NORTH OF THE SUNSET
2. LIGHT BLUE
3. OFF MINOR
4. PANNONICA
5. ASK ME NOW
6. THELONIOUS
7. REFLECTIONS
8. UGLY BEAUTY
9. THELONICA