闇サイト殺人の3被告全員に死刑が求刑された。1人は自首、そして3人の役割分担や主犯格は誰かといった詳細な分析はされたのだろうか。とにかくまとめて死刑にしてしまえば世論は納得するだろうという粗雑な公判には違和感を感じる。
この事件は平成19年8月、インターネットの闇サイトで知り合った3人組の男が、名古屋市の31歳OLを拉致、殺害したもの。被告の3人は30代から40代で、内2人は無職で、残る1人も不安定な立場だった。
・「闇サイト事件」で拉致殺害の3被告全員に死刑求刑 名古屋地裁 2009/01/20 12:56
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/214222/
・闇サイト殺人:3被告に死刑求刑…名古屋地裁公判 2009年1月20日 13時40分
http://mainichi.jp/select/today/news/20090120k0000e040027000c.html
これを受けてネット上では、死刑は当然などという定番の被告非難のコメントが殺到した。中には絞首刑では物足りない、もっと苦痛を与える殺し方をすべきだといった趣旨の意見など、内容はますますエスカレートしている。
しかし、果たして今回の論告求刑は本当に妥当なものと言えるだろうか。例えば被告が罪のなすりつけ合いをしていて反省が見られないといった指摘もあるが、複数人が集まれば、それら全てが同格ということは考えにくく、主導役がいたのは確かだろう。それを公判で被告の誰かが嘘の証言をすればそれを切欠にしたなすりつけ合いが繰り広げられるのは当然のことである。それを同格と判断してしまうのなら、食品偽装の事件など組織の不祥事でも社長だけでなく指示に従って実行した従業員も同罪ということになってしまう。
また、被告の1人は自首をしているが、心からの反省はなく刑を軽減する根拠を欠くとしていることや、自首しなくてもすぐに逮捕される状況だったなど、極力厳罰にし易い理由だけを並べている意図が感じられる。
犯罪とその量刑の妥当性は一言では語ることは出来ない。しかし安易な死刑乱発は決して社会秩序の安定には寄与しないだろう。大切なのは、事実関係を明確にし、被告の役割によって量刑を個別判断することである。また自首による減刑も絶対考慮しなければならない。何故なら、もしも自首が無意味なら、被告の3人は捕まるまで逃げ続けるだろう。彼らは別の強盗殺人を計画していたというのだから、犠牲者が更に増えていたと考えられるからだ。
そして、何よりもまず、派遣労働はじめとする雇用不安を解消し、国民の安定した生活、それも夫婦家族を中心とする家庭生活が出来る社会基盤を国家が用意することである。少なくともフェミニズムが牛耳る国家では、犯罪が増えるのは必至だろう。
因みに、この公判を担当した近藤宏子裁判長は男から女への事件に対して重い刑罰を課す傾向があるという評判らしい。いわばフェミニズム裁判官なのだろうか。そして死刑を求める署名活動はマスコミでも報道され、28万人あまりの数を集めたことも、その活動力の大きさに驚かされる。
判決は3月18日ということだが、それまでにどんな動きがあるだろうか。
一方、秋田連続児童殺害事件の被告の女に関しては、闇サイト事件とは全く逆に、減刑理由を探すのに必死なようだ。
・「殺傷なぜ悪い」連続児童殺害の畠山被告、心理士に手紙
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090120-OYT1T00620.htm
手紙は昨年8~11月に5通届いた。11月の手紙には、「(死は)老衰や病気なら良くて、事故や事件等相手がいると悪い事なんですか。(中略)人を殺傷する事は悪い事なのは知っていますが、何故悪い事なのですか」と記されていた。
・・・(略)・・・
「反省が見られないような記述は、(父親からの)虐待による発達障害で善悪の判断ができないためとみられる。何を反省すべきかがわからない中で苦悩している」と分析している。
(部分引用)
まず引用前半部分で、老衰や病気の死は良いが事故や事件など相手がいると悪いのかという件(くだり)は、子供が大人に対して「どうして人を殺してはいけないの」と聞いているのと同じだ。まるで惚(とぼ)けているとしか思えない。
また引用後半部分の、父親からの虐待による発達障害で善悪の判断が出来ないという件は、被告が女の場合はいかにも生育暦に父親からの虐待が深く関与していて、本を正せば責任は男にあるという男性=悪の印象、及びDVを強調したい意図がうかがえる。
だいたい、こうした理屈を闇サイト事件の被告などが言ったら果たして本気で取り上げてもらえるだろうか。もし同じように考慮され、それが量刑にも反映されるとでもいうのなら、それも一つの司法のあり方だと言えるし、むしろその方が好ましい時もあるだろう。しかし考慮されることはあり得ない。それこそ、犯罪を正当化する卑劣な言動だと断罪されるのが関の山だろう。
それに生育暦に虐待があったとするのなら、何故闇サイト事件の被告にはそうした身辺調査をしないのか。調査しても虐待の事実は出てこなかったとでもいうのだろうか。もしあったとしても隠して表に出さないだけではないだろうか。
しかも、このニュースに関する2chのスレッドでも、必ず1人や2人は被告の女を擁護する者がいる。以下に幾つかコメントを列挙してみる。(コメントは殆どが原文通りだが、誤字脱字や一部理解しにくい部分は編集している。)
例1.
A.人を殺すのがなぜ悪いのかわからないなんて人として終わってる。
自分が殺されても平気なのか気になる。
殺されたくないと少しでも思うなら殺しはいけないことだとわかるはず
B.では死刑は何で良いのか?自分も死刑なら嫌だろ。
A.法の下で国家が国民に何かを強いるのは、ある程度仕方ない。
嫌なら、日本から出て行ってくれ。
B.法律だと死刑はいい訳?仕方ないでは理論にならない。個人あっての国である。
例2.
A.意味がわからん。
日本は法治国家だろ。
法にのっとって死刑が確定したものが、しかるべき方法で死刑になる。
それのなにがおかしいのか、本当にわからん
死刑のみならず、政治だって文明だって、人間が人間の命を左右することだろうに
B.人を殺してはいけないなら、死刑もいけないよね。
単純な話だぞ。
A.なんで「法による死刑」と「殺人」を混同するの?
B.個人として見れば混同しない方がおかしい。
人殺しは人殺しだから。
これは別、と言えるのは、社会とか国家とかそういう視点に
自分を同化させた時だけで、しかもそれは錯覚に近い。
誰も社会や国家ではないから。
正しくないという意味ではないけどな。
例3.
死刑で殺すのは悪いことじゃないんだから人を殺すことは一概に悪いことではないよ。
まあ、空いた口が塞がらないと言うか、詭弁と屁理屈のオンパレードだが、以上の内容は何も特定の事件に限ったものではなく、人の死に関する哲学的な内容である。従って、もしも彼らがこうした思想信条を持っているのなら、何もこの事件に限らず、全ての殺人事件に関してこうしたコメントが出てきても良さそうなものである。
ところが、何故かこれらの意見は被告が女の事件の時しか出てこない。間違っても闇サイト殺人のスレッドなどにはこうしたコメントは一切現れない。そこにフェミニズムの狡賢(ずるがしこ)さがある。他にも引用はしなかったが、この事件は物証がないから冤罪であるなどというコメントまで飛び出した。連中に言わせれば、自白も強要されただけなのだそうだ。
しかしこれも出鱈目な話である。冤罪だと言うなら被告は無罪を主張するはずだが、それをしないのは何故か。それに冤罪ならそもそも殺傷がなぜ悪いなどという手紙もやり取りする必要はないはずだ。つまり物証がないなどというのも嘘だろう。だがフェミニズムの言い逃れ戦術はこうして徐々に成果を収めていくのである。
もっとも、的確なコメントも多数投稿されていた。以下に僅かだが紹介する。
例4.
哲学持ち出せばどんな屁理屈も可能だもんなw
人間は炭素や水素や酸素でできているのだから
人間だって物質だ。
物質をナイフで切ってもいいのだから人間をナイフで切ってもいい、とかな。
頭のいいやつならいくらでも屁理屈は思いつくよw
例5.
>人を殺傷する事は何故悪い事なのですか
これって、サヨクやフェミが社会秩序を相対化するために使う常套句やね。
その種の「批判理論」をかじらないと、普通の人間が口にする言葉ではない。
バックにサヨクかフェミがいるのか?
犯罪は悪いこととされている。しかし何を犯罪と規定するかも時の権力によって決められる。それはどんな法律でも同じことだ。そして法律は時として格差を生み出す。従って勝ち組と負け組が現れる。そして負け組の中でも特に追い詰められた者が犯罪を犯すのだ。従って犯人だけを処罰して幕引きにしてしまおうというのはますます権力側の思う壺だ。犯罪は社会制度の歪みの表れでもあるという認識で見ていかないと、歪みは広がるばかりだ。何故なら、権力側は自分に都合のいい法制定しか考えないからだ。その典型的な権力がフェミニズムを基盤とする勢力であると改めて明言したい。
こうした歪みの著しい社会では、厳罰論は決して有効ではないと思う。被害者感情を考慮せよというのなら、まずは犯罪そのものが本人責任と社会責任との2つの要素によって引き起こされるという仕組みを国民に啓発することから始めなければいけない。そして責任の取り方も、犯人の処罰と同時に国家賠償など社会責任の明確化も必要だと思う。よくネット上などで、何でも社会のせいにして責任転嫁しているなどという投稿を目にするが、それらは勝ち組の理屈に過ぎず、権力側の暴走を許してしまうだけなのだ。
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