メディアから個人ブログに至るまであらゆる情報発信源の規制につながりかねないとして、これまで反対意見が根強い人権擁護法案が形を変えて成立の機会を狙っているようだ。今回の素案ではメディア規制条項の削除や人権侵害の範囲について具体的に列挙し、問題点の解決に努めたというのが推進派の主張ではあるが。
・メディア規制条項を削除 人権擁護法、自民が素案 2008年05月29日03時00分
http://www.asahi.com/national/update/0528/TKY200805280345.html
・メディア規制を削除=自民調査会長が私案-人権擁護法案 5月29日13時2分配信 時事通信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080529-00000074-jij-pol
今回の変更では、「話し合い解決等による人権救済法」と名称も新たにして従来の「人権擁護法」の悪い先入観を払拭するのがまず一つの狙いだろう。次に特に反対勢力の強いメディア規制条項については削除した。更に人権侵害の定義が曖昧と指摘されていた部分については、「人種、障害、疾病等による差別」、「職務上の地位を利用して行う性的言動」、「優越的な立場においてする虐待」など対象範囲を具体的に定めたとしている。
だが、これで問題点は払拭できたと言えるだろうか。実質的には何も変わっていないと思うのは私だけだろうか。人権侵害の定義を明確にしたとは言っても、どんな文言で表そうが曖昧な部分は残る。結局は、この法律をどう運用したいと考えているのか、推進派の目的次第でどうにでも出来てしまうのではないだろうか。
特に、「職務上の地位を利用して行う性的言動」など、なぜ性的言動に限定するのか、ここにもフェミニズムによる女性の権力強化が入り混じっている。これでは問題点は決して払拭されていないどころか、より顕在化したとも言えるのではないだろうか。
また、制度の乱用を防止する観点から「申し立て自体を不当として対抗措置をとれる制度を創設」としているが、そうした対抗措置が今迄の法案ではなかったことが不自然だし、たとえ対抗措置をとってもそれが認められなければ名ばかりの対抗措置になってしまう。
結局は、誰が何を「人権侵害」と認定する権限があるかということになるだろう。そこに不当な権力が介在する限り、正当な法律にはなり得ない。
あの手この手で法制化を目論む勢力に今後も注意が必要だ。