大相撲初場所で初優勝を果たした稀勢の里が横綱に昇進した。19年ぶりに日本出身力士が横綱になるということで何かと話題となっているが、中には日本贔屓ではないかという声もある。今回はこれらについて言及したい。
私は小さい頃からの相撲ファンでもあるので、相撲に関してもある程度の話は出来る。まず稀勢の里の横綱昇進が適切と言えるかどうかである。ここで意見が分かれている。ヤフーの意識調査では約70%強が昇進を支持するというものだが、支持しないという回答も25%程度ある。その他ヤフーニュースコメント欄などの意見も含め、支持しない人の意見を簡単に挙げてみる。
・2場所連続優勝(連覇)ではない
・相撲協会が日本出身横綱を欲しいだけ
・今場所は横綱が2人休場しているので、優勝の価値が低い
・過去に優勝回数は多くても横綱になれなかった力士がいる
まず、連覇でないからという意見に関しては、規則に囚われすぎではないかと思う。確かに横綱昇進の条件でよく引き合いに出されるのが「大関が2場所連続優勝するかまたはそれに準ずる成績」というものだ。しかし、連覇を強調する人の多くは、もう1場所様子を見て、誰も文句を言わないような優勝、など、曖昧できりのない条件を提示しているように思える。例えば、来場所12勝3敗くらいで優勝したものの、横綱も白鵬以外は休場か成績不振でおまけに白鵬には敗れたなどといった場合にどうなるか。必ずまた優勝の価値が低いなどの意見が出るに決まっている。
それに、連覇に準ずる成績を稀勢の里は挙げていないとでも言うのだろうか。昨年は年間最多勝を獲得しているし、これ自体がもう横綱としての力量を備えていると考えてもいいのではないだろうか。これについては、年間最多勝は白鵬が休場したから取れただけだという不支持側の反論があるのだが、そんな仮定を言い出せば何でも言える。例えば、あの時に稀勢の里が白鵬に勝っていれば優勝できたとか、白鵬が出場すれば良かったではないかなどが挙げられる。そもそも、休場というのは負けと同じで、全休なら0勝15敗と一緒。関脇以下であれば番付も大きく下がってしまう。それだけ出場するというのは重要なことなのだ。
しかも、日馬富士と鶴竜の両横綱は昨年1日も休場していないが、勝星では稀勢の里に及ばなかった。つまり稀勢の里は2人の皆勤横綱より上回る成績を年間通算で残したということだ。これを評価せずして何が言えるだろうか。むしろ連覇よりも年間最多勝の方が価値が高いと言っても過言ではないではないか。
次に、協会が日本出身横綱を求めていることに関しては、確かに本音ではそうだろう。しかしそれだけを前面に押し出すなら、もっと早く稀勢の里は横綱になっているだろう。例えば準優勝を何度も挙げているとか、安定した成績を残しているなど。たとえ年間最多勝がなくても、安定して11~13勝程度を挙げていれば、それだけで昇進させても構わないだろう。だがそこまですれば流石に優遇していると言われかねないし、優勝経験のない力士が横綱に昇進した例では過去に双羽黒という力士がいたが、親方と喧嘩になり、廃業してしまったという経緯がある。そのため、最低でも優勝をという思いが協会内部にあったのではないかと推測する。奇しくも、廃業した双羽黒は現在の八角理事長と同年で、現役当時は理事長と小錦らと共に花のサンパチ(昭和38年生まれ)と言われ、人気を博し、活躍していた。
続いて、今場所は横綱が2人休場しているので優勝の価値が低いという意見に関しては、休場した横綱が誰かによるだろう。休場したのは日馬富士と鶴竜だ。だがこの2人は連覇の条件をクリアして横綱に昇進したものの、その後は不振の場所が多く、物足りないという指摘が以前からある。いつも場所前に解説者などが優勝争いの予想をするが、決まって出るのは筆頭に白鵬、そして次には稀勢の里の名前が挙がるのが相場だ。今場所もその通りの展開になった。それだけ日馬富士と鶴竜の存在感が示されていないことの証でもある。またこれは連覇が横綱への昇進条件とする規定の是非を問うことにも発展しかねない。
また稀勢の里との対戦成績もほぼ互角か、或いは稀勢の里の方が優位な状況だ。そうした状況では、もしこの2人が出場して稀勢の里と対戦したとしても、稀勢の里が勝つ可能性が高いと考えられる。むしろそれより今場所好調だった平幕の力士の方が稀勢の里にとって手強い相手だったのではないだろうか。その意味では、14日目に逸ノ城を危なげなく破った一番は大きかったし、目前で見ていた白鵬に対してプレッシャーをかけたとも言えるのではないだろうか。
そして、過去に優勝回数は多くても横綱になれなかった力士がいるという意見に関しては、これは当時の状況を精査しないと語れないが、簡単に言えば優勝の前後の場所が不振に終わっているからである。例えば魁皇は優勝5回だが、連覇は勿論ないし、優勝の前後の場所で優勝決定戦まで残ったということもなかったはずだ。つまり優勝回数は多くても、今場所の稀勢の里の状況を上回るケースはなかったと考えるのが適当だろう。
ところで、横綱とは何なのか、もう一度原点に帰って考え直す必要があると思う。相撲用語で「三役」というのがあるが、これは大関、関脇、小結を指し、横綱は含まれていない。実は横綱は歴史的には大関に含まれ、大関の中でも特に優秀な力士に与えられる称号なのだ。その優秀であるという基準をどう考えるか、それが現代では連覇またはそれに準ずる成績としているのであって、資格試験などのように必ず何点以上でなければ不合格というものではないのだ。それ以外にも振る舞いや相撲の取り口など様々な「品格」も重要視されるのは言うまでもない。
ではその品格に関して稀勢の里はどうかと言うと、相撲内容に関しては正攻法のお手本のようなもので、例えば立会いに変化する注文相撲などはまずやらない。最近では横綱や大関でも下位の力士との対戦で立会いの変化が時々見られ、ファンや評論家から批判されることもある。白鵬や鶴竜も稀勢の里に対して立会いの変化だけで勝ったこともある。しかし逆はない。つまり稀勢の里の優れた品格と比べ、現在の3人の横綱の品格が欠けていると考えられる。他にも白鵬は猫だましを使ったり、わざと立会いの呼吸をずらしたり、或いは協会批判をしたりなど、品格を問われることがある。また日馬富士も振る舞いが朝青龍に似て荒っぽいなどと批判されることもある。従って、品格と言う点に関しては、稀勢の里は他のどの横綱よりも優れていると言ってもいいだろう。
昔は横綱というのはどんな手強い相手でも堂々と受けて、それでも勝利するというのが定番だった。例えば千代の富士は横綱に昇進するまでは大きな相手に頭を付けることもあったが、横綱が頭を付けるのはどうかという声を受け、頭を付けるのを止めた経緯がある。しかし今では朝青龍が下位の力士に頭を付けたこともある。白鵬が猫だましをやった時も、相手は大関候補と期待されたこともある栃煌山で、以前負けたことのある相手だ。白鵬は一度やってみたかったと釈明しているが、何故栃煌山戦を選んだのか。また稀勢の里との対戦では白鵬は特に立会いの呼吸を意識して、わざと相手に合わせずに自分優先で立っているように思える時もある。これらは、結局白鵬が何がしかの苦手意識、やり難さを相手に対して感じているからそういうことをするのだろう。だがそれらが横綱としての品格を維持できるかと言えば答えはノーではないだろうか。特に立会いの呼吸というのは、お互いが合わせるように努めるのが筋であって、わざとずらして相手を不利にするというのは邪道である。
相撲も時代と共に変わると言えばそれまでだ。横綱が立会いで変化しようが、猫だましをやろうが、呼吸をずらして立とうが、反則ではないから構わないと主張する人もいるだろう。しかし世の中には仁義というものがある。仁義と言うのは義理人情だ。相手の気持ちも考えて自分も歩み寄る、そこに接点が生まれるという重要なものだ。それがあるからこそ人間社会が成り立つのだ。しかし現代ではそうした仁義が失われ、それが相撲にも影響しているのかも知れない。女がデートで男に全部奢って貰って、いい車に乗せて貰って、プレゼントを散々おねだりして、しかし男が肉体関係や結婚話を持ち出すと手の裏を返したように別れると言って逃げていく。これでは男は詐欺にあったも同然だろう。しかし法律には触れないのだ。では法に触れなければ何をしてもいいのか、それは明らかに違う。白鵬などの品格は、まさにフェミ的な女の品格と重なる部分があるのかも知れない。これに対し、稀勢の里はフェミの被害をもろに受ける男の立場なのかも知れない。
最後に、新横綱稀勢の里の今後の更なる活躍に期待したい。
<その他の話題>
・中国で批判のアパホテルが冬季アジア大会選手村に [2017年1月20日6時51分]
http://www.nikkansports.com/sports/news/1767580.html
札幌市などで2月に開かれる冬季アジア大会の選手村に、南京大虐殺を否定する本が置かれていることが中国で批判されているアパホテルが使われることが19日、大会組織委員会への取材で分かった。
組織委によると、選手村になるのは札幌市南区のアパホテルと、中央区にある別のホテル。大会期間中を含む2月16~27日は組織委がアパホテル全体を借り上げる。選手村は30の国と地域の選手らが使用する予定。
組織委は、今回の問題についてアパホテル側に具体的な要望は出していないとした上で「選手村になるホテルには、偏見や差別の問題が起きないように、スポーツ理念に基づいた対応をお願いしている」としている。
ホテルを運営するアパグループは「本の内容に誤りはないと認識しており、仮に申し出があっても撤去は考えていない」とする一方、客から要望があった場合は「本を一時的にフロントで預かるよう、全国のホテルに指示することを検討している」とした。
・中1女子が自殺、「いじめ」示唆するノート 千葉・松戸 2017年1月23日21時46分
http://www.asahi.com/articles/ASK1R5KG8K1RUDCB012.html
千葉県松戸市教育委員会は23日、市立中学校1年の女子生徒(13)が始業式の10日朝に市内の団地から飛び降りて自殺したと発表した。自宅から、いじめをほのめかす内容のノートが見つかったという。同市教委は「いじめの情報はなく、原因とは判断していない」との認識を示したが、今後、ノートの内容などについて調べる。
市教委の説明では、女子生徒は10日朝から行方がわからなくなり、母親が警察に連絡し、死亡しているのがわかった。自宅には女子生徒が書いたノートや便箋(びんせん)の走り書きなどがあった。市教委が警察に確認したところ、ノートには「いじめっこに仕返しをしてみたい」「自殺しようとしたけど失敗した」などと記されていたという。
同校では月に1度、いじめに関するアンケートをしているが、女子生徒から訴えはなかったという。伊藤純一教育長は「他の生徒からもいじめの情報はなかった。今のところ、いじめが原因とは判断していない」と話した。
・千葉の少女殺害、19歳に無期求刑 「積極的な役割」 2017年1月25日13時46分
http://www.asahi.com/articles/ASK1T0C8BK1SUDCB014.html
千葉県船橋市の少女(当時18)を車に乗せて財布を奪った上、畑に生き埋めにして殺害したとして、強盗殺人と逮捕監禁の罪に問われた少女(19)=船橋市=の裁判員裁判が25日、千葉地裁であり、検察側は無期懲役を求刑した。
検察側は論告で「極めて残虐で悪質な犯行」と指摘し、少女について「中心的で積極的な役割だった」と主張した。
少女の起訴内容は、2015年4月、友人の井出裕輝被告(22)=強盗殺人などの罪で起訴=らと共謀し、千葉市中央区の路上で被害少女を乗用車に乗せて両手足を縛り、現金数万円入りの財布などを奪った上、同県芝山町の畑に事前に掘っていた穴に被害少女を土砂で埋め、窒息死させたというもの。