小さなシネコンである桜坂劇場は、会員に会員の誕生月の映画招待券を1枚くれる。私は桜坂劇場の会員(古くからの)であり、私の誕生月は10月なので、9月に送られてくる劇場からの便りに10月一杯使える映画招待券が1枚同封される。今年も来た。
雨が多かったせいで畑仕事が大幅に遅れており、映画を観に行く余裕は無い。が、雨の日ならどうせ畑仕事はできないので、雨の日に映画鑑賞と決めていた。
10月14日、夜中の大雨が続いて朝も雨。で、畑仕事は休んで午後は映画とする。その日は金曜日だったのでネット環境である従姉の夫の事務所へ行き、ガジ丸HPとブログをアップして、アパート探しをして、家に帰って、昼飯食って11時25分に家を出る。映画は12時開始、桜坂劇場までは20~25分ほどだが、余裕を持ってのこと。
県道330号を南下する。ところが途中から渋滞。家から桜坂劇場までの道程の三分の一辺りの地点から渋滞。混む時間帯ではないし、混み方が尋常ではない。想像するに、おそらく事故と思われた。そこからノロノロ運転となり、家から桜坂劇場までの道程の中間地点辺りでついに映画の始まる時刻の5分前となった。映画は諦めてUターン。
観たい映画は21日までは日中の上映であったが、それ以降は夜の上映となっていた。夜は外に出たくないので10月18日、畑日和であったが午後から映画を予定する。その日はまた、母の命日でもあり、首里にある寺へ行く用もあった。寺から桜坂劇場へは歩いて20分ほどだ。寺に車を駐車して、映画館まで歩いて往復という計画。
トートーメー(位牌)に母の好きなワインとフランスパンを供えウートートゥ(祈りの言葉)。寺務所へ行って、以前から美人だと思っていた事務のお姉さんに、映画観に行って帰るまでの間の駐車許可をお願いする。快く了解してもらったのでそのお礼に「賄賂です」と言ってシブイ(トウガン)とオクラ数本をあげる。そんなこんな(美人と会話がしたいという邪な想いから)に時間がかかって、徒歩では映画に間に合わなくなってしまった。ということで、バスに乗って桜坂劇場へ、上映開始時刻にギリギリ間に合う。
ダラダラとどうでもいい前置きが長くなったが、その日観た映画は『ふたりの桃源郷』というドキュメンタリー映画。電気も水道も無い山で暮らす老夫婦のお話。
「畑を耕し、山の恵みを採取する生活」に興味を惹かれ、「電気も水道も無い生活」には大いに興味を惹かれて、「観たい」と思った。いつか私もそうしたいので。
先ずは、老夫婦の元気さに勇気付けられる。身体を動かしていれば歳取っても元気でいられる、元気なので畑仕事を続けることができる、畑仕事をするので元気、という見事な健康スパイラル。「よっしゃ!俺の未来もそう暗くは無いぞ」と勇気を貰った。
老夫婦は全くの野生暮らしというわけではない。水は湧水を引いており、電気は発電機を使用している。時々町へ下りて、年金を引き出し米などを買っている。時には子や孫たちが訪ねてくる。ではあるが、質素で、二人きりの時間が多い。そして、二人きりの時間が素敵。お互いを信頼し合っている長年連れ添った夫婦じゃないとできないこと。
長年連れ添った妻が私にはいない。したがって、老夫婦のような幸せな時間を持つことは、私にはできないこと。体は食べ物で作られるが、心は食べ物では作られない。心は他者との関わりで作られる。ということを思い知らされた映画でもあった。
記:2016.11.4 島乃ガジ丸
10月28日まで糞暑かったのが、29日にいくぶん和らぎ、30日は雲が多かったこともあるが、たまに顔出す太陽も時期相応の、いかにも秋(沖縄の)らしい日差しとなって、日向の作業でも汗が滲む程度だった。それまで、太陽に向かって、
「アホッ!バカッ!糞ったれ!」などと文句を垂れていた私であったが、「太陽もやっと正気に戻ってくれたか」と穏やかな気分、作業も進んで、1畝を耕し終えた。
ところがどっこい、翌31日、風は秋風に相違ないが、日中晴れて、その太陽の下はまたも真夏となった。午前10時までにTシャツはびっしょり。午後になるとさらに暑くなって、頭から額から汗が流れ、顎からポタポタ落ちる。あまりの暑さに腹立って、
「アホッ!バカッ!糞ったれ!」などの他、「フラードゥヤミ!アチャ(あした)からや11月ドーヒャー!」とウチナーグチでも罵り言葉を吐いていた。
10月27日付ガジ丸週一日記に日向の気温(10月26日午後1時頃)を写した写真を載せたが、その時は45度あった。31日の午後、日向が余りにも暑かったのでまたも計ってみたら、その時は何と50度もあった。時刻は午後2時半、前に計った午後1時より2時半の方が暑いのであろうと思われるが、それにしても、何ちゅう気温。
このところ沖縄の言葉についての紹介が続いているが、今週別頁の『ケンカの元』を書きながら、前に紹介した『タッピラカス』、『タックルス』を読み返していたら、「口喧嘩ならもっといろいろ使えそうなのがあるぞ」と気付き、今回は罵り言葉の紹介。
上記の「フラードゥヤミ」は、フラーがフリムン(狂れ者)の簡略系で「バカ者」という意、ドゥは「で」ヤミは「あるのか?」という意。これに主語を加えると「ィヤーヤ(お前は)フラードゥヤミ」となる。もちろん、「フリムンドゥヤミ」でも同意となる。ちなみに、「狂れる」は広辞苑にあり、「常軌を逸する。普通でない」という意。
バカに似た意味では「ゲレン」、「ポッテカスー」、「トットロー」というのもある。私が中学の頃、私の周りには今で言うヤンキー、その頃は不良と読んでいた連中がウヨウヨいた。彼らはよくケンカした。殴り合う前に彼らはそういった言葉を吐いていた。
「ゲレン」、「ポッテカスー」、「トットロー」はいずれも沖縄語辞典に載っていないので、由緒正しい沖縄語ではないのだろう。私の感覚ではゲレンは「気違い」、ポッテカスーは「アホ」、トットローは「間抜け」といったニュアンスと捉えている。
「ゲレン」、「ポッテカスー」、「トットロー」はいずれもケンカの際だけでなく、親が子を叱る時にも使われた。私は父母や祖父母にそれら3つの言葉で怒鳴られた経験がある。その他、「トゥルバヤー(のろま)」というのもあるが、実際、のろまであった私はその言葉で最も多く叱られた。他に・・・躾の言葉については次回に詳しく述べる。
ちなみに、「アホッ!バカッ!糞ったれ!」をウチナーグチにすると「ポッテカスー!フリムン!クスマヤー!」となる。「クスマヤー」については既に紹介済み。クスは糞の沖縄語読み、マヤーはマユンという動詞の変化したもので「~する人」という意になる。マユンは日本古語の「まる」と同じ。「まる」は広辞苑にあり、放ると漢字表記し、「はいせつする。大小便をする。」という意、「ひる」とも言う。
「ひる」で思い出した。罵る言葉に「ヒーヒヤー」ともあった。「屁をひる人」という意。誰もが屁をひるのだが、特にたくさんひる人というニュアンスがあると思う。
もう1つちなみに、私が「フラードゥヤミ!アチャからや11月ドーヒャー!」と太陽に向かって罵った日の翌日11月1日はまあまあ涼しくなり、翌2日はさらに涼しく、夜中寒くて目が覚めたほど。29日の最低気温は25.2度、30日は24.3度、31日は23.5度、1日は22.0度、2日は21.6度、4日間で4度近くも下がりやがった。階段を3段ずつ降りるような急激な下がり方。「体調崩すぜ!」とまたも愚痴る。
冬物寝具の掛け布団は押し入れにあるが、布団を出すほどの寒さでは無い。タオルケットで十分。ところが、7月下旬には済ませてあった引っ越し準備で、冬物衣料の一部、タオルケットなどは段ボールに詰めて畑小屋の中だ。9月頃には引っ越しを済ませているつもりだったのだ。例年の10月だと寝る時にタオルケットが必要となる。それまでにはいくらなんでも引っ越しを終えているだろうという甘い考えだったのだ。そういった甘い考えの人のことも「ポッテカスー」とか「ノータリン」と呼ぶ。私がそうです。
以下、沖縄語辞典による説明。
フラー:気違い。気のふれた者。また、馬鹿者。
フリムン:ならず者。馬鹿。気違い。狂人。(抜粋)
トゥルバヤー:ぼんやりしている者。トゥルバイムンも同意。
クスマヤー:沖縄語辞典にはクスクェーがあり、糞喰らえという意。
ヒーヒヤー:沖縄語辞典にはフィーフィラーがあり、よく屁をひる者という意。
ゲレン、ポッテカスー、トットロー、ノータリン等は沖縄語辞典に記載なし。
記:2016.11.3 ガジ丸 →沖縄の生活目次
沖縄の農繁期である9月10月、9月はまだ暑いが、種播きを終えホッと一息している10月の中頃には沖縄も秋となる。「おらが秋ーーー」と叫びたいほど私の大好きな秋、夜は涼しくてぐっすり眠れて、昼間の畑仕事も太陽の熱が和らいでいるので丸一日畑仕事をしても体力に余力を残し、酒も美味い「おらが秋ーーー」なのである。例年は。
ところが、今年は違う。今年の9月10月は雨の日が多く、畑の土が湿っていて耕すという作業がなかなかできなかった。で、作業が遅れる。しかも、雨は、たいてい夜中に降り、昼間は晴れている日が多く、晴れている日はとても暑かった。「とても」とは具体的にどれくらいかと言うと、「ガンマリどぅヤミ、ワチャクどぅソーミ!」と太陽に向かって悪態をつくほどの暑さ。「ふざけているのか、からかっているのか!」といった意。
具体的にと言いつつ、ついつい感情的になって比喩表現になってしまった。沖縄気象台の資料から、実際にどれほど前代未聞の暑さだったかを具体的に証明する。
10月に最高気温が30度を超えた日数、2011年2日、2012年0日、2013年7日、2014年3日、2015年4日だが、2016年は20日もある。
2011年からの去年までの5年間で31度超えは1日も無いが、今年は9日もある。さらに、10月中旬以降に30度超えとなったのは同じ5年間で2013年の1回だけしかないが、今年は13日もある。その13日の内31度超えは4日。10月としては前代未聞の暑さと言っていいわけだ。忍耐強い私でも参ってしまうわけだ。
ついでに、今年の9月10月(9月はずっと、10月は前半まで)は雨が多かったことも、沖縄気象台の資料から具体的に証明する。2ヶ月分の雨量、2011年283.5ミリ、2012年368.0ミリ、2013年378.0ミリ、2014年364.5ミリ、2015年110.0ミリであるが、今年2016年は417.5ミリ。ちなみに気温も雨量も観測地点は那覇で、畑のある西原は、私の日記による観測では、雨量についてはおそらくもっと多い。
農繁期である9月10月、農夫にとって都合の良い天気は、気温25~30度(無茶なことは言わない、30度くらいなら我慢する)で、午前中は晴れ、真昼間は概ね曇り、週に1~2回程度は夜中に雨が降る。そんな天気なら作業は進むし、作物も育つ。
ところが今年は、夜中に雨が降るのはいいが、3日に2日くらいの頻度で降った。畑へ出勤すると晴れてはいても土はたっぷり濡れている。濡れた土は耕す道具のヘラにベッタリとくっつき、作業は面倒で時間がかかる。除草も同じように時間がかかる。
昼間の空は黒か白かのどちらか、つまり、降るか晴れるかのどちらかで、曇り空というのはごく少なかった。よって、晴れたら太陽の熱が降り注ぐ、それも秋の太陽では無く、真夏の太陽に近い熱線が降り注ぐ。暑さで体も心もヘトヘトになり作業が進まない。
このように、今年の9月10月はまったく、農夫にとって都合の悪い天気であった。それはまるで、天気の神様が農夫を困らせてやろうと意地悪しているのではないかと思うほど。ということで、大人しい私が「ガンマリどぅヤミ、ワチャクどぅソーミ!」と悪態ついたわけ。その他、和語で「糞ったれ!アホッ!」なんて言葉も吐いた。
前に「タッピラカス」、「タックルス」などケンカの際に使われるウチナーグチを紹介しているが、今回紹介している「ガンマリ」、「ワチャク」はケンカの原因になるかもしれない言葉となる。ちょっとしたいたずらのつもりが、ちょっとふざけたつもりが、あるいは、ちょっとからかったつもりが、相手には酷く気に障って、ケンカとなる。
ケンカの原因となる状況がもう1つ(他にもあるかもしれないが沖縄語の専門家ではないので私には不明)ある。それはウセーユン、「バカにする」といったような意。
ウセーユンについては、2015年7月17日付ガジ丸通信『ウセートーン』に例を挙げて判り易く(と自分では思っている)説明しているが、何しろバカにしているのだ、バカにされたら当然のごとく怒る。怒って、そして、
「ィヤー(お前)、ワン(俺を)、ウーセートーラヤー(バカにしているな)。」
「ヌーが(何で)、ワッサミ(悪いか)。」
「ワッサミヰー(悪いかって)、タックルスンドー(殴るぞ)!」
「タックルスーウー(殴るってか)、シナスンドー(殺すぞ)!」
となって、ケンカに発展する。ウチナーンチュは穏やかで心優しい人も多いが、中にはこのようにタンチャー(短気者)も少なからずいる。ガンマリしたりワチャクしたりする者はたいてい子供、または、精神が子供の大人だが、タンチャーは大人にもいる。
以下、沖縄語辞典による説明。
ワチャク:からかうこと。他人にいたずらすること。
ガンマリ:いたずら。ふざけること。
ウセーユン:あなどる。軽蔑する。見くびる。
タンチャー:短気者
記:2016.11.1 ガジ丸 →沖縄の生活目次