いかにもウチナーンチュの性質を表していると私が思う沖縄の諺がある。あるけど、全くのうろ覚えで正確には覚えていないので、その意味するところだけを述べる。「100人の味方を作るより、1人の敵も作らないようにせよ」というもの。
「いちゃりばチョーデー」という言い回しも沖縄にはある。「出会えば兄弟」という意味。「みんな同じ地球の仲間」みたいなもの。みんなが仲間だから特別に自分を守ってくれる味方は必要なく、みんなが仲間だと思っているのに、その中から自分を攻撃してくる敵が1人でもいたら人生が不幸になる。よって、「100人の味方を作るより、1人の敵も作らないようにせよ」となる。南の島の暢気な諺である。
小さな島で、あるいは、個人が生活する範囲内の小さな村では、隣近所との諍いがこじれると大きな不幸となる。よって、諍いが生じても「なーなー」で済ませるよう村中で協力し解決する。よって、村には特に不幸な人間は生じない、よって、村は平和である。
南の島の暢気な気分には、植民地時代の西洋諸国のようなものは見えていない、大戦時代の中国朝鮮における日本帝国のようなものも見えていない、その昔、薩摩に侵略された時もおそらく、「何で?友人だろ?」という気分だったに違いない。
沖縄にももちろん、他人の財産生命を脅かす悪い奴はいる。むしろ犯罪率は全国平均より上、もしかしたら上位、ひょっとしたら犯罪率全国一かもしれない。場所を私の周りに限っても、時期を300坪の畑を始めた3年前からに限っても、隣のTさんはキャベツを盗まれ、N爺様はバナナを盗まれ、私も脚立や鍋を盗まれた。
泥棒だけでは無い。向かいの森には不法投棄されたゴミがわんさかある。「ウチナーンチュは素朴で優しい」なんてことは全く当たらない。「ウチナーンチュの一部には素朴で優しい人もいるが、公衆道徳に欠けた人は多い」と言い換えた方がいい。
身内のことは棚上げして、島の外に向かっては「いちゃりばチョーデー」という姿勢を持ち続ける。私は私が生まれ育った沖縄のことが大好きなので、けして卑下するわけでは無い、と断っておいて、それが沖縄の処世術なのだと思っている。
弱小沖縄は、「敵は作らない」のでは無く、敵を作ってしまったら、こんなちっぽけな島ひとたまりもないと自覚しているから、「敵は作れない」のだと思う。なので、島の360度を開いて、海の向こうからやってくるものを「よっ、兄弟」と受け入れて、仲良くし、海の向こうからやってくるものを敵にしないよう心掛けたに違いない。
しかし、それでも、かつての西洋諸国や日本帝国のように敵は勝手に敵となって突然現れてくる。それを考えると、辺野古新基地建設に反対する沖縄に怒って、ある日突然、日本国が「煩ぇ、沖縄は日本の植民地だ、黙って命令に従え!」とさらに強硬な態度となるかもしれない。ある日突然、「沖縄は元々中国の属国である」と中国が攻めてくるかもしれない。テロリストが沖縄にも存在し、ある日突然攻撃してくるかもしれない。
しかし、それでもだ、私は願う。日本国がテロリストに「人道に反することをしてはいかん」と非難するのであれば、「沖縄に過剰な基地負担を押し付けてはいかん」とも思って欲しい。さらに言えば、これは全くの夢物語であろうが、世界が「いちゃりばチョーデー」気分であったとしたら、世界は平和になるだろうなぁと思わずにはいられない。
記:2016.1.15 島乃ガジ丸
似た人はいっぱいいるけど
サルの類は沖縄に生息しない。生息しないけどここで紹介したいと思う。サル年だからという単純な理由。写真は数年前に北海道を旅した時、旭川動物園で撮っている。
沖縄にサルはいないが、サルを表すウチナーグチ(沖縄語)があり、サルに関わる昔話もある。ウチナーグチでサルはサールー、サルを単に沖縄語読みしただけ。昔話の方は2つあり、優しくない金持ち夫婦がサルに変えられてしまうという『猿長者』、亀の甲羅にひび割れがあることやタコに骨が無いことの由来を解いた『猿の生肝』が沖縄大百科事典に紹介されている。そういったことなどもあって、サルという動物のイメージは、サルを見たことのない昔のウチナーンチュたちもあるていど持っていたのだろう。サルの関わる言葉もあって、サラカチャーというと植物のサルカケミカンのこと。それはまあまあ有名で、私も若い頃から知っていた。和語と同じで、サルを引っ掛けるという意。
ウチナーグチでサールージラーというと、これも昔からよく耳にした言葉。
「あれー、ぬー名ぁやたがやー?」(あいつは何て言う名前だったか?)
「あれーでぃんねー、たーぬくとぅやが?」(あれと言ったら誰のことか?)
「ありーてー、あぬサールージラーのイキガよ」(あれだよ、猿顔の男だよ)
なんていう風な会話となる。サールージラーは猿面(さるづら)の沖縄語読み。沖縄にサルはいないが、サールージラーした人はいっぱいいる。先日、車を運転中、赤信号で停まっている時、ふとバックミラーを見たら女性の顔が映った。歯を剥き出して何かを口に入れたその顔が、歯を剥き出した猿にそっくりだった。彼女は運転しながらスナック菓子を食べていたようだが、食べるたんびに猿顔になっていた。それが面白くて、彼女が私の後ろを走っている間、ついついバックミラーを覗いてしまった。悪かったかな?
ニホンザル(日本猿):霊長目の哺乳類
霊長目オナガザル科 本州から九州に分布 方言名:サールー
名前の由来、広辞苑に「(和訓栞に「獣中に智のまさりたる義なるべし」とある)」とあった。「智が勝る」からチガマが省略されてサルになったようだ。本種は日本に生息するサルなのでニホン(日本)と付いてニホンザルとなる。
日本だけに住むサルで本州から九州に分布するが、北限は青森県下北半島で、そこがまた、世界中のサル類の北限にもなっているとのこと。確かに、サルは南の生き物というイメージがある。であるが、南の島沖縄には生息しない。南限は屋久島であるが、屋久島のニホンザルはヤクニホンザルと呼び、亜種とされているとのこと。
体長は約60センチ、尾長は約10センチ。群れを作り、ボスザルと通称されるリーダーがいる。雑食性で、植物の葉、樹皮、果実などの他、昆虫も食べる。
記:2016.1.11 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行