ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ショウリョウバッタ

2014年11月12日 | 動物:昆虫-直翅目(バッタ他)

 無知の成せる自慢

 ガジ丸HPを始める前までの私は、子供の頃も含めてずっと、虫などに興味を持っていなかった。だから、この1年でだいぶ覚えはしたが、虫の名前をあまり知らずにいた。名前は知っていても、その実物を知らずにいたものも多い。アゲハチョウ、モンキチョウ、モンシロチョウ、ヤンマトンボ、クマゼミ、アブラゼミなど、チョウやトンボやセミなど実物を見る機会は多くても、どれが何やらはずっと知らずにいた。
  バッタの仲間も同じで、トノサマバッタなんて有名バッタも、名前は知っているが、どれがトノサマバッタなのかは知らなかった。なのであるが、ただ一つ、ショウリョウバッタだけは、「これはショウリョウバッタである」と言明できたのである。ショウリョウバッタは、バッタの中では特徴のある形をしていて判りやすいからである。ところが、前に撮った写真で、これはショウリョウバッタの仲間であろうと思ったバッタが、調べてみると違うバッタであった。オンブバッタという名前だった。もしかしたら子供の頃、オンブバッタを捕まえて「これはショウリョウバッタだ」と、私は自慢 していたかもしれない。

 以上の文、書いたのは9年近く前。それ以降、ショウリョウバッタもオンブバッタも何度も観察している。虫などに興味を持っていなかった私でも、今は両者を区別できるようになっている。・・・が、ショウリョウバッタモドキという種があり、それは沖縄にも普通に生息しているらしい。もしかしたら私は、ショウリョウバッタモドキを捕まえて「これはショウリョウバッタだ」と自慢しているかもしれない。

 
 ショウリョウバッタ(精霊蝗虫):直翅目の昆虫
 バッタ科 本州以南、南西諸島、東南アジア、南欧に分布 方言名:シェー
 名前の由来は資料が無く不明。漢字の蝗虫は広辞苑にあったが、バッタという名の由来も不明。精霊も広辞苑から、ショウリョウトンボという項目が広辞苑にあり、「精霊祭のころに多く現れるので」と由来が書かれてある。精霊祭はお盆の頃、本種の出現も夏なので、同じ理由で精霊と付いたのかもしれない。正確なところは不明。
 このバッタは形が独特なので、子供の頃から私もその名前を知っていた。文献に「キチキチバッタという俗称がある」というのを見て、さらに懐かしく思う。そうだ、確かにキチキチバッタという名でも呼んでいた。雄が飛ぶ時にそういう音を出す。
 体長雄42ミリ内外、雌72ミリ内外。体色は緑色型と褐色型があり、なお、個体によって多少の色彩変異もあるとのこと。オンブバッタは雄が雌よりずっと小さいが、本種もまた、雄は雌より一回り小さく、やや細身とのこと。出現は5月から11月。
 
 八重山産

 記:ガジ丸 2005.12.5 →沖縄の動物目次
 訂正追記:2014.10.11

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
 『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
 『琉球列島の鳴く虫たち』大城安弘著、鳴く虫会発行


オンブバッタ

2014年11月12日 | 動物:昆虫-直翅目(バッタ他)

 甘えん坊の父ちゃん

 10月18日は母の命日だった。去年が七年忌で今年で満7年となる。早いもんだという感想。「他人の世話にはならない」性格の母だった。持病が悪化して入院して、しばらくたって一時退院した時、「買い物して、荷物がある時は家の階段の上り下りがきつい」と言っていたので、「そういう時は連絡しろよ、手伝うから」と私が申し出ても、一度も連絡が無く、その内、再入院して、あの世へ旅立った。
  父が死んでからは満4年半になる。父は真面目に働く公務員で、真面目に働いて2度も家を建て、親を養い、子を養い育てた。立派な男だと思う。ただ、母に対しては大いに甘えていたと私には見えた。「他人の世話にはならない」性格の母に対し、父は甘えたがり性格だったと思う。昔の男性がそうだったからかもしれないが、縦の物を横にもしないことがあり、「あーしてくれ、こーしてくれ」と母に対する要求は多かった。職場ではシャキッとした人だったかもしれないが、家では母に「おんぶに抱っこ」みたいだった。

 オンブバッタは、雌より一回り小さな雄が、雌の背中に乗っているところをよく見る。そういうところからオンブという名が付いているようである。雌の上に雄が乗るのは他の昆虫でも見られることだが、それは概ね交尾の際の体勢である。オンブバッタもそうだと思われるが、もしも、交尾の時以外でもオンブされていることがあるのだとすれば、よほど甘えん坊の父ちゃんである。小さいからといって、それじゃあ子供だぜと思う。
  オンブバッタの、甘えん坊の雄に比べられたら、父も「何でそんなのと俺とを同じ土俵に置くんだ!」と、あの世で怒るかもしれないが、父は母より大きく、母より力も強かった。細かいことは母に頼ったが、家の中の大工仕事や、腕力のいる作業は父が率先してやっていた。母が病気とか疲れている時などは、洗濯もし、料理もした。オンブバッタに比べればずっと優しい、頼もしい雄だったのである。
 さらに言えば、私の父は、精神的には母に「おんぶに抱っこ」だったかもしれないが、母をおんぶすることはあっても、母におんぶされることは1度も無かった。

 
 オンブバッタ(負蝗虫):直翅目の昆虫
 バッタ科 本州以南、南西諸島、朝鮮、中国に分布 方言名:シェー
 名前の由来、漢字の蝗虫は広辞苑にあったが、バッタという名の由来は不明。オンブについては『沖縄昆虫野外活動図鑑』に「雄は雌よりひと回りほど小型で、しばしば雌の背に乗っているところから」とあった。『沖縄昆虫野外活動図鑑』の写真も私の写真の1枚もそんな絵。交尾時だと思われるが、ただ単に甘えているだけなのかもしれない。オンブを広辞苑で引くと漢字表記が負とあった。これは長年生きてきて、初めて知った。 
 体長雄25ミリ内外、雌42ミリ内外。平地でも山地でも草地や畑などで普通に見られる種。体色には緑色型と褐色型がある。稀にキク科植物を食害することがあると『沖縄昆虫野外活動図鑑』にあった。キク科植物、私の畑には時期によってレタス、ゴボウ、シュンギクなどあり、キクイモ、ヨモギは年中ある。気を付けよう。出現は4~12月。
 
 脱皮
 
 褐色型の雌

 記:ガジ丸 2005.12.5 →沖縄の動物目次
 2014.10.11訂正加筆

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
 『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
 『琉球列島の鳴く虫たち』大城安弘著、鳴く虫会発行