ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

野暮な人生

2013年06月14日 | 通信-その他・雑感

 「野暮用でちょいと遅れました」というセリフをテレビドラマか何かでよく聞く。野暮用、「くだらない用事」という解釈を私はしていたが、広辞苑を引いてみた。
 「取り立てて言うほどのものでない、つまらない用事。趣味や遊びに関わらない、仕事のための用事」(全文)とのこと。「くだらない用事」という解釈は当たっているが、後半の「趣味や遊びに関わらない、仕事のための用事」までは考えが及ばなかった。
 「野暮」は「世情に通ぜず人情の機微をわきまえないこと。特に、遊里の事情に通じないこと」(全文)と広辞苑にある。
 野暮に対する言葉として「粋」というのがある。これも広辞苑、
 「人情の表裏に通じ、特に遊里・遊興に関して精通していること」(第二義抜粋)のことで、「人情の機微」をわきまえていると粋、わきまえていないと野暮、あるいは、「遊里の事情」に通じていると粋、通じていないと野暮となる。
 わざわざここで宣言しなくても、私の友人知人などにはよく知られていることだが、私は「人情の機微」においても、「遊里の事情」においても全くの野暮である。

 野暮用という言葉があれば、粋用という言葉もあるかというと、それは無い。「粋用でちょいと遅れました」と言うと、「遊里で可愛い女と情愛を交わしていて遅れました」ということになりそうだが「粋用」という単語は広辞苑に無かった。「情事、いろごと」という意味では「粋事」という言葉がある。これも悲しいことに私には無縁。
 野暮用の意味の中で「趣味や遊びに関わらない、仕事のための用事」を私に当てはめると、日常の私はほぼ野暮用ばかりだ。畑仕事は楽しみでやっていたので趣味と言っても良かったのだが、夏の炎天下での作業を考えると「楽しみ」とはならない。むしろ、苦行と言っていい。滝に打たれる代わりに太陽に焼かれるみたいなもの。

  野暮用は畑仕事だけでは無い。畑仕事以外の野暮用も多くある。先々週は、
 法務局へ行って抵当権抹消手続きの方法を聞き、銀行へ必要な書類を取りに行く。不動産屋と会って家土地売買の交渉をする。車の点検で整備工場へ行く。
 市役所へ住民票を取りに行く。法務局で抵当権抹消手続きをし、銀行へ借りた書類を返しに行く。家を買いたいという人に実家を案内する。
 今週もまた、銀行へ必要な書類を取りに行き、法務局へ抵当権抹消手続きの不足分書類を届け、車の補修で整備工場へ行き、家を買いたいという人に実家を案内した。
 などということをしながら、もちろん畑にも通っていた。

  畑は今、土木作業と除草作業を主にやっている。土木作業は台風対策のためのアンカー作り、水捌けを良くするための勾配作りで、穴掘ったり、土削ったり、土運んだり、土均したり、穴埋めしたりなどなど、力のいる肉体労働を太陽に焼かれながらやっている。出来上がりつつあるのを見るのは楽しいが、作業そのものは辛い。全くの野暮用。
 ただ、救われているのは、こうやってブログを書いたりする時間があること。それは全くの趣味で、野暮用では無い。野暮用では無いが、粋な事でも全く無い。いつかネオン街のお姉様達に「粋なお人」と呼ばれたいが、それはきっと無理ですな。
          
          

 記:2013.6.14 島乃ガジ丸


タテスジヒメジンガサハムシ

2013年06月14日 | 動物:昆虫-甲虫目

 姫が被る陣笠

 戦国時代を舞台にしたテレビドラマや映画で足軽たちが被っているもの、それを陣笠という。上から見ると円形、横から見ると三角形の黒いやつ。薄い鉄、革、木などでできでいて強固では無い、銃弾を防ぐヘルメットのような役には立たない。武将たちは兜を被っている。兜は重い分、ヘルメットの役にはまあまあ立つものと思われる。
 姫が薙刀を手に敵を迎え撃つ際、彼女は兜も陣笠も被らない。

 「姫、危のうございます。兜を被りなさりませ。」
 「髪を結うておる。頭が大きくて兜など入らぬわ。」
 「ならば、陣笠だけでも被りなさりませ。」
 「たわけ、陣笠など足軽、雑兵が被るもの、わらわが被れるものか!」
 「いや、しかし、それでは鉄砲も弓矢も防げませぬ。」
 「えーい、煩い!白い手ぬぐいを持って参れ、気合で矢も鉄砲も防いで見せるわ。」

  なんてことがあったかどうか、少なくとも私がこれまでに観た「戦国時代を舞台にしたテレビドラマや映画」でそういうセリフを聞いたことは無い。が、私がこれまでに観た限りで言えば、姫、に限らず、戦場での女たちはたいてい白い鉢巻を締めている。

 ヒメジンガサハムシは「お姫様の陣笠のような形をしたハムシ」という意味では無い。ヒメは姫だが「お姫様」では無く、「小さなもの、可愛らしいもの」を喩えた姫。その通り体長5ミリ内外と小さい。可愛いかどうかは人それぞれの感性による。

 日本髪に上手く収まるような形で、兜のようにそれなりの厚みがある陣笠を当時発明していれば、姫、に限らず、戦場の女たちに売れたかもしれない、かな?

 
 タテスジヒメジンガサハムシ(縦筋姫陣笠葉虫):甲虫目の昆虫
 ハムシ科 琉球列島、台湾、フィリピン、インドなどに分布 方言名:不詳
 名前の由来、ハムシは広辞苑に「コウチュウ目ハムシ科の昆虫の総称・・・成虫・幼虫ともに植物の葉を食害」とあり、「葉を食害」でハムシ(葉虫)なのであろう。ジンガサは『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「成虫の形が戦場で武士がかぶった陣笠に似ているため」とあった。ヒメは小さいから、タテスジは上翅に黒い縦筋があるからであろう。
 2006年4月に本種とよく似た虫の写真を撮っているが、それには縦筋が無くて、本種の親戚であろうと思っていた。が、『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「上翅中心部は金緑色で黒紋を有するが、なかには黒紋のない固体もいる」とあって、それは黒紋のない個体ということなのであろう。2012年8月に黒紋のある個体を見つけた。
 体長は5ミリ内外。成虫の出現は5月から10月。寄主はサツマイモ、ノアサガオなどのヒルガオ科植物。死ぬと、光沢のある金緑色は光沢の無い黄色に変わるとのこと。
 
 筋無し

 記:2013.6.8 ガジ丸 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行