ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

残留農薬の留まる所

2012年02月03日 | 通信-環境・自然

 先週の『テーゲーも大概に』の続き。
 先々週土曜日、大宜味村の有機無農薬栽培農家Tさんを訪ねた。鹿児島から遊びに来ていたN、最近家庭菜園を始めたO夫妻、従姉一行(60半ばのオバサンたち6人)の総勢10人で押しかけたため、Tさんの家には入り切らず、Tさんの仲間であるIさんという有機無農薬栽培農家に案内され、お二人から興味深い話をいろいろ聞く。
 昨年12月に農業講習を受けて、「農薬化学肥料は安定的生産のために必要です」と県の農業試験場の講師達が口を揃える中、「農薬も化学肥料も土地を疲弊させるだけ」と無農薬有機栽培農家の講師のみが異を唱え、それに勇気付けられた私も「そうだ、やはり無農薬有機栽培でなければならぬ」と決意し、今回のTさんIさん訪問となった。

 「出荷の前日に農薬かけている農家もある」には60半ばのオバサンたちだけでなく、テーゲーで生きている私も「なんてこった!」と驚いたが、さらにTさんは、
 「減農薬と謳っているのも怪しいよ。薄い農薬10回を濃い農薬1回に減らしたという意味かもしれないからね、農薬は土壌に残留するよ、作物がそれを吸収したら表面だけじゃなく中身に農薬が入っていることだからね。」とも言う。
 「バナナなんか出荷前に農薬にどぶ漬け(農薬のプールに浸されるってこと)されるからね、私はそれを知ってからバナナが食えなくなったね。」とIさんが言う。
 栽培している頃からたっぷりと農薬を散布し、その農薬が土壌に残留し、土壌の農薬を植物が吸って、果実に農薬が濃縮されているとしたら、バナナは外から内から農薬を吸収した挙句、さらに出荷前に農薬どぶ漬けされているのだ。あな恐ろしや、だ。

 IさんやTさんが語る「無農薬有機栽培が人間の健康にとっていかに大事であるか」ということについては、「そうかもしれんなぁ」とは思うが、元より健康な私は「多少はいいんじゃないの、その辺はテーゲーさぁ、無農薬有機ばかりっていっていたら、食いたいものが食えないし、お金も余分にかかるし」と考えていて、実際に自分が買う野菜も無農薬有機を選ぶようにしてはいるが、割合にするとそうでないものがずっと多い。
  自分の畑の野菜は無農薬有機にしようとも当初は決めていたが、害虫の多さに負けて農薬を1度散布しているし、雑草の多さに負けて除草剤を数回散布している。農薬を散布したのは去年の11月頃、キャベツやカリフラワーに。除草剤を散布したのは去年の春から夏までの3、4回、それも畑ではない箇所、通路とか樹木の下、枯れ草置き場などで、土中で分解して畑に使用しても安全であると謳われている除草剤を使った。
 「畑に使用しても安全」にTさんは疑問を呈した。「植物を殺す毒物が土中に入ると安全なものに分解すると言ったって、その安全の基準が不明だ」と言う。基準、10グラムなら安全だけど100グラムは危険とかいう基準のことだろうか?

 先週、映画を観に行った。Tさんに勧められた映画『沈黙の春を生きて』。米軍がベトナムに散布した枯葉剤の影響を描いたドキュメント。その中に枯葉剤散布作戦を行う際の米軍のコメントがあった。「敵が隠れる森林を枯らすが、人体には無害である」と。農薬の溜まる所は人体だ、ベトナムでは今も苦しんでいる人が多くいるようだ。
          

 記:2012.2.3 島乃ガジ丸


セスジスズメ

2012年02月03日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 理想の死に様

 「生きている時はピンピンしていて死ぬ時はコロリと死ぬ」ことをピンコロと言うらしい。私が参加している模合(相互扶助的飲み会)でも「死ぬ時は元気なままで死にたいなぁ」という話はたびたび出る。親の介護をしているKが「そういうのピンコロって言うんだよ」と教えてくれた。「誰もがそうありたいと思っているよ」と付け加えた。
 明日かもしれないけど、まあ、日本人男性の平均寿命を生きたとして2、30年後には来るであろう私の死、私ももちろん、ピンコロでありたいと思っている。

 そのころはたぶん、六畳ほどの広さしかない畑小屋に住んでいる。雨の日は文章を書いたり、絵を描いたりしている。そうでない日は畑作業をしている。たぶん、ずっと独居老人だ。毎日のほとんどを、一年のほとんどを独りで暮らしている。
 そんなある日、しゃがんで畑の草抜きをやっている最中、左手に草の葉を掴み、右手に持ったヘラ(草抜きなどに用いる沖縄の農機具)をその根元に突き刺した格好で、私は動かなくなっている。数羽の雀たちが私の背中でチュンチュン鳴いている。

 セスジスズメは、身近な蛾ではもっとも大きく、目立つ。その幼虫も大きく目立つ。目立つから見る機会が多いのかもしれないが、よく出会う蛾の一つだ。
 セスジは背筋という意味だ。それから「背筋が凍る」という言葉も思い浮かんだが、私の畑によくやってくる雀たちもまた思い浮かび、上記の話を思い付いた。

 セスジスズメ(背筋雀):鱗翅目の昆虫
 スズメガ科 日本、中国、インド~オーストラリアに分布 方言名:ハベル
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』に名前の由来があった。「腹部背に2本の銀白色帯が走り、和名はそれに由来する」とのこと。スズメはスズメガ科だから。そのスズメガ、広辞苑に雀蛾とあったが、何で雀なのかは不明。体の色模様がスズメに似てなくもないが。
 前翅長29~35ミリと割合大きくて目立つので私は何度か出会っている。「夕刻に訪花し、夜間に灯火に集まる」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とあるが、私は出会うのはいつも昼間。屋内の窓にへばりついていたりする。成虫の出現時期は5~10月。
 成虫にも何度か出会っているが、本種の幼虫にはそれの10倍くらい出会っている。畑の雑草の根元などに潜んでいて、草抜きする時によく見かける。幼虫の大きさ、ちゃんと計ったことは無いが、終齢ともなると100ミリを超える。黒い肌に水玉模様が2列に並んでいて見た目も目立つ。食草はホウセンカ、サトイモ、ヤブカラシなど。
 
 成虫   
 
 幼虫1  
 幼虫には1齢とか2齢とかあるようだが、参考文献には詳しく載っていない。
 
 幼虫2  
 これは全体に大きく、水玉も大きいので終齢幼虫かもしれない。

 記:ガジ丸 2012.2.2  →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行