理想の死に様
「生きている時はピンピンしていて死ぬ時はコロリと死ぬ」ことをピンコロと言うらしい。私が参加している模合(相互扶助的飲み会)でも「死ぬ時は元気なままで死にたいなぁ」という話はたびたび出る。親の介護をしているKが「そういうのピンコロって言うんだよ」と教えてくれた。「誰もがそうありたいと思っているよ」と付け加えた。
明日かもしれないけど、まあ、日本人男性の平均寿命を生きたとして2、30年後には来るであろう私の死、私ももちろん、ピンコロでありたいと思っている。
そのころはたぶん、六畳ほどの広さしかない畑小屋に住んでいる。雨の日は文章を書いたり、絵を描いたりしている。そうでない日は畑作業をしている。たぶん、ずっと独居老人だ。毎日のほとんどを、一年のほとんどを独りで暮らしている。
そんなある日、しゃがんで畑の草抜きをやっている最中、左手に草の葉を掴み、右手に持ったヘラ(草抜きなどに用いる沖縄の農機具)をその根元に突き刺した格好で、私は動かなくなっている。数羽の雀たちが私の背中でチュンチュン鳴いている。
セスジスズメは、身近な蛾ではもっとも大きく、目立つ。その幼虫も大きく目立つ。目立つから見る機会が多いのかもしれないが、よく出会う蛾の一つだ。
セスジは背筋という意味だ。それから「背筋が凍る」という言葉も思い浮かんだが、私の畑によくやってくる雀たちもまた思い浮かび、上記の話を思い付いた。
セスジスズメ(背筋雀):鱗翅目の昆虫
スズメガ科 日本、中国、インド~オーストラリアに分布 方言名:ハベル
『沖縄昆虫野外観察図鑑』に名前の由来があった。「腹部背に2本の銀白色帯が走り、和名はそれに由来する」とのこと。スズメはスズメガ科だから。そのスズメガ、広辞苑に雀蛾とあったが、何で雀なのかは不明。体の色模様がスズメに似てなくもないが。
前翅長29~35ミリと割合大きくて目立つので私は何度か出会っている。「夕刻に訪花し、夜間に灯火に集まる」(沖縄昆虫野外観察図鑑)とあるが、私は出会うのはいつも昼間。屋内の窓にへばりついていたりする。成虫の出現時期は5~10月。
成虫にも何度か出会っているが、本種の幼虫にはそれの10倍くらい出会っている。畑の雑草の根元などに潜んでいて、草抜きする時によく見かける。幼虫の大きさ、ちゃんと計ったことは無いが、終齢ともなると100ミリを超える。黒い肌に水玉模様が2列に並んでいて見た目も目立つ。食草はホウセンカ、サトイモ、ヤブカラシなど。
成虫
幼虫1
幼虫には1齢とか2齢とかあるようだが、参考文献には詳しく載っていない。
幼虫2
これは全体に大きく、水玉も大きいので終齢幼虫かもしれない。
記:ガジ丸 2012.2.2 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行