ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

美味い物は高価である必要は無い

2012年02月17日 | 通信-社会・生活

 最後に好きな物を好きなだけ食っていいという最後の晩餐を想像した。んがっ、「あんた明日死ぬから、これが最後の飯だ」という状況に私が置かれるという理由が思いつかない。もしも、重い病気で医者からそう宣告されたとしたら、重い病気なので好きなように食事はできないだろうし、体も食事を受けつかないであろう。
 ならば、と一つ思いついた。私は死刑囚で明日が刑の執行日であるという場合。私が死刑囚になる・・・「それは無い」とは言えない。日本が7、80年前の社会情勢みたいになって戦争へ突き進む中、反戦運動をして捕まって、で、死刑になるという可能性は0パーセントでは無い。八重山の教科書問題を思うと、戦争を起こした当時の日本を肯定するような組織が平和大好きの沖縄にまで影響を及ぼすようになっているみたいだし。

 話がちょっと逸れた。まあ、とにかく体が「快食できる」というほどに元気な状態であり、そして「これが最後の飯」を考えた場合、私は何を選ぶだろうか?
 和牛の高級霜降りステーキ、高級フランス料理のフルコース、高級料亭の日本料理なども魅力があるだろうが、おそらく、「得することが死ぬほど好きだ」とのたまう友人のK子やE子ならば、できるだけ高価なものを選択するであろうが、私は違う。
  私なら普段食べ慣れていないものよりは、日常口にしていて「こりゃあ美味ぇや」と思っているものを選ぶ。「こりゃあ美味ぇや」と思っているものはたくさんあるが、その中から一回の食事分を選ぶなら、先ずは玄米のごはん、味噌汁、漬物が基本だ。パンとかコンソメスープとか、ドレッシングのかかった生野菜のサラダなんてのは選ばない。
 味噌汁に注文をつけていいなら、豚汁にしたい。豚バラ肉とゴボウ、ダイコンなど具だくさんの味噌汁、これは沖縄の味だと思う。母の味でもある。漬物に注文をつけていいなら、糠漬けにしたい。糠漬けなら何でもいいが、いつも食べ慣れているキャベツ、ハクサイ、キュウリ、ナスなどが良い。ニンジンやカブも好きである。
          

 さて、玄米のご飯、豚汁、糠漬けの基本が揃って、もう一品おかずを選ぶなら、ゴーヤーチャンプルー、ナーベーラーウブシー、ラフテーなどの沖縄料理を差し置いて、アジの開き、目刺などの普段食べ慣れているものを棚に上げて、・・・なんてあれこれ考えずとも私の答えは決まっている。生サバの七輪の炭火による塩焼き。
  最後の飯に酒を好きなだけ飲んでも良いとなればこれ以上の幸福は無い。酒は何にするかというと、まあ、いろいろ飲みたいのだが、1種だけ選べと言われたら、沖縄の銘酒泡盛を差し置いて、ワインも何十万円の代物であったとしても棚に上げて、日本酒を私は選びたい。できれば純米大吟醸にしたい。それをせめて四合は頂きたい。
 サバは、沖縄近海では獲れないようだが、生の、刺身で食っても美味いという奴の、その真ん中あたりの太い個所を切り身にして七輪で焼き、腹側の脂の多い個所はご飯のおかずにして、背側の比較的淡白な部分は酒の肴にする。
 先ずは、酒を一口飲んで、「あー美味ぇ、生きてて良かった」と神に感謝し、サバの背側を一口頬張って「あー美味ぇ、元気で良かった」と幸せに浸る。
 最後はそんな美味い物を食ってから死にたい。「食い物は美味けりゃいいんだ、高価である必要は無い」と、粗食を始めてから数年を経てつくづく思うのである。
          

 記:2012.2.17 島乃ガジ丸


オオトモエ

2012年02月17日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 しっぽを曲げたおたまじゃくし

 「ともえ」を広辞苑で引くと「鞆(とも)の側面を図案化した文様」とあり、漢字もそこから鞆絵とある。漢字はもう一つ巴もあり、一般的にはその字を多く見る。
 「巴と言えば・・・巴御紋ってよく聞くなぁ」と思い出し、「何のことだっけ?」と調べてみる。巴御紋、正式にはヒジャイグムン(左御紋)と言い、琉球王家の紋章とのことであった。左巻きの三つ巴である。そういえば、器にそのような紋があったり、レコードレーベルに左巻きの三つ巴紋をロゴマークにしたゴモンレコードなんてのもあった。
 三つ巴というとまた、「三者がからみ合って対立すること」(広辞苑)という意味もあり、「三つ巴の戦い」なんていう言葉もよく耳にした。よく?どこで耳にしたかは記憶に薄いが、中国の『三国志』だったかもしれない。魏・呉・蜀の三つ巴。

 オタマジャクシは御玉杓子と書き、汁を掬う調理器具のお玉に形が似ているからその名がある。オタマジャクシのしっぽが真っ直ぐの場合はその通りだと私も思うが、しっぽを曲げた時(泳いでいる時はよく曲げている)は巴の形だと私は気付いた。
 巴が一つならば、その形はオタマジャクシに似ているということが判明したが、今回紹介するオオトモエのトモエが巴と何の関わりがあるかは不明。

  オオトモエ(大巴):鱗翅目の昆虫
 ヤガ科 本州~琉球列島、東南アジアに分布 方言名:ハベル
 名前の由来は資料が無く不明。トモエは巴、または鞆絵と書き、「鞆の側面を図案化した文様」(広辞苑)のこと。鞆って何だ?と思い、調べると「弓を射る時に、左手首内側につけ、弦が釧などに触れるのを防ぐ、まるい皮製の具」(〃)とのこと。釧(くしろ)って何だ?とまた思い、調べると「装身具の腕輪」(〃)とのこと。
 ところが、本種の体の模様に巴模様は、私が見る限りではどこにも無い。幼虫が特異な形をしていると文献にあるので、幼虫が巴の形をしているのかもしれない。
 前翅長46~49ミリと大型のガ。ヤママユガ科にはこれより大きいものがいくつもある、ヨナグニサンにいたっては前翅長130~140ミリと3倍近くの大きさだ。それでも前翅長50ミリ近い本種は林の中でよく目立ち、私もすぐに気付いた。成虫の翅の模様は地域差があり、個体差もあるとのこと。成虫の出現時期は4~11月。 
 幼虫は「頭、胸部が小さく、腹部が肥った特異な形をしている」とある。ぜひ見てみたいが、まだお目にかかれていない。食草はサルトリイバラ類。
 
 翅表
 
 翅裏

 記:ガジ丸 2012.2.2  →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行