ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

前例に則って

2004年11月12日 | 通信-政治・経済

 選挙で、自分の意志に反した投票をかつて一度だけ経験している。従姉の友人が県議選に出るということで、彼女にその候補者への投票をしつこく頼まれた。私もしつこく断ったが、目下には居丈高になる性格の人なので、強引に押し切られた。屈辱だった。
 先月の平日、職務中のある日の午後に、「今日6時半から壺川の○○で会合がある。出るようにと社長が言っていた。」と部長に言われた。「そんな急に言われても」と思ったが、業務命令(と言っても零細企業に残業手当は付かない)ならばしょうがない。何の会合かも知らされず、指定された場所に指定された時間に行く。屈辱を感じながら。
 その会合は、ある選挙立候補者の激励会であった。会社の属する業界が主催していた。業界団体が主催する選挙がらみの激励会などというものがある、ということは知っていたが、そういった会合に参加するのは、私は初めてだった。個人の思想信条の自由を無視して、社長が社員に命令する形である政党の支持をするなんて、今の時代でもあるんだ、という驚きと、何で俺が支持もしない立候補者の激励会に出なくちゃあいけないんだという憤りとを感じた。ここにいる労働者の大半は業務命令でしょうがなく参加しているのだろう。これって、もしかして選挙違反になるんじゃないの?と問いたくもなった。
 前例に則って会は進行する。立候補者本人がしゃべる前に、業界のお偉い方々が応援演説に立つ。そして、長々と無駄口をたたく。ほんとーーーに長々とつまらない話をしゃべり続ける。前座4名、後締め1名の都合5名様。5名足して5分で済むような、同じような内容を繰り返し繰り返し話す。我が身の自慢を交えながら話すもんだから余計に長くなる。労働者たちはみな立ちっぱなしでそれを聞いている。腹が立ってきた。
 ところが、立候補者本人の演説は、15分に満たないほどの時間だったが、話し方が上手く、内容も簡潔にまとめられていた。問題点がはっきりしていて、その問題にどう対処したか、これからどう対処するかを具体的に解りやすく説明した。1時間45分の退屈な時間にあった内容の倍くらいの質を、たったの15分で話した。
 激励会はこうあるべき、などといった考えは無くしてもいいのではないか。前例に則らなくてもいいのではないか。初めの挨拶があって、立候補者の話があって、締めの挨拶があって都合30分で終わらせてもいいのではないか。その方が立候補者本人の魅力が表現されやすいのではないか。立候補者のたったの15分の話で、私には彼の考えや政治姿勢がよく伝わった。残りの1時間45分は、彼の魅力を半減させただけに過ぎない。
 激励会はまた、社長が社員に参加を強制するなどといった前例にも則るべきでは無い。個人の思想信条を捻じ曲げるなんて、けして許されることでは無い。それは、強姦にも似た屈辱の行為だ。人は、少なくともその心は、自由であって然るべきものだと思う。
 那覇市は明後日、市長選と市議選の投票日。誰が当選しようが落選しようが構わないが、有権者それぞれが自分の自由意志で投票できるような沖縄であって欲しいと願う。

 記:2004.11.12 ガジ丸


「地雷を踏む思いで」の追記

2004年11月12日 | 通信-その他・雑感

 先々週載せた「地雷を踏む思いで」について、先週、友人からメールがあった。

 ところでガジ丸通信の記事ですが、最新の「地雷を踏む思いで」は後半何のことを指して言っているのかよく判りませんでした。イラクでテロ集団に斬首された証生さんのことでしょうか?新潟の土砂崩れの優太君救出の話が頭なのは読んでいて判りましたが、後半部分が正直な処、よく判りませんでした。

 “何を言っているかよく判らない”ことの言い訳をその場で書いて、返信する。その返信に対する彼の返信メールが来た。

 家内も伊波さんのメールを読んでとても良かったので、このメールをこのままHPに載せたらよいのではないかと言ってました。

 「地雷を踏む思いで」を読んで、彼と同じような疑問を持たれた方がきっと、他にもいるのだろう。というわけで、彼と彼の奥さんからの助言を聞き入れて、以下に彼に送ったメールをそっくり載せる。一個人の生死を題材にして、ガジ丸の軽い文章で表現し、それを公にする、ということに怖さはあるが、
 故人の冥福を祈り、御家族、関係者の方々の心痛を察し、お悔やみ申し上げます。
という一文で持って、許していただきたい。


   奥歯に物が挟まって

 「地雷を踏む思いで」へのご指摘、どうもありがとう。
 後半部分は、“テロ集団に斬首された証生さんのこと”です。
 ブッシュのイラク攻撃には大反対で、自衛隊のイラク派遣にも疑問を持っていたので、若者の無謀な行動とは思っていても、それを正面切って非難することができず、奥歯に物が挟まったような書きようになってしまった。
 テロ集団を擁護するようだが、鼠が虎と戦って勝つには、どんな卑怯な手段を使ってでも、と思うのは当然なこと。だから、短パン姿で、金も持たず、周りの制止も聞かずイラクへ踏み込んだ若者には「バカか!」という感想が先立った。
 イラク戦争は間違っている。したがって、自衛隊派遣も間違っている。とは思うのだが、だからと言って、テロ集団の脅しによる自衛隊撤退は、これも良くないことであると私は思う。小泉首相もきっと脅しには屈さないだろう。自衛隊は撤退しないだろう。そして、若者はきっと命を失うだろう。そう予想されたので、死者を鞭打つような「バカか!」という感想は、素直に書けなかった。
 もう一つ。イラクで何が起きているかこの目で確かめたいという気持ちは私にもある。あるけれど、オジサンにはイラクまで行く情熱は無い。我が身の危険を顧みず、周りに被害が及ぶことも承知で、なお道を突き進む。そんな情熱こそが世界を変える力になるのだと思う。明治維新の坂本竜馬のように。だから、若者の情熱を自堕落なオジサンが簡単に非難しても良いものかどうか、という躊躇もあった。

 記:2004.11.12 ガジ丸