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ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ミツヤヤシ

2017年07月25日 | 草木:ヤシ竹特殊類

 結婚間近の友人Yは顔が大きい。小顔流行りの昨今ではもてないタイプである。でも彼は、がっしりした筋肉質タイプの体をしているので、全体的にはまあまあバランスが取れているといっていい。乳牛ではなく、闘牛の牛といった感じ。
 離婚間近の友人Mも顔が大きい。彼もまた、小顔流行りの昨今ではもてないタイプである。でも彼は、ぽっちゃりした脂肪質タイプの体をしているので、全体的にはまあまあバランスが取れているといっていい。食用の白豚といった感じ。
 かくいう私もまた顔が大きい。同じく、小顔流行りの昨今ではもてないタイプである。さらに私は、どちらかというと痩せて(身長170、体重60)いるので、全体的なバランスが取れているとは言い難い。痩せていて顔が大きいというのは、動物にはなかなかいなくて、喩える動物も見つからない。まあ、まねきん猫といったところか。
 江戸時代は、歌舞伎役者の人気者がそうであったように、顔の大きいことは良い事であったようだ。小顔が流行りだしたのも最近のことであろう。そのうちまた、大顔のもてる時代がやってくるに違いない。それまで生きていればいいんだが・・・。

 ヤシの仲間は小顔(葉の部分を顔と見立てて)が多いのだが、今回紹介するミツヤヤシは珍しく顔の大きいタイプ。でも、幹が太く、それなりの高さもあるので、上下のバランスは取れていると思う。友人Yのようながっしりタイプと言って良い。なわけで、ミツヤヤシはウチナーンチュにもてている。あちこちの街路、公園に多く使われている。
 
 ミツヤヤシ(三ツ矢椰子):街路・公園
 ヤシ科の常緑中木 マダガスカル原産 方言名:なし
 幹からの葉の出方が、上に向かって3方向に列を作って出ているのが特徴。そこから三ツ矢という和名となっている。
 他の多くのヤシは全体的に子分数、最近流行りの小顔、つまり、全体的には葉の占める部分が小さいのであるが、ミツヤヤシはでっかい顔の歌舞伎役者といった風。人間としては女に持てない形かもしれない。が、樹木としてみれば、バランスの取れたカッコいい姿である。沖縄へは比較的新しく(1970年頃)導入されたヤシとのこと。
 高さ5mほどに留まるので民家の庭にも使える。ただし、上述したように葉の広がりは高さに比べて大きい。周りに邪魔とならないような場所を選ぶ。陽光地を好む。

 記:島乃ガジ丸 2005.12.20 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行


マニラヤシ

2017年07月25日 | 草木:ヤシ竹特殊類

 家から金曜日の職場に行く途中に琉球大学がある。広いキャンパスにはいろいろな植物が植栽され、または自生しているので、植物の写真を撮り集めている私には魅力的な場所である。しかし、このガジ丸HPを立ち上げてから約1年半になるが、私が琉球大学へ植物の写真を撮りに行ったのは、まだたったの2回しかない。キャンパスが広すぎるのである。半日費やしたとしても、全体の10分の1も回れないだろう。その上、どこにどんな植物があるか分らないので、無計画に歩き回ると無駄足が多いと思われるのである。
 そんな無駄足を覚悟して先日、2回目の琉球大学キャンパス散策を決行した。3時間歩いて撮った写真は5、60枚、そのうち使えそうな写真は20枚。そのうち名前の判明したものは植物が5種、動物が3種であった。
 判明した植物の一つにマニラヤシがあった。ちょうど運良く実が付いていたので、マニラヤシであることが判明したのであるが、マニラヤシという名前そのものは、以前から知っていた。マニラという名前に親しみを持っていたからである。若い頃通っていたスナックに、キャサリンという名の若い女性がいた。彼女は陽気で、上手な日本語でよく話をした。フィリピン人であった。フィリピンの首都マニラの出身であった。
 
 マニラヤシ(まにら椰子):公園・庭園・鉢物
 ヤシ科の常緑中木 フィリピン原産 方言名:なし
 その名の通りフィリピン原産のヤシ。マニラはフィリピン共和国の首都。ルソン島(といっても、地理の苦手な私にはそれがどこにあるか不詳)にある。英語名もManila palmだが、別名としてChristmas palmとある。3センチほどの実が総状に多数つき、それが熟すると赤くなるので、クリスマスのヤシとなったものと思われる。
 高さ6mほどに留まる比較的小さなヤシなので、民家の庭にも使える。鉢植えの観葉植物としても利用されている。幹には環状紋(竹の節のようなもの)がはっきりしている。
 
 冬の実
 
 夏の実

 記:島乃ガジ丸 2006.3.15 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行


フイリタコノキ

2017年07月25日 | 草木:ヤシ竹特殊類

 地元の人間にも観光客にも人気のある、ジンベイザメやマンタで有名な、大きな水槽がある水族館で有名な国立沖縄海洋博公園、その敷地内には多くの植物が植えられている。観光客は水族館が好きだが、私はその植物の方により興味がある。
 海洋博公園の敷地はとても広いので、植物の写真を撮りながらくまなく回るとなると、朝早くから夕方暗くなるまでかかると思う。海洋博公園は私の家から遠いので、朝早く行くことも、夕方暗くなるまでいることもなかなかできない。さらに、海洋博公園は私の家から遠いので、出かける機会もなかなか無い。倭国から友人知人が来て、「ちゅら海水族館へ行きたい」と頼まれた時などに限られる。そんな機会、ここ10年で3度だけ。
 同行者がちゅら海水族館を見学している間、できれば私は水族館では無く、敷地内の植物たちを見学したいのだが、3度の内、1度だけそれを許された。同行者がちゅら海水族館を見学している間というのはせいぜい2時間程度だ。敷地内をくまなく回ることはとうてい不可能。で、水族館の周囲をブラブラする。でも、たったそれだけでも、多くの植物に出会い、初対面のものにも出会う。フイリタコノキもその一つ。
 
 フイリタコノキ(斑入り蛸の木):添景・鉢物
 タコノキ科の常緑中木 原産分布はポリネシア 方言名:なし
 タコノキという名は、オガサワラタコノキやビヨウタコノキの頁でも書いているが、幹から太い気根を多く出している形が蛸に似ているから、とのこと。本種はそれらのタコノキと同属で、葉に斑が入っていることからフイリ(斑入り)と名がつく。別名をシロフタコノキと言うが、斑の色が白い(黄色もある)ことによる。
 公園などで見かけることが多いが、高さは5mほどに留まるので、民家の庭の添景としても使える。また、観葉植物の鉢物としても利用される。タコノキ類が概ねそうであるように、本種も性質が強く、耐乾湿性があり、痩せ地でも育つ。
 同属のオガサワラタコノキやビヨウタコノキと同じく本種もまた、蛸のように気根を出していている。本種はまた、斑の入った葉も観賞対象となっている。斑の色、模様は種類によって異なる。棘無しもある。葉が茂るので適宜葉落としする。
 学名はビヨウタコノキがPandanus utilis Bory
 オガサワラタコノキがPandanus boninennsis
 アダンがPandanus tectorius
 本種はPandanus laevis Kunth cv. 'Variegatus'

 記:島乃ガジ丸 2010.2.15 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
 『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
 『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
 『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
 『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
 『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
 『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
 『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
 『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行


ビンロウジュ

2017年07月23日 | 草木:ヤシ竹特殊類

 ある年ある日、写真のプロパティーを見ると2006年2月12日、末吉公園でビンロウジュを発見した。それに名札はついていなくて、本当にビンロウジュなのかどうか、うっかりものの私としてはいくらか不安もあるが、その幹肌の状態からしてたぶんビンロウジュ。写真を撮る。参考文献と照らし合わせる。
 文献によると、ビンロウジュはのっぽでスリムなヤシとあったが、末吉公園のものは3mほどしかなかった。それでもビンロウジュ。まだ若いのであれば3mしか無くても何の不思議も無い。文献の写真と幹肌がそっくりなのである。だからビンロウジュ。
 絶対確か、という自信も無く、こうやって発表していっていいのか、と自問する。いいのである、と自答する。たぶん、間違っていたらごめんなさい、で済む話であろう。空は青空だし、風はそよ風だし、蝶々は飛んでいるし、沖縄は、厳しくない。

 それから5年後の2011年2月13日、海洋博公園でビンロウジュを発見した。参考文献の写真と幹肌はそっくりとは言えないが、「のっぽでスリム」についてはその通りであり、さらに、それにはビンロウジュと名札があった。だからビンロウジュ。
 それからさらに7年半後、ヤシ類について改めて調べる機会があって、過去の自分の記事を読み返していたら間違いがいくつもあることに気付いた。だから訂正加筆。
 
 ビンロウジュ(檳榔樹):街路・公園
 ヤシ科の常緑高木 原産分布はインド、マレーシア 方言名:ビンローギー、ビンロー
 アレカという名の本家。英語辞書でarecaを引くと「ビンロウジュ属の植物、特にビンロウジュを指す」とある。Arecaは学名の属名であり、英語のarecaもそこからきているのだろう。英語名は、Areca-nutでビンロウジュを特定し、その果実も指す。漢字の檳榔はビロウとも読み、ビロウ(蒲葵とも書く)のことも指す。私はずっと思い違いをしていたが、ビロウ(蒲葵)は同じヤシ科でも属が違う別の種。
 高さは10~15mほどになる。直立する幹の頂部に葉を叢生する。樹高に比べると葉は小さく、したがって樹冠も狭い。八頭身とか十頭身とかに見える、のっぽでスリムなヤシ。幹には竹のような節がある。
 果実は鶏の卵大できれいなオレンジ色になり、嗜好品となる。キンマ(蒟醤:コショウ科の植物でコショウに似る)の葉に石灰と共に混ぜて、チューインガムのように噛む。英語名の別称であるBetel-nutのBetelは、このキンマのことを指す。
 
 幹(末吉公園)
 
 幹(海洋博公園)

 訂正加筆:2018.9.4
 記:島乃ガジ丸 2006.3.14 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行


ビロウ

2017年07月23日 | 草木:ヤシ竹特殊類

 ヤシ科の植物に方言名のついているものは少ない。自生種が少ないからである。沖縄に自生するヤシ科の植物は、八重山のヤエヤマヤシの他、南西諸島全般に分布するクロツグやビロウなど数種しかない。それらの中で、ビロウはもっとも身近な存在である。ウチナーグチのクバという名前で親しまれている。ビロウという名前は知らずとも、ビロウそのものは知らずとも、クバという名を知っているウチナーンチュは多いはず。
 クバの葉で作られたクバガサ(笠、三角錐の帽子)、クバオーギ(扇)は、子供の頃使っていたし、今でも販売されている。ハルサー(農夫)にはこのクバガサが良く似合う。
 ビロウの木は公園樹としてもよく利用され、あちこちで見ることができる。沖縄では神聖な樹木ともされ、各地のウタキ(御嶽)やハイショ(拝所)に多く植栽されている。

 ビロウとワシントンヤシは、その葉の形状がよく似ている。ビロウの小葉は中途から折れているが、ワシントンヤシの若い葉は折れていない。また、ワシントンヤシは枯れた葉が長く残り幹から垂れ下がっているのも特徴。さらに、「ビロウは葉を付け根から落とし幹肌はなだらかであるが、ワシントンヤシは葉の付け根部分が幹に残って、幹肌が網目模様になっている」などといった違いがあるが、
 ある年のある日、末吉公園を散歩していたら、幹肌がほとんどビロウと変わらないワシントンヤシがあった。それも、たくさんあった。「ずいぶんと背の高いビロウだな」と初めは思ったのだが、それには名札があって、ワシントンヤシと書かれてあった。その隣にはビロウがあって、見比べると、背の高さが違い、葉の横への張り出しが違った。ビロウは低いくせに葉の張り出しが大きく、ワシントンヤシは真分数、今流行の小顔。すらりとしたスーパーモデルのようであった。
     →ビロウとワシントンヤシ
 
 ビロウ(蒲葵)公園・街路
 ヤシ科の常緑高木 原産分布は九州南部以南、南西諸島、他 方言名:クバ
 基本種のシナビロウは中国南部に、ワビロウは九州南部・南西諸島に、オガサワラビロウは小笠原に自生するとある。沖縄で見るビロウの多くはワビロウということであろう。文献にシナビロウ、オガサワラビロウとの違いが書かれていないので、確かなことは言えないが、写真のものもたぶんワビロウなのであろう。
 ビロウというと、下品な私はすぐに尾籠(きたなく、けがらわしくて、人前で失礼に当ること。広辞苑より)の字が思い浮かんでしまうが、漢字は蒲葵と書く。蒲色の葵とはいかなることか、という字の意味を含めて、ビロウの名前の由来については不明。
 ビロウを広辞苑でひくと、檳榔という漢字も出てくる。これはビンロウとも読み、檳榔樹のことを指す。ビンロウジュは同じヤシ科だが、本種とは属が違う。
 ビロウは神木とされ、沖縄の神聖な場所である拝所などに多く見られる。また、その葉は、笠や団扇などに利用される。方言名であるクバの名と共に、クバガサ(笠)、クバオウギ(扇)などは、ウチナーンチュによく知れ渡っている。繊維から縄も作られる。
 高さは10~15mほどに達する。陽光地でよく生育する。また、乾燥に強く耐潮風性があるので海浜地の植栽にも適する。開花期は3月から4月。 
 
 花
 
 実
 
 葉
 
 幹 

 訂正加筆:2018.9.4
 記:島乃ガジ丸 2006.1.7 →沖縄の草木目次

 参考文献
 『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
 『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
 『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
 『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
 『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
 『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
 『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行