沖縄県庁の建物は15年ほど前に建替えられた。元の建物は今とほとんど同じ場所にあったのだが、どんな建物だったか、物覚えの悪い私はほとんど覚えていない。ただ、建物の北側に面した道路沿いの、県庁の隣にあった県議会棟の近くに大きなワシントンヤシが数本あったことは覚えている。
その頃、植物に対する興味はそれほど無かったのではあるが、県庁のワシントンヤシはじつに見事な大きさで、ガッシリとした風格があった。それで名前を覚えた。オキナヤシという別名もあるが、それも覚えた。幹は太くゴツゴツとした肌、大きな葉を垂れ下げたワシントンヤシの姿は、思慮深く人徳の高い翁に見えたのである。
ところが、新しくなった県庁の、北側に面した道路沿いの県議会棟前からはそのワシントンヤシが1本残らず消えていた。
数年後のこと、ある造園屋の人から話を聞いた。県庁のワシントンヤシは切り捨てられたとのことであった。見事な姿のヤシ、廃棄処分となると市民から必ず抗議がある。マスコミにも叩かれる。というわけで、事は秘密裏に進めなければならない。作業は市民にばれないよう、夜中に行われたということである。
大きなワシントンヤシを生かして移植するのには、1本当たり、たとえば100万円かかるとすると、大きなものは廃棄処分にして、2トンダンプに乗る程度の大きさのものを新たに植えれば、3、40万円で済むらしいのである。お金の問題なのであった。
まあ、お金を最優先させる今の世ではしょうがないことなのであろう。しかし、あの見事な姿を廃棄なんて、じつに勿体無いことをしたものである。
ワシントンヤシ(華盛頓椰子):公園
ヤシ科の常緑高木 原産分布は合衆国南部 方言名:ヤーシ(ヤシの総称)
ワシントンという名は英語名のWashington来ていると思われるが、英語名は属名のWashingtoniaから来ているのであろう。Washingtonはたぶん、アメリカ合衆国の首都であるワシントンDCのこと。この植物の原産分布はカリフォルニア南部の他、アメリカ東部も含まれている。最初の発見がアメリカ東部のワシントンDCだったのかも。
別名にペチコートヤシ(英語名Petticoat palmから)という名前もある。枯れた葉が幹についたまま垂れ下がり、それらが何枚も折り重なっている様がペチコート(スカートの形状をした女性の下着の一種)に似ているところからきている。他にシラガヤシ(白髪椰子)、オキナヤシ(翁椰子)という別称もある。これらは、繊維状のものが葉の縁から垂れているところを、白髪を垂らした老人の様に喩えたもの。
一見ビロウと見間違える。ビロウそっくりの掌状の葉を持つからである。ビロウの小葉は中途から折れているが、本種の若い葉は折れていない。また、本種は枯れた葉が長く残り幹から垂れ下がっているのも特徴。さらに、ビロウは葉を付け根から落とし、幹肌はなだらかであるが、本種は葉の付け根部分が幹に残って、幹肌が網目模様になっている。
高さ15mに達する大型のヤシ。幹の直径は1mほどとなり、見た目ガッシリとした風格がある。陽光地を好む。乾燥に強く、耐潮風性もあるので海浜地の植栽にも適する。花序はクリーム色、花は白色、開花期は6月から7月。果実は8月に黒褐色に熟す。
葉
幹
訂正加筆:2018.9.19
記:島乃ガジ丸 2006.1.10 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『沖縄のヤシ図鑑』中須賀常雄・高山正裕・金城道男著、(有)ボーダーインク発行
親しみのあるヤシをまだ紹介していなかったということで、先週に引き続いて今週もヤシ。今週は親しみのある数種の中からアレカヤシ。このページのタイトルがヤマドリヤシとなっているが、それが、アレカヤシの和名の本名となっている。
アレカヤシはその名前で、観葉植物の鉢物として園芸店でよく見かける。若い頃、私もアレカヤシの鉢物を一つ部屋に飾っていた。だから親しみがある。また、アレカヤシは他のヤシとは見た目に大きな違いがあり、若い頃の私でも、アレカヤシをヤシという名前で一括りにしていなかった。その大きな違いとは、アレカヤシが株立ちであること。
アレカヤシの和名の本名がヤマドリヤシであるということは後年知った。ヤマドリヤシとはなかなか面白い名前なので、今回調べてみた。
ヤマドリというと、山取りと書いて造園用語にある。「地植えされた植物を、移植するため、根回し無しにその場で掘り取る」ことを言うが、広辞苑にもある。「植物などを、山の自生地で採集すること」である。
造園用語の山取りにはリスクが伴う。根回し無しということは、移植後の生育が不調になる可能性が高くなるということだ。ヤマドリヤシはそのリスクが少ないからその名前が付いたのかと考えたが、確かに、ヤマドリヤシは移植が難しいということは無い。
ヤマドリというと、もう一つ山鳥も考えられる。山鳥は「山にすむ鳥」(広辞苑)のことだが、ヤマドリヤシの葉は深い緑色で光沢があり、美しい。それを山鳥の羽に見立ててのヤマドリということなのかもしれない。正確なところは不明。
ヤマドリヤシ(山鳥椰子):公園・鉢物
ヤシ科の常緑高木 マダガスカル原産 方言名:なし
ヤマドリヤシにはコガネタケヤシという別名もあるが、それらよりもアレカヤシという名前の方がずっと有名かもしれない。園芸店の観葉鉢物のほとんどにはその名札が付けられている。私もヤマドリヤシではピンとこないが、アレカヤシならすぐにわかる。
アレカという名は、ジャングルを探検していた一行が、「教授、あれが目印の椰子の木です。」、「そうか、あれか。」といった逸話からきている、のでは無く、おそらく、英語名のAreca palmから。もう一つのコガネタケヤシ(黄金竹椰子)は見た目から。全体に明るい色をしていて、幹に節があって竹のように見える。ところが、肝心のヤマドリヤシの由来が不明。山鳥という字は『沖縄園芸植物大図鑑』にあった。
高さは10mほど。陽光を好むが半日陰でも育つ。風を強く受けると葉が枯れるので、風の弱い場所に植栽する。耐陰性があるので室内の観葉植物にも向く。葉に照りがあって美しいので花屋に切り葉としても売られている。花は目立たない。
花序
記:島乃ガジ丸 2008.3.29 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
私の車はスズキの軽乗用車で、買ってから4年8ヶ月ばかりになる。今日までに累計の走行距離は約7200キロメートル。平均すると1年に1600キロメートル走っていることになる。この数字は、友人たちに言わせると相当少ないということである。
私は、出かける時には徒歩か、バス、モノレールを利用することが多い。車は主に通勤でしか使わない。それに、遠出もほとんどしない。ために、走行距離が伸びない。
最近で遠出したのは、車は、義兄が借りて読谷村まで数回。鹿児島の友人Nが借りて、これは恩納村、石川市あたりまで行っている。私が乗っての遠出は去年の秋、Nと一緒に沖縄島南部をぐるり回った時ぐらいである。
南部の佐敷町、知念村辺りの海沿いの国道には、街路樹としてヤシが多く用いられている。ヤシの並木は確か、私が子供の頃からあったように記憶している。ダイオウヤシのような外来種のヤシであったように覚えている。
去年、Nとその辺りを通った時に、知念村に入った辺りの街路樹のヤシが、ダイオウヤシでは無くヤエヤマヤシであることに気付いた。ヤエヤマヤシは八重山に自生するヤシ。幹の部分と葉の部分のバランスが良く、形の整ったきれいなヤシである。沖縄島には自生しないので、街路樹は八重山から運んだものであろう。
その頃、既にガジ丸HPは立ち上げていたが、HPに対する熱心さがまだ十分に無かったようで、ヤエヤマヤシの写真を撮ろうなんて思いつかなかった。最近になって、あーあの時撮って置けばよかったと後悔したのであるが、わざわざ、その写真を撮るだけのために遠出することは、面倒臭がり屋の私にはできないのであった。
が、先月、「八重山スケッチの旅」に出かける。そして、さすが八重山なのである。ヤエヤマヤシはいたるところにあった。写真はいくらでも撮れた。
ヤエヤマヤシ(八重山椰子):街路・公園
ヤシ科の常緑高木 原産分布は石垣島、西表島 方言名:ウラダヤシ・ビンドー
八重山にしか自生していないのでヤエヤマヤシという名。世界でも石垣島と西表島にしか自生しない1属1種のヤシ。姿良く、赤褐色の葉鞘も美しい。
高さ20m、葉の長さ5mに達する大型のヤシなので、民家の庭には使い辛い。八重山から移入して、沖縄本島の公園や街路樹として利用されている。
陽光地を好むが半日陰にも耐える。湿潤地でよく生育するが乾燥にも強い。沖縄の環境に合った丈夫なヤシ。ただ、移植はやや難しい。「米原のヤエヤマヤシ群落」(石垣島)、「ウドンブルのヤエヤマヤシ群落」(西表島)は国の天然記念物に指定されている。
沖縄産
記:島乃ガジ丸 2005.12.4 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
マングローブとは「亜熱帯や熱帯の河口・潮間帯の泥地に発達する特異な植物群落」(広辞苑)のことで、沖縄ではメヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ハマザクロ(マヤプシキ)、ヒルギダマシ、ヒルギモドキなどがその群落を形成している。
この内、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギは同じヒルギ科で互いによく似ている。不勉強の私は、若い頃からマングローブは見ていて、そこにヒルギなる名前の植物があることは知っていたが、どれがヒルギであるかを知らずにいた。不勉強の私はまた、沖縄の植物を紹介するようになったのは2004年のことだが、それから何年も経った2009年になってやっとオヒルギとメヒルギを区別できるようになった。そして、それから2年も経った今年7月になって、やっとヤエヤマヒルギを確認することができた。
私の家から車で20分程も行った所に漫湖(マンコと読む、声に出し辛いだろうが)公園がある。そこにヒルギの群落があることは何年も前から知っていた。年に1回程度は漫湖公園を散策しており、これまで3、4回はヒルギ群落のある個所も訪れている。
そして、そこには二種のヒルギがあることも認識していた。私が認識できるほどに見た目の違いがあったのだ。しかし、そのうちのどれがオヒルギなのかどれがメヒルギなのかは判らない。2009年に別の場所で見たオヒルギとメヒルギから両者を区別できるようになって、「あー、漫湖公園の一方はメヒルギなんだ」と判った。
一方はメヒルギと判ったが、もう一方はオヒルギでは無い。じゃあ何だ?ということで今年7月、ヒルギ3種の花の時期でもあったので漫湖公園に出かけた。漫湖の2種のヒルギは花を付けていた。メヒルギはもうお馴染みの花、もう一方は写真を撮って、家に帰って、図鑑と照らし合わせて調べる。何と、ヤエヤマヒルギだった。
ヤエヤマという名前から八重山地方に生息するヒルギとばかり思っていたので、そうである可能性を考えていなかったのだ。先入観は学問の敵であることを認識した。
ヤエヤマヒルギ(八重山蛭木・漂木):海浜緑化
ヒルギ科の常緑高木 沖縄以南、熱帯アジア、太平洋諸島に分布 方言名:プシキなど
名前の由来については資料が無く、不明。蛭木という字は広辞苑にあった。別の文献に漂木という字があった。沖縄本島以南に生息するが、八重山地方に多いことからヤエヤマと付いたのかもしれない。正確なところは不明。広辞苑にヒルギは「オヒルギ・メヒルギ・オオバヒルギなどの総称」とあって、本種はその一つのオオバヒルギ、私が参考にしている文献ではヤエヤマヒルギが本名で、オオバ(大葉)ヒルギを別名としてある。オヒルギやメヒルギなどに比べ葉が目立って大きいことからその名がある。それとは別にシロバナ(白花)ヒルギという別名もある。これは花の色からきている。
方言名はプシキの他、ピニキともある。
高さは10mほどになり河口汽水域に生息する。マングローブを形成する植物の中では最も塩分に強く、海側に生育する。葉が大きいことでオヒルギ、メヒルギなどと区別できるが、本種はまた、タコノキのように支柱根を出している姿にも特徴がある。幹から多数の気根を伸ばし、海底泥に入りこんで体を支えている。
花色は白、花弁の内側に目立って毛が生えている。開花期は5~7月。果実は卵型をしていて、その下部から細長い莢のような胎生種子を伸ばす。結実期は6~8月。
花
実
根
メヒルギとヤエヤマヒルギ
向かって右、果実の付いている方がヤエヤマヒルギで、左がメヒルギ。ヤエヤマヒルギの葉がずっと大きい。メヒルギの葉は先が丸い。
記:島乃ガジ丸 2011.7.30 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
『花と木の名前1200がよくわかる図鑑』株式会社主婦と生活社発行
大学生の頃だから、もう30年ほども前のこと、小浜島出身の友人Yの里帰りに便乗して、初めて八重山を旅した。石垣島、竹富島、小浜島、そして、西表島を巡った。それぞれの島で、それぞれ印象的な経験がいくつもあった。とても楽しい旅であった。
いくつもあった印象的な事柄の中でも特に記憶に残っているのが、マングローブ。西表島で浦内川を船で上った時に見た。私は感情を表に出すタイプではないので、同行の友人Yは気付かなかったかもしれないが、いたく感動していた。圧倒される緑の迫力だったのだ。「すごい緑量!まるでジャングルだ!」と心の中で叫んでいた。
確かな記憶では無いが、マングローブという名前は以前から知っていた。が、それは植物の名前だとばかり思っていた。マングローブとは、「亜熱帯や熱帯の河口・潮間帯の泥地に発達する特異な植物群落。ヒルギ科などの高木・低木から成り・・・」(広辞苑)のこと。マングローブを形成しているのはヤエヤマヒルギ、オヒルギ、メヒルギなどいくつか(ヒルギ科以外も)の植物であることを、たぶん、この時に知った。
マングローブは地球環境保護のためには大切な植生らしい。そんな大切なものが沖縄にある。西表島のマングローブほど規模は大きくないが、沖縄島にもあちらこちらにマングローブがある。倭国には見られない景色がそこにある。私も、何度も見ている。
いかにも沖縄らしいヒルギ、何度もお目にかかっているヒルギ、最近になってやっとオヒルギ、メヒルギの区別がつくようになったので、紹介できることになった。ちなみに、ヤエヤマヒルギについてはまだ不明。
メヒルギ(雌蛭木・雌漂木):海浜緑化
ヒルギ科の常緑高木 鹿児島以南、南西諸島、熱帯アジアに分布 方言名:ピニキなど
名前の由来については資料が無く、不明。蛭木という字は広辞苑にあった。蛭の生息する場所に多い木ということだろうか?広辞苑には紅樹という字もあったが、これは、花の赤いオヒルギを指しているものと思われる。別の文献に漂木という字があった。漂う樹、海に漂うということだろうか?正確なところはこちらも不明。
別名をリュウキュウコウガイ(琉球笄)と言う。コウガイ(笄)とは「髪をかきあげるのに用いる具」(広辞苑)とのこと。おそらく、果実の形が似ているのであろう。
沖縄の各地に自生がある。その土地土地で呼び名があるようで、方言名はいくつもあって、ピニキの他、プシキ、インギー、ピシキなどとある。
高さは5~10mほどで、自然に良い樹形となる。種子はオヒルギと同じく胎生種子、樹上で種子が発芽する。発芽した種子は落下して地上に突き刺さり、そのまま根を出し繁殖する。結実期は4月から7月。花色は白、開花期は初夏。
河口の汽水域や穏やかな海岸に自生し、その性質から海浜地緑化、海岸保全などに利用されるが、他のヒルギに比べると耐潮性が弱いので、河口域に向く。
オヒルギとの違いは花色、花の付き方、根の形状(オヒルギは支柱根がある)、葉が小さく先が丸いなど。学名は、Kandelia obovata Sheue, H.Y.Liu et W.H.Yong
花
実
根
メヒルギとヤエヤマヒルギ
向かって右、果実の付いている方がヤエヤマヒルギで、左がメヒルギ。ヤエヤマヒルギの葉がずっと大きい。メヒルギの葉は先が丸い。
記:島乃ガジ丸 2009.10.24 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行