昨日(7月2日)、那覇新都心の辺りを1時間ばかり歩いた。木陰の少ない街中、強烈な日差しが照りつける中、くっきりした自分の影を見ながらトボトボ歩く。
新都心から古島へ渡る。渡る道は国道330号線。ウチナーンチュにはバイパスという名前で親しまれている。その道の上、安里十字路から古島交差点までの間は中央にモノレールが走っている。そのモノレールの真下、中央分離帯にタコノキが列植されていた。潮風に強いタコノキは海辺の街路樹としてよく用いられるが、また、排気ガスなどの空気汚染にも強いので、こういった街中の街路樹としても使われる。
国道330号線のタコノキは、その2本に1本は枝から多くの実をぶら下げていた。枝は横に広がり、気根はそう多くない。ビヨウタコノキであろう。ビヨウタコノキの写真は既に海岸端の公園に植栽されたものがアルバムにあるが、こっちのたくさん実をぶら下げた姿がカッコいい。写真を撮ろうかと思ったのだが、330号線は交通量が多く、カメラを構えて5分経っても車の途切れることが無い。カメラを構えて5分も経つと、直射日光が堪える。午後2時の太陽は厳しかった。写真は諦める。
ビヨウタコノキ(美葉蛸の木):公園樹、防潮林
タコノキ科の常緑高木。原産分布はマダガスカル。方言名:無し
タコノキという名は、幹から太い気根を多く出している形が蛸に似ているところからきている。ビヨウは美葉で、葉が美しいという意味。葉の縁に赤色の棘があり、アカタコノキまたはフチベニタコノキとの別称もある。漢字でタコノキは露兜樹ともあった。
同属のアダン、オガサワラタコノキ同様、造園木としては特殊類に分類される。陽光地を好む。耐潮風性が強いので、海岸端の植栽に向くという性質も他の2種と同じ。
アダンやオガサワラタコノキに比べ枝の分枝は少なく、気根も少ない。樹形が見事に整って観賞価値があり、また、ビヨウ(美葉)という名の通り葉も美しい。
オガサワラタコノキよりさらに高くなり10mほどに達する。葉には鋭い棘があるが、その棘を除去して屋根葺き、かご、敷物、手芸品として利用される。
花
実
訂正加筆:2011.1.15
記:島乃ガジ丸 2005.7.3 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
去年の6月、現場仕事に出て、昼飯を広い駐車場の木陰で取った。木陰を探してその駐車場を歩いている時に、甘い匂いがすることに気付いた。その匂い、初めてでは無い。これまでに何度も嗅いでいる匂いだ。何の匂いかと気になっていたが、近くに匂いのしそうな花は咲いてなくて、ずっと不明なままとなっていた。
その時も、近辺に匂いのしそうな花は無かった。ただ、ある木の下を通った時に匂いは強くなった。その木はトックリヤシモドキであった。トックリヤシモドキは職場の庭にあり、近くの小学校の庭にあり、近くの街路樹にあり、ごく身近な木だ。ただ、トックリヤシモドキの花に芳香があるなんてことは聞いたことが無かった。
甘い匂いが漂う中、トックリヤシモドキを見上げた。花が咲いていた。手の届かない高い位置にあるので、匂いがあるかどうか確かめられない。が、足元を見ると多くの花が落ちていた。小さな花だ。それらを集めて、手に取って匂いを嗅ぐ。何年も前から、何の匂いだか判らなかったあの匂いであった。「お前だったのか!」と心で叫ぶ。
その後、いくつかの文献を読んでみたが、トックリヤシモドキの花に芳香があるなんて記述は無かった。こんなに匂うのに何でだろうと不思議に思う。
花がたくさんつくので、当然、果実も多く生る。果実はオリーブほどの大きさ。これもそう強くは無いが甘い匂いがする。押しつぶしてみると大きな種子があったが、果肉はたっぷりの水分を含んでいた。美味しそうであった。しかし、どの文献にもトックリヤシモドキの果実は食用になるとは書かれていない。で、私も試していない。
トックリヤシモドキだけで無く、同属のトックリヤシにも多くの果実が生る。こういった果実が食料になれば、沖縄の浮浪者は助かると思うのだが、どうなんだろう。
トックリヤシモドキ(徳利椰子擬き):公園
ヤシ科の常緑高木 ロドリゲス島原産 方言名:なし
幹の中央部がやや膨れ、トックリヤシに似ているのでこの名がある。両者は同属で、葉の形、花の付きかたも似ている。全体的には、本種はトックリヤシより幹の膨らみが少なく、背も高くすらっとしているので区別がつく。
陽光地を好む。高さは10mほどになる。小さな橙色の花が房状になって多くつく。花は芳香がある。開花期は3月から6月と文献にあるが、私の経験ではもっと長い。果実も多く生り、水分を多く含んで甘い匂いもするが、食用になるかどうかは不明。
タイワンカブトムシの食害を受ける。
学名は、トックリヤシ、Mascarena lagenicaulis L.H.Bailey
トックリヤシモドキMascarena verschaffeltii L.H.Bailey
花
実
完熟実
並木
記:島乃ガジ丸 2008.4.15 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
ヤシの多くは見た目が似ている。なので、ものの見方が大雑把な私には見分けのつかないものが多くある。その中でも独特な形をしたもの、写真を撮って、図鑑と見比べて何とか判明したものをこれまでに紹介している。
ダイオウヤシは、図鑑を見ただけではその形に独自性があるようには見えない。ただ、その大きさに特徴がある。背の低いうちは他のヤシと区別しにくいのだが、幸いにも、近所にでっかいダイオウヤシがあった。幹の太さ、背の高さ、そのどっしりとした風格は、まさに、大王という名にふさわしい。「これがダイオウヤシだな。」と、実物を見上げながら、私も確信したのであった。
ヤシ科Arecaceaeには、クロツグ属、ビロウ属、ニッパヤシ属、カンノンチク属、ヤエヤマヤシ属、シュロ属などが日本産としてあって、その内、ニッパヤシ属以外の属に含まれるヤシをこれまでに紹介している。外国産では、ココヤシ属、ナツメヤシ属、クジャクヤシ属、トックリヤシ属、ビンロウジュ属、クリサリドカルプス属(ヤマドリヤシ)、ワシントンヤシ属、マニラヤシ属、ミツヤヤシ属などが紹介済みである。で、今回のダイオウヤシ(ダイオウヤシ属)で、しばらく続いたヤシの紹介も一段落。
なお、造園の本を読むと、ヤシの高さは葉頂点、成長点とに分けられている。葉頂点は根元から一番上の葉先までを言い。成長点は根元から葉の生え際までを言う。ヤマドリヤシは葉頂点で高さを測り、他の多くのヤシは成長点で測る。何故そうなのかについては不明。ダイオウヤシは高さ20mほどになると文献にあるが、それは成長点までの高さということになる。近所にあるダイオウヤシはその高さに近い。ただ、ダイオウヤシを葉頂点で測ったとしても、2mほどプラスになる位だ。概ね20mに変わりは無い。
ダイオウヤシ(大王椰子):公園
ヤシ科の常緑高木 キューバ原産 方言名:なし
高さ20mと背が高く、また、葉も大きく、幹の直径も70センチ前後で勇壮な姿をしたヤシ、そこからダイオウ(大王)という名がついている。
陽光地を好み、肥沃で保水性のある土壌で生育が良い。成長は速い。特に、幹の肥大成長が早い。大木になるので広い場所に植栽する。低温に弱いので本土での路地植えは難しいとのこと。花は目立たないが、房状に多くつく。開花期は6月から8月。
タイワンカブトムシの食害を受ける。
記:島乃ガジ丸 2008.4.27 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
元模合(言い訳のできる飲み会)仲間のUが、ドラゴンフルーツ栽培を仕事にするために、勤めていた会社を辞めたのはもう1年以上も前のこと。甘さが足りなくて、さほど人気の無いドラゴンフルーツだが、彼は甘さを増やす栽培法を発見し、その特許出願もしたとのことであった。しかしながらその後、彼の活躍を聞かない。
先日、もうすぐオジー(爺さん)になる友人Hから聞いた話は、彼の店の客で、ウチナーンチュにさんざん騙されて、何千万も損をしたというヤマトゥンチュ(倭人)がいて、その人が今、八丈島(か、どこかその辺)でドラゴンフルーツ栽培を業とし、まあまあ成功しているとのこと。砂地栽培をしたら、従来のものより糖度が増したとのこと。
Uの、特許出願をしたドラゴンフルーツの栽培法も、ひょっとしたら砂地栽培を基本としているのではないだろうか。彼と八丈島の人とどちらが先なのか気になる。
ところが、ドラゴンフルーツはサボテンの一種で、元々が砂地に自生しているものである。砂地でこそすくすくと健康に生育するのである。それを土に植えて、「あんまり甘くないや」などと言う方が、じつは間違っていたのかもしれない。元々あるように育てていけば、元々あるように美味しい果実ができるのであろう。自然が先なのである。
さて、どっちが先かという話では、クロツグという植物も不思議なのである。クロツグはヤシの一種なのであるが、見た目、それとほとんど変わらない種に、コミノクロツグという植物がある。クロツグに比べて果実が小さいからそういう名前なのだが、学名では、元々はコミノクロツグが先にあって、クロツグが後から命名されているようなのである。そうであるならば、コミノクロツグをクロツグとし、クロツグはオオミノクロツグとするべきだと思うのだが、どういうわけで、そうなったのかは不明。
クロツグ(桄榔・桄榔子):公園
ヤシ科の常緑中木 原産分布は奄美、琉球列島、台湾など 方言名:マーニ、マニン
沖縄に自生するヤシの木の一つであるが、参考にしている文献にはあまり詳しいことは書かれていない。クロツグという名が何に由来するか不明で、方言名の意味も不明。
高さ3mなのに、葉の長さも3mある。根元から3メートルの長さの葉が株立ちのように広がるので、狭い場所への植栽は不向き。
花には強い芳香があるという。開花期は6月から9月。
シュロ(棕櫚)の毛で作った縄をシュロ縄といい、同じ毛で作った箒をシュロ箒というが、クロツグからも黒い繊維が採れ、シュロ縄と似た縄、シュロ箒に似た箒を作る。
実
毛
コミノクロツグ(小実桄榔):公園
クロツグと学名がほぼ同じで、性質も同じ。クロツグに比べ実が小さいということだけが異なる。そこから“小実の”クロツグとなっているようだが、学名を見ると、コミノクロツグが先にあって、クロツグはコミノクロツグの変種のようである。
コミノクロツグ Arenga tremula Becc.
クロツグ Arenga tremula Becc. var. engleri
クロツグの実の対比
左手前がクロツグ、右向こうがコミノクロツグ
記:島乃ガジ丸 2005.12.20 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
桜坂劇場がオープンして以来、映画を観る機会が増えた。少なくとも月に1本は観ている。月に1本なんて、映画好きの人に言わせたら屁みたいな数字であろうが、私にとっては例年の倍くらいの数である。
映画にはたいていバスで行く。牧志バス停で降りて、今年できた沖縄の観光スポット(なのかどうかよく分らないが)、国際通りに面したテンブスの横の道を入り、テンブスの後ろにある公園を横切って桜坂劇場へ行く。もうずいぶん馴染みとなったその公園には数種類のヤシが植栽されており、その中の1種に、私には名前の判らないヤシがあった。
写真に撮って後日調べると、そのヤシはカナリーヤシと判明。カナリは漢字で書くと可也となり、「非常にとまではいかないが、並み一通りを越える程度であること。」(広辞苑)という意味になる。カナリーヤシは、並より少し価値の高いヤシ、などといったことから可也ヤシという名前がついた、・・・というわけでは無い。
カナリーヤシ(かなりー椰子):街路・公園
ヤシ科の常緑高木 カナリー諸島の原産 方言名:なし
シンノウヤシ、ナツメヤシと同じフェニックス属のヤシ。英語名は、この属の代表種であるナツメヤシの名をとってCanary date palmという。カナリー諸島のナツメヤシということ。ただ、ナツメヤシはその実が食用となり、樹液から砂糖も取れる重要な栽培植物であるが、カナリーヤシはもっぱら街路樹などの緑化樹として用いられている。
高さ10mに達し、幹が太く、葉も長く、どっしり、がっしりした風格のある姿が特徴。フェニックス属の他の2種と同様、葉の根元には鋭い棘がある。
なお、カナリー諸島(Canary Islands)は、参考文献にはそうあったが、一般にはカナリア諸島と呼ばれているのかもしれない。アフリカ北西岸寄りの大西洋上に浮かぶ諸島。
記:島乃ガジ丸 2005.12.4 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行