飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

北方領土問題の交渉は「面積等分方式」をベースに進めるべきだ!

2013年05月02日 10時12分04秒 | Weblog
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  安倍晋三首相とプーチン大統領の29日の会談で、プーチン大統領自ら北方領土の解決方法に関して「面積等分方式」を持ち出していたことが判明、解決の具体案としてクローズアップされてきた。日本政府はあくまで4島の帰属確認を主張する構えだが、問題を一気に解決するには面積等分方式の方がベターであることは明らかだ。

  日本の各紙は1日、日本政府高官の話として、プーチン大統領が会談で自ら北方領土問題を切り出し、ロシアが係争地の面積を2等分して境界を画定した中国、ノルウェーとの交渉例を引いて説明したと報道した。安倍首相本人はその後、「北方領土に絡めて話したわけではない」と修正しているが、大統領発言が領土問題解決の方向性を暗に示したことは疑いない。

  一方、菅義偉官房長官は「4島の帰属が日本にあると確認した上で返還交渉をスタートするのが基本だ」と発言、「面積等分方式」が広く浸透するのを抑えようとしている。さらに、「4島の主権さえ日本にあると認められれば、2島先行返還でもいい」という意見さえ、政府内に出始めているという。だが、いったん2島先行返還を認めれば、それで事実上決着してしまう危険性がある。

  元々「面積等分方式」は、ロシアが08年に中国との領土紛争をこの方式で解決して以来、北方領土の解決方法として注目されてきた。麻生政権時代の09年4月に谷内正太郎政府代表(元外務次官)が毎日新聞とのインタビューで言及した3・5島返還論もこの方式に基づいている。

  谷内氏の考えは、北方領土の歯舞、色丹、国後、択捉の4島の面積を半分に割れば、最大の島である択捉島のほぼ真ん中に国境線が引かれる。そうなると日本は歯舞、色丹、国後島と択捉島の半分を領有することになる。つまり、3・5島となり「これでもいいのではないか」と述べたのである。

  面積等分方式の隠された利点は、“落としどころ”があることだ。この方式だと択捉島は日露両国が統治することになるが、ひとつの島を2カ国で統治してもうまくいかないことはサハリン(樺太)の例で明らかである。そこで日本が択捉島の領有権を譲れば、ロシア側は最大の島を単独統治できることになる。日本からすれば3島返還となり、双方の痛み分けということで両国が受け入れやすくなるのではないだろうか。

  これに対し、日本の4島への主権を認めさせ、とりあえず2島先行返還を勝ち取ったとしても、国後、択捉島の返還問題が残ってしまう。そうなると、2島返還で事実上決着するか、あるいは残る2島の決着がどんどん先送りされることになる。それこそ、日本にとってデメリットが大きいと言わざるを得ない。

  日本政府としては、現実的かつ長期的視点に立って解決案を決める必要がある。日本側は当面、プーチン大統領自らが言い出した面積等分方式をベースに交渉を進めるのが得策といえよう。安倍首相が指導力を発揮して外務省を動かし、プーチン大統領に日本への返還を決心させるよう促して欲しいものである。(この項終わり)





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