飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアでもエジプトやチュニジアのような事態が起きるのか?

2011年02月04日 10時23分13秒 | Weblog
 チュニジアやエジプトで長期独裁政権が民衆の反乱で大きく揺らぐ事態が起きているが、こうした動きがロシアにも波及するのかどうか…。この問題を巡って今、ロシアの新聞紙上で論争が起きている。

 議論が戦われているのは、英字紙モスコー・タイムズ(電子版)の紙上である。改革派のルシコフ前下院議員が「ロシアとアラブ諸国とは状況が違う」として波及の可能性を否定したのに対し、翌日の社説が「プーチン政権がさらに続けば、将来その可能性はある」と反論した。

 まず、ルシコフ氏の意見をまとめてみよう。アラブ諸国では人口が爆発的に増大し、若者の失業率が上昇、貧困家庭が拡大している。その一方、独裁者の長期政権が続き、一握りの金持ちが富を分け合っているため国民の不満がついに破裂した。ところが、ロシアでは人口の減少が続き、若者の就職はアラブほど厳しくはない。ロシア国民はおおむね今の生活水準に満足していて、政治への関心も低い、というものだ。

 これに対し、社説では独裁政権がいかにクーデターに弱いかを数字を挙げて説明。ロシアの場合も、強権主義路線のプーチン首相が来年の大統領選に再出馬して当選するか、あるいは首相にとどまってもさらに2期12年間(次期大統領から任期6年に延長)実権を握ることになり、これまでの大統領、首相在任の10年を合わせると22年も権力者の地位にとどまる計算になるとみる。

 さらに、社説は昨年暮れのモスクワ・マネージ広場でのサッカーファンの暴動や北カフカスでの警察官連続殺害事件をあげ、社会に対する怒りや不満が暴力や過激な行動に転化していると指摘。「今すぐに革命が起きる危険性はないものの、国民が生活水準の低さや汚職に永久に耐えていくとは考えられない」と警告を発している。

 こうした議論が紙上で展開できるのも、国民への影響力の少ない英字紙ならではの身軽さだろう。モスコー・タイムズ紙の社説が危惧しているのも、プーチン首相が来年の大統領選に出馬する可能性が高いからだ。出馬すれば当選は間違いない状況だけに、それだけは避けたいという思いが伝わってくる。

ロシアで真の民主化あるいは民主化の深化を目指した「革命」が起きるかどうかが議論されたのは、旧ソ連諸国で2003年から04年にかけて起きた「カラー革命」の頃である。ロシア民主主義の「異質さ」を巡って欧米などでも議論を呼んだが、当時のプーチン政権が国益を前面に押し出した「主権民主主義」という概念を打ち出してこうした議論を抑え込んだ経緯がある。
 
 このところメドベージェフ大統領の動きが活発になっている。本人や取り巻きが来年の大統領選を意識して国政の主導権を握ろうとしていることは間違いない。プーチン首相に首根っこを抑えられている状態から抜け出せるかどうか。もう少し状況を注視する必要がありそうだ。

 
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