飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

プーチン大統領が北方領土で再び「引き分け」を持ち出した意図は?

2019年12月20日 16時00分16秒 | Weblog
 ロシアのプーチン大統領は19日、モスクワ市内で恒例の年末記者会見を行い、国内外の記者の質問に答えた。その中で、共同通信記者の質問に対し、日露平和条約交渉について「柔道で言う引き分けを目指しているが、まだ解決策は見つかっていない」と述べた。大統領が日露間の交渉に関し「引き分け」と言う表現を使ったのは、2012年の外国メディアとの会見以来で、改めて大統領がこの表現を持ち出した意図はなんだろうか。

 前回、「引き分け発言」をしたのは、2012年の大統領選で当選した直後で、大統領がいよいよ領土問題を解決しようと本腰を入れたのではないか、と言う観測が広がった。そうした流れの中で、「引き分け」とは領土交渉の対象になっている北方四島を半々に分けると言うことではないかとの憶測を呼び、日本国内で解決機運が高まった印象がある。安倍晋三首相周辺にもそうした雰囲気が広がったため、四島のうちの2島返還要求に動いた感じがする。

 だが、すでにこの1年の交渉で明らかになったように、ロシア側からは具体的な返還への回答は得られず、安倍政権の一方的な思い込みという結果に終わった。そして再び、プーチン大統領から「引き分け」という解決策が出たわけだ。ということは、大統領が考えている解決策は島の返還ではなく、まったく別の解決策だと考えざるを得ない。では、一体それは何なのかということになる。

 19日の会見でプーチン大統領が頻りに心配していたのは、北方領土を日本に返還したら、翌日にも米国がそこにミサイル基地を作るのではないかということである。米露両国が結んでいたINF(中距離核戦力)全廃条約は現在、失効しており、米国の地上発射型ミサイルが北方領土に配備される可能性があるからである。大統領は会見で「日本への配備の可能性が日本側からも、米国側からも聞こえて来る」と述べ、「明日にもミサイル基地が島に出現しない保証がどこにあるのか」と強調していた。

 もちろん、日本側もロシア側にそうした心配があることは十分承知していて、ロシア側に否定的見解を伝えている。だが、ロシア側からすれば、日米は軍事同盟を結んでいて、一体化しているので、口先だけの否定を信じるわけがない。では、本当にロシア側の心配を否定できるかというと、できないことも皆承知している。だが、ロシア側の真意がそこにあるとすれば、その問題を放置していては一向に解決しない。

 終戦から間もなく75年が経とうとしている。要は、北方領土問題をこのまま放置していいのかということである。日本側が本当に解決を望むなら、日米の関係を見直す必要がある。それをプーチン大統領は「引き分け」と表現しているのではないだろうか。(この項終わり)

 
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