飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

日露首脳が北方領土問題で切り札に使う「新アプローチ」で解決できるのか?

2016年06月23日 15時13分12秒 | Weblog
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日露両国政府による日露平和条約締結交渉は6月22日、東京都内の飯倉公館で開かれた。5月の日露首脳会談で合意した「新アプローチ」を基に6時間協議したというが、新アプローチの内容については今回も記者団には一切明らかにされなかった。

北方領土交渉は戦後何十年も続けられているが、両国首脳から何度同じようなアプローチがあったことか。結局、いずれも交渉の前進にはつながらなかった。今回もこれまでと同じ轍を踏まないという保障はない。

安倍首相は5月の首脳会談で「2国間の視点だけでなく、グローバルな視点を考慮した上で未来志向の考えにたって交渉していく新しいアプローチが必要だ」と強調し、これにプーチン大統領も同意したとされる。

だが、具体的に何を指すかについては北方四島の具体的な「返還手法説」,経済協力を積極的に行う「環境整備説」など諸説あり、両国政府ともこの内容についてはだんまりのままである。安倍首相は前回の会談で8項目に及ぶ幅広い対露経済協力プランを説明しており、これをもとに返還に向けてロシア側の譲歩を引き出そうというのが日本側の本音だろう。

この日の会談は6時間に及んだものの、経済協力については議論にならなかったという。そうだとずれば、本論に向けた協議の枠組みで両国政府の意見が食い違っているのかもしれない。

いずれにしろ、一度や二度の交渉で戦後70年間に渡った領土交渉のねじれが解消するわけがない。日本政府は次回、モスクワで交渉を再開し、9月に予定されているウラジオストクでの首脳会談につなげる戦略である。最終的には両首脳の差しの会談で決着させることになるが、それは早くても年末のプーチン大統領の訪日時だろう。

だが、それまでにロシアがウクライナから強引に奪ったクリミア半島を初めとするウクライナ紛争が決着することが最低条件だ。プーチン大統領がクリミア半島を返すことは考えられないだけに根本的な解決は難しい。そうなると、日本政府が米国などの反対を押し切って北方領土問題を解決することは事実上出来ないだろう。

安倍政権は消費税問題で衆参同日選挙を実施できなかったので、北方領土問題で外交得点をあげ、一気に同日選をやろうとしているとの説がある。それができるかどうかは、まさに国際情勢いかんにかかっている。北方領土問題はまたも国際情勢によって解決を先送りされてしまうのだろうか。(この項終わり)
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