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新興財閥の指導者的存在で、当時「石油王」と呼ばれたミハイル・ホドルコフスキー元ユコス社長の刑事事件は今後、ロシア最高裁で審理されことになった。このためプーチン大統領の“政敵”とも言われた元社長は、16年までの禁錮刑の刑期が短縮され、来年にも釈放される可能性が浮上した。
ロシアの有力紙コメルサントが20日付けの電子版で報じた。この事件は、プーチン政権1期目の03年に詐欺や脱税容疑で逮捕され、05年に禁錮8年の実刑判決を受けた。さらに、10年にも別の事件で有罪となり、刑期は16年まで延期された。プーチン氏が3期目の大統領に復帰した12年の選挙直前に刑期が延びたことから「司法の独立が侵された」と欧米から批判を浴びていた。
今回の判決見直しは、最高裁の指示によるもので、モスクワ市裁判所が昨年暮れに審理し、刑期を2年間短縮すると決めた。この決定は、メドベージェフ前政権が導入した経済犯罪罰則の緩和措置に基づくものとされているが、専門家は「プーチン政権による政治的決定」とみている。
今後、最高裁がモスクワ市裁判所から送られてきた一件書類を審理し、同市裁判所の決定が妥当かどうかを判断する。コメルサント紙は「いずれにしろ、ホドルコフスキー元社長には禁錮の刑期が短縮されるか、釈放されるかのチャンスが出てきた」と結論づけている。
ホドルコフスキー元社長は00年代、石油大手ユコスの社長を務め、新興財閥の指導者的存在だった。さらに、野党の指導者として政界への進出を図ろうとしたため、プーチン大統領ににらまれた。その後も、リベラル派のシンボルとみなされ、刑期を延長された。しかし、11年暮れからの反プーチン運動も収束してきたことから「釈放しても政権の脅威にならない」と判断されたとみられる。
プーチン政権は昨年5月の大統領復帰後、集会・デモの規制など秩序維持を強化しているが、欧米諸国が人権問題で政権批判を強めているため、ホドルコフスキー元社長の釈放で批判をかわす狙いもある。釈放されれば、国内のリベラル派が勢いづく可能性もあり、政権にとって諸刃の剣となるかもしれない。(この項おわり)