飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアのスパイ事件で明るみに出たソ連以来の古い手法!!

2010年07月16日 10時25分00秒 | Weblog
 ロシア人のスパイ10人が米国で摘発され、米国のスパイ4人との交換で解決した事件は、冷戦終了後もロシアがスパイを外国に派遣して情報収集を続けていたことを世界に暴露した形になった。なぜこうした古臭いやり方が行われていたのだろうか。

 ソ連時代には外国でのスパイ活動はKGB(国家保安委員会)が行っていたが、ソ連崩壊後はロシア対外情報局(SVR)が引き継いだ。情報局にはアカデミーと呼ばれる訓練所があり、ここで訓練を受けて外国に派遣される。正規の職員は不逮捕特権などがある外交官として派遣されるが、今回逮捕された10人は会社員や新聞記者の職業を持つ非正規の職員だった。いわゆる非合法のスパイである。

 ソ連当時でも、国際共産主義運動が盛んだった時代には、こうした非合法の工作員が多数海外に派遣された。だが、スターリンによる粛清があってからは縮小されたものの、続けられていた。戦後の冷戦期には、各国とも非合法工作員を海外に派遣することはほとんどなくなったというが、ロシアではなぜ、こうした伝統的手法が続いていたのか。

 13日付けのモスコー・タイムズ紙(電子版)は、「ソ連スパイのノスタルジー」とのタイトルでこの問題を解説している。それによると、冷戦時代には米ソ間でイデオロギー戦争が続いていたので、敵国のモラルを破壊する意味はあったが、現代では公開情報から隠された情報を探しても、米国の国益損失にはつながらないので意味はないと断言している。

 そのうえで同紙は、ロシア対外情報局が古い手法を捨てきれないのは、伝統的手法を維持することに誇りを持っており、これまでどこからもそれを迫られなかったからだとしている。しかし、こうした古い手法がすでに時代遅れであり、冷戦後には適切でないことは明らかだと言い切っている。

 そして同紙はこう結論付けている。冷戦時代には国民に情報機関の活動をどこまで知らせるかは情報機関自身で決められたが、今では情報活動が失敗したかどうか調査する権限も国民にある、と。

 さらにモスコー・タイムズ紙は国民にこう質問するようアピールしている。「対外情報機関はいつまで古いやり方を踏襲し、活動についてのニセ神話を維持し続けるつもりなのか?」。この質問に当局は是非答えてほしい。でも、プーチン首相はじめ、旧KGB出身者が国政を牛耳っている限り、伝統的手法を改めるのは無理なのかも。
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