飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシアとウクライナの関係は「雨降って地固まる」か!

2010年05月18日 13時46分19秒 | Weblog
 ロシアのメドベージェフ大統領は5月17日、2日間の日程でウクライナを公式訪問した。首都キエフで大統領歓迎式典が行われ、メドベージェフ大統領とヤヌコビッチ・ウクライナ大統領が無名戦士の墓に献花した。そのとたん、激しい雷雨に見舞われ、式典は中断、二人とも着替えをする羽目になった。

 この後、二人はさしの会談を行った。その冒頭、ヤヌコビッチ大統領が「こういう雨はお金につながるといわれている」と水を向けると、メドベージェフ大統領はこう答えた。
 「この雨が過去に起きた否定的なものを洗い流し、両国の善隣友好関係に良い基礎を与えてくれることを期待します」
 日本のことわざで言えば「雨降って地固まる」になればということだろう。以上がロシア有力紙コメルサントが18日付け電子版で報じた、さわりの部分である。

 確かに親露派のヤヌコビッチ大統領の前任者、親欧米派のユーシェンコ氏が大統領のときは、天然ガスの輸入価格などを巡って両国は激しく対立し、泥沼状態だった。ロシアの大統領がウクライナを訪問したのは5年前のプーチン氏の時以来で、メドベージェフ大統領はすでに大統領職を2年務めているが、今回が初の公式訪問だった。メドベージェフ氏はヤヌコビッチ氏が大統領になってからすでに6回も会談しているのに、である。

 それだけに今回はウクライナ側が大いに気を使い、野党側の抗議デモを一切禁止したほか、警官4千人を首都に配置するなど万全の措置を取ってメドベージェフ大統領を出迎えた。そこにこの雷雨である。両首脳の緊張感が一気に和らいだのではないだろうか。

 すでに4月21日にウクライナ・ハリコフで行われたメドベージェフ・ヤヌコビッチ会談で、懸案のロシア黒海艦隊の基地貸与期間延長と天然ガス輸入価格見直しで合意している。双方が妥協し合って合意に達したものだ。この日も両大統領は両国の国境画定、銀行間協定などの合意文書に署名している。

 ただ、天然ガス問題ではプーチン露首相が国営ガス事業の統合を提案、ウクライナ側は慎重な姿勢を示していて、合意までには時間がかかりそうだ。いずれにしろ、双方は何事も話し合いで解決する意向を示しており、ユーシェンコ政権時代とは様変わりしている。

 ソ連が崩壊して20年たち、ようやく両国も正常な関係になりつつある。だが、ロシアに反感あるいは嫌悪感を抱いている国民が半数近くいることをロシアは忘れてはならない。ロシア系、ウクライナ系の住民ともにウクライナに対する愛国意識は強いものがある。この琴線に触れると、ウクライナは一斉に反発するだろう。私は90年代に独立間もないウクライナ各地を取材して歩き、その思いを強くした。
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