飯島一孝ブログ「ゆうらしあ!」

ロシアを中心に旧ソ連・東欧に関するニュースや時事ネタを分かりやすく解説します。国際ニュースは意外と面白い!

ロシア側の「独創的アプローチ」って、こんなことなの!?

2010年01月28日 15時40分06秒 | Weblog
 北方領土問題解決のキーワードといわれてきた「独創的アプローチ」について、ロシア外務省高官が語ったとされる内容が28日付けのロシア紙コメルサント(電子版)に掲載された。「えっ、こういうことなのか」と驚くような中身だった。

 この記事は、日本駐在が長いタス通信のゴロブニン特派員がコメルサント紙のために書いた。それによると、日本外務省との戦略対話(25日)に出席するため来日したデニソフ・ロシア第一外務次官がジャーナリストに語ったとされ、「独創的アプローチとは、モスクワ(ロシア政府)が自分たちの立場を日本側に近づける用意があるという意味ではまったくない。我々は完全に違うように理解している」と述べたという。

 そのうえで、デニソフ次官は「独創的アプローチは、具体的な課題を解決するために向けられており、たとえばクリル諸島の南部(北方領土を指す?)を訪問する日本人の問題を軽減することだ」と指摘している。簡単に言うと、日本人の北方四島への出入りをどれだけ拡大するかという矮小な問題ということだ。

 記事は、デニソフ次官の発言を紹介した上で「要するに、島での我々の隣人のために特別な法的地位を考えるということだ。東京(日本政府)はこの提案に合意するかもしれないが、問題が最終的に解決することは決してないだろう」と結んでいる。

 そもそも「独創的アプローチ」とは、メドベージェフ大統領が08年11月、ペルーで麻生太郎首相(当時)と会談した際、領土問題の解決策として言及し、事務方に検討を指示したとされている。大統領は「新たな、型にはまらない」などと説明したとされるが、これまでロシア側が具体案について言及したとの公式発表は日本政府からは聞いていない。

 ただ、鳩山民主党政権になってから昨年11月にシンガポールで行われた日露首脳会談で、ロシア側が具体案を日本側に提示していたとの記事が同年12月27日付けの毎日新聞朝刊に掲載された。それによると、歯舞、色丹の2島返還を前提に国後、択捉2島の共同開発などを進める内容とみられる、とある。

 この報道が本当とすれば、日露政府間の交渉ではすでにロシア側から説明があったことになる。それなら、なぜ日本政府はそれを公表しないのか。交渉の過程は公表できないということかもしれないが、それでは国民は何も知らされないまま交渉が進んでしまうことになる。

 それにしても、デニソフ次官の発言が本当なら、日本側としては到底受け入れられない内容だ。とてもメドベージェフ大統領がもったいぶって言うような内容ではない。だが、デニソフ次官がそれをあえて述べたとするなら、日本政府が秘密にしていることに対する「あてつけ」かもしれない。