ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『眉山ーびざんー』

2007-03-06 23:33:05 | 新作映画
----“まゆやま”?
どこの山ニャの?
「(笑)。山が分かっただけでもよしとしよう。
でもね、これは“まゆやま”じゃなくて“びざん”と読むの。
どの方向から見ても<眉>の格好をしていることから
“眉の山”と呼ばれたみたい。
四国の徳島にあるんだ」

----徳島って、阿波踊りが有名ニャんだよね?
「そう。この映画では、
その阿波踊りがたっぷりと観られるよ。
もっともお話自体は、さだまさしの小説が基になっているけどね」

----さだまさしだったら、長崎って感じだけど?
「うん。「精霊流し』も『解夏』もそうだったから、
フォーンがそう思っても仕方がないよね」

----で、どんなお話ニャの?
「主人公の咲子(松嶋菜々子)は
母・龍子(宮本信子)が入院したと聞いて、
生まれ故郷の徳島へ帰る。
咲子は子供の頃に、母が正妻でないことを知らされ、
その父親はすでに亡くなっていたと聞いていた。
ところが父は東京で医者として病院を続けていることを知る。
かくして咲子は、母が愛した父を訪ねるが…。
これに医師・寺澤(大沢たかお)との恋が絡む----というところかな」

----う~ん。どこかで聞いたことがあるような?
あれっ、何だっけ?
「田中麗奈の『はつ恋』でしょ。
病に倒れた母の初恋の人を娘が訪ねる話……。
よくあると言えばよくある話だ。
手紙や写真が重要な役割を果たすところも同じだしね」

----と言うことは、
この映画を物語で語ってもしょうがないよね。
「おっ、フォーンも分かってきたね。
この映画でボクが注目したのは
監督・犬童一心の映像処理。
本編中に、幾度となく回想シーンが挟まれるんだけど、
これが粒子が粗く露出も飛び気味、
『ナイロビの蜂』のそれと似ていたね。
もっとも向こうは手持ちカメラ。
こちらはフィックス中心だったけどね。
現代のシーンでも長距離長回し横移動、
あるいはスローモーションなどが使われていた。
でも題材が題材だけに、
それほどの新味はなかったな。
それよりもむしろ……」

----それよりもむしろ……?
「見どころは熟練の役者たちの演技だね。
まず映画出演は『マルタイの女』以来10年ぶりとなる宮本信子。
啖呵を切ったり、浄瑠璃を歌ったり……。
『あげまん』『ミンボーの女』の彼女が戻ってきたって感じ。
もちろん威勢のよさだけじゃない。
愛する人のため自分から身を引いた女性の哀しみ、そして娘への愛も
体からにじませる……。
復帰第一作にこの映画を選んだのは正解だね。
そしてこれは、この映画のボクの一押し・山田辰夫。
あまりにも自然に役に入り込んでいて
漫然と観ていると演技であることを忘れてしまう。
劇中、彼と円城寺あやのツーショットが出てくる。
彼らの80年代を知る者にとっては
感慨深いものがあったね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンには眉ないのニャ」もう寝る

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猫ニュー

『春のめざめ』『岸辺のふたり』

2007-03-04 23:15:58 | 新作映画
(原題:История любовная/Fatner and Daughter)

----あれっ?こういうアート・アニメーションって
苦手だったのでは?
「うん。ドキュメンタリーもそうだけど、
何から語っていいのか
その糸口が難しくってね」

----でも、喋りたくなったんだ……?
「うん。まあ、ちょっと観てよ。
この映像の美しいこと。
まるで印象派の絵画みたいだ」

----ほんとだ。女性はルノワールのようにふくよか。
風景はモネってとこかニャあ。
でも、どうやって描いたんだろう?
「なんと油絵でガラスに描いたらしいよ」
----でも油絵って
描いたら
かちかちに乾くんじゃニャいの?
「うん。でも乾くのが遅いんだって。
だから、それまでの間に消したり加えたりして
撮影していったってことらしい。
まるでゆらぐような映像なんだけど、
それがこの映画のテーマ、
“ 恋する少年”の不安定な心を表現するのにピッタリ」

----へぇ~っ。恋する少年って不安定ニャの?。
「そう、いわゆる
恋に恋する頃だからね。
この映画でも友だちに
同世代の女の子への恋心を打ち明けたかと思えば、
年上の女性を女神として神格化。
そんな中、訪れる初めての体験。
そのめくるめく官能も
アニメーションならではの
流体化する抽象映像で描かれる」

----そうか、この時期の男の子って微熱を帯びてるんだ。
「そういうこと。
大人への入り口に立ち、少年としては
初めて触れた俗なる世界を否定し、
自分の恋だけは神聖なものとして位置づけたい。
ところがそこに<性>というやっかいなものまで入ってくるものだから、
もう頭の中は何がなんだか分からなくなってくる。
もともと恋は理性とは相反するものだから、
この葛藤に整理決着がつくわけはない。
その<ゆらぎ>を表現するには、
この『ガラス絵手法』はピッタリだったね」

----ニャるほどね。
そう言えばこれって二本立てだよね?
「同時上映が『岸辺のふたり』。
これまたまったく違うタッチだけど、
いやあ泣けたね。
ときに夕焼け色が混じる単色の逆光で描かれるのは、
少女の頃、なぜか目の前から去っていった父親との再会を信じて、
その運命の場所を年老いるまで訪れ続ける女性。
わずか8分の中に描かれるその人生は
永遠に心に刻まれること間違いないね」


  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンも驚いたニャ!」ぱっちり

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猫ニュー

※画像はチラシです。

『松ヶ根乱射事件』

2007-03-01 21:54:25 | 映画
※このポスターは『松ヶ根乱射事件』ではありません。
 ではなぜ?その答(?)は本文で……。


----今日は映画の日。
フォーンは、ほんとうは『墨攻』か
『さくらん』に行きたかったんだけどニャあ。
「でも結果的にオモシロかったからいいでしょ」
----でも、そもそもなんでこの映画ニャのよ?
「いやあ。記録的な不入りと聞いていたからね。
本当かどうか、
初日の最初の回にゼロだった劇場もあったとか…。
そう聞くと、よけい観たくなるじゃない。
だって『リンダ リンダ リンダ』の山下監督作品だよ。
フォーンだって、オモシロがっていたじゃない」

----う~ん。ちょっと刺激が強かったニャあ。
だって、変だよこの映画。
雪の上で死んでいるように見える女性のスカートの中に、
小学生の男の子が手を入れるところから始まるんだもの。
「しかも死んだはずの女性は検屍のため全裸。
ぼかしはまったくなしでリアル。
その後も、パンツの中をぼけ老人に見せる女性とか、
やたら下半身にこだわっていたものね」

----そう。ちょっとたまんなかったニャあ。
目のやり場に困ったよ。
「フォーンにとってはそうかもね。
でも冒頭の雪の中の死体(?)の映像は
ある映画を思い出さなかった?
仰向けかうつぶせかの違いはあるけど…。
着ている服の色まで同じ」

----分かった。『ファーゴ』でしょ?。
「うん。
犯罪が雪だるまのように膨らんでいくところとかも似ていたね。
しかも映画は、一見のどかに見える村の奥に隠された
どろどろした人間関係を、じわりじわりと明らかにしていく。
この傷の上のかさぶたを剥がしていく感じは
『ツイン・ピークス』を思わせたね」

----あっ、そうか。あっちは湖の中の美しい死体…。
でもフォーンは『スウィート ヒアアフター』を連想したな。
あれも雪に閉ざされた町の物語だった。
そのような寒々とした生活環境が
この手の映画には向いているのかニャあ?

  (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「ラストはビックリニャ!」ぱっちり

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猫ニュー